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パワーアンプとは

パワーアンプとは、送信する高周波信号を、電波として飛ばせる電力まで増幅する半導体デバイスです。 信号を大きくすること自体は、増幅段を重ねれば届きます。設計で難所になるのは、注ぎ込んだ電力のうちどれだけが電波として出ていくかです。

効率だけを追うと、隣のチャネルへ漏れるひずみという代償が出ます。効率とひずみと帯域は、同じ設計の上で取り合いになります。

基地局では、パワーアンプの消費電力が全体を押し上げる

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無線基地局向けパワーアンプは、基地局から携帯電話などの端末へ向けて送る無線信号を増幅する装置で、その消費電力が大きく、無線基地局全体の消費電力が増える主な要因になっています1。電力効率は、外部電源から入る電力と入力信号の電力を足した分に対して、出力信号の電力がどれだけの割合になるかで表し、残りは熱になります。

送る情報が増えるほど、低い出力で動く時間が長くなり効率が落ちる

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パワーアンプで使うトランジスタは、運ぶ情報に応じて出力が絶えず変動する送信信号では、その瞬時の出力電力が低くなったときに電力効率が大幅に落ちます1。出力が低い時間が長いのは、一度に送る情報が増えるほど変調信号の振幅の振れ幅が広がり、平均の電力に比べて瞬間的に立つピーク電力が高くなるからです。たくさんの情報を運ぶ信号ほど、ピークだけが高く、ふだんは低い形になります。パワーアンプはピークに耐えられる大きさで作られますが、動いている時間の大半は、その大きさよりずっと小さい出力を出しています。

東芝は、5G基地局では通信方式が高度になるぶん瞬時出力電力の振れる範囲が広がり、低い出力での電力効率の改善が従来以上に大きな課題になると見ています。

ドハティとアウトフェージングでも、平均電力がピークの10分の1では約60%どまり

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ドハティアンプはキャリアアンプとピークアンプなどで構成され、高出力時には2個のアンプが同時に動作し、低出力時にはピークアンプの動作が休止してキャリアアンプだけが動作します。アウトフェージングアンプは、変調信号を電力の等しい2つに分けたうえで、それぞれ別のトランジスタで増幅し、最後に合わせて元の信号の増幅版を得る方式です。瞬時電力が一定になるため、トランジスタを常時飽和状態で使えるとされています。東芝は、こうした構成を採ってもなお、平均電力がピークの10分の1という条件で出せる電力効率はおよそ60%どまりだったとしています。

送る信号は、ピークと平均が大きく離れています
ピークは高く、平均はずっと低い信号です電力時間ピーク平均東芝が示した条件は、平均がピークの10分の1ですその平均電力で出せる電力効率100%古典的なアンプの想定値25%ドハティ/アウトフェージング約60%2つを組み合わせた開発品70%同じ平均電力どうしで比べています東芝が2019年に公表した開発品と、従来の到達点です
変調信号はピークだけが高く、平均はその10分の1まで下がります。同じ平均電力で比べると、従来のアーキテクチャの約60%に対し、東芝の開発品は70%に届いています。

東芝が2019年に公表した開発品は、アウトフェージングアンプが持つ2つのトランジスタのそれぞれを、トランジスタ2個からなるドハティアンプで置き換え、合計4個という構成をとっています。ここに高次高調波の負荷の最適化を重ね、ピーク電力の10分の1という低い平均電力でも70%の電力効率を達成したとしています1。消費電力の削減幅は64%で、古典的なパワーアンプの電力効率を25%と想定した比較です。

効率を上げるほど、隣のチャネルへ漏れるひずみが増える

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ACLR(隣接チャネル漏えい電力比)は、送信チャネル帯域内の電力を基準にした、隣接するチャネル帯域の電力との相対比で、隣のチャネルに信号が漏れ出る度合いを表します。業界水準は−45dBcで2、数値が小さいほど通信の品質が上がります。NEDOは、ポスト5G通信で求められる動作効率を40%とし、これを発熱を考慮しても高密度実装が可能な電力効率としています。効率とひずみと帯域が、同じ設計の上で取り合いになります。

NEDOが2023年11月に公表した、三菱電機と湘南工科大学によるポスト5G向け基地局用GaN増幅器は、2入力型構成のGaN増幅器へ入る2つの高周波入力信号をAIでデジタル制御し、ACLR −45dBcと動作周波数帯域幅4000MHzを両立させた動作実証に成功したとしています2。2つの入力信号の電力分配比と位相差には膨大な組み合わせがあるため、182,160回の測定を30秒以下で終える高速測定システムもあわせて構築しています。

効率とひずみは、同じつまみの両端にあります
効率を取りにいくほど、隣のチャネルへ漏れます効率を上げるには飽和に近づけますそのぶん波形がゆがみ隣のチャネルへ漏れますポスト5Gの効率の目安は40%電力周波数送りたい信号漏れ漏れ業界水準は−45dBc隣のチャネル送信チャネル隣のチャネルACLRは、送信チャネル帯域内の電力を基準にした隣接チャネル帯域の電力の比です
送りたい信号の外側には、隣の通信が使っているチャネルが並んでいます。効率を求めて飽和へ近づけるほど、そこへ漏れる電力が増えるため、効率とひずみは同時に追いかける対象になります。

基地局向けGaNモジュールは40%台、Ka帯の衛星通信用は20%以上

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三菱電機の公表値では、5G基地局用の16W電力増幅器モジュールが400MHz帯域で電力付加効率41%3、5G massive MIMO基地局用の16Wモジュールが500MHz帯域で40%(標準値)、同8Wモジュールが400MHz帯域で43%以上です。一方、Ka帯の衛星通信地球局用GaN MMIC電力増幅器では、最大線形出力電力での電力付加効率が20%以上です。同社はこの製品群に、NEDOの助成事業の成果の一部を活用しています。高い周波数と広い帯域を受け持つ増幅器は、公的な研究開発の対象になってきた分野です。

携帯端末の側では材料が変わり、村田製作所はGaAsの化合物半導体パワーアンプを使って検証しています4。基地局が供給する電力と端末が供給する電力は桁が離れているため、選ばれる材料も別になります。

電源ラインのノイズも、出力へ乗って増幅される

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携帯端末のパワーアンプでは、電源ラインを伝導するノイズが電源を揺らし、そのノイズが出力へ乗って高周波信号に影響します5。電源ラインのノイズは、パワーアンプの2次歪特性によって送信周波数の両側にスプリアスとして出てきます。ACLRの測定帯域幅はW-CDMAで25MHz、LTEで50MHzなので、片側ではW-CDMAで12.5MHz、LTEで25MHz以下の周波数のノイズが信号品位に影響します。村田製作所は、一般的なパワーアンプ用DC/DCコンバータのスイッチング周波数が2〜10MHzであるため、この帯域が主な原因になるとしています。

パワーアンプは、入力した信号と一緒に、電源に乗った揺れも出力へ運びます。高周波モジュールの構成要素では送信回路の高出力増幅器(PA)にあたり6、その出力部はRFフロントエンドで最も高い電力を受け持つ場所です。村田製作所は、そこでどれだけの電力に耐えられるかを課題としています4。強い電力を受け持つ場所は、周囲へ影響を与える場所でもあります。

パワーアンプとは何ですか?

送信する高周波信号を、電波として飛ばせる電力まで増幅する半導体デバイスです。無線基地局向けでは、基地局から携帯電話などの端末へ向けて送る無線信号を増幅します。

電力効率とは何ですか?

外部電源から入る電力と入力信号の電力を足した分に対して、出力信号の電力がどれだけの割合になるかを指します。この割合が高いほど電力効率が高く、残りは熱として捨てられます。

なぜ効率がそこまで問題になるのですか?

無線基地局向けパワーアンプの消費電力が大きく、無線基地局全体の消費電力が増える主な要因になっているからです。装置1台の効率が、基地局全体の電気代と冷却の設計を左右します。

出力が小さいときは効率が良くなるのですか?

逆になります。送信信号の瞬時出力電力が低くなると、電力効率は大幅に低下します。一度に送る情報が多いほどピーク電力と平均電力の差が開くため、実働では低い出力で動く時間が長くなります。

ドハティアンプとは何ですか?

キャリアアンプとピークアンプなどで構成される高効率のアンプです。高出力時には2個のアンプが同時に動作し、低出力時にはピークアンプの動作が休止してキャリアアンプだけが動作することで、消費電力を抑えます。

ACLRとは何ですか?

隣接チャネル漏えい電力比のことで、送信チャネル帯域内の電力を基準にした、隣接するチャネル帯域の電力との相対比です。隣のチャネルに信号が漏れ出る度合いを表し、業界水準は−45dBcで、数値が小さいほど通信の品質が上がります。

どんな材料で作られますか?

用途によって別の材料が選ばれます。三菱電機は基地局や衛星通信の地球局に向けたGaN高周波デバイスを製品化しています。携帯端末側では、村田製作所がGaAsの化合物半導体パワーアンプを使って検証しています。

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