圧力センサとは
圧力センサとは、気体や液体が押す力を、薄い膜のたわみを経由して電気信号へ変換するセンサです。 押す力そのものを電気に変える素材を探す代わりに、膜がどれだけ反ったかを測るという遠回りをします。膜の裏に置く基準、たわみの読み方、膜を外気にどうさらすかの3つの選択で、測れる圧力と使える場所が決まります。
圧力センサは、タイヤ圧センサをはじめ車載センサとして多数実用化され、最も普及したMEMSセンサ1とされています。
圧力は、膜の反対側に置いた基準との差で測る
Section titled “圧力は、膜の反対側に置いた基準との差で測る”圧力センサはダイヤフラムで構成され、参照する圧力を変えることで絶対圧、相対圧、差圧を測ります1。膜は3方式とも共通で、異なるのは膜の反対側へ何を用意するかです。片側を真空にすれば絶対圧、大気へ通じさせれば相対圧、両側にそれぞれ別の圧をかければ差圧になります。差圧センサは2つの圧力の差を測るので、圧力の接続口を2つ持ちます2。
膜のたわみを電気にする道は3本あり、シリコンではピエゾ抵抗が強い
Section titled “膜のたわみを電気にする道は3本あり、シリコンではピエゾ抵抗が強い”ダイヤフラムの変形量を検出する方法で、圧力センサは圧電型、ピエゾ抵抗型、静電容量型に分かれます。ダイヤフラムの材料は一般にシリコンで、使用環境に応じてステンレスやセラミックなど様々な材料が用いられます。
金属の薄膜ゲージに使う銅ニッケル合金やニクロム系合金膜では、歪みによる抵抗率の変化が小さく、ゲージファクタは概略2程度にとどまります3。シリコンに代表される半導体材料では、歪みでバンド構造が変わるピエゾ抵抗効果が働き、典型的にはゲージファクタ100〜150程度が得られます。2で割ると、金属の50〜75倍です。値は半導体の種類、p型・n型の別、不純物濃度、結晶方位に大きく依存します。結晶方位に注意すれば、このゲージは標準集積回路の抵抗として容易に作製でき、MEMS型デバイスで応力を計測する際にはピエゾ抵抗型の検出機構がよく用いられます。
ピエゾ抵抗方式では、シリコンダイアフラム上に配置したピエゾ抵抗素子が気圧による応力を受けて抵抗値を変え4、その変化をブリッジ回路などで検出して電気信号にします。構造が単純で小型化しやすいのが特徴です。
圧電型は、PZTやAlN、PVDFなどの圧電材料が、歪みを加えると電荷を発生する性質を利用します。発生するのは応力に比例した電荷で、出力信号は一般にリーク電流によって時間とともに消えていくため、静応力の検出には不向きです。一定に保たれた圧力を長く測る用途では、ピエゾ抵抗型と静電容量型が候補になります。
静電容量方式は、膜と電極の距離で気圧を読む
Section titled “静電容量方式は、膜と電極の距離で気圧を読む”静電容量方式は、気圧で変わるダイアフラムと固定電極板の距離に応じて静電容量が変わる性質を使います4。気圧が上がるとダイアフラムが押し下げられて電極間距離が縮み、静電容量が増えます。気圧が下がると距離が広がり、静電容量は減ります。
村田製作所は、MEMSを用いた気圧センサには主にピエゾ抵抗方式と静電容量方式があり、一般的には静電容量方式のほうが低ノイズかつ低消費電流の点で優れるとしています5。同社は、静電容量方式は温度変化の影響も少ないとしています。同社の気圧センサは静電容量方式で、ダイヤフラムと電極間の静電容量値を気圧値に変換します。構成はMEMS、ASIC、金属Lid、ゲル、基板、ワイヤーボンディングで、ASIC内部の温度センサで温度補正済みの気圧値を出力し、ADCやフィルタ、I2CやSPIのデジタルインタフェースにも対応するとしています。
外気へ開くほど水も入りやすく、防水と測定がぶつかる
Section titled “外気へ開くほど水も入りやすく、防水と測定がぶつかる”圧力センサには、ほかのセンサと異なる事情があります。測りたい対象が外の空気や液体そのものなので、膜の片側を外界へ開いておく必要があります。
筐体を完全密閉すれば防水構造は実現できますが、筐体内部のセンサが外部環境から遮断されるため、外部空間の気圧値を正確に取得できません6。防水フィルムで内部への水漏れに対処する方法もありますが、構造的に高圧防水設計を実現するのは困難です。村田製作所は、防滴フィルムは応答性を保つ代わりに防水性能がフィルムの性能限界までにとどまり、筐体内密閉は防水を最優先する代わりに外気から遠ざかると整理しています。
同社の防水型気圧センサは、筐体へOリングで勘合でき、MEMSやASICなどの素子を金属キャップで覆ってその中をゲルで保護した構造で高い防水構造を実現したとしています。MEMSがゲルを介して外部環境と接するため気圧を測定でき、外気へ直接つながるので応答性良く正確な測定ができるというのが同社の説明です。
微小な差圧は、ガスの流れで測る
Section titled “微小な差圧は、ガスの流れで測る”ガスの流れで差圧を測る方式もあります。TE Connectivityの熱式差圧センサでは、2つの接続口の間に差圧があるとガスがセンサの中を流れ、温度分布が下流側の抵抗の方向へ移ります2。同社は、先進的な熱式センサはフルスケール0.25ミリバール(水柱0.1インチ)という極めて低い圧力まで測れるとしています。
同社は、小型の流路をセンサチップと一体にしたことで20,000〜50,000 Pa/(ml/s)という高い空気抵抗を得られ、長い配管やフィルタをつないでも校正を失わないとしています。一方で同社は、流路に汚れがたまると空気抵抗が上がって出力信号が下がり、校正が狂い、最悪の場合は流路が完全にふさがってセンサが故障するとしています。
気圧から高度を読み、膜はマイクにも共振センサにもなる
Section titled “気圧から高度を読み、膜はマイクにも共振センサにもなる”気圧センサは大気圧を測定して圧力値を電気信号へ変換する機器で、気圧が高度の上昇につれて低下する性質4を使うと、高度や高低差といった立体的な位置情報を得られます。スマートフォンやスマートウォッチではGPSで取りにくい垂直方向の移動を補い、屋内の階段昇降やフロア間の移動を検知します。ドローンではホバリングや設定した高度の維持、掃除機やエアコンではフィルタの目詰まりや吸引力の変化の検知、標高の高い地域では自動車の吸気性能の補正にも使われます。
高度以外の使い道もあります。洗濯機では通気管内の気圧から水位を監視し、ハードディスクドライブやバッテリーパックでは内部に充填したガスの漏れを検出します。睡眠時無呼吸症候群の治療法であるCPAP(持続陽圧呼吸療法)では、環境補正やマスクリークの検知に使い、適切な空気量を気道へ送ります。村田製作所の気圧センサは、民生機器をターゲットとして開発された製品です。
圧力センサを動的に使い、音波を計測するシステムへ転用するとMEMSマイクロフォンになります。ダイヤフラム上に振動する共振子を集積し、ダイヤフラムの変形で生じる共振周波数の変化から圧力を読み取る手法も提案されており、出力が周波数として得られるためノイズに強いセンサを構成できます。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”圧力センサとは何ですか?
気体や液体が押す力を電気信号へ変換するセンサです。ダイヤフラム(薄い膜)で構成され、その変形量を計測して圧力を検出します。
絶対圧、相対圧、差圧の違いは何ですか?
膜の反対側へ用意する基準の中身が異なります。参照する圧力を変えることで、絶対圧、相対圧、差圧を測ります。膜そのものは共通で、基準側を真空にするか、大気へ通じさせるか、別の圧をかけるかで用途が変わり、差圧センサは2つの圧力の接続口を持ちます。
検出の方式にはどんな種類がありますか?
ダイヤフラムの変形量の検出方法で、圧電型、ピエゾ抵抗型、静電容量型の3つに分かれます。村田製作所は、MEMSを用いた気圧センサには主にピエゾ抵抗方式と静電容量方式があり、静電容量方式のほうが低ノイズ、低消費電流で、温度変化の影響が少ないとしています。
なぜシリコンが使われるのですか?
歪みに対する抵抗変化が大きいためです。金属の薄膜ゲージではゲージファクタが概略2程度にとどまる一方、シリコンに代表される半導体材料ではピエゾ抵抗効果により典型的に100〜150程度が得られます。半導体の種類、p型・n型の別、不純物濃度、結晶方位に大きく依存する値です。
圧電型は圧力センサに向きますか?
一定に保たれた圧力の検出には不向きです。圧電材料が発生するのは応力に比例した電荷で、出力信号が一般にリーク電流によって時間とともに消えていくため、静応力の検出に向きません。
防水と圧力測定はどう両立させますか?
センサ自体を防水構造にして、外気へ面する経路を残す設計です。筐体を完全密閉すると内部のセンサが外部環境から切り離されます。村田製作所の防水型気圧センサはOリングで筐体へ勘合でき、金属キャップとゲルで素子を保護しながらゲル越しに気圧を測定できるとしています。
圧力センサはどこで使われていますか?
高度の計測から機器の制御まで広い範囲です。タイヤ圧センサをはじめ車載センサとして多数実用化され、最も普及したMEMSセンサです。スマートフォンでの階段昇降や建物の何階にいるかの検知、ドローンの高度維持、掃除機やエアコンでのフィルタ目詰まりの検知、洗濯機の水位計、CPAP(持続陽圧呼吸療法)の装置にも使われます。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”6件を表示
- 1電子情報通信学会:知識ベース 9群8編5章 MEMS(2012年受領)ieice-hbkb.org ab
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- 3電子情報通信学会:知識ベース 9群8編1章 センサieice-hbkb.org ↩
- 4村田製作所:気圧センサの用途murata.com abc
- 5村田製作所:気圧センサの基礎知識murata.com ↩
- 6村田製作所:技術解説 防水型気圧センサmurata.com ↩