フェルミレベルピニングとは
フェルミレベルピニングとは、金属と半導体の接合で、界面のフェルミ準位が特定のエネルギーへピン止めされるようにそろう状態です。 金属を替えても、障壁の高さはほとんど同じままです。
教科書の式では、障壁の高さは金属の仕事関数で決まります。現実の界面では、そこに生じた準位が金属の違いを打ち消してしまいます。
金属/Ge界面はS=0.02で、障壁が金属によらない
Section titled “金属/Ge界面はS=0.02で、障壁が金属によらない”金属/Ge 界面では、金属の真空仕事関数によらず、ほぼ一定の1ショットキー障壁ができます。2006 年頃からの検証で、 はバーディーン極限に近い 0.02、 は約 0.6 eV と見積もられました。この は Ge の禁制帯幅と同程度です。
結果として、Ge の伝導帯への低い障壁は極めて作りにくくなります。n-Ge には伝導帯への高い障壁による整流性が、p-Ge には価電子帯への低い障壁によるオーミック性が出ます。
界面準位が増えるほど、Sは1から0へ寝る
Section titled “界面準位が増えるほど、Sは1から0へ寝る”ショットキー障壁高さは で表され、 と は半導体の1界面準位で決まると一般に考えられています。界面準位密度 が増えるにつれて、 のショットキー極限から のバーディーン極限へ移ります。Ge のピン止めは Si と比べて圧倒的に強く、実験で求めた はバルク Ge の電荷中性準位に近い値です。
極薄の膜を挟むと、ピン止めが緩む
Section titled “極薄の膜を挟むと、ピン止めが緩む”FLP の起源としては、金属から半導体のギャップ内へ届く波動関数に由来する MIGS が最も妥当だと推測されています1。この立場では、絶縁膜が Ge への波動関数の浸み出しを抑え、MIGS を減らすと解釈できます。そこで、電流が流れる程度の極薄誘電体界面層で金属と Ge を離す実験が行われました。
Al/極薄 GeO2/Ge 接合では、GeO2 の膜厚が増えるとともに n-Ge への整流性が弱まってオーミック性が得られ、p-Ge では逆に整流性が強まりました。
障壁が下がらなければ、寄生抵抗も下がらない
Section titled “障壁が下がらなければ、寄生抵抗も下がらない”微細化されたデバイスでは、寄生抵抗を下げる観点からも、金属/Ge 界面の障壁の低減、つまり FLP の抑制が不可欠です1。コンタクト抵抗 は に比例するので2、障壁が下がらなければ濃度で押すことになります。
整流性とオーミック性の反転を使い、メタルソースドレイン型の Ge n-MOSFET の動作も実証されています。界面の作りが、素子の成否を左右します。
膜を挟む手も、低電子密度の金属も、抵抗と引き換え
Section titled “膜を挟む手も、低電子密度の金属も、抵抗と引き換え”極薄の絶縁膜を挟めばピン止めが緩み、障壁を下げられます。その代わり、挟んだ膜そのものがトンネル抵抗として加わります。膜を薄くすれば抵抗は小さいものの、ピン止めを緩める効果も弱まります。低電子密度の金属を選ぶ道は膜を挟まずに済みますが、金属の抵抗率が高く、コンタクト用の薄膜としての使い方になります。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”フェルミレベルピニングとは何ですか?
金属/半導体や金属/絶縁体の接合で、界面のフェルミ準位が特定のエネルギーへピン止めされるようにそろう状態です。理想のモット・ショットキーモデルとは別のそろい方です。
どのくらい強いことがありますか?
金属/Ge 界面では S がバーディーン極限に近い 0.02 と見積もられています。金属を替えても障壁はほぼ同じ高さです。
電荷中性準位はどこですか?
金属/Ge 界面の Φcnl は約 0.6 eV と見積もられています。Ge の禁制帯幅と同程度の値です。
実際の接合はどうなりますか?
n-Ge には伝導帯への高い障壁による整流性が、p-Ge には価電子帯への低い障壁によるオーミック性が出ます。
原因は何と考えられていますか?
金属から半導体のギャップ内へ届く波動関数に由来する MIGS が、最も妥当だと推測されています。
抑える手はありますか?
極薄の誘電体界面層で金属と Ge を離す手があります。Al/GeO2/Ge では膜厚の増加とともに n-Ge がオーミック性へ反転しました。
他に道はありますか?
低電子密度の金属を使う道があります。希土類金属ジャーマナイドは、n-Ge への低い障壁を保ったまま薄くできることが分かってきています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- ショットキー障壁とは── ピン止めが動かす量
- 界面準位とは── ピン止めの担い手
- 仕事関数とは── 届きにくくなる側の量
- 接触抵抗率とは── 結果が出る指標
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- 1応用物理 第86巻 第8号:西村知紀・鳥海明「金属/Ge界面におけるフェルミレベルピンニングの制御」jstage.jst.go.jp abcd
- 2日新イオン機器:イオン注入ディクショナリー「コンタクト注入」nissin-ion.co.jp ↩