ターボ分子ポンプ(TMP)とは
ターボ分子ポンプ(TMP)とは、高速で回る翼で気体分子を出口側へ送り込む真空ポンプです。 成膜やエッチングのチャンバーを高真空まで引く役目を担います。分子が壁から壁へまっすぐ飛ぶ分子流の条件に合わせて作られ、出口はまだ真空です。排気が効くのは翼の外周の速さが分子の熱運動の速さの桁に届いてからで、ロータは毎分数万回転で回ります。その回転を何で支えるかが、機種の性格を決めます。
分子流の領域では、翼が分子を1個ずつ出口側へ弾く
Section titled “分子流の領域では、翼が分子を1個ずつ出口側へ弾く”高真空の領域では、気体分子どうしが衝突する回数が減り、分子は壁に当たるまでまっすぐ飛びます。この状態では流れをまとめて動かすという考え方が意味を失い、分子を1個ずつ、出口の方向へ弾き飛ばす必要があります。ターボ分子ポンプは、この分子流の条件に合わせて最適化されています1。
ターボ分子ポンプは、高速回転する翼が排気方向へ気体が動く確率を高めることで圧縮する多段軸流タービンです1。翼に当たった分子は、翼の運動量を受け取って出口側へ向かいます。回転する翼の列と固定された翼の列の1組が1段になり、多数の段が直列に並びます2。段を重ねるほど、戻る確率に対して進む確率が積み上がります。
翼が分子を弾けるのは、翼が十分に速いときだけです。Leyboldは、ロータ翼の外周の周速が、排気する分子の平均熱速度の桁に届いて初めて、意味のある排気作用が得られるとしています2。同社の機種の回転数は、大径ロータのTURBOVAC 1000の約36,000rpmから、小径ロータのTURBOVAC 35/55の72,000rpmまでです2。ステータとロータの円盤のすき間はmmの桁にとられ、公差を大きくとれるぶん運転の安全性が増しています。高速でも振動なく回すため、タービンは組立の段階で2つの面で動的バランスを取ります。
出口はまだ真空で、大気へは背圧ポンプが排気する
Section titled “出口はまだ真空で、大気へは背圧ポンプが排気する”分子流に最適化したぶん、出口側の条件が結果を左右します。大気へ排気するには、適切な大きさの背圧ポンプが必要です1。ターボ分子ポンプの出口はまだ真空であり、そこから先はドライポンプが受け持つので、真空排気系は2段構えになります。
出口側の弱さを補う設計もあります。Edwardsは、ホルベック構造を採った機種で軽いガスの圧縮比と、背圧ポンプ側の圧力に対する耐性を高め1、超高真空の環境での第一候補にしているとしています。
入口の側を分ける機種もあります。EdwardsのnEXT Split Flowは、複数の独立した入口を持ちます。大阪真空機器製作所は、圧縮比の異なる複数の吸気口を持つスプリットフロー型で、1台で差動排気ができるとしています3。装置の中で圧力の異なる区画を、1台で分けて引けます。
排気速度は、同じ型式名の中でも1桁以上ひらく
Section titled “排気速度は、同じ型式名の中でも1桁以上ひらく”EdwardsのnEXTシリーズは8サイズで、排気速度は窒素で55、85、240、300、400、730、925、1250L/sです1。最小と最大の比は、当てはめると約23倍です。大阪真空機器製作所のTGkineシリーズは1700〜4200L/sで4、標準型と耐腐食型があります。同社のTG-Mシリーズは340〜2400L/s、TG-M7シリーズは340〜1300L/sです。
磁気浮上式は、電磁石でロータを浮かせて潤滑剤をなくす
Section titled “磁気浮上式は、電磁石でロータを浮かせて潤滑剤をなくす”毎分数万回転のロータを何で支えるかで、ターボ分子ポンプは2つの系統に分かれます。大阪真空機器製作所は、磁気浮上式とボールベアリング式を製品として分けています。
ボールベアリング式には、軌道輪を鋼、玉をセラミックスにしたハイブリッド軸受があり、異なる材料どうしにして微小溶着を避けます2。
磁気浮上式は、電磁石でロータを浮かせることで完全にオイルフリーで動作します4。大阪真空機器製作所は、振動と騒音を抑えた超高速回転によってオイルフリーの清浄な真空環境が得られ、長いメンテナンス周期を可能にするとしています。同社の磁気軸受は5軸すべてを電磁石で能動制御するので、どの向きに据えても安定して回ります4。コントローラと電源をポンプに一体化して、間のケーブルとラックの場所を不要にした機種もあります。運転中のロータは磁力で接触せずに保たれ、潤滑剤はまったく要らず、停止時に備えてタッチダウン軸受を組み込みます。磁気浮上式の歴史は長く、Leyboldは1976年に磁気浮上式のターボ分子ポンプ550Mと560Mを納入しています2。特注機について大阪真空機器製作所は、超高真空領域に近い10⁻⁹Pa台を示しています。
用途は、高真空を要する成膜、露光、エッチング、イオン注入
Section titled “用途は、高真空を要する成膜、露光、エッチング、イオン注入”ターボ分子ポンプとクライオポンプは高真空プロセスに使われ3、用途には成膜、フォトレジスト露光、エッチング、イオン注入が入ります。Edwardsもエッチングとイオン注入を用途に含めています。製造装置の外では、島津製作所が質量分析計の主ポンプに向く清浄な真空ポンプ5と位置づけています。
関連するデータ・ツール
Section titled “関連するデータ・ツール”- 装置技術・装置エンジニアリングの工程ページ── 工程分類と、この工程の公開求人
- PVDの工程ページ── 高真空を要する代表工程
- 装置カタログDB ── 公式製品ページ単位のメーカーと製品family
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”ターボ分子ポンプとは何ですか?
高速で回る翼で気体分子を出口側へ送り込む真空ポンプです。高速回転する翼が排気方向へ気体が動く確率を高めることで圧縮する、多段軸流タービンです。回転する翼と固定された翼の1組が1段で、段を直列に重ねます。
なぜ背圧ポンプが要るのですか?
出口側は大気圧よりずっと低い圧力にとどまるためです。ターボ分子ポンプは分子流の条件に合わせて作られ、大気へ排気するには適切な大きさの背圧ポンプが必要です。ドライポンプが直列につながり、2段構えで大気圧から高真空まで落とします。
排気速度はどのくらいですか?
機種によります。EdwardsのnEXTシリーズは8サイズで、窒素で55、85、240、300、400、730、925、1250L/sです。大阪真空機器製作所のTGkineシリーズは1700〜4200L/s、TG-Mシリーズは340〜2400L/sです。
磁気浮上型とボールベアリング型の違いは何ですか?
回転軸の支え方が違います。大阪真空機器製作所は、磁気浮上式が電磁石でロータを浮かせることで完全にオイルフリーで動作し、振動と騒音を抑えた超高速回転とオイルフリーの清浄な真空環境を実現し、長いメンテナンス周期を可能にするとしています。ボールベアリング式では、軌道輪を鋼、玉をセラミックスにしたハイブリッド軸受で微小溶着を避ける例があります。
どの工程で使いますか?
高真空プロセスです。ターボ分子ポンプとクライオポンプは成膜、フォトレジスト露光、エッチング、イオン注入に使われます。Edwardsもエッチングとイオン注入を用途に含めています。
入口が複数ある機種があるのはなぜですか?
1台で複数の空間を別々に排気するためです。EdwardsのnEXT Split Flowは複数の独立した入口を持ち、大阪真空機器製作所は、圧縮比の異なる複数の吸気口を持つスプリットフロー型で1台による差動排気ができるとしています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- CVDとPVDの違い(成膜プロセス比較)── 真空度要件を軸に比較
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- 3大阪真空機器製作所:Productsosakavacuum.co.jp ab
- 4大阪真空機器製作所:Magnetically Levitated Turbo Molecular Pumpsosakavacuum.co.jp abc
- 5島津製作所:GC-MS基礎解説 ターボ分子ポンプshimadzu.com ↩