流動性CVDとは
流動性CVDとは、流れる性質を持つ膜をCVDで作り、その流れで狭い隙間を底から埋める成膜方法です。 下から埋まるのでボイドができにくい一方、固まった後に残る応力や、後の工程の作り直しが必要になることがあります。
気相から積むと、入口の角が先に育って溝が閉じる
Section titled “気相から積むと、入口の角が先に育って溝が閉じる”狭い溝を埋める方法はいくつもありますが、CVDで溝を埋めるとき、最初に戦う相手は幾何です。原料は気相から来るので、溝の入口の角にいちばん多く着きます。角が育つほど開口は狭まり、狭まった開口は奥への供給をさらに絞ります。この詰まりがピンチオフで、コンタクトホール上部でのピンチオフはタングステンの埋め込みを困難にしており1、ALDのTi/TiNを使えば解消でき、タングステンの埋め込み性能の向上が期待できます。開口が閉じきれば、中に残った空間はボイドになります。
流動性CVDは、この順番を入れ替えます。膜に流れる性質を持たせておき、溝の中で下に流れてから形が決まるようにします。CVDベースのギャップフィル技術への関心を新たにするものとして、炭素を含まない流動しやすいCVD膜が提案されています1。三次元に積んだNANDフラッシュではメモリセル領域と周辺回路領域のあいだに大きな段差ができ、その表面をボイドなく絶縁膜で埋めてから各ゲート電極にコンタクトホールを開ける必要があるので、通常のCVDよりはるかに埋め込み性の良い塗布絶縁膜(SOD)が必須になります。
流動性は、もともと平坦化の方法だった
Section titled “流動性は、もともと平坦化の方法だった”CMPが導入される前の絶縁膜の平坦化には、ウェーハにRFバイアスをかけながら成膜するバイアスCVD法、TEOSとO3のように流動性を持つ熱CVD法、スピン塗布のSOG法が使われていました1。金属でも、アルミを成膜したあとに加熱して流す方法がありました。流動性は、もともと平坦化の方法だったものが、埋め込みの方法として再び使われています。
STIの溝は深く細くなり、埋まったかは断面で判定する
Section titled “STIの溝は深く細くなり、埋まったかは断面で判定する”STIは、埋め残しが後の工程に影響する例です。STIの形成は、初期酸化、LPCVD窒化膜、リソグラフィ、エッチング、熱酸化、ギャップフィルCVD酸化膜、CMP、アニール、窒化膜除去の順に進み、狭いギャップをボイドなく埋めるCVDと塗布絶縁膜のプロセスと装置の開発2がSTI形成の技術課題です。2012年のロードマップでは、バルク基板のSTIの深さは2011年に335nm、2014年に316nmが求められていました。フラッシュメモリでは微細化でアスペクト比が増え続け、2011年のNANDで求められる22nm世代には解決策があるものの、2014年のNANDで求められる17nm世代以降はギャップフィル法が提案されているだけで、具体的な解決策は決まっていませんでした。フラッシュメモリでワード線方向の微細化を続けると、トレンチ深さを保った場合のアスペクト比が上がり、STI酸化膜の埋め込みが課題になります3。
埋まったかどうかは断面で測ります。既に確立した長距離PVD、イオン化PVD、CVDは、DRAMの高アスペクトコンタクトをキーホールなしでタングステンで埋めるために継続的に改良されており1、タングステンをCVDで埋めたTSVでは中心部のシーム状ボイドが断面の特徴になります。断面観察で入口の残り幅と中心の縫い目を測ることが、合否判定そのものです。
調整できるのは、埋め方、溝の形、温度の3つ
Section titled “調整できるのは、埋め方、溝の形、温度の3つ”1つ目は埋め方そのものです。0.35μm世代以降の深い溝には高密度プラズマの装置が必要になり4、微細な溝の埋め込みのために高密度プラズマとバイアス電圧を使うCVD装置が提案されました。1995年にラムリサーチがECR方式のCVDを発売するなど、各社が応用を試みました。バイアス電圧によるスパッタエッチ効果を使った埋め込みCVDは、山型の独特な堆積形状による埋め込み特性で従来のリフロー式CVDを上回り、広く使われました。削りながら積む方法は緻密な膜で開口を保てますが、高密度プラズマCVDは高真空が必要で、大型で高負荷に耐えるターボ分子ポンプの開発を促しました。流す方法は装置の負担が軽いかわりに、応力の問題が出ます。
二つ目は、埋める前の溝の形です。ドライエッチングの形状制御では、一般には垂直な加工形状が望まれる一方、次工程での微細パターンへのメタル埋め込み性能を考えるとテーパ形状やボーイング形状への調整が要り、この二つが相反する要求になります。垂直へ寄せれば寸法の要求に近づき、テーパへ寄せれば埋め込み性能に近づきます。STIのトレンチ先端のコーナーは分離用酸化膜の堆積前の熱酸化で丸められ、この曲率半径が増えると寄生トランジスタのしきい値電圧が上がってId/Vg特性のこぶが小さくなります。一方で、新しいプロセスが入るまでは、素子のスケーリングが曲率半径を減らす方向へ働きます。
3つ目は温度です。デバイスの微細化と複雑化に伴って低温での成膜の需要が高まっており、成膜後にプラズマや熱を加えて膜中の不純物を取り除き粒子を安定させるトリートメント技術が、低温で膜質を改善する方法として需要を伸ばしています。KOKUSAI ELECTRICは、反応種を豊富に供給するプロセスで、200層以上の深孔を持つ3D-NANDでもステップカバレッジに優れたトリートメントを提供し、主要メモリメーカーに採用されているとしています5。低温にすれば熱予算を守れますが、膜質を後から整える工程が必要になります。サムコは、プラズマを使うCVDは熱や光と違って比較的低温で細い溝の中に成膜できるとし6、対象の膜厚を10nm〜1000nm程度としています。
埋め方を替えると、応力とCMPの作り直しが付いてくる
Section titled “埋め方を替えると、応力とCMPの作り直しが付いてくる”埋め込み酸化膜をHDPからHARPへ替えたときのように、インテグレーションの方法を変えるとSTIのCMPに大きな影響が出ます3。断面形状も段差も酸化膜表面の実効パターン密度も変わり、特に間隔の狭いパターン領域で影響が大きいため、STI CMPプロセスの調整や再開発が必要になりました。埋め方を替える判断は、そのまま研磨レシピを作り直す判断になります。
応力も付いてきます。埋め込み酸化膜の形成では、埋め込み性能と並んで応力の制御がプロセス上の大きな課題で2、応力起因の結晶欠陥への配慮が従来以上に要ります。歪みを使ってトランジスタ性能を上げる方向とSTIの応力がどう干渉するかも、デバイス開発と密接に関わります。ギャップフィルの別解としてスピンオン法が挙がる理由も、低ストレス性でした。合否は断面に出ますが、代金は応力と下流の工程で払います。
塗布側にも条件が付きます。SODにはCMPによる平坦化への耐性が要り、通常とは異なる比較的大面積の部分を埋めるための塗布条件が検討されています。
溝の深さそのものを下げる選択もあります。完全空乏型SOI基板ではSTIの深さがSi薄膜の厚さと同じでよく、バルク基板より1桁以上浅くて済むため、アスペクト比も0.6程度になります。埋め方を磨く道の隣に、埋める仕事そのものを軽くする道があります。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”流動性CVDとは何ですか?
流れる性質を持つ膜をCVDで作り、その流れで狭い隙間を底から埋める成膜方法です。気相から積み上げる方法とは、膜が形になる順番が逆になります。CVDベースのギャップフィル技術への関心を新たにするものとして、炭素を含まない流動しやすいCVD膜が提案されています。
普通のCVDで狭い溝が埋まりにくいのはなぜですか?
原料が気相から来るので、溝の入口の角に最も多く付き、角が育つと開口が狭くなるからです。開口が閉じると、中に残った空間がボイドになります。コンタクトホール上部のピンチオフはタングステンの埋め込みを難しくしており、ALDのTi/TiNを使うと解消できます。
流動性CVDと塗布絶縁膜(SOD)はどう違いますか?
膜を入れる方法が違います。三次元に積んだNANDフラッシュの大きな段差をボイドなく埋めるには、通常のCVDよりはるかに埋め込み性の良い塗布絶縁膜が必須で、塗布絶縁膜にはCMPによる平坦化への耐性が要ります。そのうえで、流動しやすいCVD膜が提案されています。
高密度プラズマのCVDとどちらが先に広まりましたか?
微細な溝の埋め込みのために高密度プラズマとバイアス電圧を使うCVD装置が提案され、1995年にラムリサーチがECR方式のCVDを発売するなど、各社が応用を試みました。バイアス電圧によるスパッタエッチ効果を使った埋め込みCVDは、山型の独特な堆積形状による埋め込み特性で従来のリフロー式CVDを上回り、広く使われました。
埋め方を替えると何が動きますか?
後のCMPが変わります。埋め込み酸化膜をHDPからHARPに替えたときのように、インテグレーションの方法を変えると、断面形状、段差、酸化膜表面の実効パターン密度が変わってSTIのCMPに大きな影響が出るため、STI CMPプロセスの調整や再開発が必要になりました。
流動性を上げると何が悪化しますか?
応力です。埋め込み酸化膜の形成では、埋め込み性能と並んで応力の制御がプロセス上の大きな課題で、応力による結晶欠陥への配慮が従来以上に必要です。ギャップフィルの別の方法として、低ストレス性からスピンオン法が使われることもあります。
埋まったかどうかはどこで合否判定をしますか?
断面を測ります。DRAMの高アスペクトコンタクトをキーホールなしでタングステンで埋めるため、長距離PVD、イオン化PVD、CVDは継続的に改良されており、タングステンをCVDで埋めたTSVでは中心部のシーム状ボイドが断面の特徴になります。入口の残り幅と中心の縫い目が合否判定の対象です。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- コンフォーマリティとは── 形に沿って積む度合い。流動性CVDはこれを崩して埋める
- ステップカバレッジとは── 上面と側壁と底の膜厚比という測り方
- CVD(化学気相成長)とは── 流動性CVDの母体になる成膜方式
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- 1電子情報技術産業協会(JEITA)半導体技術ロードマップ専門委員会:ITRS 2013年版 配線 日本語版semicon.jeita.or.jp abcd
- 2SEAJ:半導体製造装置技術ロードマップ「ウェーハプロセス」2012年版seaj.or.jp ab
- 3電子情報技術産業協会(JEITA)半導体技術ロードマップ専門委員会:ITRS 2011年版 フロントエンドプロセス 日本語版semicon.jeita.or.jp ab
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- 5KOKUSAI ELECTRICの強みkokusai-electric.com ↩
- 6サムコ:CVD装置とは(半導体製造装置入門)samco.co.jp ↩