気相ドーピングとは
気相ドーピング(Gas Phase Doping)とは、ウェーハをドーパントガスへ一定時間さらした後にガス供給を止め、表面へ吸着した分子を拡散源としてRTPで不純物を導入するRTVD/RVD工程です。 拡散源は表面に吸着した分子だけで、その量が少ないことが、この工程の性格を決めています。高ドーズを入れる通常の熱拡散に対し、気相ドーピングは低ドーズの浅い接合をつくる側の方法です。広い面や立体構造へ原料を届けられる一方、熱による拡散が分布を広げるので、浅さを保つ条件と必要な濃度を得る条件の両立が課題になります。
ガスにさらし、止めてから、吸着した分子だけを熱で押し込む
Section titled “ガスにさらし、止めてから、吸着した分子だけを熱で押し込む”略称はRTVD(Room Temperature Vapor Deposition)とRVD(Rapid Vapor-phase Doping)です1。手順は、最初にウェーハをドーパントガスへ一定時間さらし、表面へ分子を吸着させます。次にガス供給を止めてからRTPへ移り、ウェーハ表面に吸着したガス分子を拡散源としてドーピングが行われます1。熱処理の間は新しい原料が供給されないので、吸着量と熱処理が、材料内へ取り込む量と深さを変えます。原料を供給し続ける成膜とは、この点で条件の管理が分かれます。
SEAJは、通常の熱拡散が高ドーズの拡散用であるのに対して、吸着量が少ないので低ドーズの浅い接合を形成できるとしています1。
ガスを流しながら短時間で拡散させても、150 nmの接合ができる
Section titled “ガスを流しながら短時間で拡散させても、150 nmの接合ができる”ガスを止めずに、ドーパントガスの雰囲気の中で急速熱拡散させるやり方もあります。IBM Researchは、アルシンまたはターシャリーブチルアルシン(TBA)を使った気相の急速熱拡散で、短い処理時間で浅いヒ素の接合をつくりました2。ヘリウムで3.6%に薄めたアルシンの760 Torrの雰囲気で、1100℃で60秒拡散すると、接合の深さは150 nmで、シート抵抗の測定値は100 Ω/□でした。アルゴンで10%に薄めたTBAの10 Torrの雰囲気で、900℃で12分拡散しても浅い接合ができ、シリコン表面のヒ素濃度は1×10²⁰ atoms/cm³を超え、シート抵抗は244 Ω/□でした。
損傷の少なさも報告されています。TEMの断面観察では、気相ドーピングの接合にプロセス起因の損傷は見られませんでした2。
管理するのは分圧、温度、時間、表面状態
Section titled “管理するのは分圧、温度、時間、表面状態”管理する条件は、原料分圧、温度、処理時間と表面状態です。ヒ素の2条件でも、760 Torrと10 Torr、3.6%と10%、1100℃と900℃、60秒と12分と、圧力・ガス濃度・温度・時間の組み合わせが大きく違います。吸着から始める方式では、表面に何がどれだけ付くかが源の量そのものになるため、表面状態も条件の一部です。
処理後は、ドーズ、深さ分布、面内均一性、結晶損傷、活性化後の電気特性を確認します。供給した不純物量と、電気的に働く不純物量は同じではありません。エネルギー・時間・表面状態と後段熱処理を対応付け、浅さと必要濃度の両方を管理します。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”気相ドーピングは何をする工程ですか?
ウェーハをドーパントガスへ一定時間さらした後にガス供給を止め、表面へ吸着した分子を拡散源としてRTPで不純物を導入するRTVD/RVD工程です。吸着量が少ないため、高ドーズ向けの通常の熱拡散とは違い、低ドーズの浅い接合形成に使います。
どの段階で行いますか?
最初にウェーハをドーパントガスへ一定時間さらし、表面へ分子を吸着させます。ガス供給を止めてからRTPへ移り、吸着分子を拡散源として浅い領域へ不純物を導入します。
どこを管理しますか?
原料分圧、温度、処理時間と表面状態を管理します。ヒ素の例では1100℃で60秒と900℃で12分の条件があり、深さ分布、シート抵抗、電気的な濃度を測って必要な接合ができたかを確かめます。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”2件を表示
- 1SEAJ 半導体製造装置用語集seaj.or.jp ・ 2026年10月12日閲覧 abc
- 2IBM Research:ヒ素の気相ドーピングによるシリコンの浅い接合research.ibm.com ab