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アンテナスイッチとは

アンテナスイッチとは、無線機のアンテナと、周波数帯や送受信ごとに個別に設けられた複数の高周波経路との間で、どの経路をつなぐかを切り替える部品です。 経路の数がアンテナの本数を上回るため、スイッチがそのつど1つを選んでつなぎます。

難しいのは選ぶことより、選んだ経路を小さな損失で通しながら、選ばなかった経路へ回る電力を小さく抑えることです。この2つを1つの素子で同時に満たす必要があります。

規格ごとに経路を持つため、アンテナの本数が足りなくなる

Section titled “規格ごとに経路を持つため、アンテナの本数が足りなくなる”

RFスイッチ(高周波スイッチ)は高周波信号の経路を切り替えるスイッチで、通信規格や周波数帯ごとに用意された経路へ正しく切り替わることが正常な通信の前提です1。スマートフォンは5GやWi-Fi、Bluetoothなど複数の規格の信号を受け持ち、規格や周波数帯ごとにフィルタリングと増幅の経路を複数持ちます。送信と受信の経路が別になる場合もあります。アンテナの本数は限られるため、多くの切り替え経路を持つRFスイッチか、複数のRFスイッチが要ります。

1本のアンテナを、順番に使い回します
アンテナアンテナスイッチ送信(バンドA)送信(バンドB)受信(バンドA)受信(バンドB)受信(バンドC)受信側へ回る電力の小ささがアイソレーションです選んだ経路は損失を小さく通します
経路の数がアンテナの本数を上回るため、スイッチがそのつど1つを選んでつなぎます。選んだ経路は損失を小さく通し、選ばなかった経路へ回る電力は小さく抑えます。この2つを1つの素子で同時に満たすところが難所になります。

受信のとき、スイッチはアンテナからフィルタを通ってきた信号を低雑音増幅器(LNA)側へ通し、電力増幅器(PA)側とは切り離します。送信のときは、PAで増幅された信号がスイッチとフィルタを経てアンテナへ届き、空中へ放射されます。PAの出力電力は受信時にスイッチへ入る信号の電力より大きいため、送信時には受信側へ回る信号を特に小さく抑える必要があります。

RFスイッチは、無線通信機器内の高周波回路で信号経路の切り替えに用いる素子です。村田製作所のアンテナスイッチモジュールは2、携帯電話の無線回路でアンテナ直下に入るスイッチと、GSM用ローパスフィルタなどの付加回路を自社のLTCC基板へ内蔵した超小型モジュールです。

損失を0.5 dB以下に抑えるには、オン抵抗を6 Ω程度以下にする

Section titled “損失を0.5 dB以下に抑えるには、オン抵抗を6 Ω程度以下にする”
6 Ωと数100 Ω、桁が二つ違います
伝送路の特性インピーダンス 50 ΩRFスイッチ:6 Ω程度以下アナログスイッチIC:数100 ΩON抵抗1 Ω10 Ω100 Ω1000 Ω挿入損失0.5 dB以下大きく落ちます50 Ω系の伝送路に直列で入るため、オン抵抗がそのまま損失になります
50 Ω系で挿入損失を0.5 dB以下に抑えるには、スイッチICのオン抵抗を6 Ω程度以下にする必要があります。オン抵抗が数100 Ωある一般のアナログスイッチICでは、負荷との分圧で得られる電圧が大きく落ちます。

高周波信号は、50 Ωの特性インピーダンスの伝送路を通ります。抵抗成分だけで計算すると、50 Ω系で使うRFスイッチの挿入損失を0.5 dB以下に抑えるには、スイッチICのオン抵抗を6 Ω程度以下に収める必要があります1。一般のアナログスイッチICのオン抵抗が仮に数100 Ωあると、負荷抵抗との分圧で負荷に得られる電圧はかなり小さくなります。

実際の損失は、オン抵抗のほかに寄生の成分でも決まります。数100 MHzから数GHzの高周波では、切り替えを担うFETのチャネル、ドレインやソースと半導体基板との間にできる空乏層容量、ドレインとソースの間の配線の寄生容量、空間結合によるフリンジ容量が、いずれも伝送電力の損失の原因になります。RFスイッチは寄生成分を抑えながら低いオン抵抗を備えたICで、設計の主戦場は経路を選ぶ機能より、選んだ経路をそのまま通す性能です。

GaAsのHEMTで高性能化し、いまはシリコンのSOIが主流

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RFスイッチには初めPINダイオードが使われ、MESFETの登場でGaAs半導体のRFスイッチへ替わり、HEMTの登場でさらに高性能化しました。

HEMTが選ばれた理由は2点です。1つは電子移動度で、FETのオン抵抗はキャリアの移動度が高いほど下がるため、同じFETサイズならHEMTのほうがオン抵抗が低くなります。小さいFETで済めば寄生容量も小さくなり、伝送損失がさらに減ります。もう1つはGaAs基板の抵抗率です。半絶縁体と呼ばれるほど高いので、FETや配線と基板との間の寄生容量へ電流が流れにくく、対基板の損失が抑えられます。

それでも主流はシリコン系に戻りました。短ゲート長化と寄生容量の抑制でシリコン系デバイスの性能が飛躍的に上がり、2024年8月時点では1SOI(Silicon On Insulator)に代表されるシリコン系デバイスのRFスイッチが主流です。日清紡マイクロデバイスも、SOIのRFスイッチを製品化しています。

経路を並列に増やす方式には上限がある

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スイッチの構成は、入力と出力の端子数で呼びます。1入力1出力がSPST、2経路を切り替える1入力2出力がSPDTで、日清紡マイクロデバイスのラインナップにはSP6Tや2入力2出力のDPDTもあります。投げ口の数が、そのまま対応できる経路の数です。

対応する周波数帯が増えるほど、投げ口も増えます。高周波モジュールは、フィルタなどの受動デバイスと、送信側の高出力増幅器(PA)、受信側の低歪増幅器(LNA)、アンテナ切り替えスイッチという半導体デバイスで構成されます3。村田製作所は2021年時点で、5Gでは4Gまでに進んだマルチバンド化とキャリアアグリゲーションへ、さらなる高周波化、周波数帯域の拡大、デュアルコネクティビティが加わるため、それらに対応するRFフロントエンドの高周波モジュールが要るとしています。

バンドとモードの数が限られていれば、その数だけ送受信系を並列につなぎ合わせて切り替える方式が考えられます4。多数のバンドやモードをまかなう場合には、広帯域デバイスと帯域可変デバイスで組んだ1つの送受信系に、複数のバンドとモードをまとめる必要が出てきます。アンテナスイッチは経路を増やす側の答えで、増やせる数に上限があるため、帯域そのものを可変にする側の答えが検討されます。

データシートには、通す指標と切り離す指標が並ぶ

Section titled “データシートには、通す指標と切り離す指標が並ぶ”
  • 挿入損失:スイッチを通る電力の入出力比で、値が小さいほど高性能です
  • アイソレーション:通過経路から他の経路へ漏れる電力の比で、値が大きいほど高性能です
  • リターンロス:入力電力と反射電力の比で、値が大きいほど高性能です
  • P-0.1dB:入力電力を大きくして挿入損失の増加分が0.1 dBになったときの入力電力で、値が大きいほど高性能です
  • 高調波歪と相互変調歪:線形性を示す指標で、値が小さいほど高性能です
  • スイッチング時間:制御信号が入ってから、各経路の信号電圧が決められた範囲へ収まるまでの遷移時間です

挿入損失とアイソレーションが同じ表に並ぶところに、この部品の性格が出ています。通すことと切り離すことは、1つの素子の中で取り合いになります。

アンテナスイッチとは何ですか?

無線機のアンテナと、周波数帯や送受信ごとに設けられた複数の高周波経路の間で、どの経路をつなぐかを切り替える部品です。RFスイッチは、無線通信機器内の高周波回路で信号経路の切り替えに用いる素子です。

どうして必要になるのですか?

経路の数がアンテナの本数を上回るためです。スマートフォンは5GやWi-Fi、Bluetoothなど複数の規格の信号を受け持ち、規格や周波数帯ごとにフィルタリングと増幅の経路を複数持つので、限られた本数のアンテナで送受信するには多くの切り替え経路が要ります。

アナログスイッチICでは代わりになりますか?

オン抵抗が桁違いに大きいため、高周波では使いにくくなります。抵抗成分だけで計算すると、50 Ω系で挿入損失を0.5 dB以下に抑えるにはオン抵抗を6 Ω程度以下にする必要があり、一般のアナログスイッチICのように数100 Ωあると、負荷との分圧で得られる電圧がかなり小さくなります。

挿入損失とアイソレーションは何が異なるのですか?

挿入損失はスイッチを通過する電力の入出力比で、小さいほど高性能です。アイソレーションは通過経路から他の経路へ漏れる電力の比で、大きいほど高性能です。前者は通す性能、後者は切り離す性能を表します。

どんな材料で作られていますか?

初めはPINダイオードが使われ、MESFETの登場でGaAs半導体のRFスイッチへ替わり、HEMTでさらに高性能化しました。2024年8月時点では、SOI(Silicon On Insulator)に代表されるシリコン系のデバイスを使ったRFスイッチが主流です。

SPDTやSP6Tとは何ですか?

入力と出力の端子数で構成を呼び分けたものです。1入力1出力がSPST、2経路を切り替える1入力2出力がSPDTで、ほかにSP6Tや2入力2出力のDPDTがあります。

対応する周波数帯が増え続けるとどうなりますか?

経路を増やす方式に限りが出ます。バンドとモードの数が限られていればその数だけ送受信系を並列に設けて切り替えられますが、多数をまかなうには、広帯域デバイスと帯域可変デバイスで組んだ1つの送受信系へ複数のバンドとモードをまとめる必要が出てきます。

  • RFフロントエンドとは── アンテナスイッチが入る回路ブロック全体を指します
  • PLLとは── 経路を選ぶ部品に対し、周波数そのものを作る回路です
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