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磁気センサとは

磁気センサとは、磁石や電流が生む磁気や地磁気について、その大きさと向きを検知するセンサです。 磁気は人の目が受け取る光の範囲に入らないため、磁気センサを介して電気信号へ移します1。方式は多く、止まった磁石まで検知できるか、電圧と抵抗のどちらで受け取るかで分かれます。

コイルは磁石が動いている間しか応えない

Section titled “コイルは磁石が動いている間しか応えない”

代表的な磁気センサは、コイル、リードスイッチ、ホール素子、磁気抵抗素子の4つです。

磁石を動かしたときの出力
近づける止める遠ざけるホール素子の出力コイルの出力0のまま時間
コイルの出力は磁束密度が動く間だけ立ち、磁石を止めると0に戻ります。ホール素子は止まった磁石にも出力を返し続けます。

コイルは、その中でも構造が単純な部類です。磁石を近づけると内部の磁束密度が増え、その増加を妨げる向きに磁束を生む誘導起電力と誘導電流が立ちます1。遠ざけると向きが逆になり、磁石が止まっている間は磁束密度が変化しないので、誘導起電力も誘導電流も0のままです。構造が簡単なぶん壊れにくい一方で、出力電圧が磁束密度の変化する速さに依存します。そのため磁束密度の変化がごく小さい場面や、まったく変化しない場面の検知には向きません。

リードスイッチは、左右から伸びる金属片(リード)を、重なる位置で隙間を空けてガラス管に封じたセンサです。外から磁場をかけるとリードが磁化し、重なった部分どうしが引き合って接触し、スイッチがオンになります。

ホール素子と磁気抵抗素子は、この2つと立場が違います。ホール素子は磁束密度が変化しない静磁場でも磁場の有無を検出できるので1、磁石と組み合わせた非接触スイッチ、角度センサ、電流センサまで幅広い用途で使われます。ホール素子を使った地磁気センサは、スマートフォンなどで広く使われています。

磁力線が樹脂の壁を通り抜けるので、密閉したまま検知できる

Section titled “磁力線が樹脂の壁を通り抜けるので、密閉したまま検知できる”

磁力線は、プラスチックのような非磁性体に吸収されずに通り抜け、反対側へ届きます2。センサを筐体の内側、磁石を外側に取り付ければ、壁に穴を開けずに外の動きを検知します。用途はノートパソコンの開閉検知、ガスや水道メーターの回転検知、ウェアラブル端末の電源スイッチで、村田製作所は防水構造にしやすい点を利点としています。接点で検知するスイッチでは押しボタンの軸を通すために壁に開口が要り、そのすき間が水やほこりの通り道になります。磁気で検知すれば、壁は一枚のままです。

ホール素子は電圧を、磁気抵抗素子は抵抗の変化を測る

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ホール素子と半導体磁気抵抗素子(SMR)は、どちらもローレンツ力から出発しながら、測る量が違います。ホール素子は生じたホール電圧を測り、SMRは抵抗値の変化を測ります。半導体薄膜を流れる電子は磁場からローレンツ力を受けて経路が曲げられ、経路が長くなるぶん抵抗値が上がります。SMR素子を使ったセンサは、歯車の回転の検知などに使われます。

磁気抵抗素子には、この半導体系のほかに強磁性体薄膜を使う3種類があります。異方性磁気抵抗素子(AMR)では、強磁性体膜の磁化が電流と同じ向きを取るか直角の向きを取るかで電子の散らばり方が変わり、そのぶん抵抗値も動きます。村田製作所の説明では、AMRは磁界が加わると抵抗が減少する素子で、その働きは素子に対する磁力線の方向に依存します2。異方性の名はこの方向依存から来ています。

巨大磁気抵抗素子(GMR)は強磁性体(ピン層)/非磁性体金属/強磁性体(フリー層)の積層膜で、2つの磁化が反平行の場合と揃った場合とで散乱の度合いが変わります。トンネル磁気抵抗素子(TMR)は、あいだが絶縁体になった積層膜で、トンネル効果によって絶縁体を通る電子の割合が変わります。

材料と検知方向も方式ごとに決まります。AMR素子の材料はNiFe合金、ホールICの材料はSi(安価、低感度)またはInSb(高感度、ただし温度特性は不利)で3、検知方向はAMRが水平磁場、ホールICが垂直磁場です。

地磁気のおよそ10〜60倍で切り替えれば、地磁気に揺さぶられにくい

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日本の地磁気はおよそ41〜51マイクロテスラ(µT)です。身のまわりの磁気センサは、この地磁気の中で働きながら、目当ての磁石の磁界を拾います。

磁界の大きさの物差し
10µT100µT1mT10mT磁束密度(対数目盛)日本の地磁気 41〜51µTMI素子向け回路のレンジ ±80µTHoff 0.5mTHon 2.5mTAMRセンサおよそ10倍およそ50〜60倍
AMRセンサMRMS501A-001は、地磁気のおよそ10倍と50〜60倍の磁界で切り替わります。MI素子向け回路の入力レンジ±80µTは、地磁気の大きさを含みます。

村田製作所はAMRセンサの感度を、切り替わる磁界の組で表します。0もしくは弱い磁界でオフしていたセンサがオンするときの磁力がON感度(Hon)、強い磁界でオンしていたセンサがオフするときの磁力がHoffです2。同社のMRMS501A-001の感度規格はHoff 0.5mTからHon 2.5mTまでです。地磁気に当てはめて割り算すると、0.5mTはおよそ10倍、2.5mTはおよそ50〜60倍にあたります。切り替わる磁界がこれだけ強ければ、地磁気に揺さぶられにくくなります。

MI素子向けの回路は、±80µTのレンジを45pT/√Hzのノイズで読む

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反対に、うんと弱い側を狙う研究もあります。産業技術総合研究所が愛知製鋼と共同で開発した磁気インピーダンス素子(MI素子)向けの集積回路は、2024年2月17日の発表で試作の測定結果が示されました。MI素子はアモルファス合金ワイヤの周りにコイルを形成した素子で4、ワイヤに電流パルスを流した瞬間、表層で生じる外部磁場に比例した磁束変化を捉えます。この磁束変化を、コイルが誘導電圧として検出します。センサはASICチップとMI素子の2つで構成されます。

試作の測定結果は、入力磁束密度のレンジが±80µT、消費電力が4mW、10kHzの信号帯域で45pT/√Hzのノイズフロアでした。産業技術総合研究所は、82dBの広いダイナミックレンジを低消費電力で実現し4、従来のデジタル出力型の高感度磁気センサーと比べて電力効率を3倍以上改善したとしています。

同所の補正技術は、負帰還信号が想定したアナログ量になっているかを監視し、負帰還回路のデジタル出力から負帰還信号への変換係数を動的に調整します。このデジタル自動補正を入れると、電源電圧を1.4Vから1.6Vまで振ったときの磁気検出感度の変動が、10サンプルの平均で3分の1まで縮んだとしています4。

MgO障壁で、MR比は数10%から約200%、600%超へ伸びた

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磁気トンネル接合(MTJ)は、1〜2nmの薄い絶縁膜を2枚の強磁性金属で挟んだ構造です5。片方の磁石の向きを固定し、もう片方の向きが外の磁界で変わるようにすると、磁界によって電気抵抗が変わるので、MTJ素子は磁気センサとして働きます。磁気センサにもMRAMにも、室温かつ低い磁界での大きなMR比が要ります。

MTJのMR比の推移
MR比(%)200600019952004現在Al-O障壁 数10%MgO障壁 約200%600%超
アモルファスAl-O障壁のMR比は約10年で数10%に達し、2004年に結晶のMgO障壁で約200%へ跳ね、現在は600%を超えています。

トンネル障壁にアモルファスの酸化アルミニウム(Al-O)を使ったMTJ素子は1995年に開発され、その後約10年の研究開発で数10%のMR比に達しました5。産業技術総合研究所は2004年、結晶の酸化マグネシウム(MgO)を障壁に使ったMTJ素子を世界に先駆けて開発したとしており、MR比は約200%でした。現在までに600%を超えるMR比が実現されています。MTJ素子は汎用の磁気センサとしても普及し始め、磁気計測のほか、自動車や機械の位置・回転検知に使われています。材料が強磁性体と絶縁体の薄膜なので、薄膜をつくる装置と工程がセンサの性能を左右します。

磁気センサとは何ですか?

磁石や電流が生む磁気、そして地磁気などの大きさと向きを検知するセンサです。磁気は目に見えないため、センサで電気信号へ移します。

どんな種類がありますか?

代表的なものはコイル、リードスイッチ、ホール素子、磁気抵抗素子です。磁気抵抗素子には、半導体磁気抵抗素子(SMR)、異方性磁気抵抗素子(AMR)、巨大磁気抵抗素子(GMR)、トンネル磁気抵抗素子(TMR)の4種類があります。

コイルとホール素子はどう違いますか?

コイルの出力電圧は磁束密度の変化する速さに依存し、磁石が動いている間だけ誘導起電力が立ちます。ホール素子は静磁場でも磁場の有無を検知するため、磁石が止まった後も出力が続きます。

なぜ密閉した機器の中でも使えるのですか?

磁力線がプラスチックのような非磁性体に吸収されずに通り抜けるからです。センサを内側、磁石を外側に取り付ければ、壁に穴を開けずに外の動きを検知でき、村田製作所は防水構造にしやすい点を利点としています。

どのくらいの大きさの磁界を測るのですか?

日本の地磁気はおよそ41〜51マイクロテスラです。村田製作所のAMRセンサ MRMS501A-001 の感度規格は Hoff 0.5mT 〜 Hon 2.5mT で、地磁気のおよそ10〜60倍の磁界で切り替わります。産業技術総合研究所のMI素子向け回路は、入力レンジ±80µTで45pT/√Hzのノイズフロアを示しました。

TMRセンサとは何ですか?

磁気トンネル接合(MTJ)は、1〜2nmの薄い絶縁膜を2枚の強磁性金属で挟んだ構造で、2枚の磁化の向きで電気抵抗が変わります。この現象がトンネル磁気抵抗(TMR)効果で、片方の磁化を固定し、もう片方を外の磁界で動くようにすると、抵抗の変化で磁界を読むTMRセンサになります。

半導体の製造技術とどう関係しますか?

素子の材料が化合物半導体やシリコン、強磁性体の薄膜だからです。産業技術総合研究所は、MTJ素子の大量生産と高密度集積回路への集積化のためにCoFeB/MgO/CoFeB構造を開発しました。薄膜を作る装置と工程が、そのままセンサの性能を左右します。

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