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PIII(プラズマ浸漬イオン注入)とは

PIII(プラズマ浸漬イオン注入)(Plasma Immersion Ion Implantation)とは、基板をプラズマ中へ置き、電圧を加えて周囲のイオンを基板へ引き込む注入工程です。 遠くで作ったイオンビームを送る方法とは、加速の位置が異なります。イオンは基板のすぐ外で加速されて表面に垂直に入り、立体形状への処理や広い面積の処理に使えます。その代わり、線量と深さの分布の制御が課題になり、基板の形状、表面の電気状態、プラズマ条件を合わせて評価します。

イオンは基板のすぐ外のシースで加速され、表面に垂直に入る

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PIIIの装置は、一般に被処理物のステージを置いた真空チャンバー、プラズマ源、高電圧パルス電源で構成されます1。ドーパントガスでプラズマを作り、基板側へ高いバイアスを印加します。バイアスは電子を基板から押し返し、プラズマ中の正イオンを基板へ引き寄せるので、基板の周りにシースができます。正イオンはこのシースの電界で加速され、負の電位の表面へ垂直に注入されます。注入電流、ドーズ、不純物の分布を決めるのはこのシースで、シースから工程の条件と結果を予測できます。

シースでの加速
プラズマ源プラズマ基板シース正イオン電子高電圧パルス電源真空チャンバー
バイアスを加えた基板の周りにシースができ、電子は押し返され、正イオンはシースで加速されて、上面にも段差の側壁にも表面に垂直に入ります。

通常のイオン注入は、イオン源で作ったイオンを質量分析で選び、加速したビームとしてウェーハへ送ります。PIIIは加速の位置が基板の直前にあり、ドーパントガスでプラズマを作ってから、基板側へ電圧を印加し、基板近くのシースでイオンを加速して注入し、その後に必要な活性化処理へ進みます。プラズマを使う注入とその堆積を組み合わせた手法は、1980年代に初めて導入されて以来1、多くの応用が開発されてきました。

立体形状と広い面積に向き、DRAMのトレンチ側壁に使われてきた

Section titled “立体形状と広い面積に向き、DRAMのトレンチ側壁に使われてきた”

香港城市大学の論文は、PIIIの利点として高いスループット、大面積の処理、装置の設置面積の小ささ2を挙げています。極浅接合を作る手法としては、プラズマドーピング(PD)とも呼ばれるPIIIで、n型とp型の両方の極浅接合が実証されています。同論文が挙げる例は、ディープトレンチ型とスタックキャパシタ型のDRAMでのトレンチ側壁へのドーピング、ゲート酸化膜の処理、ポリシリコンゲートへのドーピングです。

DRAMトレンチへのドーピング
AsH3プラズマ6 µm0.175 µmバイアス 1 / 7 kVドーズ 1〜6×10¹⁶ atoms/cm²プラズマ密度 10¹⁰ cm⁻³Si基板ドーピングされる壁
深さ6µm、幅0.175µmのトレンチを同じ縮尺で描くと、溝はほぼ1本の線になります。PIIIはこの側壁へ、AsH3プラズマからドーパントを入れます。

同論文の例では、深さ6µm、幅0.175µmのトレンチが並ぶDRAMセルのアレイに、密度10¹⁰ cm⁻³のAsH3プラズマでPIIIを行っています。DRAMセルには1 kVまたは7 kVのバイアスを加え、ドーズは1×10¹⁶から6×10¹⁶ atoms/cm²の範囲です。6µmを0.175µmで割ると約34で、幅の約34倍の深さをもつ溝の壁へ打ち込む工程です。

もう1つの用途がSOI基板の製造です。水素とヘリウムのPIIIでSOIを作る工程はすでに商業生産に使われており、他の材料での層転写にも広がっています。このイオンカット工程で大事なのは水素を注入する深さで、最低限の臨界ドーズさえ入っていれば、ドーズの絶対値はそれほど重要ではありません。水素のPIIIは、イオンの平均自由行程がシースの厚さより十分長い、衝突の少ない条件にするため、一般にミリトール(0.13 Pa)かそれ以下の圧力で行います。

線量と深さは、イオン種、電圧波形、表面の電気状態で揺れる

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管理する条件は、電圧波形、プラズマ密度、イオン種、照射量です。複数のイオン種や入射方向が分布へ関わるため、単一エネルギーのビーム注入と同一視しません。

試料が絶縁物だと、表面の電気状態も効いてきます。絶縁性の試料に高い負の電位を加えても、誘電体表面の帯電で表面電位が印加したバイアスまで届かないことがあり1、シースが不規則になります。帯電の程度を主に決めるのは、パルス幅、パルス周波数、試料の誘電率と厚さです。さらに絶縁物は熱伝導が悪いため、イオンの衝突で生じる熱による変形が導体よりはるかに大きく、高分子の改質を制約する重要な問題になっています。

導体と絶縁体のシース
導体の基板絶縁体の試料導体シース表面にバイアスが届く絶縁体導体帯電で電位が届かないことがある
導体の基板では表面にバイアスが届き、シースがそろいます。絶縁体の試料では表面が帯電して電位がバイアスまで届かないことがあり、シースが不規則になります。

供給した量と、電気的に働く量は同じではない

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処理後は、ドーズ、深さ分布、面内均一性、結晶損傷、活性化後の電気特性を確認します。供給した不純物量と、電気的に働く不純物量は同じではありません。エネルギー、時間、表面状態と後段の熱処理を対応付け、浅さと必要な濃度の両方を管理します。働く量を増やす熱処理の側は、ドーパント活性化の条件として組みます。

PIII(プラズマ浸漬イオン注入)は何をする工程ですか?

基板をプラズマ中へ置き、電圧を加えて周囲のイオンを基板へ引き込む注入工程です。遠くで作ったイオンビームを送る方法とは加速の位置が異なり、イオンは基板のすぐ外のシースで加速されて表面に垂直に入ります。

どの段階で行いますか?

ドーパントガスでプラズマを作り、基板側へ電圧を印加します。基板近くのシースでイオンを加速して注入し、その後に必要な活性化処理へ進みます。

どこを管理しますか?

電圧波形、プラズマ密度、イオン種、照射量です。複数のイオン種や入射方向が分布へ関わるため単一エネルギーのビーム注入と同一視せず、絶縁物ではパルス幅や周波数で決まる表面の帯電も見ます。

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    SEAJ 半導体製造装置用語集seaj.or.jp ・ 2026年10月12日閲覧