結晶異方性Siウェットエッチとは
結晶異方性Siウェットエッチ(Anisotropic Silicon Wet Etch)とは、KOHやTMAHなどのアルカリ薬液で、単結晶シリコンを結晶方向ごとに異なる速さで削る加工です。 遅く削れる結晶面が斜面として残ります。液体による加工でも結晶方位で形を制限できる一方、自由な垂直壁を作れるわけではなく、基板方位とマスク方向が形を決めます。形の大枠は削る前に決まり、薬液の濃度や温度、浴の中の置き方は、速さや面の仕上がりを含む結果を動かします。
削れにくい(111)面が斜面として残り、V溝になる
Section titled “削れにくい(111)面が斜面として残り、V溝になる”この加工は、単結晶シリコンの結晶面ごとの反応速度の差を利用します1。代表的な構成では、削れにくい(111)面が境界となり、V溝やピラミッド状の穴を形成します。
ウェットエッチングをすべて等方的と考えると、この方式を説明できません。等方的な薬液がマスクの下へ回り込むのに対し、ここでは結晶面が形の境界になります。MEMSではキャビティや薄い膜を作るために使われます。
形は基板方位とマスク方向で決まり、マスクの輪郭はそのまま写らない
Section titled “形は基板方位とマスク方向で決まり、マスクの輪郭はそのまま写らない”マスクの輪郭をそのまま垂直に転写する方式ではありません。基板の面方位とマスク方向を決め、耐薬品性のあるマスクを形成します。薬液で加工し、リンスと乾燥の後に形状と残した膜を確認します。基板方位とマスク方向、最終形状は先に合わせておきます。
薬液はアルカリです。関東化学はSiエッチングに用いる高純度アルカリを、任意の濃度に希釈して使う品目2として出しており、NaOHLM-CXは添加剤の効果でウエハへの金属不純物の吸着を低減できるとしています。KOHとTMAHはどちらも結晶異方性を利用できますが、汚染と材料適合、速度は同じではありません。濃度と温度、撹拌、ドーピングも結果へ影響します。
浴の中の位置と液の流れでも、面の仕上がりが変わる
Section titled “浴の中の位置と液の流れでも、面の仕上がりが変わる”New Jersey Institute of Technologyの研究では、(100)方位のp型シリコンウェーハをKOHで削り、濃度、温度、時間を変えた比較実験3を行っています。この研究は、基本の条件に加えて、浴に浸したウェーハの位置もエッチングに予測しにくい影響を与えたと報告しました。その理由として、ウェーハ表面と、撹拌した液の流れとの相対的な位置関係が考えられるとしています。
同じ研究の表面形態の解析では、液の流れに対するウェーハの特定の位置で、一様に荒れた(100)面がより高い品質で得られることがあると示しました。仕上がりは反射率の測定で評価され、最も低い反射率の試料を決めています。濃度と温度をそろえても、液の流れに対する置き方が残る変数になります。
入口だけでなく、底面と残り厚さを測る
Section titled “入口だけでなく、底面と残り厚さを測る”管理するのは、基板方位、マスク方向、薬液、温度と濃度、加工深さ、面の粗さ、マスク消耗です。入口寸法だけでなく、結晶面で制限された底面と残り厚さを測ります。加工を長く続けると、所定の斜面を残しても、別の方向へ寸法が変わる場合があります。
再現性のある形と引き換えに、形の自由度を手放す
Section titled “再現性のある形と引き換えに、形の自由度を手放す”結晶面を使って再現性のある形を作れますが、形状の自由度が制限されます。必要な構造と基板方位を先に合わせ、ドライエッチングとの役割を分けます。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”結晶異方性Siウェットエッチは何をする工程ですか?
KOHやTMAHなどのアルカリ薬液で、単結晶シリコンを結晶方向ごとに異なる速さで削る加工です。遅く削れる結晶面が斜面として残り、代表的な構成では削れにくい(111)面に囲まれたV溝やピラミッド状の穴ができます。
どの段階で行いますか?
基板の面方位とマスク方向を決め、耐薬品性のあるマスクを形成します。薬液で加工し、リンスと乾燥の後に形状と残した膜を確認します。
何を管理しますか?
基板方位、マスク方向、薬液、温度と濃度、加工深さ、面の粗さ、マスク消耗を管理します。New Jersey Institute of Technologyの研究では、撹拌した浴の中でウェーハを置く位置も、液の流れとの関係で面の仕上がりを変えることがあると報告されています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”3件を表示
- 1MEMS Exchange Etching Processesfab.mems-exchange.org ・ 2026年10月12日閲覧 ↩
- 2Kanto Chemical Si etching solutionskanto.co.jp ・ 2026年10月12日閲覧 ↩
- 3New Jersey Institute of Technology:Ying Wang 修士論文「Koh etching of silicon」(2016年5月)digitalcommons.njit.edu ↩