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化合物半導体とは

化合物半導体とは、複数の元素を材料にしている半導体です。 シリコンが元素ひとつでできているのに対し、2種類以上の元素を組み合わせて結晶にするので、組み合わせを変えれば性質も変わります。光る、速い、磁気に敏感、熱に強いという性質を材料の選び方で得られる一方、ウエハの大型化が難しく材料も高価です。性能で勝っても量産の主流はシリコンのままで、化合物半導体はシリコンが苦手な役を受け持ちます。

元素の組み合わせと混ぜる比で、性質を選べる

Section titled “元素の組み合わせと混ぜる比で、性質を選べる”

代表的な組み合わせは、周期律表のIII族とV族(GaAs、GaP、InPなど)、II族とVI族(CdTe、ZnSeなど)、IV族同士(SiC)で1、それぞれ異なった機能を発揮します。

選べるのは組み合わせだけではありません。複数の化合物半導体を混ぜた混晶は、混ぜる比を変えると性質が連続的に変わります2。混晶のごく薄い層を重ねた多層膜は興味深い性質を示し、MOVPE(有機金属気相成長)やMBE(分子線エピタキシー)といった精密なエピタキシャル成長で作ります。

その供給側では、IQEが1988年からGaAsのエピタキシーを事業の中心に置いてきたとしています3。同社は、RFフロントエンドモジュール、3D顔認証、光通信、超高精細ディスプレイ向けの材料を扱い、ゲルマニウム基板上を含めて200 mmまで対応できるとしています。

シリコンは間接遷移型なので、ほとんど光らない

Section titled “シリコンは間接遷移型なので、ほとんど光らない”

化合物半導体が必要になる理由は、シリコンの発光がごくわずかにとどまる点にあります。半導体は、直接遷移型と間接遷移型4の2つに分かれます。

電子と正孔の位置
直接遷移型間接遷移型伝導帯価電子帯電子正孔光同じ対称点格子の熱振動発光はごくまれ別の対称点
直接遷移型では電子と正孔が同じ対称点にいるので、そのまま再結合して光を出します。間接遷移型では両者が別の対称点にあり、再結合に格子の熱振動が要るので、光を出す再結合はごくまれです。

直接遷移型半導体は、結晶の同じ対称点で自由電子・正孔対が直接再結合できる半導体です。電子と正孔が効率よく結合するため発光効率が非常に高く、現在一般的なLEDやレーザダイオードはこの型で作られます。

間接遷移型半導体では、電子と正孔がお互いに別な結晶の対称点に存在します。そのため再結合するのに格子の熱振動のエネルギーが必要になり、電子と正孔が光を放射して直接再結合する例はごくまれで、発光デバイスには不向きです。シリコン・ゲルマニウム・ダイヤモンドがこの型にあたります。

直接遷移型でも、流した電流がすべて光になるわけではありません。電流で生じた電子と正孔の対のうち、目的の波長の光を放射して再結合する割合を内部量子効率4と呼びます。この値は結晶中の欠陥の濃度や発光機構といった材料の物性で決まり、理想は100%で、実用レベルのLEDには10%以上が求められます。光る素子を作れるかどうかは、材料の型と結晶の質の両方で決まり、LEDもレーザも直接遷移型の化合物半導体が担います。

高速、受発光、磁気、熱の4分野を受け持つ

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化合物半導体の特徴は4つあり、それぞれに用途と目安の値が対応します5。

SiとGaAs
電子移動度耐熱の目安基準5倍SiGaAs約200℃約350℃SiGaAs
GaAsの電子移動度はSiの5倍で、耐熱の目安はSiの約200℃に対してGaAsが約350℃です。

1つ目は高速動作です。電子移動度がシリコンに比べて高く、GaAsの電子移動度はシリコンの5倍で、高速な演算が可能です。住友電気工業は、Siをスクーターに、GaAsを新幹線にたとえて速さの差を示しています。用途は高周波のFETやHEMT、マイクロ波ダイオードです。

2つ目は受発光で、光を放つ側と受ける側の両方です。LEDやレーザダイオード、受光素子(PD、APD)があり、光通信やセンサー、赤外カメラに使われます。

3つ目は磁気に敏感なことで、磁気を電気に変えるホール素子です。材料はInSbやGaAsで、モータの回転数の精密な検知などに利用されます5。

4つ目は熱への強さです。化合物半導体はシリコンに比較して耐放射線特性および耐熱性に優れ5、耐熱の目安はSiが約200℃まで、GaAsが約350℃までです。用途は宇宙空間での太陽電池などです。

計算はシリコンが受け持ち、光と高周波と磁気と過酷な環境は化合物半導体が受け持ちます。役割分担は、材料の性質からそのまま決まっています。

バンドギャップが広いGaNとSiCは、耐圧でシリコンと分担する

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バンドギャップ
ワイドバンドギャップ1.12 eV3.26 eV3.5 eV伝導帯価電子帯SiSiCGaN
バンドギャップはSiの1.12 eVに対し、SiCは3.26 eV、GaNは3.5 eVです。

パワー半導体で存在感を増しているのは、GaNやSiCです。Siと違い、GaNやSiCはバンドギャップが大きく、ワイドバンドギャップ半導体と呼ばれます6。バンドギャップが大きいほど高耐圧化が可能になり、値はSiが1.12 eV、SiCが3.26 eV、GaNが3.5 eVです。温度が上がると、熱エネルギーで電子が価電子帯から伝導帯へ移る想定しない動作が起きます。光や速さとは別に、耐圧という要求に応えるのがこの2つの材料です。

ウエハの大型化が難しく、主流はシリコンのまま

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4つの特徴からは化合物半導体のほうが優れているように読めますが、世の中の半導体の材料は長らくほとんどがシリコンでした。住友電気工業は、その理由を材料の側の弱点としています。化合物半導体はシリコンに比べて基板の結晶欠陥が多く割れやすく1、そのため結晶にするときのウエハの大型化が難しく、材料も高価です。同社は、原材料の入手過程や結晶精製過程のコストを考えると実用向きではなかったことを挙げています。

ウェーハの直径が小さいままだと、1枚から取れるチップの数がそのまま減り、1個あたりの費用は歩留まりと同じ論理で上がります。素子の性能がどれだけ良くても、量が限られて高いあいだは、用途を絞った材料に留まります。シリコンとの関係は、置き換えというより分担です。

化合物半導体とは何ですか?

シリコン半導体がひとつの元素を材料にするのに対し、複数の元素を材料にしている半導体です。

どんな組み合わせがありますか?

周期律表のIII族とV族(GaAs、GaP、InPなど)、II族とVI族(CdTe、ZnSeなど)、IV族同士(SiC)が代表的で、それぞれ異なった機能を発揮します。複数の化合物半導体を混ぜた混晶では、混ぜる比で性質を連続的に変えられます。

シリコンとの違いは何ですか?

高速動作、受発光機能、磁気に敏感であること、熱に強いことの4つです。

シリコンが光りにくいのはなぜですか?

シリコン・ゲルマニウム・ダイヤモンドは間接遷移型半導体で、電子と正孔が別な結晶の対称点に存在します。そのため再結合に格子の熱振動のエネルギーが必要になり、光を放射する直接再結合はごくまれです。

光る半導体はどれですか?

結晶の同じ対称点で自由電子・正孔対が直接再結合できる直接遷移型半導体です。発光効率が非常に高く、現在一般的なLEDやレーザダイオードはこの型で作られます。

どのくらい速いのですか?

GaAsの電子移動度はシリコンの5倍で、高速な演算が可能です。住友電気工業は、Siをスクーター、GaAsを新幹線にたとえて速さの差を示しています。

それならなぜシリコンが主流なのですか?

化合物半導体はシリコンに比べて基板の結晶欠陥が多く割れやすいためウエハの大型化が難しく、材料も高価だからです。住友電気工業は、原材料の入手や結晶精製のコストを含めて、これを世の中の半導体の材料がほとんどシリコンだった理由としています。

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