ダイをウェーハへ貼る工程には、引き合う 2 つの要求があります。
2026 年の集合的なダイ・ツー・ウェーハ直接接合の研究1が、それを 1 文で書いています。
「ダイ・ツー・ウェーハ組み立てに固有のピックアンドプレース工程は、高い配置精度と高いスループットを両立させることを難しくする。」
速く据えれば精度が落ち、精度を取れば遅くなる。
まとめて仮止めすると、熱の回数が 1 回になる
1 つ目の道が集合接合です。2018 年の集合的ダイ・ツー・ウェーハ接合によるヘテロジニアス集積2が、2 つの方式を対比しています。
| 方式 | やり方 |
|---|---|
| 逐次ダイ接合 | 1 個据えて接合、次を据えて接合、を繰り返す |
| 集合ダイ接合 | 個々のダイをインターポーザまたはハンドリングキャリアへ仮止めし、まとめて接合する |
集合接合の利点が書かれています。「基板の加熱と冷却が 1 回だけになり、工程費用と下地基板の熱履歴を大きく減らす。」
毛細管力で並べ直すと、速さと精度が切り離せる
2 つ目の道が自己整列です。2026 年の研究1が、その実測を報告しています。
原理はこうです。接合面へ水滴を落とし、その毛細管力でダイを目標位置へ自ら整列させる。
調べられているのは、水滴の寸法(高さと体積)が、複数ダイの同時かつ集合的な自己整列へ与える影響です。ディッピング法で、対象となる位置を集合的に濡らしています。
結果が数字で並びます。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 同時に接合したダイ数 | 40 個 |
| 1 µm 以内に整列した割合 | 80% 超 |
| 200 nm 以内に整列した割合 | 過半数 |
論文はこれを、古典的なピックアンドプレースに対する高スループットの代替案として提示しています。
「80% が 1 µm 以内」を、40 個の歩留まりへ直す
上の値を、組み立て 1 枚の歩留まりへ換算します。40 個すべてが仕様を満たす必要があるなら、
、 で
1 万枚に 1.3 枚です。個々の数字が良くても、40 乗が掛かると別の世界になります。
逆に解きます。組み立ての歩留まりを 90% にしたいなら
1 個あたり 99.74% が要ります。80% との差は 19.7 ポイントですが、要求の側から見れば「失敗率を 20% から 0.26% へ、77 分の 1 に下げる」という意味です。
だから自己整列を量産へ入れる道は 2 つに絞られます。
- を 99.7% 台まで上げる。水滴の体積と高さ、表面の濡れ性、ダイの寸法公差を詰める
- 仕様を満たさなかったダイを個別に直せるようにする。整列の結果を測り、仕様の外にあるものだけを据え直す
2 つ目は、集合化で得た速さの一部を返す操作です。仕様の外へ落ちる割合が なら、返す時間はおよそ 。 で なら 8 個の据え直しになります。
「過半数が 200 nm 以内」という値が、目標の近さを示しています。ダイ・ツー・ウェーハのハイブリッドボンディングが要求する配置精度は 200 nm 未満3なので、過半数は既に要求の内側にいます。残りを引き上げる問題です。
濡れ性の対比が、自己整列の精度を確定する
自己整列の精度は、どこが濡れてどこが弾くかで決まります。水滴が広がる範囲が目標位置と一致していれば、毛細管力は正しい位置へ引きます。
2023 年の直接ウェーハ接合による高清浄度と高い疎水性/親水性の対比4が、この 2 つを同時に相手にしています。清浄度と濡れ性の対比——ダイ・ツー・ウェーハのために要る 2 条件です。
2 つが同じ表面処理で決まるのが要点です。
| 要求 | 表面に求めること |
|---|---|
| 清浄度 | 粒子と吸着種がゼロに近いこと |
| 濡れ性の対比 | 目標位置が親水、周囲が疎水であること |
2 つは引き合うことがあります。疎水性を作る工程(有機の単分子膜など)は、清浄度の観点からは汚染です。「きれいにする」と「濡れ方を作り分ける」が、同じ表面の上で衝突します。
設計の順番としてはこうなります。先に清浄化し、そのあとで濡れ性のパターンを作る。逆にすると、清浄化が濡れ性のパターンを消します。
「良品ダイ」が保証する範囲
3 つ目の道は、貼る前の選別です。ところがここにも境目があります。
2013 年の 3D 組み立てにおける品質——「良品ダイ」で足りるか5が、問題の形を書いています。
「3D パッケージについての論文は数多くあるが、3D が量産の地位へ届くまでには、まだ隔たりがある。共通する課題の 1 つは、全体としてより複雑になった供給網にわたって品質をどう確保するかである。良品ダイという概念が解けるのは、この一部にとどまる。」
「一部にとどまる」が要点です。良品ダイ選別は「貼る前のダイが良いこと」を保証しますが、組み立て工程そのものが持ち込む不良は保証の範囲外です。
論文は、従来の枠組みとの差を書いています。従来の半導体生産では、良品ダイ選別のための部品試験と、出荷前の最終機能試験で品質と費用効率が確保できた。先進実装はこれを越える。
提案されているのが分散試験フローです。判断の基準が明示されています。試験の費用と、試験を省いた場合の費用を比べる。
再構成ウェーハという、もう 1 つの単位
ダイを個別に相手にするかわりに、良品だけを集めて新しいウェーハを作る道もあります。2013 年の高性能メモリと SiP のための良品再構成ウェーハの積層6が、その形です。
良品ダイを並べ直して 1 枚のウェーハに仕立て、そのウェーハ単位で積層する。こうすると、
- 接合はウェーハ対ウェーハになるので、1 回の操作で全ダイが貼られます
- 不良ダイは再構成の時点で除かれているので、ウェーハ対ウェーハの欠点——不良どうしが重なる位置を除いて良品を道連れにする——が緩みます
集合接合との差は、キャリアが最終製品に残るかどうかです。集合接合の仮止めキャリアは剥がしますが、再構成ウェーハは接合の母体としてそのまま使われます。
2025 年のフラックスレス熱圧着のパネルレベルへの拡張7が示すとおり、同じ接合方式を大きい母材へ広げる方向もあります。単位を大きくする道が、ダイ → 再構成ウェーハ → パネルと 3 段あります。
3 つの道を、同じ表で比べる
| 道 | 速さの上限 | 精度の決まり方 | 主な追加項目 |
|---|---|---|---|
| 逐次ピックアンドプレース | per die | 装置の配置精度3 | — |
| 集合仮止め+一括接合 | 倍 | 装置の配置精度2(仮止め時) | 仮止めキャリア、剥離工程 |
| 毛細管自己整列 | ダイ数によらず一定 | 表面の濡れ性パターン | 液体の供給、乾燥、据え直し |
| 良品再構成ウェーハ | ウェーハ 1 枚で全数 | 再構成時の配置精度 | 再構成の工程、モールドと剥離 |
4 つとも、落ちた場所の地図の形が別になります。
- 逐次と集合は、装置の回転・倍率の残差が出るのでダイの角
- 自己整列は、濡れ性パターンのばらつきが出るので目標位置の形に沿う
- 再構成ウェーハは、再構成時のダイシフトが出るので再構成の順序に沿う
だから方式を替えたら、地図の受け取り方も替えます。
現場で動く判断
- 集合化の見返りは が上限です。接合時間が仮止め時間の 10 倍なら 11 倍まで。 と の両方が揃って初めて、見返りが見積もれます。
- で上限の 80% に届きます。それ以上ダイ数を増やしても、得られるものはわずかです。
- 「80% が 1 µm 以内」を 乗します。40 個なら 。個々の数字と、組み立て 1 枚の歩留まりは別の量です。
- 組み立て歩留まり 90% には、1 個あたり 99.74% が要ります。失敗率で言えば 20% を 0.26% へ、77 分の 1 です。
- 置き直しの工数を、速さの見返りから差し引きます。、 なら 8 個の置き直し。集合化で得た時間の一部を返す操作です。
- 清浄化と濡れ性パターンは、この順で作ります。逆にすると、清浄化がパターンを消します。
- 試験の挿入点は で決めます。段を重ねるほど が増えるので、下の段ほど試験の見返りが大きくなります。
- 方式を替えたら、不良地図の受け取り方も替えます。装置起因ならダイの角、濡れ性起因なら目標位置の形、再構成起因なら再構成の順序に沿って出ます。