コンテンツにスキップ

n型半導体・p型半導体とは

n型半導体では自由電子が動いて負の電荷を運び、p型半導体では正孔が動いて正の電荷を運びます。 純粋なシリコンは、そのままでは電流を運ぶ量がわずかです。微量の不純物を加えることで電流の運び手を選べる点が、半導体を役に立つ材料にしています。

n型は運び手が余っている状態、p型は運び手が入るべき空席がある状態です。同じシリコンを2種類に作り分けて隣り合わせに置くと、境目で一方向にだけ流れやすい性質が生まれます。

n型は自由電子が、p型は正孔が電荷を運ぶ

Section titled “n型は自由電子が、p型は正孔が電荷を運ぶ”

N型半導体は1、電圧をかけられると、自由電子や伝導電子と呼ばれる電子の移動によって電荷が運ばれる半導体で、負の電荷を持つ自由電子がキャリアとして移動することで電流が生じます。P型半導体は2、電圧をかけられると正孔の移動によって電荷が運ばれる半導体で、正の電荷を持つ正孔が移動することで電流が生じます。

正孔は「電子が抜けた場所」です。隣の電子がその場所へ移れば、抜け穴は隣へ移ったことになります。電子が右へ動いていく現象を、抜け穴が左へ動いていくと言い換えたもので、この言い換えをすると、電流を正の電荷の流れとして素直に扱えます。

運び手が余るか、空席があるか
n型−−−−−自由電子が動いて負の電荷を運ぶp型+++++正孔(電子の抜け穴)が動いて正の電荷を運ぶ境目に性質が生まれるn型p型接合面一方向にだけ電流が流れやすくなるダイオードもトランジスタも、この作り分けの組み合わせ
n型では自由電子が、p型では正孔が電荷を運びます。同じシリコンを2種類に作り分け、隣り合わせに配置すると、境目で一方向にだけ流れやすい性質が生まれます。

シリコンは4価で、5価を混ぜれば電子が余り、3価なら空席ができる

Section titled “シリコンは4価で、5価を混ぜれば電子が余り、3価なら空席ができる”

シリコンなどIV族の元素は価電子を4個持つ4価の元素で、V族の元素は価電子を5個持つ5価の元素です3。価電子とは、原子のいちばん外側にあって、隣の原子と手をつなぐのに使われる電子のことです。シリコンの結晶では、1個の原子が4本の手で隣の原子と結び合っています。

ここへ5価のリン(P)を少量加えると、リンが持っていた価電子のうち1個が余剰な電子として自由に動き回れる(自由電子)ようになります。電圧を印加するとこの自由電子が+電極に引き寄せられて移動し、電流が流れます。4本の結合へ使ったあと、5個目が結晶の中を動き回る。これがn型です。

3価のホウ素(B)を加えると、シリコンとホウ素の結合の1か所で電子が不足となり、電子の欠落した穴が生じます4。この穴が正孔(ホール)です。手を3本だけ持つ原子が4本ぶんの席へ入るので、1か所に空席が生まれます。

n型半導体で電荷を運ぶ粒子(キャリア)は自由電子で、このキャリアが負(Negative)電荷であるためn型と呼ばれます。p型では正孔が正(Positive)電荷であるためp型と呼ばれます。名前のnとpは、運び手が持つ電荷の符号そのものです。

電子を1個余らせる側の不純物をドナー(donor、供与体)、電子の席を用意して受け取る側をアクセプタ(acceptor、受容体)と呼びます。シリコンへのイオン注入では、n型層を作るドナー原子としてV族元素のリン(P)とヒ素(As)が用いられます5。イオン注入装置は打ち込む原子を質量で選り分けるので、ホウ素11、リン31、ヒ素75、インジウム115、アンチモン1216という質量数が、そのまま装置の設定値になります。

価電子が1個多いか、1個欠けているか
n型:5価のリン(P)を1個入れるSiSiSiSiP余った電子1個4本の結合をつくってなお、電子が1個余りますp型:3価のホウ素(B)を1個入れるSiSiSiSiBここが正孔(空席)結合の1か所で電子が1個欠けますn型のドーパント:リン31・ヒ素75・アンチモン121p型のドーパント:ホウ素11・インジウム115数字はイオン注入装置が原子を選り分けるときの質量数です
シリコンの価電子は4個です。5価のリンを1個入れると結合に余る電子が1個生まれ、3価のホウ素を1個入れると結合の1か所に空席(正孔)が生まれます。

ウェハは引き上げの段階で、すでにp型かn型になっている

Section titled “ウェハは引き上げの段階で、すでにp型かn型になっている”

単結晶インゴットを作るCZ法では、金属不純物の濃度がppb以下(1ppb=10億分の1)へ高純度化された多結晶シリコンを、ホウ酸(B)やリン(P)とともに石英ルツボへ入れ、約1420℃で融解させます。ここで加える微量のホウ酸やリンといった不純物が、最終的に完成する半導体の電気抵抗を調整し、その特性を決定します7。

つまり、前工程の工場へ届いた時点で、ウェハはすでにp型かn型のどちらかです。工場が行うのは、その土台の上へ、場所ごとに反対の型の領域や、もっと濃い領域を描き足す作業です。

場所ごとの作り分けは、イオン注入と活性化の熱処理で行う

Section titled “場所ごとの作り分けは、イオン注入と活性化の熱処理で行う”

1枚のシリコンウェハの中で、n型とp型を場所ごとに作り分けるのはイオン注入です。ドーパントをイオンにして加速し、狙った領域へ打ち込みます。打ち込む量が濃度を、打ち込むエネルギーが深さを決め、マスクで覆った場所はそのまま保たれます。

打ち込んだ直後は、電気的に不活性な状態です。ドーパント活性化の熱処理を経て格子位置へ収まって、はじめてn型やp型として振る舞います。同時に、打ち込みで乱れた結晶も回復します。

マスクが打ち込みを止め、熱をかけてはじめて働きます
① イオン注入ドーパントマスクマスク打ち込んだ領域1枚のシリコンウェハ打ち込む量が濃度を、エネルギーが深さを決めます覆った場所ではマスクが打ち込みを止めます② 熱処理(活性化)熱をかけます格子位置へ収まります熱処理を経て、はじめてn型やp型として振る舞います打ち込みで乱れた結晶も回復します
イオン注入では、マスクが打ち込みを止め、開いた場所だけにドーパントが入ります。熱処理で格子位置へ収まって、はじめてn型やp型として振る舞います。

同じウェハの中に、n型の領域とp型の領域を設計どおりに描く。この作業の積み重ねが、回路の形になります。

ウェルとチャネルでは、打ち込む量の桁が違う

Section titled “ウェルとチャネルでは、打ち込む量の桁が違う”

シリコンへのイオン注入は、エネルギー範囲が数100eVから数MeV、注入量の範囲が1E11/cm2から1E16/cm25と非常に広い領域をカバーし、注入条件によって中電流機・大電流機・高エネルギー機の3種類が使い分けられます。同じ打ち込みでも、狙う場所によって桁が変わります。

  • ウェル── CMOSトランジスタの土台になる、比較的深い不純物層です。NMOSトランジスタはp型のpウェル、PMOSトランジスタはn型のnウェルの中に作られます8。高エネルギー注入機の登場後は多段注入でウェルを作る手法が主流で、深さ方向へ濃度が濃くなることからレトログレードウェルと呼ばれます。ウェルの側壁と底部へ反対の導電型の層を作って基板から切り離した構造がトリプルウェルで、DRAMやNANDなどのメモリ素子、パワーLSIで使われます。
  • チャネル ── ゲート電極の直下、ソースとドレインの間で電気が流れる領域です。ここへドーズ量5E12 ions/cm2未満という少量で正確なイオンを注入し、閾値電圧を制御します9。

ウェルが土台の導電型を、チャネルドープが1個のトランジスタの動き始める電圧を決めます。このチャネルの少量という条件が、微細化とともに厳しくなります。チャネル長とチャネル幅がともに縮んだ結果、チャネルに存在するドーパント数が数個レベルとなり、統計的ばらつきに基づいた離散分布となって、トランジスタの閾値電圧(Vth)のばらつきを引き起こします10。これを不純物揺らぎ、またはランダムドーパントゆらぎと呼びます。原子の個数が一桁まで下がった領域では、個数のばらつきがそのまま電圧のばらつきになります。

型はドナーとアクセプタの多数決で、反対の型を2倍入れれば入れ替わる

Section titled “型はドナーとアクセプタの多数決で、反対の型を2倍入れれば入れ替わる”

n型かp型かは、その場所でドナーとアクセプタのどちらが多いかで決まり、あとから反対の型のドーパントを入れれば型は入れ替わります。注入する領域と反対の導電型のドーパントを注入して導電型を変える技術を、コンペンセイション(compensation)と呼びます。リンをドープしたn型のゲートpoly-SiのPMOS領域へホウ素を注入し、p型ゲート電極へ変えるプロセスがその例で、導電型を変えるには、ターゲットのドーパント濃度の2倍のドーパント量を注入する必要があります11。

この2倍という数字が、n型とp型の関係を言い表しています。先に入っているドナーを打ち消し、さらに上回るだけのアクセプタを入れて、はじめて型が入れ替わる。ドナーとアクセプタは足し引きされる量で、型はその多数決の結果です。

ただし、入れられる濃度には上限があります。固溶度(solubility)は、物質中に許容される不純物濃度のことで、温度によって決まります12。シリコン半導体に一般に用いられるB、P、Asは固溶度が大きく、固溶度以上に導入された原子は格子間へ析出します。注入したイオンを電気的に活性化してドナーあるいはアクセプタとして作用させるには、格子位置に注入原子を入れる必要があり13、格子間へ析出した原子はドナーにもアクセプタにもなりません。打ち込んだ原子の数と、電気を運ぶ側の数は、別々の量です。

シート抵抗、SR法、SIMSで、型と濃度と活性化率を確かめる

Section titled “シート抵抗、SR法、SIMSで、型と濃度と活性化率を確かめる”

この別々の量は、それぞれ別の手法で測ります。

  • シート抵抗(sheet resistance) ── 薄膜やイオン注入で作った拡散層の電気抵抗を表す量で、単位はΩ/sqです。測定には一般に四探針法が用いられ、直線状に配置した4本の針の外側2本に電流を流し、内側2本の電圧差を測ることで抵抗を求めます14。シート抵抗はイオン注入層の濃度と深さに依存するため、イオン注入装置のQC法として広く用いられます。
  • 拡がり抵抗法(SR法) ──斜めに研磨した試料の拡がり抵抗を測ることで、深さ方向のキャリア濃度の分布を測る手法です15。研磨面に立てた2本の針の間の抵抗から比抵抗を求め、比抵抗とキャリア移動度の関係からキャリア濃度を求めます。
  • SIMS(二次イオン質量分析法) ──酸素(O)やセシウム(Cs)のイオンをプローブとして試料へ入射させ、スパッタされた原子の質量分析を行うことで、材料中の物質を定量する分析法です16。試料を深さ方向へスパッタしながら測るため、イオン注入分布や、その後のアニールによる拡散状態が分かります。

SIMSは打ち込んだ原子が深さごとに何個あるかを数え、SR法は実際に電荷を運んでいるキャリアが何個あるかを数えます。SR法で求めたキャリア濃度をSIMSによる注入イオンの分布と合わせると、活性化率を求められます。この比が、熱処理がどこまで仕事をしたかの答えになります。

活性化率は熱処理の条件で動きます。アニール温度が高いほどドーパントが活性化する割合が高くなる一方で、同時にドーパントが深さ方向へ拡散してしまうため、先端デバイスでは拡散抑制と活性化を両立させるために、高温でミリ秒程度の短時間の熱処理が用いられます。深さを抑えたまま活性化率を上げるという要求が、熱をかける時間の側を短くしてきました。

n型半導体とは何ですか?

電圧をかけると自由電子が動いて負の電荷を運び、電流を生じる半導体です。

p型半導体とは何ですか?

電圧をかけると正孔(電子の抜け穴)が動いて正の電荷を運び、電流を生じる半導体です。

正孔とは何ですか?

電子が抜けた場所です。隣の電子がそこへ移れば、抜け穴は隣へ移ったことになります。電子が一方向へ動くのを、抜け穴が逆方向へ動くと見なした呼び方です。

どうやって作り分けるのですか?

加える不純物の種類で決まります。同じシリコンでも、何を微量に混ぜるかによって余る電子が生じるか、電子の抜け穴が生じるかが変わります。

なぜ2種類に分けるのですか?

境目に性質が生まれるためです。n型とp型を隣り合わせに作ると、境目では一方向にだけ電流が流れやすい構造になります。ダイオードもトランジスタも、この作り分けの組み合わせでできています。

どの工程で作り分けますか?

イオン注入と熱処理です。ドーパントを加速して打ち込み、熱をかけて格子位置へ収めることで、狙った領域だけをn型やp型にします。

n型とp型では、どの元素を混ぜるのですか?

n型はIV族の真性半導体へV族のリン(P)やヒ素(As)、アンチモン(Sb)を添加したもの、p型はIII族のホウ素(B)やインジウム(In)を添加したものです。

ドナーとアクセプタとは何ですか?

電子を1個余らせる側の不純物をドナー、電子の空席を作る側をアクセプタと呼びます。シリコンでn型層を作るドナー原子には、V族元素のリン(P)とヒ素(As)が用いられます。

ウェハはもともとn型ですか、p型ですか?

引き上げの段階で決まります。高純度化した多結晶シリコンをホウ酸(B)やリン(P)とともに石英ルツボへ入れて約1420℃で融解させ、ここで加える微量の不純物が、完成する半導体の電気抵抗を調整して特性を決定します。

一度p型にした場所をn型へ変えられますか?

変えられます。この技術をコンペンセイションと呼び、導電型を変えるにはターゲットのドーパント濃度の2倍のドーパント量を注入する必要があります。

n型かp型か、濃度はどうやって測りますか?

四探針法で測るシート抵抗、斜め研磨した試料で深さ方向のキャリア濃度分布を測る拡がり抵抗法(SR法)、打ち込んだ原子の分布を測るSIMSがあります。SR法とSIMSを合わせると活性化率が分かります。

16件を表示
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10
  11. 11
  12. 12
  13. 13
  14. 14
  15. 15
  16. 16