コンテンツにスキップ

熱リン酸SiNエッチとは

熱リン酸SiNエッチ(Hot Phosphoric Acid Silicon Nitride Etch)とは、加熱したリン酸系薬液でシリコン窒化膜を選択的に除くウェット工程です。 窒化膜と、その下に残す酸化膜やシリコンとの溶ける速さの差を使います。速さは温度と水分で大きく変わるので、加熱時間だけでは除去量を決められません。残す酸化膜やシリコンへの消耗も確認して条件を決めます。

窒化膜は溶け、酸化膜とシリコンはほとんど溶けない

Section titled “窒化膜は溶け、酸化膜とシリコンはほとんど溶けない”
材料ごとのエッチ速度
178〜180℃の薬液窒化シリコン125酸化アルミニウム120窒化ガリウム80酸化シリコン1シリコン1約125倍1101001000毎分のエッチング量(Å、対数)
Transeneの薬液では、同じ浴で窒化シリコンは毎分125Å溶け、酸化シリコンとシリコンは毎分1Åです。この値に当てはめると、窒化膜を剥がし終える間に下地はその約125分の1しか減りません。

熱リン酸が窒化膜の除去に使われるのは、残したい材料がほとんど溶けないからです。米Transeneは、オルトリン酸から作る精製薬液TRANSETCH-Nについて、酸化シリコンやシリコンがある中で窒化シリコンや酸化アルミニウムを選択的に溶かすとしています1。同社が示す178〜180℃でのエッチ速度は、酸化アルミニウムが毎分120Å、窒化シリコンが毎分125Å、窒化ガリウムが毎分80Å、酸化シリコンとシリコンがともに毎分1Åです。この値に当てはめると、窒化膜は酸化膜の約125倍の速さで溶けます。

ウェットエッチングの中でも、薬液と対象材料の組み合わせが決まった工程です。周囲の材料とのエッチング速度差を利用し、膜の組成や成膜法、薬液の状態によって速度と選択性が変わります。エッチング選択比は高ければ十分というものではなく、実際に露出する膜の消耗量を確認します。窒化膜が消えても酸化膜が設計以上に薄くなれば、後の絶縁と形状へ影響します。

除去量は、時間だけでなく浴の温度と水分で決まる

Section titled “除去量は、時間だけでなく浴の温度と水分で決まる”
温度と水分でエッチ速度が動く
窒化膜のエッチ速度(Å/分、対数)10100約40約65125水1:薬液2で約半分160170180浴の温度(℃)
3つの資料の速さを温度順に並べると、160℃で毎分約40Å、165℃で約65Å、178〜180℃で125Åです。Transeneは、同じ温度でも水1に薬液2を加えると速さが約半分に下がるとしています。

除去量は、加熱時間だけでなく温度と水分で決まります。Transeneは、温度を10℃上げるごとにエッチ速度がおよそ2倍になるとし1、薬液2に対して純水1を加えると速度は約50%下がるとしています。薬液そのものは安定で長持ちし、使用中の手当ては、蒸発で失われた水を少量足す程度とされています。加熱で水分が変わる系では、この補充で組成を維持します。

MITの装置手順では、浴は約165℃と非常に高温で、化学量論組成の窒化シリコンを毎分約65Åで溶かすとされ2、使わないときはヒーターを切るので、エッチを始める30分前に加熱を入れる手順です。Rochester Institute of Technologyの学生研究では、160℃の熱リン酸で窒化膜のエッチ速度が毎分約4nm(40Åに相当)で、酸化膜に対する選択性とシリコン上での均一性が良かった3と報告しています。

高温のため、レジストはマスクに使いにくい

Section titled “高温のため、レジストはマスクに使いにくい”

この温度に耐えられない材料があるので、マスクの選び方が限られます。Transeneは、多くのフォトレジストは推奨温度に耐えられない場合があるとし1、堆積した酸化膜を窒化膜のマスクにすると最もよく働くとしています。MITの手順はさらに踏み込み、この浴を窒化膜の剥離用で、パターンを付けるエッチには向かない2と位置づけ、フォトレジストをマスクに使わず、窒化膜のパターン形成はドライエッチングの装置で行うよう定めています。

フッ素を含まないことも、この薬液の性格を決めています。Transeneは、TRANSETCH-Nがフッ化物を含まず、フッ素系のエッチャントと違ってアンダーカットが小さいので、エッチ時間の選び方に大きな余裕が取れるとしています。リン酸を含む金属エッチャントもありますが、薬液名だけでSiN除去と同じ用途には扱いません。

仮に置いた窒化膜を、後で抜く工程で使われる

Section titled “仮に置いた窒化膜を、後で抜く工程で使われる”

窒化膜を「置いて、後で抜く」工程で、この選択性が効きます。Rochester Institute of Technologyの研究は、Si3N4の型で仮のゲートを作り、ソースとドレインを形成した後で金属に置き換える方法を扱い、その型の形成に160℃の熱リン酸エッチを使いました。仮のゲートを金属に置き換える考え方は、置換メタルゲートと同じです。

3D NANDでも、酸化膜と窒化膜を交互に積んだ後に窒化膜だけを抜いてワード線の金属に置き換えます。この置換では、積層の中の窒化膜を熱リン酸で横方向に溶かして取り除く工程が特許に示されています。マスクの下へ回り込む性質は、パターン転写では欠点でも、層の間の膜を抜く工程では役に立ちます。

管理するのは、窒化膜の残りと下地の消耗

Section titled “管理するのは、窒化膜の残りと下地の消耗”

手順は、対象膜と下地を確認し、薬液の温度と組成を整え、必要な除去を行い、リンスと乾燥の後に窒化膜の残りと下地を測定する順です。管理項目は温度、水分と濃度、処理時間、膜の組成、負荷、下地の消耗と汚染です。除去前後の膜厚とパターンを測り、窒化膜が残っていないことと、酸化膜が設計以上に薄くなっていないことの両方を確かめます。

除去を速める条件は、下地の消耗と浴の安定性も変えます。対象の膜質、残す材料、組成制御を合わせて工程窓を決めます。

熱リン酸SiNエッチは何をする工程ですか?

加熱したリン酸系薬液でシリコン窒化膜を選択的に除くウェット工程です。Transeneの薬液では、178〜180℃で窒化膜が毎分125Å溶け、酸化膜とシリコンは毎分1Åにとどまります。残す酸化膜やシリコンへの消耗も確認して条件を決めます。

どの段階で行いますか?

窒化膜を全面で剥がす工程や、仮に置いた窒化膜を取り除く工程で使います。手順は、対象膜と下地を確認し、薬液の温度と組成を整え、必要な除去を行い、リンスと乾燥の後に窒化膜の残りと下地を測定する順です。

何を管理しますか?

温度、水分と濃度、処理時間、膜の組成、負荷、下地の消耗と汚染を管理します。Transeneは速さが温度10℃ごとにおよそ2倍になり、水を加えると下がるとしているので、浴の温度と蒸発した水の補充が中心になります。

3件を表示
  1. 1
    Transene Alumina and silicon nitride etchanttransene.com ・ 2026年10月12日閲覧 abc
  2. 2
  3. 3