スライシングとは
スライシングとは、単結晶インゴットを薄い円盤へ切り分け、ウェーハの形にする工程です。 1本のインゴットから何枚のウェーハを取り出せるかが、ここで決まります。決めるのは切りしろと取り代という2つの厚みで、切りしろを詰めれば取れる枚数が増え、切断面の傷が深ければ後工程で削り落とす取り代が増えます。どちらも、ワイヤの太さと砥粒の持ち方、刃の仕様で動きます。
外周を研削して直径をそろえ、厚さ1mm程度の円盤に切る
Section titled “外周を研削して直径をそろえ、厚さ1mm程度の円盤に切る”SUMCOは、ウェーハ加工工程を切断(スライシング)、粗研磨(ラッピング)、エッチング、研磨(ポリッシング)、洗浄・検査の5段階に分けています。スライシングはその1段目です。まずインゴットの直径が均一になるように外周を研削し、客先が求める抵抗率に応じて内周刃切断機かワイヤーソーを選んで、厚さ1mm程度の円盤へスライスします1。
切り終えた直後の円盤は、接着されたまま元のインゴットの姿で並んでいます。東京精密の剥離洗浄機は2、ワイヤーソーでスライスした後のインゴット洗浄から、ウェーハの枚葉化、スクラブ洗浄、カセット収納までを担う多機能型の洗浄装置です。切る作業と同じくらい、切ったあとに1枚ずつ剥がして切り粉を落とす作業が、この工程の実務を占めます。
ワイヤーソーは、溝付きローラーに巻いた線を走らせて切る
Section titled “ワイヤーソーは、溝付きローラーに巻いた線を走らせて切る”ワイヤーソーでは、等間隔の溝を刻んだ回転ローラーにワイヤを巻き付け、約10m/sの速さで走らせます3。並んだワイヤの間隔を変えれば、狙いのウェーハ厚さに合わせられます。太陽電池用シリコンの例では、線径180µmの硬い鋼線で切ると、切りしろは約200µmになります。
切りしろは取れる枚数を、取り代は切断厚みを左右する
Section titled “切りしろは取れる枚数を、取り代は切断厚みを左右する”切りしろは、線の太さと砥粒の分だけ粉になって失われる厚みです。取り代は、切断が残した傷と歪みを消すために、後工程で削り落とす厚みです。前者を減らせば1本から取れる枚数が増え、後者を減らせば同じ枚数を薄い切断厚みで得られます。切断機は、この2つの厚みを同時に握ります。
切断が生む厚みのばらつきは、そのまま後工程へ渡ります。粗研磨でウェーハ両面を平行に整えながら所定の厚さへ仕上げ、続くエッチングで、前の工程までにウェーハ表面へついた機械加工由来のダメージを化学的に除きます1。つまりスライス後の円盤は、あとで削られる前提の厚みを持っています。切断面の傷と歪みが深いほど、ラッピングとエッチングで削り取る量が増え、製品として残る厚みが目標を割り込みます。逆に切りしろを詰めすぎると、線が振れたときに切断面が波打ち、同じ長さのインゴットから取れる枚数が減ります。
砥粒をワイヤへ固定すると、時間と切り代と歪みが同時に減るとされる
Section titled “砥粒をワイヤへ固定すると、時間と切り代と歪みが同時に減るとされる”旭ダイヤモンド工業は、張力の高いワイヤへダイヤモンド砥粒を電着した細くて長いワイヤ工具、電着ダイヤモンドワイヤ「エコメップ」が、従来の遊離砥粒方式に比べてシリコンやサファイアなど硬脆材料のスライス時間を短縮し、切り代と加工歪みを減らして歩留まり向上へ寄与するとしています4。同社は、水溶性の切削液を使うので切り粉の回収と再資源化ができ、全体のコストを下げられるともしています。
刃の仕様は、速さ・切断面・寿命のどれを優先するかで先に決まる
Section titled “刃の仕様は、速さ・切断面・寿命のどれを優先するかで先に決まる”切断面には、線の走った跡がソーマークとして刻まれます。旭ダイヤモンド工業は電着バンドソーについて、刃先の電着層が連続する連続型が切断面のソーマークを軽減し4、硬い材料の切断に向くとし、セグメント型は切削性と寿命に優れるとしています。同社は、電着パターンの大きさとピッチを変えた切れ味優先の仕様も製作します。
太陽電池用シリコンインゴットの成形と不純物層除去に使う同社のODブレードには、切れ味と寿命の釣り合いを取ったノーマルタイプ、切れ味と加工効率を重んじたスリットタイプ、切断面のチッピングを抑えることを狙ったウェーブタイプの3タイプがあります。速く切ること、切断面をきれいに保つこと、刃を長持ちさせることの3つのうち、どれを優先するかが工具の仕様として先に決まります。
外周の研削と面取りも、切断の前後に入る
Section titled “外周の研削と面取りも、切断の前後に入る”旭ダイヤモンド工業の外周研削・OF用ダイヤモンドホイールは5、半導体用と太陽電池用のシリコンインゴットを研削する工具です。切断後のウェーハ外周には面取りが施されます。ウェーハ端面の加工状態は品質面で重視されており6、東京精密は、ナイフエッジに起因する歩留まり低下に対して面取り機が有効だとしています。
1960年代の日本にはシリコンウェーハの専業メーカーが設立され7、素材となる多結晶シリコン、結晶を作るCZ炉、結晶加工用のダイシングソーと洗浄装置までを含む供給網が整いました。切断と洗浄は、その当時から一続きの工程として組み立てられてきました。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”スライシングとは何ですか?
単結晶インゴットを薄い円盤へ切り分け、ウェーハの形にする工程です。外周を研削して直径を均一にしたうえで、内周刃切断機かワイヤーソーで厚さ1mm程度へスライスします。
なぜ切る前に外周を研削するのですか?
直径を均一にするためです。引き上げた直後のインゴットは太さにむらがあり、そのまま切ると1枚ごとに直径が変動します。
内周刃切断機とワイヤーソーはどう使い分けますか?
客先が求める抵抗率に応じて、内周刃切断機かワイヤーソーを選びます。
切りしろとは何ですか?
切断で粉になり、材料として失われる厚みです。線の太さと砥粒の分だけ削り取られ、太陽電池用の例では線径180µmの鋼線で約200µmが失われます。同じ長さのインゴットでも、切りしろの大小で取れる枚数が変わります。
遊離砥粒方式と電着ダイヤモンドワイヤは何が違いますか?
砥粒の持ち方です。旭ダイヤモンド工業は、高張力ワイヤへダイヤモンド砥粒を電着した工具が、従来の遊離砥粒方式に比べてスライス時間を短縮し、切り代と加工歪みを減らして歩留まり向上へ寄与するとしています。
切った直後のウェーハはそのまま次の工程へ進めますか?
剥離と洗浄が間に入ります。東京精密の剥離洗浄機は、スライスを終えたインゴットの洗浄から、ウェーハを1枚ずつに分ける枚葉化、スクラブ洗浄、カセットへの収納までを1台で担います。
スライシングのあとは何をしますか?
粗研磨(ラッピング)、エッチング、研磨(ポリッシング)、洗浄・検査が続きます。切断面の傷と歪みは、この後半で削り取られます。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- ワイヤーソーとは── スライシングを担う装置そのものの話です
- ラッピング(遊離砥粒研磨)とは── 切断が残した厚みのばらつきを整える次の段です
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- 1SUMCO:シリコンウェーハの製造方法sumcosi.com ab
- 2東京精密:剥離洗浄機accretech.com ↩
- 3PV-Manufacturing.org:Waferingpv-manufacturing.org ↩
- 4旭ダイヤモンド工業:シリコン向け製品 2ページ目asahidia.co.jp ab
- 5旭ダイヤモンド工業:シリコン向け製品 1ページ目asahidia.co.jp ↩
- 6東京精密:ポリッシュ・グラインダaccretech.com ↩
- 7日本半導体歴史館:装置・材料 1960年代shmj.or.jp ↩