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スパイクアニールとは

スパイクアニールとは、最高温度での保持をほぼ0秒にして、昇りきった頂点でそのまま降温へ折り返す急速熱処理です。 頂点にとどまる時間を削るのは、その間もドーパントが拡散して接合を深くするからです。削れる熱は保持の分だけで、さらに絞ろうと頂点温度を下げると、今度はゲート電極でドーパントが活性化しきれなくなります。スパイクアニールの条件は、注入、電極材料、シリサイドの条件と組で決まります。

頂点で折り返すので、最高温度を保ったまま熱の総量が減る

Section titled “頂点で折り返すので、最高温度を保ったまま熱の総量が減る”

熱処理のレシピは、ふつう「何度で何秒保つか」で書きます。拡散炉なら数十分、ランプで1枚ずつ加熱するRTA(Rapid Thermal Annealing、急速熱処理)でも頂点で数秒から数十秒とどまります。RTAは、低温かつ短時間の加熱でドーパントを電気的に活性化する技術です。スパイクアニールでは、このうち保持の欄がほぼ0秒です。

保持のあるRTAとスパイクアニールの温度履歴
保持 数秒〜数十秒ほぼ0秒で折り返す最高温度昇温降温温度時間保持のあるRTAスパイクアニール
どちらも同じ最高温度に届きますが、スパイクアニールは頂点で折り返すので、温度履歴の下の面積、つまりウェーハに与える熱の総量が保持の分だけ小さくなります。

外園明氏は、スパイクアニールを昇降温レートが短いRTA技術と位置づけ、RTAより過渡的増速拡散(Transient Enhanced Diffusion)を抑えられるため、浅くかつ低抵抗の接合を作れるとしています1。過渡的増速拡散は、注入の後の一時期に拡散が通常より速まる現象です。頂点にとどまる時間がなければ、ドーパントが動けるのは昇温と降温の間だけになります。

頂点の数秒は接合を深くし、短チャネル効果を悪化させる

Section titled “頂点の数秒は接合を深くし、短チャネル効果を悪化させる”

頂点で数秒とどまると、その間もドーパントは拡散し続けます。エクステンションは設計より深くなり、ゲートの下でソース側とドレイン側が近づきます。その結果、ゲート電圧で制御できない電流がソースとドレインの間に流れる短チャネル効果が悪化します。外園氏が報告した14nmゲート長CMOSの試作では、低温スパイクアニール、イオン注入、オフセットスペーサーの各条件を合わせて最適化し、低抵抗の極浅拡散層を作って短チャネル効果を改善しました1。

深さだけを詰めても行き詰まります。薄くなった層は電流の通り道の断面が小さく、シート抵抗が上がり、駆動電流が落ちてトランジスタは遅くなります。目標は、深さと抵抗の2つを同時に満たす点です。

2003年の試作では、注入を浅くするより頂点温度を下げるほうが低抵抗だった

Section titled “2003年の試作では、注入を浅くするより頂点温度を下げるほうが低抵抗だった”

測るのは、エクステンションの深さとシート抵抗の組です。外園氏は、この2つを軸にした平面上に、イオン注入の加速電圧を変えた条件と、スパイクアニールの温度を変えた条件を並べて比べました。

今の条件から接合をさらに浅くする方法は2つあります。スパイクアニールの温度を変えずに加速電圧を下げる方法と、加速電圧を変えずにスパイクアニールを低温化する方法です。2003年時点の試作で低抵抗の極浅接合が得られたのは後者でした。加速電圧を下げる方法では、基板からドーパントが外へ抜ける外方拡散が進み、シート抵抗が高くなったためです。

接合を浅くする2つの方法
シート抵抗高い低い浅い深いエクステンションの深さ低抵抗の極浅接合いまの条件加速電圧を下げる外方拡散で高抵抗頂点温度を下げる
同じ浅さをねらっても、加速電圧を下げる道は外方拡散でシート抵抗が上がり、頂点温度を下げる道は低抵抗のまま極浅接合に届きました。

低温化はゲート電極を空乏化させ、電極とシリサイドの材料を換えさせる

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接合の側で熱を削ると、ゲート電極の側で熱が足りなくなります。外園氏によると、極浅の拡散層を作るにはスパイクアニールの低温化が必要な一方、そのときゲート電極の空乏化が起きます。ゲート電極の中でドーパントの活性化濃度が下がり、ゲート酸化膜にあたるゲート絶縁膜の近くに空乏層ができる問題です。2003年時点の検討では、酸化膜換算膜厚が1.0nmの領域で、この空乏層の厚みがオン電流劣化の主要因になります。

低温スパイク後のゲート電極
多結晶Siゲート空乏層多結晶SiGeゲート空乏化を抑制多結晶Si多結晶SiGe空乏層ゲート絶縁膜エクステンション基板
低温のスパイクでは多結晶Siゲートの底に空乏層ができ、オン電流を落とします。ゲートを多結晶SiGeに換えると、同じ低温条件でもドーパントの活性化が進んで空乏化が抑えられます。

外園氏の対策は材料の交換でした。ゲート電極を多結晶シリコンから多結晶シリコンゲルマニウム(poly-SiGe)に換えると、低温のスパイクアニール条件でもゲート電極中のドーパントの高活性化が実現し、空乏化が抑えられました1。さらに、800℃程度の高い相転移温度が必要なCoサリサイドに代えて、500℃以下でシリサイドを形成できるNiサリサイドを使い、シリサイド形成後の工程温度を大きく下げています。

熱を削る決定は、電極の材料、シリサイドの種類、注入の条件を一緒に動かす決定です。頂点温度を1つ下げるたびに、隣の工程の条件表が動きます。

頂点で折り返す装置は、降温の速さと温度のそろい方で差がつく

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ジェイテクトサーモシステムのシリコンウェーハ用ランプアニールシステムRLA-3100は、Φ100〜200mmのウェーハに対応し、シリコンウェーハで最大200℃/秒で昇温できます2。常用温度は400〜1200℃、方式は枚葉で、対応プロセスにドーパント活性化のためのアニールが含まれます。同社はハロゲンランプの配置を最適化して面内の温度均一性を高め、冷却機構を強化して降温時間を従来装置比で33%短縮したとしています。研究開発向けの卓上型DTL-6の昇温速度は最大100℃/秒です3。

降温を性能として書く点に、スパイクアニールの性格が出ています。頂点で折り返す工程では、頂点に届いた瞬間から下りが始まり、下りにかかる時間はそのまま熱の総量、つまり熱バジェットに積み上がります。昇温だけ速くしても、降温が追いつかなければ三角の片側だけが尖った形になります。

面内の温度均一性も同じ理由で結果を左右します。保持のある炉なら、多少の温度差は保持の間にならされます。頂点で折り返すスパイクアニールでは、ウェーハ面内の温度差がそのまま接合の深さとシート抵抗のばらつきへ移ります。Mattsonは、ランプRTP装置Helios XPについて、ウェーハごとに異なる放射率を能動的に補正する温度測定・制御系4を備えるとしています。同社は表と裏の両面から加熱する方式を採り、片面加熱に伴うリソグラフィのデフォーカスの問題を解消するとしています。温度範囲は、超低温のNiSiアニールから超高温のウェーハ加工までを含む200〜1300℃です。

秒の加熱は、炉とミリ秒アニールの間にある

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ランプで加熱するRTPについて、Mattsonは高輝度ランプでシリコンウェーハを1200℃以上まで加熱し、デバイスの電気的特性を決める工程4と説明し、自社の熱処理製品がソーク、スパイク、ミリ秒フラッシュまでの急速アニールをそろえるとしています。スパイクアニールは、ランプで1枚を秒のオーダーで昇温するRTAの延長線上にあり、その中で保持を0秒まで詰めた形です。

熱をさらに絞るなら、レーザアニールのようにミリ秒以下で表面だけを加熱する方式があります。秒とミリ秒は1台の中でつながることもあり、Mattsonは自社のミリ秒アニール装置がスパイクアニールとフラッシュのミリ秒アニールを統合したプロセスに対応し5、ウェーハの熱応力を管理して割れを防ぐとしています。アニール装置は、加熱時間の桁ごとに供給元が分かれています。

アルバック販売の赤外線ランプアニール装置RTAシリーズは、2インチから300mmまでのウェーハを短時間で加熱でき、保持まで10秒とうたい6、用途に活性化アニールやシリサイド形成・サリサイド形成を挙げています。炉の側では、アニールは成膜と同じ装置系列に並びます。KOKUSAI ELECTRICグループの成膜プロセス装置は、減圧下での化学気相成膜と酸化と拡散、原子層の単位で積む成膜、そして低温と高温それぞれのアニールを受け持つとしています7。多数枚をまとめる炉と、1枚ずつ短時間で加熱するランプが、温度と時間の要求で使い分けられます。

スパイクアニールとは何ですか?

最高温度での保持をほぼ0秒にして、昇りきった頂点でそのまま降温へ折り返す急速熱処理です。外園明氏は、昇降温レートが短いRTA技術と位置づけています。

ふつうのRTAとどう違いますか?

頂点にとどまる時間が違います。RTAは頂点で数秒から数十秒とどまり、スパイクアニールはその時間をほぼ0秒にするので、温度履歴が台形から尖った三角に変わります。

なぜ保持を0秒にするのですか?

頂点にとどまる間もドーパントが拡散し、接合が設計より深くなるからです。外園氏は、スパイクアニールならRTAより過渡的増速拡散を抑えられ、浅く低抵抗の接合を作れるとしています。

現場では何を測って条件を決めますか?

エクステンションの深さとシート抵抗を組で測ります。2003年時点の試作では、この2つを軸にした平面上で、イオン注入の加速電圧を下げるよりスパイクアニールを低温化するほうが低抵抗の極浅接合になりました。

低温にするほど良いのですか?

下げすぎるとゲート電極が空乏化します。ゲート電極の中でドーパントの活性化濃度が下がり、ゲート絶縁膜の近くに空乏層ができるためで、外園氏の報告ではゲート電極を多結晶シリコンゲルマニウムに換え、Niサリサイドと組み合わせてこの問題を抑えました。

装置ではどの仕様を確かめますか?

昇温レート、降温時間、面内の温度均一性です。ジェイテクトサーモシステムはRLA-3100について、シリコンウェーハで最大200℃/秒の昇温に対応し、冷却機構の強化で降温時間を従来装置比33%短縮したとしています。

レーザアニールとどう使い分けますか?

加熱時間の桁が違います。スパイクアニールはランプで1枚を秒のオーダーで昇温するRTAの延長にあり、レーザアニールはミリ秒以下で表面だけを加熱するので、熱をより絞りたい工程ほど短い側が選ばれます。

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    KOKUSAI ELECTRIC:製品kokusai-electric.com ↩