コンテンツにスキップ

FZ法(浮遊帯域溶融)とは

FZ法(浮遊帯域溶融)とは、多結晶シリコンの棒を立てたまま一部だけを溶かし、その溶けた帯を棒に沿って移動させて単結晶へ変える方法です。 石英ルツボを使わないので、るつぼ由来の不純物と酸素が結晶へ入らず、抵抗率は1万Ω・cmを超える領域まで届きます。代わりに融けた部分を支える器も消え、口径は表面張力を保てる範囲に限られるので、大口径と供給量はCZ法に譲ります。得るものと差し出すものが、るつぼを省くという同じ1つの変更から生じます。

るつぼの代わりに、表面張力で保った溶融帯を棒に沿って動かす

Section titled “るつぼの代わりに、表面張力で保った溶融帯を棒に沿って動かす”

シリコン単結晶を育てる主流はCZ法です。石英ルツボの中で融かし、種結晶を触れさせ、回転させながら引き上げます。FZ法はこのルツボを使わず、シリコン多結晶の円筒棒を直立に保持し、その一部を高周波加熱で溶かし、高周波コイルを移動させて棒の一端から順に単結晶にします1。帯が通り過ぎた後ろが、単結晶として固まります。

FZ法はHenry Theuererが開発した方法で、工程は真空中か不活性ガスの雰囲気で行います2。高周波で多結晶棒を融かし、その融けた部分へ単結晶の種結晶を触れさせ、転位のない結晶にするためにネッキングを施します。そのあと溶融帯を棒に沿って動かすと、帯の後ろが単結晶に固まり、同時に材料が精製されます。

るつぼの壁が消え、溶融帯は表面張力で保たれる
CZ法結晶融液石英ルツボるつぼからの酸素FZ法多結晶棒溶融帯単結晶ネッキング種結晶コイルを上へ高周波コイル表面張力で保持不純物は帯に残る
CZ法では石英ルツボから融液へ酸素が入ります。FZ法の溶融帯はるつぼに触れず表面張力で保たれ、多くの不純物は帯の側に残ります。

口径は、上下の軸の速度差で決まります。同じ口径の棒材から、上軸側(原料棒)の移動速度を下軸側の移動速度(育成速度)より速くすると単結晶の口径が太くなり、これが口径を制御する手立てになります。溶かす熱源の出力と上下の軸の速度差が、そのまま形の指示になります。

方法そのものはシリコン専用ではありません。浮遊帯域溶融法は、るつぼを使うブリッジマン法やチョクラルスキー法と比べてるつぼ材から試料への不純物混入を避けられるため高純度の単結晶づくりに向き、一方で大口径の単結晶づくりには向きにくくなります3。加熱源には光学式、高周波式、電子ビーム式があり、原料棒の先端を溶かして種結晶と触れさせ、溶融帯を作ってからその帯を移動させます。東北大学金属材料研究所の光学式浮遊帯域溶融炉は酸化物や金属を対象にした共同利用装置で、標準の作製サイズは直径5〜15mm、長さ30〜100mmです。

不純物は溶融帯に残るので、帯を通すたびに結晶は純化する

Section titled “不純物は溶融帯に残るので、帯を通すたびに結晶は純化する”

FZ法は最も純度の高い結晶シリコンを作る方法で、その理由は偏析にあります。たいていの不純物は偏析係数が1を大きく下回るので融液の側にとどまり、固まる結晶はより純粋になります2。高周波コイルの移動を繰り返せば、純度を99.999999999%、9が11個並ぶイレブン・ナインまで高められます1。

CZ法はこの逆の条件にあります。石英るつぼに含まれる不純物が融液へ溶け込むため、ドーパントの添加を控えても低い抵抗率になりやすく、抵抗率の高い高純度の単結晶は得にくくなります。Siltronicは、FZ結晶は融けたシリコンが石英ルツボに触れないので酸素が少なく4、そのため電気抵抗が非常に高く、キャリアのライフタイムが長い結晶を作れるとしています。同社は、こうした結晶がパワー半導体と高電圧の用途で特に必要とされるとしています。シリコンの量産では、SUMCOも客先の要望に応じて、石英ルツボを使わずに酸素濃度の低い単結晶インゴットを育てるFZ法5を用いる場合があります。

抵抗率は、1万Ω・cmを超える領域まで届く

Section titled “抵抗率は、1万Ω・cmを超える領域まで届く”

抵抗率の範囲は、CZ単結晶が0.001〜50 Ω・cm、MCZ単結晶が1〜500 Ω・cm、FZ単結晶が10〜20000 Ω・cmです1。1万Ω・cmを超える領域まで届くのは、FZ法の側だけです。Topsilは、工程の純度が高いのでFZシリコンは10万Ω・cmを超える抵抗率でも育てられるとしています6。

FZ法だけが、1万Ω・cmの線を越える
CZMCZFZ0.001〜501〜50010〜200000.0011101万10万抵抗率(Ω・cm、対数目盛)
同じ対数目盛に並べると、CZ単結晶とMCZ単結晶の範囲は500 Ω・cmまでで止まり、FZ単結晶だけが1万Ω・cmの線を越えて20000 Ω・cmまで伸びます。

高い耐圧の素子を作る側にとって、この差はそのまま材料の選択になります。FZ単結晶の主な用途はサイリスタやパワートランジスタなどのディスクリート素子で、CZ単結晶の用途はICやLSIなどの集積素子です。

口径は表面張力を保てる範囲に限られ、大口径はCZ法に譲る

Section titled “口径は表面張力を保てる範囲に限られ、大口径はCZ法に譲る”

るつぼを省くと、融けた部分を支える器も工程から消えます。表面張力で溶融帯を保つ制約から、FZウェーハの直径は通常150mmに限られます2。一方で、Siltronicは2002年から直径200mmのFZ結晶を提供しているとしています4。一方、CZ法で育てた直径300mmウェーハ用の結晶は、長さ2m、重さ300kgを超える大きさになります7。この規模のインゴットを器の支え無しで保つ難しさが、FZ法の適用範囲を限ります。

供給量にも差が表れています。2006年11月時点で、汎用性の高いCZ単結晶とMCZ単結晶を合わせた年間製造量が全体の約94%を占め、残る約6%がFZ単結晶でした1。その内訳は、ガスドープ法が4%、NTD法が2%です。

るつぼそのものも1つの産業です。信越化学工業は電子材料事業の製品に、シリコン単結晶引き上げ用石英るつぼ8を掲げています。CZ法はこの消耗品を毎回要し、FZ法ではこの費目が消えます。

抵抗率を面内で揃えるには、中性子照射と熱処理を足す

Section titled “抵抗率を面内で揃えるには、中性子照射と熱処理を足す”

高い抵抗率が取れることと、その値が面内で揃うことは別の話です。FZシリコン単結晶へ不純物を入れる方法には、中性子を照射するNTD法と、単結晶の成長過程でガス状の不純物元素を加えるガスドープ法があります1。NTD法(Neutron Transmutation Doping)は、シリコン中に一様に存在する同位体の30Siが中性子を吸収して31Siになり、ベータ崩壊を経て安定同位体のリン31Pへ核変換する反応を使って、リンを均一にドープします。6インチ口径のシリコン単結晶では、在来法の±20%に対し、NTD法なら±5%の均一度に届くとされます。

核変換でリンを入れると、ばらつきの幅が縮む
リンへの核変換30Si31Si31P中性子を吸収ベータ崩壊照射欠陥を熱処理で除く6インチ口径の面内ばらつき±20%±5%在来法NTD法
リンの元になる30Siは結晶中に一様に存在するので、6インチ口径での面内ばらつきは在来法の±20%からNTD法の±5%へ縮むとされます。

代償として、中性子の照射で生じる各種の欠陥を取り除くため、照射のあとに熱処理が要ります。面内の均一化には、照射のあいだインゴットの軸を中心に定速で回転させます。軸方向にはフィルター法、反転法、定速移動法などがあり、国内の原子炉では反転法が採られています。Siltronicは、自社のPowerFZウェーハが径方向にとりわけ平らな抵抗率の分布を持ち、その均一さがパワーMOSFETやIGBTの用途に向くとしています。

照射へ回すインゴットは、取扱重量の都合から多くの場合、長さ約20cmまたは約30cmのブロック(6インチ径でおよそ11kg)へ短くしてから原子炉へ入れます。照射を終えたインゴットは、スライスマシンで厚さ1mm以下へ切断されます。1本の塊の長さが、原子炉の照射孔の寸法に合わせて切られます。

高い耐圧と低い酸素濃度を要する素子で選ぶ

Section titled “高い耐圧と低い酸素濃度を要する素子で選ぶ”

サイリスタやパワートランジスタという用途は、低酸素濃度という特徴と重なります。石英ルツボを使わなければ、るつぼ由来の酸素が結晶へ入る経路も同時に消えます。CZ法では石英るつぼから酸素が融液に溶け込み、FZ法では酸素の少ない結晶が得られます。酸素の濃度を低く保ちたい製品と、高い抵抗率を要する製品は、多くの場合で同じ側にあります。

裏を返すと、汎用のICやLSI向けにFZ法を選ぶ理由は薄くなります。口径の上げやすさと安定した供給量で、CZ法の側が有利になるためです。材料は、素子が支える電圧と、必要な口径の2つで選びます。SiltronicがPowerFZの用途に挙げるIGBTは、高い電圧と大きな電流を扱うパワー半導体です。

FZ法とは何ですか?

多結晶シリコンの棒を立てたまま一部だけを溶かし、その溶けた帯を棒に沿って移動させて単結晶へ変える方法です。浮遊帯域溶融法、フローティングゾーン法とも呼ばれ、石英ルツボを使わない点がCZ法との違いです。

CZ法との違いは何ですか?

るつぼを使うかどうかです。FZ法では融けたシリコンが石英ルツボに触れないので、酸素濃度の低い単結晶インゴットが育ち、るつぼ材からの不純物混入も避けられます。一方で、大口径の単結晶づくりには向きにくくなります。

なぜ高い抵抗率の結晶が得られるのですか?

CZ法では石英るつぼの不純物が融液へ溶け込み、ドーパントを控えても抵抗率が下がりやすいのに対し、FZ法にはその入口がなく、多くの不純物は溶融帯の側に残るためです。抵抗率の範囲は、CZ単結晶が0.001〜50 Ω・cm、FZ単結晶が10〜20000 Ω・cmです。

大口径にしにくいのはなぜですか?

るつぼを省くと融けた部分を支える器も消え、口径が表面張力を保てる範囲に限られるためです。FZウェーハの直径は通常150mmに限られるとされ、Siltronicは2002年から200mmのFZ結晶を提供しています。CZ法で育てた直径300mmウェーハ用の結晶は長さ2m、重さ300kgを超えます。

NTD法とは何ですか?

中性子照射でリンを均一にドープする方法です。シリコン中に一様に存在する同位体の30Siが中性子を吸収して31Siになり、ベータ崩壊で安定同位体のリン31Pへ核変換します。6インチ口径では、在来法の±20%に対してNTD法なら±5%の均一度に届くとされます。

中性子を当てたあとに熱処理をするのはなぜですか?

照射で生じた各種の欠陥を取り除くためです。重水炉のほうが抵抗率の回復が早い傾向があります。

FZ法はどのくらいの割合で使われていますか?

2006年11月時点で、CZ単結晶とMCZ単結晶を合わせた年間製造量が全体の約94%を占め、残る約6%がFZ単結晶で、その内訳はガスドープ法4%、NTD法2%です。用途は主にサイリスタやパワートランジスタなどのディスクリート素子です。

8件を表示
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8