コンタクトエッチストップ層とは
コンタクトエッチストップ層とは、トランジスタの上へ先に薄く敷いておき、層間絶縁膜を掘るエッチングをその面で受けて、削りの速さをそこで落とすシリコン窒化膜です。 掘る深さの高低差を、エッチング時間の代わりに材料の速度差で吸収します。
エッチング時間を1つに決めるだけでは、ある穴は掘りすぎ、別の穴は底に酸化膜が残ります。そこで調整するのが、膜厚、選択比、オーバーエッチの3つです。
掘る深さは、平坦化した後も場所ごとに違う
Section titled “掘る深さは、平坦化した後も場所ごとに違う”サリサイドの形成後に酸化膜と窒化膜をCVD法で成膜し、その上にBPSG膜を成膜して層間絶縁膜にします1。コンタクトホールを開ける前にBPSG膜をCMPで平坦化しても、ポリシリコンの上とソース/ドレインの上ではBPSG膜の厚さに差が残ります。そこで、先に成膜した窒化膜をポリッシングストッパーとして使い、その後に窒化膜と酸化膜をエッチングしてコンタクトホールを開けます。
高低差の原因はもう1つあります。Si酸化膜のように側壁保護膜で異方性を作るエッチングでは、孔径(アスペクト比)によってエッチング速度が大きく変わる2マイクロローディング効果が起きます。同じレシピでも、太い穴と細い穴では底に届く時間が違います。
時間だけで止めるエッチングは、この2つの差をそのまま受けます。層間絶縁膜が薄い場所では削りが接合まで届き、厚い場所では穴の底に酸化膜が残ります。コンタクトエッチストップ層は、この差をエッチング速度の違いで吸収するために入れます。
削りすぎは接合リークを招き、許される余裕は接合深さの半分
Section titled “削りすぎは接合リークを招き、許される余裕は接合深さの半分”ITRS 1999年版は、シリコン消費によるコンタクト抵抗率の上昇を避けるため、シリサイド膜厚をコンタクトの接合深さの1/2以下にするとしています3。シリサイドの下に残る余裕は、接合深さの残り半分しかありません。
同じロードマップは、DRAMの積層キャパシタでコンタクトのサイズが0.1 μm、アスペクト比が10以上になると見込み、自己整合の高アスペクト比コンタクトエッチングと、エッチング後の十分な洗浄方法の開発を課題に挙げていました。エッチストップと接合へのダメージを抑えながら、CDと選択性を保つことが技術的な挑戦になるという見通しです。
工程の組み方としては、メインエッチで大部分を除去し、オーバーエッチで仕上げる多段のエッチングが挙げられています。終点をあらかじめ決められるよう、インターフェロメトリなどでメインエッチの終了前に残りの膜厚を測ることが強く望まれ、高選択比で低ダメージのプロセスが必要だとしています。
段差の底と側面に同じ厚さで付けるため、ALDを使う
Section titled “段差の底と側面に同じ厚さで付けるため、ALDを使う”ストップ層は、段差の底と側面の両方で同じように働く必要があります。日立国際電気の須田敦彦氏らは、ALD法を、低サーマルバジェットと良好なステップカバレッジから65〜45 nmノード以降に対応できる成膜技術4と位置づけています。適用が見込まれる部位は、高ステップカバレッジのライナー膜とコンタクトエッチストッパ膜(ALD-SiN)、低温で形成するサイドウォールスペーサ膜(ALD-SiN、SiO)です。
膜厚100 nmのSiN膜では、高密度パターン部で底部100%・側部97.8%、低密度パターン部で底部98.9%・側部97.8%のステップカバレッジが観察されています。同社は装置性能を、300 mmウェーハで面内膜厚均一性±2.0%、ステップカバレッジ97%超、1バッチ100枚、0.13 μmを超えるパーティクルが1ウェーハあたり50個未満、膜厚25 nmでのスループット32枚/時としています。
600 ℃以下の低温で窒化シリコン膜を作るには、ウェーハのすぐ近くで窒素の活性種を作る必要があります。水素脱離量で測った水素含有量では、ウェーハ表面の化学反応を使うALD法のほうが、減圧CVDより低い温度で水素の少ない膜を得られます。
厚みの上限は、容量と埋め込み幅で決まる
Section titled “厚みの上限は、容量と埋め込み幅で決まる”SiNのκ値は6を超えます5。配線では、接着層、エッチストップ層、ハードマスク層、誘電体バリアといった膜があるため、Low-κ材料による配線容量の削減効果が薄れてきました。コンタクトエッチストップ層にも同じことが当てはまり、SiNを厚くするほど寄生容量が増えます。
ストップ層はゲートの側面にも底部に近い厚さで付くので、厚くした分だけ両側から隙間が狭まり、コンタクトを埋め込める幅が減ります。段差被覆性が高い膜ほど、側面の厚さは底部の厚さに近づきます。
同じ膜に応力の役を持たせる場合もあります。東京エレクトロンのNT333シリーズは6、ALDサイクルの中に改質ステップを組み込み、低温での膜質向上と用途ごとの膜ストレス調整を可能にしています。同社は段差のある複雑な形状への高いカバレッジと、膜自体のエッチング耐性も挙げています。1枚の膜に、膜厚、応力、酸化膜に対する選択比の3つが同時に求められます。
最後は窒化膜を開け、選択比の向きが逆になる
Section titled “最後は窒化膜を開け、選択比の向きが逆になる”ストップ層でエッチングを止めた後、その窒化膜を開けてコンタクトプラグをシリサイドに届かせます。この工程では選択比の向きが逆になり、窒化膜を削りながら酸化膜と下地を守ります。膜が薄いので、この工程のイオンエネルギーとオーバーエッチ時間は接合のダメージに直結します。
東京エレクトロンのCertas LEAGAは7、洗浄液を使わずに表面のエッチングとクリーニングを行うガスケミカルエッチング装置で、同社はプラズマを使わない加工によって高い稼働率と低コストを実現したとしています。用途は、シリコンコンタクト前の表面クリーニング、シリコン酸化膜の除去とエッチバック、高アスペクトの3次元構造の選択エッチング、精細なリセスです。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”コンタクトエッチストップ層とは何ですか?
トランジスタの上へ先に薄く敷いておき、層間絶縁膜を掘るエッチングをその面で受けて、削りの速さをそこで落とすシリコン窒化膜です。ALD-SiNの適用部位として、高ステップカバレッジのライナー膜とコンタクトエッチストッパ膜が挙がっています。
なぜエッチング時間だけで止めないのですか?
掘る深さが場所ごとに異なるためです。コンタクトホール形成の前にBPSG膜をCMPで平坦化しても、ポリシリコン部分とソース/ドレイン領域部分でBPSG膜の膜厚に高低差が残ります。時間で打ち切ると、層間絶縁膜が薄い側では削りが接合へ届き、厚い側では穴の底へ酸化膜が残ります。
削りすぎると何が起きますか?
シリサイドを突き抜けて接合にダメージが入ります。ITRS 1999年版は、シリコン消費によるコンタクト抵抗率の上昇を避けるため、シリサイド膜厚をコンタクトの接合深さの1/2以下にするとしています。
どのくらい均一に付ける必要がありますか?
膜厚100 nmのSiN膜で、高密度パターン部で底部100%・側部97.8%、低密度パターン部で底部98.9%・側部97.8%のステップカバレッジが観察されています。日立国際電気は装置性能を面内膜厚均一性±2.0%、ステップカバレッジ97%超としています。
現場では何を調整しますか?
膜厚、酸化膜に対する選択比、そしてメインエッチとオーバーエッチの切り分けです。メインエッチでバルク材料の大部分を除去し、オーバーエッチで完了させ、インターフェロメトリなどでメインエッチ終了前に残り量を測ることが強く望まれます。
厚くすると何が悪くなりますか?
ゲート間の隙間が狭まり、寄生容量が増えます。SiNのκ値は6を超え、エッチストップ層などの膜があるためにLow-κ材料による配線容量の削減効果が薄れてきました。
応力ライナーと同じ膜ですか?
同じ膜が両方の役を担う場合があります。東京エレクトロンのNT333は、ALDサイクルの中に改質ステップを組み込み、低温での膜質向上と用途ごとの膜ストレス調整を可能にしています。膜厚と応力を同時に満たす必要があります。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- 自己整合コンタクトとは── ゲートの横での短絡を防ぐ構造。こちらは穴の底で接合を守る
- 応力ライナーとは── 同じ窒化膜に応力の役を持たせる
- ステップカバレッジ(段差被覆性)とは── 側面の膜が薄いと、そこからエッチングが抜けやすい
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- 1電子情報通信学会 知識ベース:10群2編1章 集積回路プロセス技術概論(2010年10月)ieice-hbkb.org ↩
- 2電子情報通信学会 知識ベース:10群2編3章 プロセス要素技術(2010年4月)ieice-hbkb.org ↩
- 3JEITA 半導体技術ロードマップ専門委員会訳:国際半導体技術ロードマップ 1999年版 日本語版 フロントエンドプロセスhome.jeita.or.jp ↩
- 4日立評論:45 nmノード対応縦型ALD成膜装置 ALDINNA(日立国際電気 須田敦彦ほか、2007年4月)hitachihyoron.com ↩
- 5JEITA 半導体技術ロードマップ専門委員会:ITRS 2013年版 日本語訳 配線semicon.jeita.or.jp ↩
- 6東京エレクトロン:成膜 NT333シリーズtel.co.jp ↩
- 7東京エレクトロン:エッチング Certasシリーズ(Certas LEAGA)tel.co.jp ↩