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電子平均自由行程とは

電子平均自由行程とは、電子が散乱されるまでに走る平均の距離です。 金属ナノ構造の特徴寸法をこの長さの程度まで縮めると、界面と粒界での電荷キャリアの散乱が増えて比抵抗が上がります。この現象を有限サイズ効果と呼びます。バルクの比抵抗だけを見ればCuが圧倒的に有利ですが、線幅が1桁のnmへ入るとその優位が崩れます。材料の順位が寸法で入れ替わるかどうかは、線幅がこの長さより長いか短いかで決まります。

線幅がこの長さを下回ると、比抵抗が上がる

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平均自由行程と線幅9 nm
線幅 9 nmCu 40.6 nmRu 6.6 nm010203040 nm
9 nm幅の線では、Cuの平均自由行程は線幅の4倍以上に伸び、電子は次の散乱を待たずに壁へ届きます。Ruの6.6 nmは線幅の内側に収まります。

imecのDuttaらが2017年に示した平均自由行程は、TaN上のPVD Cuで40.6nm、SiO2上およびTiN上のALD Ruで6.6nmです1。9nm幅の線に当てはめると、Cuでは平均自由行程が線幅の4倍以上、Ruでは線幅と同じ桁になります。

Cuの細線では、電子が壁にぶつからずに走れる距離より、壁と壁の間隔のほうが狭くなります。電子は走り出してすぐ界面へ届くため、界面の性質が比抵抗を左右し始めます。実効比抵抗が材料表の値から離れるのは、この有限サイズ効果のためです。

imecは、世代ごとに局所配線層が縮み続け、最も厳しい層はまもなく幅10nmあるいはそれ以下になるとしています2。そこではCuの比抵抗が急激に上がり、回路の性能に響きます。

バルクではCuが4倍以上有利でも、細線では差が縮む

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バルク比抵抗と平均自由行程
バルク比抵抗(μΩcm)02468010203040電子平均自由行程(nm)Ru(SiO2上)6.6 nm・7.6Ru(TiN上)6.6 nm・7.1Cu 40.6 nm・1.7
Cuは比抵抗が低い代わりに平均自由行程が長く、Ruは比抵抗が高い代わりに平均自由行程が短い位置にいます。細い線での優劣は、この2つの値の組み合わせで決まります。

バルク比抵抗は、Cuが1.7μΩcm、RuがSiO2上で7.6μΩcm、TiN上で7.1μΩcmです。バルクの値だけならCuが4倍以上有利です。一方、平均自由行程はRuがCuより6倍以上短い値です。細い線では、Ruのバルク値の不利と、寸法縮小への鈍感さが打ち消し合います。

imecも、代替の導体は大きな寸法ではCuより比抵抗が高いものの、寸法を縮めたときの上がり方が緩やかなので、小さい寸法ほど見通しがよいとしています2。同社は二元系金属間化合物を第一原理計算でふるい分けるときも、バルク比抵抗ρ0と平均自由行程λの2つを軸に並べています。新しい配線材料を探すときの物差しも、この2つの値です。

同じRuでも、下地で決まる配向が比抵抗を動かす

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下地とRu膜の配向
SiO2上のALD RuTiN上のALD Ru面内の電流面内の電流SiO2TiN強い(001)配向面内 7.6 μΩcm明確な配向なし7.1 μΩcm
Ruのバルク比抵抗は結晶の向きで変わります。SiO2上の膜は粒の向きがそろうので面内の値7.6 μΩcmを、向きがばらばらなTiN上の膜は7.1 μΩcmを使います。

Ruのバルク比抵抗は異方性を持ちます1。SiO2上の膜は強い(001)配向を示したため面内比抵抗の7.6μΩcmを、TiN上の膜は明確な配向を示さなかったため7.1μΩcmを用いています。同じ材料でも、下地が値を動かします。

Duttaらは、Ru薄膜の比抵抗の膜厚依存性を半古典的なMayadas-Shatzkesモデルで表し、その当てはめパラメータをナノワイヤ向けの修正モデルへ入れて線の比抵抗を計算しました。その結果、微細なRu配線では粒界散乱が支配的な散乱機構でした。

平均自由行程を大きく下回る寸法でも、Cu線の断面は電気で測れる

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細線の比抵抗を評価するには、電流が通る断面を正しく知る必要があります。NISTは、シート抵抗の温度変化と純粋なバルクCuの比抵抗の温度変化からマティーセンの規則で膜厚を求め、室温のCuの平均自由行程39 nmを大きく下回る寸法でも、Cu膜の厚さと、そこから推してCu線の断面積を測れるとしています3。比抵抗の計算には、実測の平均粒径と、表面散乱・粒界散乱の当てはめパラメータを使います。

平均自由行程が短く、バリアを省ける金属が細線の候補になる

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線幅が平均自由行程より十分長い世代では、Cuのバルク比抵抗の低さがそのまま活きます。線幅が下回る世代では、粒界散乱と表面散乱の寄与が増え、実効的な比抵抗が上がります。

imecは、セミダマシン集積にはタングステン、モリブデン、ルテニウムのようにバリアレスでパターニングできる金属が要るとしています4。同社は、Cuと違ってバリア不要の金属なら、貴重な導電面積を配線金属自体が使い切れるとしています。細い線ほど、外周に取られる面積の割合は大きくなります。平均自由行程が短いことと、バリアレスで使えること。この2つを同時に満たす材料が、Ru配線をはじめとする細線の候補になります。

材料を替えると、バルク比抵抗の高さを引き受ける

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平均自由行程の短い材料へ移って得られるのは、寸法を詰めたときの比抵抗の上がりにくさと、バリアを省ける断面です。差し出すのは、バルク比抵抗の高さそのものです。配線担当は、世代ごとの線幅をこの長さと突き合わせ、どこで材料を切り替えるかを見積もります。

電子平均自由行程とは何ですか?

電子が散乱されるまでに走る平均の距離です。配線の寸法がこの長さの程度まで縮むと、界面や粒界での散乱が増えて比抵抗が上がります。

CuとRuでどのくらい違いますか?

TaN上のPVD Cuで40.6nm、SiO2上およびTiN上のALD Ruで6.6nmです。imecのグループが2017年に公開した値で、Cuが6倍以上長くなります。

なぜ短いほうが配線に向くのですか?

線幅がこの長さより十分長ければ、散乱は主にバルクの機構で決まります。線幅がこの長さを下回ると、界面と粒界の寄与が急に増えます。Ruは線幅と同じ桁なので、寸法を詰めたときの上がり方が穏やかです。

バルク比抵抗との関係は何ですか?

Cuのバルク比抵抗は1.7μΩcm、RuはSiO2上で7.6μΩcm、TiN上で7.1μΩcmです。バルクではCuが有利で、細い線では2つの値の組み合わせが結果を左右します。

有限サイズ効果とは何ですか?

金属ナノ構造の特徴寸法を平均自由行程の程度まで縮めたときに比抵抗が上がる現象です。界面と粒界での電荷キャリアの散乱が増えることに由来し、微細なRu配線では粒界散乱が支配的でした。

Ru以外の候補はありますか?

あります。セミダマシン集積には、タングステン、モリブデン、ルテニウムのようにバリアレスでパターニングできる金属が要ります。

設計側では何に使いますか?

線幅をこの長さと比べることで、その世代でCuのままいくか、別の金属へ移るかの見積もりに使います。

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