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ドーパント活性化とは

ドーパント活性化とは、半導体に導入した不純物を、電子や正孔を供給する状態にすることです。 イオン注入の直後は、一部の原子が格子間位置や複合体にあり、母結晶にも損傷が残ります。熱処理で格子を回復し、置換位置で電離してキャリアを供給するドーパントを増やします。ただし活性化に要る熱は、同時にドーパントを深く広げます。先端デバイスは高温を保ったまま時間をミリ秒程度へ縮め、両者を両立させています。

熱処理は、乱れた格子を組み直してドーパントを置換位置へ収める

Section titled “熱処理は、乱れた格子を組み直してドーパントを置換位置へ収める”
注入直後とアニール後の格子
注入直後アニール後空孔格子間のSi格子間のドーパント活性化アニール+置換位置電子Si原子
注入直後は空孔、格子間のSi、格子間のドーパントが残ります。活性化アニールで格子が組み直され、置換位置に入ったドナーが電離して電子を供給します。

イオン注入は原子を打ち込む工程で、導入量と電気的に働く量を分けて扱います。注入した原子は物質中の電子や原子と衝突してエネルギーを失い停止し1、衝突されたシリコン原子は格子を離れて格子間原子となり、もとの場所に空孔ができます。この空孔(Vacancy)と格子間原子(Interstitial)は、1個のイオン注入で数100から数万個発生します2。ドーパントの一部も格子間位置や複合体に止まり、乱れたままでは置き換わる先の位置が定まりません。

注入したイオンをドナーやアクセプタとして働かせるには、注入原子を格子位置に入れる必要があります1。熱処理が引き受ける仕事は2つで、弾き飛ばされたシリコンと空孔を再び組み合わせて格子を整えることと、打ち込んだドーパントをシリコン原子と置き換わる位置へ収めることです。2つは同じ熱処理の中で進み、この熱処理を活性化アニールと呼びます。置換位置に入った原子のうち、電離した分が電子や正孔を供給します。

高濃度で打ち込んだ場合は道筋が別になります。注入領域の結晶性がくずれてアモルファス(非晶質)になると、活性化アニールでアモルファスと単結晶の界面から固相成長が進み、結晶化と同時にドーパントが格子位置へ入ります。深い側に生き残った単結晶が鋳型になり、そこから表面へ向かって結晶が伸びていきます。低濃度なら点欠陥の回復、高濃度なら界面からの再結晶と、同じ「活性化アニール」という語の下で2つの機構が使い分けられています。

温度を上げるほど活性化率は上がり、ドーパントも深く広がる

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打ち込んだうち、電気的に働く状態になった割合を活性化率と呼びます。活性化アニールの温度が高いほど活性化率は上がりますが、同時にドーパントが深さ方向へ拡散します1。高温で長く保持すると原子の再配置が進む一方、拡散と失活反応も進みます。ドーパントが広がって接合が深くなると狙った寸法を超え、微細化が進むほどこの広がりが許されなくなります。

答えは、熱を短時間で与えることです。RTPのように昇温と降温を速くすれば、活性化に要る高温を確保しつつ、拡散が進む時間を短く抑えられます。さらに短い時間で局所を加熱する手段としてレーザアニールがあり、Veecoはレーザースパイクアニール装置LSA1013を製品にしています。KOKUSAI ELECTRICは、低温と高温の両方のアニール技術に対応した装置4を提供しています。先端デバイスでは、拡散の抑制と活性化を両立させるために高温でミリ秒程度の短時間処理が用いられます。

時間を1/100にすると、拡散長は1/10になる

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熱処理時間と拡散長
拡散長(対数)熱処理時間(対数)11/10約1/3211/1001/1000秒オーダーミリ秒オーダー
拡散長は時間の平方根で伸びるので、両対数では1本の直線にのります。秒オーダーを1とすると、時間1/100で拡散長は1/10、ミリ秒オーダーの約1/1000でおよそ1/32です。

拡散長LLはDt\sqrt{Dt}(DDは拡散係数、ttは熱処理時間)で5、DDは温度の関数であり、拡散粒子と物質によって決まります。拡散長が時間の平方根で伸びるので、温度を保ったまま時間を1/100にすると、拡散長は1/100\sqrt{1/100}、つまり1/10になります。秒オーダーの熱処理をミリ秒オーダーへ縮めれば時間は約1/1000で、拡散長はおよそ1/32です。

温度を下げると結晶回復や原子の再配置も遅くなります。温度を上げ過ぎたり長く保ったりすると、今度は拡散と失活が進みます。必要な回復と再配置を得られる温度域で時間を削り、接合の広がりを抑えるのが基本の考え方です。

注入後の拡散には割り増しもあります。過剰な格子間シリコンからなる{311}欠陥との相互作用によってドーパントが異常拡散する現象を、過渡増速拡散(TED:Transient Enhanced Diffusion6)と呼びます。活性化のために入れた熱が、注入で作った格子間原子を経由して拡散を加速するため、熱処理条件の設計が難しくなります。注入のあとの酸化やシリサイド化でも過剰な格子間シリコンが供給され、ドーパントがそのシリコンと対になって通常より速く拡散します。

平衡固溶度は活性濃度の目安で、短時間処理は準安定な状態を残す

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濃度が高いほど活性化率は頭打ちになりやすく、ドーズ量を増やしても活性化率が低ければ狙った抵抗より高いままです。注入条件と熱処理条件は組で設計します。

頭打ちの一因は固溶度です7。ある温度で固相に平衡溶解できる不純物濃度を指し、温度によって決まります。Siで一般に使うB、P、Asは固溶度が大きく、固溶度を超えて入れた原子は格子間に析出します。平衡へ近づくまで加熱すると、準安定に残っていたドーパントの配置が変わることがあります。Si:Pの一例では、ミリ秒レーザー活性化後の二次加熱で点欠陥を介したクラスターが再形成する機構8による失活が提案されています。ドーズを増やしても、キャリア濃度が同じ割合で増えない場合があります。

急速な再結晶化では、原子の再分配が終わる前に準安定な状態を残せます。Seを注入したSiでは、固相の再成長でも平衡固溶度を超える取り込み9が得られています。この溶質捕獲で残った元素量と、電気的に働くキャリア量は別々に測ります。

平衡固溶度は温度で変わり、同じ温度上昇は結晶回復、原子の再配置、拡散、失活反応をそろって速めます。Si:Pでは、後工程の加熱で総ドーパント分布がほぼ変わらないまま活性濃度が下がる例があります8。活性化条件は最高温度に加え、保持時間、昇降温、後工程の熱履歴まで一組で設計します。

総ドーパント濃度とキャリア濃度は、別の装置で測る

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SIMSとSR法の深さ分布
濃度(対数)深さ比から活性化率SIMS 総ドーパント濃度SR法 キャリア濃度
SIMSは打ち込んだ原子がどの深さに何個あるかを、拡がり抵抗法は働いているキャリアがどの深さに何個あるかを返し、2本の比から活性化率を求めます。

活性化の度合いは、シート抵抗、SIMS、拡がり抵抗法の3つで測ります。1つ目はシート抵抗で、イオン注入で形成した拡散層などの薄い膜の電気抵抗10を表し、単位はΩ/sqです。測定には四探針法を使い、直線状に配置した4本の針のうち外側2本に電流を流し、内側2本の電位差を測って抵抗を求めます。抵抗率計メーカーのナプソンは、自社の4探針プローブ11が針間1mmに対して測定スポット3mm程度で、JIS H 0602-1995(シリコン単結晶及びシリコンウェーハの4探針法による抵抗率測定方法)やASTM F 374-00a(イオン注入層などのシート抵抗)に準拠するとしています。シート抵抗はイオン注入層の濃度と深さの両方に依存するため、イオン注入装置のQC法として広く用いられています。

2つ目はSIMS(二次イオン質量分析法)です。酸素やセシウムのイオンをプローブとして試料へ入射し、スパッタされた原子を質量分析して12、材料中の物質を定量解析します。試料を深さ方向へスパッタしながら測るため深さ分布が得られ、イオン注入分布やその後のアニールによる拡散状態を調べるために広く用いられます。

3つ目は拡がり抵抗法(SR法、Spreading Resistance)です。斜めに研磨した試料の面に立てた2本の針の間の抵抗から比抵抗を求め13、比抵抗とキャリア移動度の関係からキャリア濃度を算出します。SIMSによる注入イオンの分布と合わせると、活性化率が求まります。この比には、補償、未電離、移動度モデル、測定の深さ分解能も入ります。置換格子位置にいる割合とキャリア濃度9を分けるには、RBS/チャネリングなどの構造計測を組み合わせます。日常管理ではシート抵抗を使い、条件を組み直すときに化学、構造、電気の測定を分けて確かめます。

シート抵抗が下がらない原因は、固溶度、結晶回復、二次欠陥の3つ

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シート抵抗が目標値より高いところで止まったときの原因は、3つに分かれます。

1つ目は、固溶度と失活反応です。平衡へ近づく条件では固溶度が活性濃度の目安になり、短時間処理で残した準安定な活性状態は後工程の熱で失われることがあります。ドーズを増やしてもシート抵抗が下がらない場合は、最高温度だけでなく、保持時間、昇降温、初期欠陥、後工程の熱履歴が見直しの対象になります。

2つ目は、結晶の回復が途中で足踏みしている場合です。高濃度注入でアモルファス化した領域は、界面からの固相成長が表面まで届いて初めて格子位置が揃います。結晶性は、数MeVの水素やHeイオンを入射して後方散乱粒子の個数とエネルギーを測る14RBSで、深さ数μmまでの領域を調べられます。結晶のチャネル方向から入射すると、格子間原子や不純物原子がある分だけ後方散乱の確率が増えるため、結晶性を評価できます。この技術で結晶回復過程の解明が行われています。

3つ目は二次欠陥です。熱処理によって発生する結晶欠陥を二次欠陥15と呼び、過剰な格子間原子による転位ループなどがあります。高濃度イオン注入でアモルファス層が形成された場合、これらの欠陥は注入の飛程より少し深い位置であるアモルファスと単結晶の界面に発生するため、EOR(End of Range)欠陥と呼ばれます。二次欠陥はキャリアの生成再結合中心となり、接合リーク電流を引き起こします。シート抵抗は下がったのにリーク電流が増えた、という症状の原因がここです。

材料がSiCになると、3つ目がさらに重くなります。SiC基板では、イオン注入時に発生した欠陥はその後の高温アニールでも回復しにくく16、抵抗の増大を引き起こします。これを避けるために基板温度を500℃程度へ加熱して注入することが多く、特に高濃度のAl(アルミニウム)イオン注入では高温注入が必須です。マスク材料には、この温度に耐えるSiO2などのハードマスクを使います。SiCの活性化は、アニールより前の注入時の基板温度で勝負が決まっています。

活性化アニールの温度は、350℃から1900℃まで材料で桁が変わる

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材料ごとの温度
LTPS 活性化350℃SiC 注入時の基板500℃程度SiC 活性化アニール1900℃1,500℃以上の幅01000温度(℃)
LTPSの活性化は350℃程度、SiCは注入時に500℃程度へ加熱し、活性化アニールは1900℃に及びます。同じ「活性化」の語が1,500℃以上の幅にまたがります。

Siの先端デバイスは、高温でミリ秒程度という方向です。ウシオ電機はフラッシュランプ17の用途として「Si、SiC基板の活性化アニール」と「極浅接合層形成」を挙げ、パルス幅を制御することで加熱深度をコントロールし、基板の熱ダメージを最小限に抑えて表層のみ加熱できるとしています。フラッシュランプの光加熱は、物質の反射・透過・吸収の特性のうち吸収を使って試料を自己加熱させる方式で、非接触なのでクリーンな雰囲気を保ち、大気中でも真空中でも加熱できると同社はしています。

SiCでは温度の桁が上がります。ジェイテクトサーモシステムは、活性化アニール装置VF-5300HLPを常用温度1900℃に対応可能なイオン注入後の活性化アニール装置としており18、8インチ100枚(VF-5300HLP)と50枚(VF-3000HLP)のバッチ構成をそろえています。同社のプロセス一覧では、高温イオン注入、カーボンキャップ成膜、活性化アニールがこの順で並びます。活性化アニールの前にカーボンキャップ成膜が入る点が、Siの流れとの差です。

もう一段低い側もあります。LTPS(低温ポリシリコン)のTFT形成では、イオンドーピング後の活性化プロセスのアニール温度は350℃程度で19、アモルファスシリコン膜を多結晶へ変える結晶化のアニールとは異なります。350℃のガラス基板から1900℃のバッチ装置まで、同じ「活性化」という語が1,500℃以上の幅にまたがって使われています。活性化の条件は語ではなく材料と工程で決まり、取り違えると桁がずれます。

ドーパント活性化とは何ですか?

半導体に導入した不純物を、電子や正孔を供給する状態にすることです。イオン注入後は格子の回復とドーパントの再配置を熱処理で進め、置換位置で電離してキャリアを供給する分を増やします。

打ち込んだ直後の原子はなぜ電気的に不活性なのですか?

一部のドーパントが格子間位置やクラスターにあり、注入損傷も残るためです。1個のイオンで空孔と格子間原子が数100から数万個でき、熱処理で結晶を回復してドーパントを置換位置へ移します。置換位置の原子でも、未電離や補償の分はキャリアを供給しません。

活性化率とは何ですか?

打ち込んだドーパントのうち、電気的に働く状態になった割合です。アニール温度が高いほど活性化率は上がりますが、濃度が高いほど頭打ちになりやすく、ドーズ量を増やしても狙った抵抗まで下がらないことがあります。

活性化と拡散の関係は何ですか?

活性化と拡散は同じ熱履歴に左右されます。アニール温度を上げると活性化率は上がりますが、ドーパントも深さ方向へ拡散します。得られる活性キャリア濃度は、温度と時間に加え、初期欠陥や後工程の熱履歴でも変わります。

どうやって両立させますか?

熱を短時間で与えます。RTPやレーザアニールのように昇温と降温を速くすれば、活性化に要る高温を確保しつつ、拡散が進む時間を短く抑えられます。先端デバイスでは高温でミリ秒程度の熱処理が用いられ、Veecoのレーザースパイクアニール装置LSA101がその例です。

装置は何を使いますか?

炉、RTP、レーザアニール、フラッシュランプを用途で使い分けます。KOKUSAI ELECTRICは低温と高温の両方のアニール技術に対応した装置を提供し、SiC向けにはジェイテクトサーモシステムが常用温度1900℃のバッチ装置を出しています。

活性化率はどうやって測りますか?

SIMSで総ドーパント濃度を、拡がり抵抗法(SR法)でキャリア濃度の深さ分布を測り、両者を重ねて活性化率を求めます。その比には補償や未電離、移動度モデルも入ります。置換格子位置にいる割合はRBS/チャネリングなどで別に測ります。

濃度を上げても活性化率が頭打ちになるのはなぜですか?

クラスターや欠陥との複合体などが形成され、不活性化することがあるためです。固溶度を超えて入れた原子は格子間に析出します。固溶度は濃度の目安で、活性化率という比率とは別の量です。急速な再成長では平衡を超える準安定な取り込みも起こり、後工程の熱で活性状態が失われることがあります。

時間を短くすると拡散はどれだけ抑えられますか?

拡散長Lは√(Dt)(Dは拡散係数、tは熱処理時間)で、時間の平方根に比例します。温度を保ったまま時間を1/100にすれば拡散長は1/10に、秒オーダーをミリ秒オーダーへ縮めて約1/1000にすれば、およそ1/32になります。

EOR欠陥とは何ですか?

高濃度のイオン注入でアモルファス層ができた場合に、熱処理の後にアモルファスと単結晶の界面へ生じる二次欠陥です。注入の飛程より少し深い位置に発生するためEOR(End of Range)欠陥と呼ばれ、キャリアの生成再結合中心となって接合リーク電流を引き起こします。

SiCの活性化アニールはSiと何が異なりますか?

温度の桁が異なります。ジェイテクトサーモシステムのSiCパワー半導体向け活性化アニール装置VF-5300HLPは常用温度1900℃に対応し、プロセスの流れでは高温イオン注入とカーボンキャップ成膜の後に活性化アニールが入ります。注入時の欠陥が高温アニールでも戻りにくいため、注入そのものを500℃程度で行うことが多いです。

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    KOKUSAI ELECTRIC:製品kokusai-electric.com ↩
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