歩留まりの立ち上げとは
歩留まりの立ち上げとは、新しい製品や新しい工程で量産を始めた直後の低い歩留まりを、量産として成り立つ水準まで引き上げていく期間の作業です。 ランプアップ、歩留り立上げとも呼びます。歩留まりの水準そのものより、そこへ着くまでの時間が利益を分けます。速く立ち上げる道具は検査とデータの返し方で、その代価は検査装置の保有費用で払います。
相手にするのは、ウェーハテストの歩留まり
Section titled “相手にするのは、ウェーハテストの歩留まり”JEITAの半導体技術ロードマップ専門委員会(STRJ)が公開するITRS 2005年版の日本語版は、歩留まり改善を、ある技術世代の基準歩留りを研究開発の水準から成熟状態まで引き上げていく過程とし1、歩留り向上曲線のうち立ち上がり(ランプアップ)の部分を主題に据えています。対象はウェーハテストの歩留りに限り、ウェーハプロセスライン内の工程歩留り、組立て・パッケージングの歩留り、製品の最終テスト歩留りは範囲から外しています。立ち上げが相手にしているのは、ウェーハをテストしたときの良品の割合です。
争うのは最終の水準より、到達の時期
Section titled “争うのは最終の水準より、到達の時期”ITRS 2005年版は、利益が主として急峻な歩留りの立ち上がりからもたらされるとし1、高いバッチ歩留りを早く達成した生産者が大量生産を早く始められ、その結果として利益を伸ばせるとしています。量産の初期にバッチ歩留りを支配しがちなシステマティック成分を改善すれば、チップの単価が極めて高い時期に製品を作れるので、利益率が上がるとも述べています。KLAも、競合より先に大量生産へ立ち上げれば、ある製品から得る売上を大きく増やせるとしています2。
立ち上げの遅れは工程の失点というより、単価が高い時期を丸ごと逃した損です。サイクルタイムや仕掛品の管理が立ち上げ期に強く問われるのは、このためです。PDF Solutionsが新しいプロセスの開発で歩留まりに着くまでの時間と量産に着くまでの時間を成功の指標3に挙げるのも、同じ見方です。新しいノードの立ち上げは決算にも表れ、TSMCはN2の立ち上げで粗利率が押し下げられると見込んでいます。
立ち上げ期はバッチ歩留り、量産期はライン歩留りが支配する
Section titled “立ち上げ期はバッチ歩留り、量産期はライン歩留りが支配する”ITRS 2005年版は、歩留りを2段の掛け算として表しています1。1段目は、ライン歩留り(製造ライン全体を生き延びるウェーハの割合)と、バッチ歩留り(ラインの最終段で正常に働くチップの、ウェーハ内での比率)の積です。2段目では、バッチ歩留りを、システマティック不良に起因する成分と、ランダムに分布する不良に起因する成分の積として表します。同じ2005年版は、大量生産のメーカーでは製造の初期段階をバッチ歩留りが支配し、バッチ歩留りが高くなって量産が始まったあとはライン歩留りが支配的な要因になるとしています。
この切り分けが打ち手を左右します。システマティック成分は、設計と工程の相性やパターンの特定の形に起因するので、実験計画法や装置マッチングで条件を絞り込む対象になります。ランダム成分は、粒子や汚染の量に左右されるので、欠陥検査とサンプリングの設計が主戦場になります。KLAは、デザインルールが縮むほど歩留まりが欠陥の大きさと密度に敏感になり、速度・容量・電力管理といったデバイス性能も線幅と膜厚のばらつきに敏感になるとしています。
2つの成分を早く見分けることが、立ち上げの速さになります。PDF Solutionsは、自社のCharacterization Vehicleの基盤がシステマティックとランダムの歩留まり損失の要因を従来の方法より効率よく突き止め、習熟の速度を最大200%以上速めるとしています。新しい材料を工程で使うには事前に広い特性評価が要り、KLAは、複数の先端技術を同時に量産へ移すとチップメーカーのリスクが増えるとしています。
YMSが、測った結果を工程とレシピへ返す
Section titled “YMSが、測った結果を工程とレシピへ返す”歩留り管理システム(YMS)は、歩留まりのモニタと欠陥検査から解析までをつなぎ4、欠陥が発生した工程へのフィードバックと、APCで装置のレシピへ先回りするフィードフォワードを合わせて行い、歩留まりをまとめて管理し引き上げる統合の仕組みです。
自動欠陥レビュー(ADR)は、欠陥検査で得た座標などの情報から目的の欠陥画像を自動で取り、データベースにします。自動欠陥分類(ADC)は、その欠陥画像を事前に定めたルールで発生原因ごとにクラス分けし、分類した情報をYMSや工場ホストへ上げて発生原因の追求と解析に使います。検査が拾う大量の信号から歩留まりを落とす欠陥を見分けることを、AMATはウェーハ検査で最も難しい問題と呼んでいます。
ITRS 2005年版も、インライン計測、APC、電気的特性、ワークステーション、生産工程制御システム(MES)を統合したYMS1を挙げ、ライン内の管理パラメータが管理限界を超えたときにアラームを上げる機能に触れています。テスト側から返るデータの粒度は、ビン分けをどこまで細かく切ったかで決まります。PDF Solutionsは、工程の逸脱を防ぎ製造のばらつきを減らすことは最先端に限らずどのノードでも課題だとしています。
検査で速く立ち上げるほど、保有費用が重くなる
Section titled “検査で速く立ち上げるほど、保有費用が重くなる”立ち上げを速くする道具は検査です。ITRS 2005年版は、歩留り立上げのフェーズで要る装置は量産が始まる数ヶ月前に用意しておく必要があるとしています1。装置は量産の前から費用として乗り、立ち上げの速さと引き換えになります。
同じ2005年版は、検査装置の価格と占有面積とスループットが保有費用(CoO)の主要な要素で、CoOの高さのために配備できる検査装置の台数が限られている状況に触れています。感度が上がってもスループットが下がればCoOが上がり、サンプリングの量が減り、その結果として歩留り損失と習熟の速度低下を招くとしています。検査を増やす手は、装置の保有費用という別の重りとセットで届きます。
立ち上げそのものを、外から支える仕事がある
Section titled “立ち上げそのものを、外から支える仕事がある”装置側の手当てのほかに、立ち上げそのものを外から支える仕事も商品になっています。アドバンテストは量産立ち上げサービスで5、設計開発から量産への移行と工程の立ち上げを顧客の課題として挙げ、量産立ち上げの工期を最短にして費用を下げること、調査の時間を短くすること、立ち上げのリスクを下げることを掲げています。個別のテスト・システムやテストセルごとの相関取りと評価作業まで含めて、量産開始までに要る工程を切れ目なく支えるとしています。同社は、テスト・システムが量産ラインの立ち上がる前の段階6、つまり設計と、そこで特性を測る工程でも使われるとしています。
PDF Solutionsは、新しいプロセスでは工程と設計の組み合わせを速く正確に評価することが製造しやすい選択肢を決めるうえで欠かせないとし、1999年以降に100件を超える歩留まりの立ち上げに関わり、7nmと5nmのノードの案件も含めて製造歩留まりを改善してきたとしています3。
立ち上げ期は、SPCが前提にする安定した工程とは条件が違う
Section titled “立ち上げ期は、SPCが前提にする安定した工程とは条件が違う”立ち上げ期の管理は、SPCや工程能力指数が前提にする安定した工程とは条件が異なります。動かしながら測り、測りながら動かす期間だからです。製品歩留りは、製造物全体に対する出荷品質の製品の割合です7。立ち上げの成否は、最後にこの1つの数字へ集約されます。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”歩留まりの立ち上げとは何ですか?
新しい製品や新しい工程で量産を始めた直後の低い歩留まりを、量産として成り立つ水準まで引き上げていく期間の作業です。JEITAが公開するITRS 2005年版の日本語版は、歩留まり改善を基準歩留りを研究開発の水準から成熟状態まで引き上げる過程とし、歩留り向上曲線の立ち上がりの部分を主題に据えています。
最終的な歩留まりが同じなら、速さは問われますか?
問われます。ITRS 2005年版は、利益が主として急峻な歩留りの立ち上がりからもたらされるとし、高いバッチ歩留りを早く達成した生産者が大量生産を早く始められ、利益を伸ばせるとしています。チップの単価が高い時期に量産へ乗せられるかどうかが、そのまま利益率へ跳ね返ります。
立ち上げ期と量産期で、相手にする成分は同じですか?
入れ替わります。ITRS 2005年版は、歩留りをライン歩留りとバッチ歩留りの積とし、バッチ歩留りをさらにシステマティック成分とランダム成分の積として表したうえで、製造の初期段階をバッチ歩留りが支配し、量産が始まったあとはライン歩留りが支配的な要因になるとしています。
立ち上げ中は何を測りますか?
欠陥と電気特性の両方です。歩留り管理システム(YMS)は、歩留まりのモニタと欠陥検査から解析までをつなぎ、欠陥が発生した工程へのフィードバックと、APCで装置のレシピへ先回りするフィードフォワードを合わせて行い、歩留まりをまとめて管理し引き上げる統合の仕組みです。
検査を増やせば立ち上げは速くなりますか?
速くなる方向へ働きますが、費用が乗ります。ITRS 2005年版は、検査装置の価格と占有面積とスループットが保有費用(CoO)の主要な要素で、CoOの高さのために配備できる台数が限られている状況に触れ、サンプリングが減れば歩留り損失と習熟の速度低下を招くとしています。
立ち上げの準備はいつから要りますか?
量産開始より前です。ITRS 2005年版は、歩留り立上げのフェーズで要る装置を量産が始まる数ヶ月前に用意しておく必要があるとしています。アドバンテストも、同社のテスト・システムが量産ラインの立ち上がる前の段階、つまり設計と、そこでデバイスの特性を測る工程でも使われるとしています。
外部の支援を受ける手立てはありますか?
あります。アドバンテストは量産立ち上げサービスで、量産立ち上げの工期を最短にすること、調査の時間を短くすること、立ち上げのリスクを下げることを掲げ、テスト・システムとテストセルごとの相関取りまで支えるとしています。PDF Solutionsは、1999年以降に100件を超える歩留まりの立ち上げに関わったとしています。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- 歩留まり(イールド)とは── 水準そのものを表す指標
- ビン分け(テスト結果の分類)とは── 立ち上げ期に工程へ返すデータの粒度
- APC(Advanced Process Control)とは── 装置レシピへ返す側の仕組み
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- 2KLA:年次報告書(Form 10-K)ir.kla.com ↩
- 3
- 4
- 5アドバンテスト:量産立ち上げサービスadvantest.com ↩
- 6アドバンテスト:解説 半導体テストadvantest.com ↩
- 7日本半導体製造装置協会(SEAJ):半導体製造装置用語集(検査 : Test)seaj.or.jp ↩