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ホール素子とは

ホール素子とは、ホール効果を利用して、磁場に比例した電圧を出力する素子です。 出力は磁場(BB)に比例した電圧(VHV_\mathrm{H})です1。半導体膜に4本の端子を付けただけの単純な構造で、精度を決めるのは3つの選択です。どちらの量を一定にして駆動するか、どの材料を選ぶか、磁場0でも出る電圧をどう扱うかです。

磁場で曲げられた電子が片側に寄り、その偏りが電圧になる

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ホール効果の仕組み
VH電流 I端子1端子3端子2端子4磁場 B(膜に垂直)電子の軌道半導体の薄膜
電流を流した薄膜に垂直な磁場をかけると、電子が横向きの力で曲がって膜の片側に寄ります。両側にできた電荷の偏りが、端子2と端子4の間のホール電圧VHになります。

ホール効果は、1879年にEdwin Hallが見つけた現象です2。電流が流れている導電性の板に、板面と垂直な向きで磁場を通すと、板を横切る向きに電圧が生じます。名称はこのHall博士に由来します。磁場に垂直な向きへ動く電子は、磁場と電流の両方に直交する力を受け、板の中を曲がった軌道で進みます。その結果、板の両側に正味の電荷が偏り、電圧が生じます。

ホール素子は、この効果を半導体薄膜で使います。端子は4つで、入力側がコントロール電圧(またはコントロール電流)とGNDの2本、出力側が差動の2本です。素子に垂直に入った磁場が強いほど出力電圧は比例して大きくなり、磁場の向きが変われば電圧の正負も入れ替わります。垂直な磁場が0のときの出力電圧は0Vで、得られる出力電圧は数十〜数百mV程度です3。

電圧は電子の偏りから出るので、磁場が時間的に変化しなくても出力があります。ホール素子は磁束密度の変化がない静磁場でも磁場の有無を検出できるため4、磁石と組み合わせる非接触スイッチから角度センサー、電流センサーまで使われ、ホール素子を用いた地磁気センサーはスマートフォンなどに広く載っています。

電流を一定にするか電圧を一定にするかで、温度の入口が入れ替わる

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ホール素子の駆動方式は定電流駆動と定電圧駆動の2つで、どちらで駆動するかにより、温度特性のパラメータが異なります1。

定電流駆動では、端子1と3に一定の電流ICI_\mathrm{C}を入れたとき、端子2と4の出力電圧がVH=RH⋅(1d)⋅IC⋅BV_\mathrm{H}=R_\mathrm{H}\cdot\left(\frac{1}{d}\right)\cdot I_\mathrm{C}\cdot Bで表されます。RHR_\mathrm{H}はホール係数、ddは端子面に垂直な方向の半導体膜の厚さです。RHR_\mathrm{H}は電子の電荷eeとキャリア濃度nnからRH=1e⋅nR_\mathrm{H}=\frac{1}{e\cdot n}と表され、出力電圧の温度による動きはRHR_\mathrm{H}の温度による動きに従います。

定電圧駆動では、端子1と3に一定の電圧VCV_\mathrm{C}を入れたとき、VH=μH⋅(WL)⋅VC⋅BV_\mathrm{H}=\mu_\mathrm{H}\cdot\left(\frac{W}{L}\right)\cdot V_\mathrm{C}\cdot Bとなります。μH\mu_\mathrm{H}は電子移動度、WWとLLは端子面の2-4方向と1-3方向の長さです。この駆動では、出力電圧の温度特性がμH\mu_\mathrm{H}の温度特性で決まります。

同じ素子でも、電流を一定に保つとキャリア濃度の側から、電圧を一定に保つと移動度の側から温度の影響が入ります。温度が動く環境では、駆動方式の選択がそのまま精度の設計になります。材料どうしの比較もこの条件をそろえて行い、旭化成エレクトロニクスは3種類の素子を同じコントロール電流Ic=5mAで定電流駆動した出力電圧特性1を示しています。

移動度が感度を、バンドギャップが温度安定を決める

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ホール素子として現在主に使われる半導体材料は、インジウムアンチモン(InSb)、インジウムヒ素(InAs)、ガリウムヒ素(GaAs)の3種類です。ホール素子の感度は半導体材料の移動度に比例し1、温度特性はさまざまな要因が絡むものの、主にバンドギャップの大小で決まります。材料を選んだ時点で、感度と温度安定の配分がほぼ決まります。

シリコン(Si)も代表的なホール素子材料の1つですが、感度が小さいため、ホール素子単体としては使われず、ホールICの側で使われます。村田製作所は、ホールICのセンサ材料をSi(安価、低感度)またはInSb(高感度、ただし温度特性は不利)5と整理しています。

旭化成グループの旭化成エレクトロニクス(AKM)は、材料の異なる3種類を超高感度・高感度・低ドリフトの素子として提供しています1。同社はHWシリーズ(InSb)を3つの中で最も感度が高い製品6としてモーター駆動向けに、HQシリーズ(InAs)を高感度と低消費電流を両立する製品としてバッテリー駆動の携帯機器向けに位置づけています。HGシリーズ(GaAs)は、同社が3つの中で最も温度特性が安定し出力がリニアとする製品で、用途は電流センサです。

磁場0でも出るオフセット電圧が、小さな磁場の読みを狂わせる

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ホール素子では、磁場が0の状態でも出力電圧が生じる場合があり、これをオフセット電圧(不平衡電圧)と呼びます1。原因は製造時の意図しないばらつきなどで、温度特性も持ちます。さらに、温度やパッケージに加わる応力、たとえばモールド樹脂の吸湿による応力の変化によっても変動します。

オフセット成分は4つの抵抗によるブリッジ回路で表せ、4つの抵抗値がすべて等しい場合がオフセット0の場合です。オフセットがあると、出力電圧の特性が縦にずれた形になります。磁場を測る側にとって、この電圧は磁場による電圧と区別が付きにくい邪魔者です。ホールICやリニアホールICが素子の後ろに信号を整えるICを添える理由の1つが、ここにあります。

電圧をそのまま渡すか、2値にするか、増幅するかで製品が分かれる

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磁気センサのうちホール効果を利用したものをホールセンサと呼び、ホールセンサは3つに分かれます3。ホール素子、ホールIC、リニアホールICです。

ホール素子は半導体膜に端子を付けただけの単純なセンサなので、後段の回路設計によってデジタル的な用途にもアナログ的な用途にも使えます。用途はDCブラシレスモーター、スマートフォンやデジタルスチルカメラのレンズアクチュエーターです。

ホールICの出力切替
出力かかる磁場 BHighLowBrpBop磁場を強めるとき磁場を弱めるときヒステリシス
ホールICは、磁場がBopを超えるとLowへ切り替わり、Bopより小さいBrpを下回るとHighへ戻ります。

ホールICは、ホール素子が出した電圧を信号を整えるICでしきい値と比べ、High/Lowへ変換します。磁場がどれだけ強かったかという細かな情報は落ちる代わりに、磁石の有無というデジタル出力を手軽に得られます。出力が切り替わる磁場にはBopB_\mathrm{op}とBrpB_\mathrm{rp}の2つがあり7、かかった磁場がBopB_\mathrm{op}を超えた時点で出力はLowへ落ち、BrpB_\mathrm{rp}より弱まるとHighへ戻ります。BrpB_\mathrm{rp}はBopB_\mathrm{op}より小さく、この2つはヒステリシスの関係にあります。用途は、スイッチタイプが家電の開閉スイッチ、ラッチタイプがDCブラシレスモーターや回転検知です。

リニアホールICは、ホール素子の出力をアンプで増幅してリニア出力にします。磁場が0のときの出力電圧を電源電圧の半分(VCC/2V_\mathrm{CC}/2)とし、磁場の向きに応じて0VからVCCV_\mathrm{CC}までの電圧を出します。用途は液面計、電流センサ、角度検知です。

縦に作ったホール素子なら、チップ面に平行な磁場も測れる

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ふつうのホール素子は膜面に垂直な磁場に感じます。ホールICが拾うのも通常は真上から入る垂直の磁界で、しかも狭い一点に絞られます5。そのため村田製作所は、磁石をホールICの真上へごく近づけて取り付けることを推奨しています。

プレーナ型と縦型
チップ表面シリコンチップの断面面に垂直な磁場面に平行な磁場プレーナ型縦型チップを上から見た配置θ縦型の円形配列
チップ表面に沿って作るプレーナ型は面に垂直な磁場を、深さ方向に作る縦型は面に平行な磁場を受けます。縦型を円形に並べると、面内の磁場の角度θが分かります。

この制約を外すのが素子の向きです。プレーナ型ホール素子はダイの長さと幅の方向(面内)に作られ、縦型ホール素子はチップの深さ方向に下から上へ作られます8。Allegro MicroSystemsは、ICの設計と製造の進歩で、IC面に平行な磁場に感じる縦型ホール素子を作れるようになったとしています。縦型素子を円形に並べれば、かかった磁場の角度を求められます。

ホール素子とは何ですか?

ホール効果を使って、かかった磁場(B)の大きさに比例する電圧(VH)を返す素子です。半導体薄膜に電流を流しておくと、磁束密度の大きさと向きに応じた電圧が出ます。磁場が変化しない静磁場でも、磁場の有無を検出できます。

ホール効果とは何ですか?

電流が流れている板に、板面と垂直な向きで磁場をかけると、電流と磁場の両方に直交する向きに電圧が生じる現象です。動く電子が磁場から横向きの力を受けて曲がり、板の両側に電荷が偏るために起きます。1879年にEdwin Hall(Hall博士)が見つけ、名称はその名に由来します。

端子はいくつありますか?

合わせて4本です。入力側がコントロール電圧(またはコントロール電流)とGNDの2本、出力側が差動の2本です。最大定格の範囲であれば、定電流駆動と定電圧駆動のどちらでも使えます。

ホール素子とホールICはどう違いますか?

ホール素子はホール電圧をそのまま出力し、その大きさは数十〜数百mV程度です。ホールICはその電圧をしきい値で比べてHigh/Lowにするので、磁石の有無を手軽に得られる代わりに、磁場の強さの細かな情報は落ちます。

材料には何を使いますか?

主にインジウムアンチモン(InSb)、インジウムヒ素(InAs)、ガリウムヒ素(GaAs)の3種類です。感度は材料の移動度に比例し、温度特性は主にバンドギャップの大小で決まります。シリコンは感度が小さいため、ホール素子単体ではなくホールICとして使います。

オフセット電圧とは何ですか?

磁場が0の状態でも生じる出力電圧で、不平衡電圧とも呼びます。製造時の意図しないばらつきなどで生じ、温度や、モールド樹脂の吸湿による応力の変化でも変動します。

どこで使われますか?

ホール素子はDCブラシレスモーター、スマートフォンやデジタルスチルカメラのレンズアクチュエーター、スマートフォンの地磁気センサーで使われます。ホールICはスイッチタイプが家電の開閉スイッチ、ラッチタイプがDCブラシレスモーターや回転検知に使われます。

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