ディスパッチ(投入順序)とは
ディスパッチ(投入順序)とは、装置の前で順番を待っているロットの中から、次に流す1つを選んで割り当てることです。 工場の予定表を先に作る仕事とは別に、目の前の行列を見て今この瞬間の1つを指名する仕事があり、そちらをこう呼びます。
ウェーハは動いている時間より待っている時間のほうが桁で長いので、納期を左右するのは装置の速さより順番の決め方です。
ディスパッチャは、計画をもとに装置の前で1つを選ぶ
Section titled “ディスパッチャは、計画をもとに装置の前で1つを選ぶ”ディスパッチャは、スケジューラが作った生産計画のガントチャートをもとに、ロットの進捗情報や装置の稼動状況などを考慮して、各装置で流すべきロットを選び、振り分ける機能です1。生産実行システム(MES)の一部として組み込まれる場合と、スケジューラとともに独立した部品として動く場合があります。装置の前の仕掛りから最適なロットを選ぶ仕組みはRTD(Real Time Dispatcher)と呼ばれ、名前のとおり選ぶ場所は装置の前です。
ディスパッチは計画づくりとは別の仕事で、計画を持ったうえで、装置が空いた瞬間に、待っているFOUPの中から1つを指名します。
ウェーハは加工時間のおよそ70倍を待っている
Section titled “ウェーハは加工時間のおよそ70倍を待っている”JEITAの平成20年度の報告では、ウェーハ1枚ごとに数えると、装置で加工している時間のおよそ70倍の待ち時間2を経て生産されています。内訳は、ロードポートで順番を待つ時間、加工を終えたあとの待ち、同じロットの他のウェーハを待つ時間、次の工程へ運ばれるのを待つ時間です。現場の課題としては、装置の空きやオペレータ待ちが出ること、決められたサイクルタイムから作業がずれること、ロットの優先度が崩れることが挙がっています。
装置の状態と、届くまでの時間を照らして選ぶ
Section titled “装置の状態と、届くまでの時間を照らして選ぶ”材料が流せる状態のときに装置の待ち時間を減らすため、ディスパッチは装置より情報を集めます3。集めるのは、装置の稼動状態、ロードポートの空き状態、予知保全、スケジューリング、工期の見込みで、これらを次に流す材料を示す動的なディスパッチ・リストと照らす必要があります。次の材料をいつ送るかは、AMHSの待ち行列と、いま材料がどこにあるかから見積もった走行時間に対しても判断します。装置の前だけを見ても足りず、そこへ届くまでの時間まで含めて選ぶ形です。
優先には段があります。装置間で直接運ぶ搬送では、まず仕掛りの1%未満にあたるスーパーホットロットと、仕掛りの5%ほどにあたるホットロットが先頭に来ます4。次にボトルネック装置を常に動いている状態に保つことが来て、その次に重要な計測工程、先行ウェーハ、タイミングを合わせたいロットが続きます。急ぎのロットにはQTATという語もあり、標準の速さで流れるロットとは別に、2倍から3倍の速さで流れる超特急のロットを指します。
割り込ませた分は、後ろのロットの待ちとして払う
Section titled “割り込ませた分は、後ろのロットの待ちとして払う”順番を1つ入れ替えれば、誰かが後ろへ動きます。ディスパッチは、この移し替えを毎回選び直す作業です。
待ちのムダを表す指標に、通常の製品ロットのサイクルタイムから、最速で流したスーパーホットロットのサイクルタイムを引いた差があります。この差はWTW(Wait Time Waste)と呼ばれ、ロット1本あたりの枚数ごとに目標値をロードマップの表へ加える方針が示されました。最速のロットを基準にしているため、この差は、割り込ませてもらえなかったロットが払った分を測る形になります。
装置の側にも理由があります。ITRS 2007では、主要な装置の購入コストがウェーハ工場の主要なコストの75%以上を占めるとされています。高い装置を空けておく損は大きく、だからこそ優先の段の2番目にボトルネック装置への供給が入っています。急ぎのロットを通すことと、高い装置を動かし続けることは、同じ行列の中で競合します。
装置の並べ方で、選ぶ回数は建物の設計時に決まる
Section titled “装置の並べ方で、選ぶ回数は建物の設計時に決まる”同じ加工ができる装置をまとめて配置するレイアウトはジョブショップ、工程の順に装置を配置して材料が最短距離で動けるようにするレイアウトはフローショップと呼ばれます。ウェーハプロセスはレジスト塗布から露光・現像・エッチング・イオン注入までを一組とし、すべてのパターンができあがるまでレジスト塗布から繰り返します5。同じ加工の装置がまとまっていて、しかも同じ並びを何度も通るため、1台の前には行き先の異なるロットが集まります。ディスパッチの重さは、建物の設計時点である程度決まっています。
よくある質問(FAQ)
Section titled “よくある質問(FAQ)”ディスパッチとは何ですか?
装置の前で順番を待っているロットの中から、次に流す1つを選んで割り当てることです。ディスパッチャは、ロットの進捗情報や装置の稼動状況などを考慮して、各装置で流すべきロットを選び、振り分ける機能です。
スケジューリングとはどう違いますか?
作る対象が異なります。ディスパッチャは、スケジューラが作った生産計画のガントチャートをもとに動きます。予定表を先に作るのがスケジューリング、その予定表を持ったうえで目の前の行列から1つを選ぶのがディスパッチです。
何を見て選ぶのですか?
装置の稼動状態、ロードポートの空き状態、予知保全、スケジューリング、工期の見込みを装置から集め、次に流す材料を示す動的なディスパッチ・リストと照らします。
優先されるロットがあるのですか?
あります。装置間で直接運ぶ搬送では、仕掛りの1%未満にあたるスーパーホットロットと、仕掛りの5%ほどにあたるホットロットが最優先で、次にボトルネック装置を常に動いている状態に保つこと、その次に重要な計測工程や先行ウェーハが来ます。
待ち時間はどれくらいあるのですか?
JEITAの平成20年度の報告では、ウェーハ1枚ごとに数えると、装置で加工している時間のおよそ70倍の待ち時間を経て生産されていました。
順番を変えると、何が犠牲になりますか?
後ろに回されたロットの日数です。待ちのムダを表す指標に、通常の製品ロットのサイクルタイムから、最速で流したスーパーホットロットのサイクルタイムを引いた差があり、割り込みを増やせばこの差が広がる側へ動きます。
装置の並べ方は関係しますか?
関係します。同じ加工ができる装置をまとめるレイアウトをジョブショップ、工程の順に装置を並べるレイアウトをフローショップと呼びます。同じ加工の装置がまとまっているほど、1台の前に行き先の異なるロットが集まり、選ぶ回数が増えます。
比較・違いを学ぶ
Section titled “比較・違いを学ぶ”- AMHS(自動搬送システム)とは── 選んだロットを実際に運ぶ側であり、走行時間の見積もりがディスパッチの判断材料になります
- ロードポートとは── 順番待ちが目に映る場所であり、空いているかどうかが次の1つの選択を左右します
5件を表示
- 1SEAJ:半導体製造装置用語集 Factory Integrationseaj.or.jp ↩
- 2JEITA 半導体技術ロードマップ専門委員会:平成20年度報告 第9章 WG8 ファクトリ・インテグレーションsemicon.jeita.or.jp ↩
- 3JEITA 半導体技術ロードマップ専門委員会:ITRS 2003 ファクトリインテグレーション 日本語版semicon.jeita.or.jp ↩
- 4JEITA 半導体技術ロードマップ専門委員会:ITRS 2007 ファクトリインテグレーション 日本語版semicon.jeita.or.jp ↩
- 5SEAJ:半導体製造工程とはseaj.or.jp ↩