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IAP(インクジェット適応平坦化)とは

IAP(インクジェット適応平坦化)とは、ウエハー表面の凹凸の分布に合わせてインクジェットで光硬化性の樹脂を置き、平らなガラス板を押し当てて固め、表面を平らにする技術です。 キヤノンがナノインプリントの技術を平坦化に応用して開発し、2026年1月に世界で初めて実用化した1と発表しました。研磨で削るCMPと逆に、凹部へ膜を足して平らにする方式です。平らさを決めるのは、下地の凹凸から逆算した樹脂の置き方と、ガラス板の当て方です。

凹凸は先端品の歩留まりを左右し、主流の平坦化は工程とコストが重い

Section titled “凹凸は先端品の歩留まりを左右し、主流の平坦化は工程とコストが重い”

成膜や配線の工程を重ねるたびに、ウエハー表面には凹凸が生じます。キヤノンによると、微細化や3D化が進む先端半導体では、わずかな凹凸がCD誤差やパターンエッジの位置ずれにつながり、歩留まりと生産性に大きく影響します。このため、これまで以上に高精度な平坦化技術が求められているとしています。現在主流の平坦化手法は、薄膜を形成して表面をなだらかにするスピンコートと、研磨を繰り返すCMPです。キヤノンは、どちらも工程の複雑化やコスト増加が課題だとしています。

樹脂の量を、下地の凹凸に応じて場所ごとに変えて配置する

Section titled “樹脂の量を、下地の凹凸に応じて場所ごとに変えて配置する”

キヤノンによると、IAPではウエハー表面の凹凸分布に応じて、インクジェット方式で平坦化材料(樹脂)を最適に配置し、その上から平坦ガラス板を押し当てます1。英語版の発表では、この材料を光で硬化する材料(light-curable material)と書いています。

同社の特許は、手順をもう少し細かく書いています。配置する材料の局所的な体積密度を、基板の凹凸に応じて変えます2。凹凸の形は、前の工程の情報から分かっている場合もあれば、段差計、AFM、SEM、光干渉式の表面形状測定器で測る場合もあります。液滴の配置は、下地の高さの地図から逆算して下地ごとに変わり、凹部の上には多く、高い所には少なく材料を置きます。

IAPの3段階
滴を置く凹部に多く凸部に少なく平板を当てて硬化紫外線離すと平らな層上面の凹凸5nm以下凹凸のある下地樹脂ガラス板
凹部には多く、凸部には少なく滴を置き、平らなガラス板を当てて板越しの紫外線で固めます。板を離すと、凹凸を埋めた樹脂の上面が平らに残ります。

特許の実施例では、平板を中心から接触させ、気泡を閉じ込めずに液滴を1枚の膜にする

Section titled “特許の実施例では、平板を中心から接触させ、気泡を閉じ込めずに液滴を1枚の膜にする”

キヤノンの特許によると、平板(スーパーストレート)が液滴に触れると液滴が合わさり、平板と基板のあいだを埋める膜になります2。このとき、未充填の欠陥を減らすために、空気やガスの泡を閉じ込めずに均一に埋めることが望ましいとされています。樹脂は毛細管現象と平板の曲がりによって広がります。

特許の実施例では、平板を当てる前に、中央部に圧力をかけて平板を曲げておくことがあります。その場合、平板は基板の中心で樹脂に触れ始め、接触力と中央部の圧力を同時に制御しながら、接触線をなめらかに外周まで動かします。特許は、平板の曲がり具合が平坦化のスループットに影響し、接触線の進む速さが残膜厚(RLT)の均一性に影響しうると書いています。平板と基板の平行度も、広がりのスループットに影響する条件として挙げられています。

平板が液滴に触れる順序
中心で接触中央に圧力接触線が外へ広がる接触線全面で接触周辺の軸ごとの力平板樹脂基板
中央に圧力をかけて曲げた平板が基板の中心で樹脂に触れ、接触線が外周へ広がるにつれて液滴が1枚の膜になります。押し当てる力は、周辺の軸ごとに分けて加えます。

押し当てる力の分け方も同じ特許にあります。平板と基板のあいだの材料を平坦化するための合計の接触力と、周辺に並ぶ複数の軸それぞれに沿った力成分との関係を、接触力モデル2として求めます。平坦化に要る設定値の力を決め、モデルから各軸の力成分を計算して、それぞれの軸に沿って加えます。基準面は基板チャックの上面に対して100ミリラジアン以内の平行度に収める場合があり、周辺の各軸のばねの力の較正は、推定した接触力を一定時間にわたって何度も測って平均し、リセットする場合があります。泡を閉じ込めずに広げることを含め、量産採用を分ける欠陥と材料の条件は特許の中に「望ましい」という形で並んでいます。

紫外線で固めてから剥がし、300mmウエハー全面を1回の押印で凹凸5nm以下にする

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特許の実施例では、平板の材料に溶融石英、石英、ホウケイ酸ガラスなどを挙げ、紫外線を透過する平板を使う形も示しています。平板が膜の全面に触れた後、紫外線などを当てて樹脂を硬化・架橋させて平坦化層を作り、それから平板を離します。

キヤノンによると、この方法で直径300mmのウエハー全面を一括の押印工程で高精度に平坦化でき、ウエハー表面の凹凸を5nm以下に抑えられます1。後続の工程に不可欠な、より均一な層構造が得られるとしています。キヤノン以外の測定では、Intelの技術者が露光前の炭素ハードマスク系の平坦化と比べ、パターン密度の異なる領域をまたぐ局所段差がその10分の1になったと報告しています。

削るCMPに対し、IAPは足して平らにする

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CMPとIAP
CMP 削って平らにする研磨で除くIAP 足して平らにする凹部を樹脂で埋める凹凸のある下地研磨する膜IAPの樹脂削る部分
CMPは下地を覆う膜の高い所を研磨で除いて平らにし、IAPは凹部に多く置いた樹脂で埋めて平らにします。

キヤノンは、凹凸の粗密や回路パターンの違いに左右されずに平坦化できる点を、IAPの特長に挙げています。CMPでパターンの粗密が平坦さに与える影響は、平坦化長と段差解消性で解説しています。

キヤノンの特許は、平坦化による露光の改善点を方式ごとに挙げています。ArFレーザーの露光では、平坦化で焦点深度、CD、CD均一性が改善します。EUV露光では、パターンの配置精度と焦点深度が改善します。ナノインプリントでは、型へのパターンの充填とパターン転写後のCD制御が改善します。

NIL装置FPA-1200NZ2Cの技術を平坦化へ転用し、2027年中の装置製品化を目指す

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キヤノンは、インクジェットでレジストを塗ったウエハーに回路パターンを刻んだ型をハンコのように押し当てて転写するNIL技術を開発し、2023年10月に半導体製造装置FPA-1200NZ2Cを発売しました1。IAPはこのNIL技術を平坦化に応用したもので、回路パターンを刻んだ型の代わりに平らなガラス板を押し当てます。

同社は、ロジックやメモリーなどの先端半導体の製造に向けて、2027年中にIAP技術を使った装置の製品化を目指すとしています。キヤノンとキヤノンナノテクノロジーズは、2026年2月25日にSan Jose Convention Centerで開催されるSPIE Advanced Lithography and Patterning Conferenceで、IAP技術と初期段階の実用化結果を発表する予定だと告知していました。

IAPとは何ですか?

ウエハー表面の凹凸の分布に合わせて、インクジェットで平坦化材料(光硬化性の樹脂)を置き、その上から平らなガラス板を押し当てて固め、表面を平らにする技術です。キヤノンがナノインプリントの技術を応用して開発し、2026年1月に実用化を発表しました。

CMPと何が違いますか?

CMPは研磨を繰り返して表面を削り、平らにします。IAPは樹脂の量を場所ごとに変えて置いて凹部を埋め、1回の押印でウエハー全面を平らにします。キヤノンは、IAPなら凹凸の粗密や回路パターンの違いに左右されにくいとしています。

どのくらい平らになりますか?

キヤノンによると、直径300mmのウエハー全面を1回の押印で平坦化し、表面の凹凸を5nm以下に抑えられます。

樹脂はどう固めますか?

キヤノンの特許では、紫外線を透過するガラス板(スーパーストレート)越しに紫外線などを当てて樹脂を重合・硬化させ、その後に板を離します。

いつ装置が出ますか?

キヤノンは、ロジックやメモリーの先端半導体製造向けに、2027年中にIAP技術を使った装置の製品化を目指しています。

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