結晶欠陥(COP)とは
結晶欠陥(COP)とは、シリコンの単結晶を育てるあいだに結晶の中へできた小さな空洞が、ウェーハの表面まで達してくぼみになったものです。 名前にパーティクルとありますが、正体はウェーハ自身の一部です。洗っても数が減らず、ゲート酸化膜の耐圧を落とします。どの欠陥が生じるかを決める変数は結晶を引き上げるときの比V/Gで、そこを動かすか、表層を別に作り直すかが対策の分かれ目です。
洗っても数が減らない輝点が、COPになる
Section titled “洗っても数が減らない輝点が、COPになる”ウェーハの表面検査では、光を当てて散った光を数える装置が輝点を拾います。COPはCrystal Originated Particleの略で、CZウェーハをパーティクルカウンターで測ったときに輝点として観察される成長時導入欠陥の一種です。正体は0.1マイクロメートル程度のピットで、(100)面では正方形、(111)面では六角形に見えます。八面体の空洞がウェーハ表面まで達したものと考えられています。
洗浄で減るのは、外から付いたパーティクルのほうだけです。住友シチックスと住友金属工業の宝来正隆らは、1SC-1洗浄を繰り返して表層のシリコンを約80ナノメートル削ると、埋まっていたCOPが凸状の姿で観察され、さらに洗浄を続けると通常のピットへ変わったと報告しています。表層が下がるたびに、その深さにあった空洞が新しいくぼみとして表面に出ます。
空洞は、結晶が冷える途中で点欠陥が集まってできる
Section titled “空洞は、結晶が冷える途中で点欠陥が集まってできる”大阪府立大学の井上直久は総論で、成長時導入欠陥を、融液と結晶の境目から取り込まれた点欠陥(原子空孔と格子間原子)や不純物の酸素が、固まったあとの冷却の途中で集まってできた二次的な欠陥だとしています2。同じ総論は、検出法ごとにCOP、FPD、LSTDと呼ばれてきた欠陥が電子顕微鏡で観察されるようになり、従来例のない空洞だと見られるようになったと記しています。
空洞はチョクラルスキー法(CZ法)でシリコンインゴットを育てている最中に仕込まれ、シリコンウェハへスライスするより前の段階でできています。
凹んだ角の薄い酸化膜が、絶縁破壊の起点になる
Section titled “凹んだ角の薄い酸化膜が、絶縁破壊の起点になる”コマツ電子金属の米良朋洋らは、3酸化膜のTZDB測定で出るBモード不良の原因をCOPと考え、熱処理前、酸化膜成長後、絶縁破壊後の欠陥の構造を比べました。断面TEMで見た熱処理前のCOPは、内壁に2〜10ナノメートルの酸化膜を持つ八面体でした。ゲート酸化をすると角が丸くなり、内壁の酸化膜は表面に育った酸化膜より厚くなります。ところが欠陥の角の部分だけは薄くなり、電圧をかけたときにこの一番薄い場所で絶縁破壊が起こると米良らは推測しています。
破壊した場所の特定には銅析出法を使います。絶縁膜の電流が漏れる箇所へ銅を析出させ、破壊点の座標をSEMで記録する方法で、米良らは10V・10分の条件を採り、その座標をパーティクルの座標と重ね合わせました。同社が使ったウェーハでの測定では、酸化膜耐圧劣化の原因の80%程度をCOPが占めました。
井上は総論で、MOSトランジスタのゲート酸化膜が薄くなるにつれて耐圧の低下が現実の問題になったと述べ、COPの寸法が微細加工の寸法と同じくらいになった点も挙げています。ゲート酸化膜が薄くなるほど、直径0.1マイクロメートル程度の空洞が製品の合否へ響きます。
同じ空洞が、測り方ごとにCOP・FPD・LSTDと呼ばれる
Section titled “同じ空洞が、測り方ごとにCOP・FPD・LSTDと呼ばれる”SC-1洗浄のあとパーティクルカウンターで輝点の数と面内分布を測ると、COPとして数えられます。無攪拌でセコエッチングし、楔型のフローパターンの先端を数えるとFPD、赤外のレーザ光散乱トモグラフィで散乱体を数えるとLSTDです。宝来らは、これらが同一の欠陥で、内壁が4ナノメートル程度の酸化物で覆われた八面体の空洞だと推定しています。断面TEMでは、その八面体そのものを撮れます。
表面に出ていない空洞は、内部を透かして測ります。セミラボ・ジャパンは、バルク欠陥検査装置LSM-3000が赤外レーザ光の低角度照明と散乱検出でウェーハ内部の微小欠陥を三次元的に捉え4、酸素析出物(BMD)やCOP、転位欠陥の密度、サイズ、深さ分布をまとめて評価できるとしています。同社が挙げる分解能は、XYイメージで約18nm、XZイメージで約25nmのクラスです。
熱処理で数えられなくなっても、空洞は残っている
Section titled “熱処理で数えられなくなっても、空洞は残っている”1000℃以上の熱処理のあとに鏡面研磨とSC-1洗浄を施すと、COPの内壁に厚さ20〜40ナノメートルの酸化物が育ち、ピットとして数えられなくなります。ここでフッ酸により内壁の酸化物を除くと、COPは再びピットとして数えられ、その密度は育成直後の状態と一致しました。数が減った理由が欠陥の消滅なのか検出の取りこぼしなのかを取り違えると、欠陥検査の結論ごと誤ります。
V/Gで減らせば転位クラスターが生じ、表層を作り直せば工程が増える
Section titled “V/Gで減らせば転位クラスターが生じ、表層を作り直せば工程が増える”宝来らは、温度分布の異なる4つのホットゾーンで結晶を育て、引き上げ速度Vと融点直下の温度勾配Gの比V/Gが欠陥の種類を左右すると報告しています。結晶中心で約0.22(単位はmm²/℃・min)という臨界値よりV/Gが大きいと、結晶の中央に原子空孔に由来するLSTD、FPD、COPが生じました。小さいと、格子間シリコンに由来する転位クラスターが生じました。COPを避けてV/Gを下げすぎると、もう一方の欠陥を抱えます。
V/Gの制御で、空洞そのものを持たない結晶も作られています。開発者らは、結晶の軸方向と径方向の両方でv/Gを制御して成長時導入欠陥のないCZシリコン単結晶「Pure Silicon」を育てる技術を開発し、1998年12月から量産の水準で生産しているとしています5。同じ報告は、ゲート酸化膜の耐圧劣化や接合リーク、素子分離リークの原因になるCOP、ボイド欠陥、OISFの核がないことで、デバイスの性能と歩留まりを大きく改善できるとしています。
ウェーハメーカーには、表層を作り直す手もあります。SUMCOは、ポリッシュト・ウェーハを水素またはアルゴンの雰囲気で高温熱処理し、ウェーハ表面近くの酸素を除いて表層の結晶完全性を高めたもの6をアニール・ウェーハとして製品に挙げています。アニールウェーハの規格はCOPの低減と無欠陥層の幅を特性に含めています。SUMCOは、結晶の完全性を要する用途には、表面へ単結晶シリコンの層を気相成長させた7エピタキシャルウェハを挙げています。信越化学工業も、アニールウエハーとエピタキシャルウエハーをシリーズ名称に含めています8。
どちらの手も工程が一つ増え、熱処理炉やエピタキシャル炉の時間と、そのぶんの費用が加わります。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”結晶欠陥(COP)とは何ですか?
シリコン単結晶を育てるあいだに中へできた八面体の空洞が、ウェーハ表面まで達してくぼみになったものです。COPはCrystal Originated Particleの略で、パーティクルカウンターで輝点として観察される0.1マイクロメートル程度のピットです。
パーティクルとどこが違いますか?
パーティクルは外から付いた異物なので、洗浄で数が減ります。COPはウェーハ自身のくぼみなので、SC-1洗浄で表層が削れるたびに、埋まっていた空洞が新しいくぼみとして表面へ出ます。
どの工程で生まれますか?
単結晶を育てる工程です。融液と結晶の境目から取り込まれた原子空孔や格子間原子、酸素が、固まったあとの冷却の途中で集まってできる二次的な欠陥で、スライスより前の段階で結晶の中にできています。
何が困りますか?
ゲート酸化膜の耐圧が落ちます。COPの内壁に育つ酸化膜は角だけが薄く、そこが絶縁破壊の起点になると推測されています。1997年のコマツ電子金属の報告では、同社が使ったウェーハで耐圧劣化の原因の80%程度をCOPが占めました。
どうやって測りますか?
同じ空洞でも、SC-1洗浄のあとパーティクルカウンターで数えるとCOP、無攪拌のセコエッチングで楔型模様の先端を数えるとFPD、赤外のレーザ光散乱トモグラフィで数えるとLSTDと呼ばれます。断面TEMでは八面体の空洞そのものを撮れ、赤外レーザで内部の欠陥を三次元で捉える装置もあります。
熱処理をすると消えますか?
数のうえで消えたように観察される場合があります。1000℃以上の熱処理のあとに鏡面研磨とSC-1洗浄を施すと、内壁に厚さ20〜40ナノメートルの酸化物が育ってピットとして数えられなくなりますが、フッ酸で酸化物を除くと、育成直後と同じ密度で再び数えられます。
減らすにはどうしますか?
結晶の育て方を変えるか、ウェーハ表層を作り直します。引き上げ速度Vと融点直下の温度勾配Gの比V/Gが結晶中心で約0.22という臨界値より大きいと原子空孔に由来するCOPが、小さいと格子間シリコンに由来する転位クラスターが生じます。表層を作り直す製品として、SUMCOと信越化学工業はアニールウェーハやエピタキシャルウェーハを扱っています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- パーティクルとは── 外から付いた異物なので、洗浄で数が減ります
- 酸素析出物(BMD)とは── 内部にあれば味方になる欠陥、COPは表面まで達すると困る欠陥です
- エピタキシャルウェハとは── 表層を作り直して、この欠陥を避ける製品です
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- 1応用物理学会 応用物理 第66巻第7号:シリコン結晶中の成長時導入欠陥の実体と生成挙動(1997年)jstage.jst.go.jp ↩
- 2応用物理学会 応用物理 第66巻第7号:シリコン結晶中の成長時導入欠陥について(総論)(1997年)jstage.jst.go.jp ↩
- 3応用物理学会 応用物理 第66巻第7号:シリコン結晶中の成長時導入欠陥と酸化膜耐圧劣化(1997年)jstage.jst.go.jp ↩
- 4セミラボ・ジャパン:バルク欠陥検査装置 LSM-3000semilab-j.jp ↩
- 5日本結晶成長学会誌 第27巻第2号掲載論文jstage.jst.go.jp ↩
- 6SUMCO:シリコンウェーハ製品一覧sumcosi.com ↩
- 7SUMCO:シリコンウェーハの製造方法sumcosi.com ↩
- 8信越化学工業:シリコンウエハーshinetsu.co.jp ↩