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粒界散乱とは

粒界散乱とは、多結晶金属のなかで結晶粒と粒の切れ目に達した電子の一部が跳ね返される現象です。 跳ね返る割合が大きいほど、そして粒が小さいほど、比抵抗が上がります。実測では、粒の長さと線幅の関係で結果が分かれました。粒界の間隔が線幅と同じ桁のRuの細線では粒界散乱が支配的で、粒が線幅よりずっと長いCuの細線では側壁での表面散乱が主で、粒界散乱の寄与はわずかでした。

粒界は昔からありましたが、先端世代では粒の大きさと線幅が同じ桁に並びます。線が細くなるほど粒も小さくなり、1本の線のなかに切れ目が何枚も入るため、粒界散乱がいま支配的な要因になっています。

粒界1枚で跳ね返る電子の割合は、RuがCuより大きい

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粒界での反射
結晶粒粒界電子跳ね返り9.3 nm粒界に届いた電子の行き先PVD Cu/TaN上R = 0.22ALD Ru/SiO2上R = 0.40ALD Ru/TiN上R = 0.45跳ね返る通り抜ける金属の結晶粒
粒界に届いた電子のうち跳ね返る割合が反射係数Rです。Ruは0.40〜0.45で、Cuの0.22より多くの電子を1枚の粒界で跳ね返します。

imecのDuttaらは2017年の論文で、線の長さ方向の断面TEM像から得た粒界の線分切片長を9.3±1.5nmとしました。先端世代の線幅と同じ桁の値です。同論文のTable 1では、粒界反射係数はTaN上のPVD Cuで0.22、SiO2上のALD Ruで0.40、TiN上のALD Ruで0.45で、Ruのほうが跳ね返りやすい値です。

切れ目が多いほど、そして跳ね返る割合が大きいほど、電子が直進できる区間は短くなります。IBM Researchは第一原理計算によるfcc相Ruの評価で、粒界散乱が大きいために、平均粒径が同程度のCu配線より比抵抗が高くなるとしています1。

Ruの細線では粒界が、粒の長いCuの細線では表面が抵抗を上げた

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粒の長さと線幅
Ru配線粒界の間隔が線幅と同じ桁粒界散乱が主因Cu配線幅 25〜45 nm粒は幅よりずっと長く、側壁で散乱表面散乱が主因
粒界の間隔が線幅と同じ桁のRu配線では粒界散乱が主因で、粒が線幅よりずっと長い幅25〜45 nmのCu配線では側壁での表面散乱が主因でした。

Ruの細線では、Duttaらの解析で粒界散乱が支配的な散乱機構でした2。表面については、SiO2上のALD Ruで鏡面性パラメータが0.99と高い値になり、界面が電子の向きを保つ側へ近づきました。界面が良くても粒界はそのまま残るので、Ru配線の比抵抗を下げる手は粒を大きくする方向へ絞られます。

Cuの細線では逆の結果が出ています。NISTは電子線リソグラフィと2層のハードマスクで線幅25〜45nmのCu配線を作り、電子線後方散乱回折で粒が線の断面幅よりずっと長いことを確かめました3。線抵抗の温度依存性から求めた比抵抗は、完全に拡散的な表面散乱のモデルと合い、粒界散乱の寄与はわずかでした。線幅25〜45nmは、室温のCuの電子平均自由行程39nmと同じ程度か、それより細い寸法です。

膜で測ったパラメータから、配線の比抵抗を10%以内で予測できる

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Mayadas-Shatzkesモデル
膜厚膜の比抵抗膜で当てはめp 表面の鏡面性R 粒界反射係数ρ0 バルク比抵抗λ0 平均自由行程3080130断面積 nm²配線の比抵抗±10%予測実測配線を予測
膜厚依存性から求めた4つのパラメータを配線のモデルへ入れると、断面30〜130 nm²のRu配線の比抵抗を実測とおよそ10%以内で予測できました。

Duttaらは、薄膜の比抵抗の膜厚依存性を半古典的なMayadas-Shatzkesモデルで表し2、そこで得た当てはめパラメータをナノワイヤ向けの修正モデルへ入力して線の比抵抗を計算する手順を提案しました。入力は4つです。表面の鏡面性を表すp、粒界反射係数R、バルク比抵抗ρ0、そして電子平均自由行程λ0です。前の2つが界面と粒界の性質を、後ろの2つが材料そのものを表します。

断面30から130nm^2の線では、予測した比抵抗が実測とおよそ10%以内で一致しました2。モデルが設計の見積もりに使える精度に届いていることになります。Cuの膜でも、NISTは膜厚を薄くするほど比抵抗が上がる様子が、実測した平均粒径と、表面散乱・粒界散乱の当てはめパラメータを使ったシミュレーションとよく合う4と報告しました。そのうえでNISTは、平均自由行程39nmを大きく下回る寸法でもマティーセン則でCu膜の厚さを測り、そこからCu配線の断面積を推定できるとしています。

粒は線幅より大きくならないので、断面の広さが粒界散乱にも効く

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細い線のなかで粒を大きくしようとしても、入る粒の大きさは線幅までです。線幅を詰めるほど粒径の上限も下がり、粒界の数は増える方向へ動きます。成膜条件や熱処理で粒径を伸ばす工程が配線抵抗へ直結しますが、伸ばせる長さには線幅という上限が残ります。

imecは、バリア不要の金属を使えば、貴重な導電面積を配線金属自体が使い切れるとしています5。バリアメタルの分の断面を配線金属に回せれば粒径の上限も上がるため、バリアの有無は粒界散乱にも間接的に響きます。配線の材料を選ぶときは、粒径の分布と反射係数を並べ、モデルの予測と実測を同じ表で突き合わせると、どこで抵抗を失っているかが見えます。

粒界散乱とは何ですか?

多結晶金属のなかで、結晶粒と粒の切れ目に達した電子の一部が跳ね返される現象です。跳ね返る割合が大きいほど、そして粒が小さいほど、比抵抗が上がります。

反射係数はどのくらいですか?

imecのグループが2017年に公開した論文のTable 1では、TaN上のPVD Cuで0.22、SiO2上のALD Ruで0.40、TiN上のALD Ruで0.45です。Ruは1枚の粒界でCuより多くの電子を跳ね返します。

粒はどのくらいの大きさですか?

線の長さ方向の断面TEM像から得た粒界の線分切片長は9.3±1.5nmで、先端世代の線幅と同じ桁です。

どのモデルで表しますか?

薄膜の比抵抗の膜厚依存性を半古典的なMayadas-Shatzkesモデルで表し、そこで得た当てはめパラメータをナノワイヤ向けの修正モデルへ入力して線の比抵抗を計算します。入力は表面の鏡面性p、粒界反射係数R、バルク比抵抗ρ0、平均自由行程λ0の4つです。

予測はどのくらい合いますか?

断面30から130nm^2の線では、予測した比抵抗が実測とおよそ10%以内で一致しました。

細いRu配線では何が支配的ですか?

微細Ru配線では、粒界散乱が支配的な散乱機構でした。SiO2上のALD Ruは鏡面性パラメータが0.99と高く、界面より粒界が抵抗を決めています。

粒を大きくすれば良くなりますか?

粒界の数が減るので、その方向へ働きます。一方、細い線では粒が線幅で頭打ちになるため、大きくできる範囲に上限が付きます。

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