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ディスクリート半導体とは

ディスクリート半導体とは、集積回路に対して単一の機能を果たす半導体デバイスです。 トランジスタやダイオードが代表で、ディスクリートはこの類型を表す形容詞です。素子1個へ面積と放熱を集中させられるので、大きな電流を流すパワー半導体の多くがこの形で作られます。そのぶん、通せる電流の上限を決めるのは型番よりも放熱の設計で、データシートの許容損失や電流の値は放熱条件と組で読む必要があります。

集積回路は素子を詰め込み、ディスクリートは1つの役目に絞る

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集積回路は、極めて小さな部品をダイの上に高密度に詰め込んだ電子回路の集合です1。ディスクリートはその反対側にあり、単一の機能を果たす半導体デバイスの類型2を指します。1つのパッケージに入っているのは1つの素子で、果たす役目も1つです。トランジスタならスイッチか増幅、ダイオードなら整流だけを担います。

ダイオードという言葉は、もとは電極が2つの真空管を指していました2。いまはp-n接合を持つ半導体で作るのが一般的な、2端子の電子デバイスを指します。

数百アンペアを通す素子は、面積と放熱を1個に集中させる

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集積の技術が進んでも単機能の素子が売られ続ける理由は、流す電力の大きさです。数百アンペアを1つの素子へ流すには、電流が通る断面と、発生した熱を逃がす経路が要り、どちらも面積を消費します。集積回路が面積あたりの機能を最大にするのに対し、ディスクリートは1つの機能へ面積を最大限に割り当てます。信号演算の回路と同じダイに同居させれば、面積も放熱も足りません。そのためIGBTやパワーMOSFETは単体の素子として1個ずつ大きく強く作られ、パワーモジュールへ組み込まれます。

IGBTは、3端子のバイポーラトランジスタとMOSFETを組み合わせたディスクリート半導体です1。少数キャリアを注入するので、動的抵抗をMOSFETより低くできます。高い耐圧を持ちながら比較的高速な電力用トランジスタとして、自動車やエアコンでの採用が増えています。

設計の対象も集積回路とは違います。集積回路の設計は、製造プロセスが用意した標準的な素子をどう配置し、どうつなぐかを決める作業です。ディスクリートでは素子の構造そのものが設計対象です。耐圧を上げればオン抵抗が増え、電流を増やせば発熱が増えます。この釣り合いをどこで取るかが製品の性格を決め、同じ「半導体の設計」という言葉が両者でまったく異なる作業を指します。

品種はダイオード、トランジスター、光半導体の3系統に分かれる

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ディスクリート半導体は1つの品種の名前ではなく、ダイオード、トランジスター、光半導体の3系統3をまとめた分類の名前です。

ダイオードには、整流ダイオード、ショットキーバリアダイオード(SBD)、定電圧ダイオード、ESD保護用ダイオード、可変容量ダイオードがあります。共通するのは電気の流れを一方通行にする4性質で、整流のほか、ラジオの電波から音声信号を取り出すこともできます。その上に、切り替えの速さ、電圧の安定、静電気からの保護といった役目ごとの品種が乗っています。通常のダイオードは逆方向の接続を想定しておらず、一定以上の逆電圧を受けると壊れます。ツェナーダイオードは一定の逆電圧で絶縁が破壊され、電圧を一定に保ったまま電流を流します。その一種のTVS(Transient Voltage Suppressor)は逆電圧をかける前提で作られ、静電気や電源のばらつきによる想定外の過電流から回路やデバイスを守ります。

トランジスターは、バイポーラートランジスター、JFET、MOSFET、IGBTで、電流を通したり止めたり、小さな入力で大きな出力を動かしたりします。電気のオンオフを高速で切り替える用途ではスイッチング素子と呼ばれ、新電元工業はMOSFETを、電圧駆動のため電力ロスが小さく高周波動作にも適した近年の主力デバイスと位置づけています。光半導体は、フォトカプラーを含むアイソレーター/ソリッドステートリレー(SSR)で、光を介して電気的に絶縁したまま信号を渡します。

製品の並びは耐圧で区切られています。東芝デバイス&ストレージはMOSFETを「12V - 300V MOSFET」と「400V - 900V MOSFET」の2つの耐圧帯5に分け、車載MOSFETを別の入口にしています。400V〜900Vの帯には、高出力の電源向けのスーパージャンクション(SJ)構造と、それより出力の小さい用途向けの二重拡散(D-MOS)構造があります。

モジュールは部品の数で、パワー半導体は電流の大きさで分ける

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素子1個と部品群
ディスクリート素子1個モジュールブリッジダイオード交流交流直流+直流-
ディスクリートのパッケージには素子が1個だけ入ります。ブリッジダイオードはダイオード4個または6個を1つのパッケージにまとめ、交流を直流に変える部品群として売られます。

ディスクリートは単一の機能を持つ半導体で4、モジュールはそれ自身が多くの部品を含む「ひとかたまりの部品群」です。代表例は、複数個のパワー半導体を組み合わせたパワーモジュールと、4個または6個のダイオードをブリッジ状に接続して交流を直流に変換するブリッジダイオード(ダイオードモジュール)です。

パワー半導体は、別の切り口の言葉です。概ね定格電流が1A以上のものがパワー半導体に分類されます。1つの素子が単独で入っているかどうかでディスクリートが決まり、通す電流と電力の大きさでパワー半導体が決まります。

定格は一瞬も超えられず、許容損失はケース25℃という条件付きの値

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ディスクリートを選ぶ作業は、データシートの数表と向き合う作業で、最初に来るのが絶対最大定格です。パワーMOSFETの最大定格は6、ドレイン・ソース間電圧(VDSS)が「ドレイン・ソース間に印加できる最大電圧」、ゲート・ソース間電圧(VGSS)が「ゲート・ソース間の絶縁膜に印加できる最大電圧」、ドレイン電流DC(ID)が「直流電流の最大値」、チャネル温度(Tch)が「動作可能なチャネルの最大温度」です。

絶対最大定格は、複数ある定格のどの1つについても瞬時の超過を禁じる規格です7。超過すれば「破壊、損傷および劣化の原因となり、破裂・燃焼による傷害を負うことがあります」。MOSFETの最大定格も、チャネル温度が150℃以内に収まる放熱条件での使用を求めています。ディスクリートの設計で放熱が主題になるのはこのためです。

許容損失(PD)は「Tc=25℃の場合にデバイスで発生させることのできる損失」です。Tcはケース温度で、素子の性能と、その値を測った条件が1つの数字に同居しています。許容損失は規定の放熱条件において、MOSFET に連続的に消費させることのできる損失の最大値で8、無限大放熱板を付けた状態でのチャネルchとケースcの間、あるいはチャネルchと周囲aの間について規定されます。

熱の通り道
熱周囲 aチャネル chケース c絶縁板接触面放熱板(1) ch-c間(2) 絶縁板(3) 接触(4) 放熱板ch150℃以内a
チャネルの熱はケース、絶縁板、接触面、放熱板を順に通って周囲へ逃げ、4つの熱抵抗は直列に足し合わされます。放熱板を付けた状態の許容損失は、その総和から算出します。

放熱板を付けて使う場合の許容損失は、(1) ch-c間熱抵抗(内部熱抵抗)、(2) 絶縁板熱抵抗、(3) 接触熱抵抗、(4) 放熱板熱抵抗の総和から算出します。素子の内側の熱抵抗に、絶縁板と接触面と放熱板の熱抵抗が直列に加わり、4つの総和が大きいほど、同じ電流でチャネル温度が高くなります。許容損失は使用条件(周囲温度、放熱条件)で変わるので、実機状態でのch-a間熱抵抗から求める必要があります。データシートの熱抵抗はチャネル温度を計算するために使用9する係数で、素子の善し悪しを表す成績表ではありません。

放熱の余裕は、素子の型番よりも、基板と放熱板と周囲温度で決まります。同じ型番でも、放熱板を付けた実機と部品単体の数表とでは、通せる電流が変わります。カタログの電流値をそのまま設計値にすると、電流の上限より先にチャネル温度の上限へ届きます。

数表の項目名は品種ごとに異なります。ダイオードの絶対最大定格は、逆電圧(VR)、ピーク繰り返し逆電圧(VRRM)、平均順電流(IF(AV))、非繰り返しピーク順電流(IFSM)、接合温度(Tj)、保存温度(Tstg)などです10。同じ「絶対最大定格」という見出しの下で、MOSFETの表とダイオードの表は別の量を載せています。

IGBTとパワーMOSFETは、電流域と温度で答えが入れ替わる

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順方向特性
電圧降下電流MOSFET(常温)MOSFET(高温)IGBT小電流:MOSFETが有利大電流:IGBTが有利
電流が小さいうちはMOSFETの電圧降下が低く、交点を越えるとIGBTが低くなります。MOSFETの順方向特性は強い正の温度特性を持つので、高温・大電流ほどIGBTとの差が開きます。

IGBTとパワーMOSFETは、同じ用途で候補に挙がります。順方向特性は、小電流領域ではMOSFETが低い電圧降下で優れ、大電流領域ではIGBTがMOSFETに対して優れます11。MOSFETの順方向特性は強い正の温度特性を持つので、高温・大電流の領域ではこの差が拡大します。ただし、トレンチMOSFETのような低耐圧品はオン抵抗が非常に小さく、実動作電流領域ではMOSFETのほうが電圧降下が小さくなります。

選択は、耐圧と電流と温度の3つで決まります。同じ「大きな電力を通す素子」でも、どの電流域とどの温度で使うかによって答えが入れ替わります。

ディスクリート半導体とは何ですか?

集積回路に対して単一の機能を果たす半導体デバイスで、トランジスタやダイオードが代表です。ディスクリートは、この類型を表す形容詞です。

集積回路と何が違いますか?

1つのパッケージが担う機能の数です。集積回路は多数の素子を1枚のダイへ詰め込んでまとまった働きをさせ、ディスクリートは素子1個が1つの役目だけを果たします。

集積回路のほうが優れているのですか?

目的が違います。信号を演算する用途では集積回路に利点があり、大きな電流や電圧を流す用途では、1個の素子へ面積と放熱を集中させるほうが有利です。

どんな製品がありますか?

ダイオード、トランジスター、光半導体の3系統で、パワー半導体の多くもこの分類に入ります。IGBTやパワーMOSFETは単体の素子として売られ、モジュールへも組み込まれます。

なぜ今も使われるのですか?

流す電力が大きいからです。数百アンペアを1つの素子へ流すには、電流が通る断面と熱を逃がす経路の両方に面積が要り、他の回路と同じダイに同居させる形は難しくなります。

設計はどう違いますか?

集積回路は標準的な素子の配置とつなぎ方を決める回路の設計で、ディスクリートは素子そのものの構造設計です。耐圧を上げればオン抵抗が増え、電流を増やせば発熱が増えるので、その釣り合いが製品の性格を決めます。

データシートの許容損失は、そのまま使える数値ですか?

条件が付いた数値です。許容損失(PD)は「Tc=25℃の場合にデバイスで発生させることのできる損失」で、周囲温度や放熱条件で変わるので、実機状態でのチャネル-周囲間の熱抵抗から求め直します。

IGBTとパワーMOSFETは、どちらを選びますか?

電流の大きさが目安です。小電流領域ではMOSFETが低い電圧降下で優れ、大電流領域ではIGBTの順方向特性がMOSFETより優れます。高温ほど大電流側のIGBTの優位が広がり、低耐圧のトレンチMOSFETは実動作電流領域でもMOSFETが有利です。

ディスクリートとパワーモジュールはどう区別しますか?

1つのパッケージに入る部品の数です。モジュールはそれ自身が多くの部品を含む「ひとかたまりの部品群」で、複数個のパワー半導体を組み合わせたパワーモジュールや、ダイオード4個または6個をつないだブリッジダイオードがその例です。

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