材料・表面分析とは
材料・表面分析とは、X線・電子・イオンを試料に当てて出てくる電子やイオン、X線を測り、膜や表面、界面にある元素の種類と量、化学結合状態を調べる手法の総称です。 半導体工場では、膜の組成、ウェーハ表面の汚染、欠陥の正体を特定するときに使います。
難しいのは手法の選び方です。1つの手法でわかる範囲は限られ、MSTの仕様では、検出深さは最表面の1原子層を測るTOF-SIMSから数μm〜数mmまで届くXRFまで開き、検出下限もppbから数atomic%まで開きます。感度の高いSIMSは試料を削る破壊分析で、0.1nmφまで絞れるTEM-EDXは試料を薄片にする必要があり、非破壊のXRFは検出下限が0.11wt%程度です。このため、目的に合わせて手法を組み合わせます。
当てる粒子と出てくる粒子の組み合わせで、得られる情報が決まる
Section titled “当てる粒子と出てくる粒子の組み合わせで、得られる情報が決まる”アルバック・ファイの解説によると、表面分析は光・X線・電子で表面を刺激し、表面だけから出てくる電子やイオンを調べて化学構造を明らかにします1。表面の数原子層を測るため、試料は十億分の1気圧以下の超高真空の中に入れます。数十〜数百nmの少し深い領域は、Arイオンなどで表面を削っては測る深さ方向分析で調べます。
代表的な手法の入射と信号は次のとおりです。XPSはX線を当てて光電子を、AESは電子線を当ててオージェ電子を、SIMSとTOF-SIMSはイオンを当てて二次イオンを測ります。MSTの解説では、EDXは電子線で、XRFはX線で内殻電子をはじき出し、外殻電子が内殻へ移るときに出る元素固有のX線を測ります。
XPSは表面約2〜8nmの化学結合状態を、検出下限1atomic%程度で調べる
Section titled “XPSは表面約2〜8nmの化学結合状態を、検出下限1atomic%程度で調べる”XPSは、照射したX線のエネルギーと光電子の運動エネルギーから束縛エネルギーを求め、元素とその化学結合状態を特定します。MSTの仕様では、検出深さは約2〜8nm(通常4〜5nm)、検出下限は1atomic%程度、測定領域は7.5〜200μmφで2、非破壊で測れます。適用例には、プラズマエッチング面の化学状態や生成物、ウェーハ表面の洗浄効果、SiON膜などSi酸化膜の酸化度と膜厚の測定が並びます。
アルバック・ファイの解説によると、XPSで観測される化学シフトはAESより大きい場合が多く、化学結合状態を比較的容易に見分けられます。より深い領域はイオンスパッタと測定を交互に繰り返して深さ方向プロファイルを得ます3。同社は、多くの半導体メーカーがボンディングパッドの組成をXPSで監視しているとしています。
SIMSはppb〜ppmの不純物を深さ方向に追い、TOF-SIMSは最表面の1原子層を測る
Section titled “SIMSはppb〜ppmの不純物を深さ方向に追い、TOF-SIMSは最表面の1原子層を測る”SIMSは、酸素やセシウムの一次イオンで表面をスパッタし、飛び出した二次イオンを質量分析します。MSTによると、検出下限はppb〜ppm、深さ方向分解能は数〜数十nmで4、試料を削る破壊分析です。イオン注入元素の深さ分布、積層膜界面の汚染や膜中不純物、半導体中の不純物の二次元・三次元分布の測定に使います。アルバック・ファイは、500eVで打ち込んだホウ素の分布を500eVの酸素イオンで削りながら求めた極浅接合の例を挙げています。
TOF-SIMSは一次イオンの量を抑えて、表面の分子の構造を保ったまま二次イオンを出します。アルバック・ファイによると、照射する一次イオンはおよそ10の12乗 ions/cm2以下で、シリコン表面の原子数10の15乗 atoms/cm2より少なく、ほぼ非破壊です5。MSTの仕様では検出深さは最表面の1原子層または1分子層で、アルバック・ファイも情報深さを1nm以下としています。MSTの検出下限はppmレベルで、Siウェーハ上のウォーターマークを定性分析した例も載っています。
TEM-EDXは0.1nmφの電子線で断面の元素を調べ、試料を薄片にして測る
Section titled “TEM-EDXは0.1nmφの電子線で断面の元素を調べ、試料を薄片にして測る”TEMは薄片にした試料に電子線を当て、透過・散乱した電子で像を作ります。MSTの仕様では空間分解能は0.07nmからで、通常の試料の厚さはFIB法で約0.1μmです。像に写るのは個々の原子より、厚さ方向に平均した情報です。
TEMに付けたEDXは、0.1nmφからの細い電子線で微小領域の元素を調べ、検出下限は点分析で0.5atomic%程度です6。面分析は1点あたりの測定時間が点分析より極端に短いため、検出下限が劣ります。MSTは適用例として、RIEやウェットエッチングの残渣、Niシリサイドの形状、注入元素の偏析を挙げています。AESも電子線を細く絞れるので、MSTの仕様では空間分解能8〜200nmで、デバイス上の数十nm〜サブミクロンの異物の元素を特定します。
TXRFはウェーハを壊さずに測り、Rigakuの装置は鉄やニッケルを1E9 atoms/cm2台まで検出する
Section titled “TXRFはウェーハを壊さずに測り、Rigakuの装置は鉄やニッケルを1E9 atoms/cm2台まで検出する”全反射蛍光X線分析(TXRF)は、X線を表面すれすれの角度で全反射させて基板からの散乱を抑え、ウェーハ表面の金属汚染を非破壊で測ります。ユーロフィンは用途として、洗浄後に残るFe、Ni、Cu、Znの監視、成膜・エッチング・イオン注入装置に由来する汚染の管理、受け入れウェーハの清浄度の検査7を挙げています。
RigakuのTXRF 310Fabは、洗浄、リソグラフィ、エッチング、アッシング、成膜など工場の全工程の汚染を測れるとうたう300mm対応の装置で、真空中のウェーハ搬送ロボットを備えます。同社の仕様表に載る検出下限は、Fe・Niが0.1E10 atoms/cm2、Cuが0.15E10 atoms/cm2、Na・Alが25E10 atoms/cm2です8。一方、通常のXRFは、MSTの仕様で検出深さが数μm〜数mm、検出下限が0.11wt%程度で、ウェーハ上の金属膜の膜厚分布の測定などに使います。
欠陥検査が見つけた位置を受け取り、異物が何でできているかを特定する
Section titled “欠陥検査が見つけた位置を受け取り、異物が何でできているかを特定する”材料・表面分析は、欠陥検査で見つかった場所の正体を調べる役も担います。MSTはTEM-EDXの適用例に、KLAの欠陥検査装置で特定されたウェーハ欠陥箇所の異物解析を挙げ、TOF-SIMSは異物検査装置の座標データと連携できるとしています。
アルバック・ファイの解説では、AESで50nmの異物がアルミニウムだとわかり、FIBで断面を出した埋没異物は二酸化ケイ素がケイ素に覆われたものでした9。この結果から、異物がポリシリコン工程で発生してタングステン工程を経たと判明しています。同社は、微細化で小さな欠陥が問題になり、光学的な検出とEDXによる従来法では極薄膜や極微細欠陥を見つけて同定するのが難しくなったと書いています。完成品の不良原因を調べる故障解析でも、TEMは特定箇所の解析に使われます。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”材料・表面分析とは何ですか?
X線・電子・イオンを試料に当て、出てくる光電子、オージェ電子、二次イオン、X線のエネルギーや質量から、膜や表面、界面にある元素の種類と量、化学結合状態を調べる手法の総称です。XPS、AES、SIMS、TOF-SIMS、TEM-EDX、XRF、TXRFなどがあります。
XPSとSIMSはどう使い分けますか?
MSTの仕様では、XPSは深さ約2〜8nmの元素と化学結合状態を検出下限1atomic%程度で調べ、非破壊で測れます。SIMSは試料を削りながらppb〜ppmの微量元素を深さ方向に追う破壊分析で、イオン注入元素の分布や積層膜界面の汚染の測定に使います。
最表面の汚染はどの手法で調べますか?
TOF-SIMSは最表面の1原子層または1分子層の元素と分子をppmレベルで検出でき、有機汚染の同定に向きます。ウェーハ表面の金属汚染は、TXRFで非破壊に測ります。
TEM-EDXの強みと試料の条件は何ですか?
0.1nmφからの細い電子線で微小な領域の元素を調べられ、エッチング残渣やシリサイド、欠陥検査で見つかった異物の解析に使います。試料を薄片にする必要があり、MSTによると検出下限は点分析で0.5atomic%程度です。
欠陥検査や故障解析とはどう連携しますか?
欠陥検査装置が見つけた位置の情報を受け取り、そこにある異物や残渣が何の元素でできているかを分析で特定します。MSTはKLAの欠陥検査装置で特定したウェーハ欠陥の異物解析をTEM-EDXの適用例に挙げ、MSTのTOF-SIMSは異物検査装置の座標データと連携します。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- 計測(メトロロジー)とは── 膜厚や寸法を製造ラインで測る工程
- 故障解析とは── 不良品の原因を特定する作業
- XPSとは── 表面の化学結合状態を測る代表的な手法
- SIMSとは── 微量不純物の深さ分布を測る手法
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- 1アルバック・ファイ:表面分析とはulvac-phi.com ↩
- 2MST:[XPS]X線光電子分光法mst.or.jp ↩
- 3アルバック・ファイ:XPSとはulvac-phi.com ↩
- 4MST:[SIMS]二次イオン質量分析法mst.or.jp ↩
- 5アルバック・ファイ:TOF-SIMSとはulvac-phi.com ↩
- 6MST:[TEM-EDX]エネルギー分散型X線分光法(TEM)mst.or.jp ↩
- 7ユーロフィン:TXRF 全反射蛍光X線分析eurofins.com ↩
- 8Rigaku:TXRF 310Fabrigaku.com ↩
- 9アルバック・ファイ:アプリケーション 半導体ulvac-phi.com ↩
- 10MST:[TOF-SIMS]飛行時間型二次イオン質量分析法mst.or.jp
- 11MST:[AES]オージェ電子分光法mst.or.jp
- 12MST:[(S)TEM](走査)透過電子顕微鏡法mst.or.jp
- 13MST:[XRF]蛍光X線分析法mst.or.jp