キヤノンIAPの滴配置は高さ地図から逆算全面の凹凸5 nm以下とCanonが報告
CanonのIAPが平らな面を作れるのは、滴の量と配置を、下地の高さとパターン密度の地図から前もって計算するからだ。つまり、凹部の上には多く、高い所には少なく材料を置き、平らなガラス板で全面を1回で押し広げる。Canonは2026年1月の発表で1、凹凸の粗密や回路パターンの違いによらず、300 mmウェーハ全面の凹凸を5 nm以下に抑えたと報告した。
この値をどう読むかには、Canon以外の測定が手がかりになる。Intelの技術者は2026年9月のJM3誌の論文で2、IAPを施したウェーハの露光領域内の高さが±5 nmに収まったと報告した。ただしその干渉計の雑音も約5 nmで、±5 nmは雑音と同じ大きさだ。Canonの5 nm以下はCanon自身の発表の値で、Intelの干渉計の値とは別の量だ。どちらも1件ずつの報告で、IAPがどの層に向くかという全体像はCanon IAPの入門記事にまとめている。
滴の配置は、高さの地図から逆算して決める
Section titled “滴の配置は、高さの地図から逆算して決める”IAPの出発点は、下地の地図だ。Canonの特許は、滴の配置を決める入力として、パターンの密度と向きを記録した材料マップ、上に残したい膜の厚さ、1滴の体積、エッチングで掘った深さ3を挙げる。考え方としては、地図の各場所で、凹部を埋めるのに要る量と、上に残す膜の量を足せば、その場所に置く材料の体積が決まる。それを1滴の体積で割れば、滴の数になる。
置き方にも計算がある。同じ特許は、パターンのそろった区画を見つけ、密度の違う区画どうしの境目では、必要な量を保ちつつ、滴どうしの距離の逆数の重み付き和が最小になる配置を選ぶ。各滴が受け持つ範囲はボロノイ分割で決める。この特許はNILとIAPの両方の滴配置を対象にしており、IAPによる平坦化が焦点深度、CD、CDの均一性を改善すると書いている。
IAPの研究発表は2017年にさかのぼる。SPIEでは2017年に、Sreenivasanらが「Inkjet-based adaptive planarization」4とIAPの工程開発5を報告している。
IAPは全面を一括で押し、NILは露光領域ごとに押す
Section titled “IAPは全面を一括で押し、NILは露光領域ごとに押す”IAPとNILは、押し当てる範囲が違う。CanonのNIL装置FPA-1200NZ2Cは、26 mm×33 mmの領域6ごとに型を押してウェーハ上を移っていく。Canonは、IAPでは平らなガラス板で300 mm全面を一括の押印で平坦化する7と説明する。CanonのNILについてはCanonのナノインプリントの事業性で扱っている。
Intelの論文はIAPを、線幅、アスペクト比、パターン密度によらない平坦化性能を持つ2方式と紹介している。
Intelの±5 nmは、干渉計の雑音約5 nmと同じ大きさ
Section titled “Intelの±5 nmは、干渉計の雑音約5 nmと同じ大きさ”Intelの論文は、2つの測り方で値を出している。
| 測定 | 範囲 | 結果 |
|---|---|---|
| AFM(原子間力顕微鏡) | パターン密度15%と75%の領域をまたぐ局所の段差 | IAPの段差は炭素ハードマスク系のほかの平坦化の10分の1 |
| 干渉計(画素約2.5 µm、雑音約5 nm) | 露光領域全体の高さ | IAPのウェーハは±5 nm以内 |
AFMは細い探針で表面をなぞるので、狭い範囲の段差を細かく測れる。干渉計は露光領域全体を一度に測れるが、雑音は約5 nmある。±5 nmという結果は、この雑音と同じ大きさだ。
Intelは、露光で得たデータも、IAPのウェーハでプロセスウィンドウが広がったことと整合すると報告している。
残る凹凸の元は、膜が固まって縮むこと
Section titled “残る凹凸の元は、膜が固まって縮むこと”UVで固めた直後の上面が平らでも、IAPの膜は凹部の上ほど厚い。後の加熱で膜が縮むと、厚い所ほど多く下がる。ここでは、膜が厚さ方向に、厚さに比例して割合sだけ縮むと仮定する。このとき上面に戻る段差は、縮み率sと下地の段差hの積になる。例として下地の段差を100 nm、厚さ方向の縮み率を5%とおいて計算すると、5 nmの段差が戻る。
Canonの特許も、平らな硬化膜を得るために、後の工程での縮みが小さく、耐熱性とエッチング耐性の高い材料が要る8と書く。この特許は実施形態の1つとして、反応しない高分子を10〜30重量%混ぜ、光硬化後の線方向の縮みを6%以下にできる組成を示す。別の特許は、硬化膜をガラス転移点を超え、融点に近い温度で焼くことが多いため9、高い耐熱性と小さな縮みが要ると説明する。厚さ方向の縮み率がこの線方向の縮み6%と等しいと仮定して、段差100 nmの例に当てはめると、戻る段差は6 nmになる。材料と欠陥が量産採用をどう分けるかは、IAPの量産採用を分ける欠陥と材料で扱う。
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- 1Canon:インクジェット方式のウエハー平坦化技術IAPを実用化(2026年1月)global.canon ↩
- 2
- 3Canon特許:滴パターンの生成方法(US12282252B2、2025年4月)patents.google.com ↩
- 4
- 5
- 6Canon:FPA-1200NZ2Cの製品仕様global.canon ↩
- 7Canon:IAPの英文発表と工程図(2026年1月)global.canon ↩
- 8Canon特許:IAP用光硬化材料の収縮と耐熱(US12428508B2、2025年9月)patents.google.com ↩
- 9Canon特許:耐熱性を高めたIAP用光硬化材料(US11945966B2、2024年4月)patents.google.com ↩