接合したチェーンが落ちました。原因は研磨でしょうか、位置合わせでしょうか。
電気の結果だけを見ても、この 2 つは区別が付きにくい。ところが落ちた位置を地図に描くと、2 つは正反対の形を示します。
研磨の不均一は、ウェーハの半径方向に出る
まず研磨の側の空間的な形を、機構から導きます。2026 年の CMP におけるウェーハ面内不均一性の改善のための多ゾーン圧力制御の研究1が、不均一の出どころを名指ししています。
「一般的な問題はエッジ効果である。ウェーハ端での除去速度がウェーハ中心での速度と大きく別になり、均一性の低下と素子信頼性の悪化を招く。」
従来の手立ての届く範囲が書かれています。
| 方式 | 圧力を制御できる範囲 | 不均一性の改善 |
|---|---|---|
| 単一ゾーンのキャリア | ウェーハ端から 約 5〜7 mm | 約 3% どまり |
| 多ゾーンのキャリア | ウェーハ端から 3 mm 〜 20 mm | 3% 未満へ低減 |
単一ゾーンで動かせるのは、端から 5〜7 mm の狭い帯までです。300 mm ウェーハの半径 150 mm に対して、制御できるのは外周の 4〜5%。残りの領域の除去速度は、圧力分布の自然な形に委ねられます。
ウェーハ間のばらつきは、また別の帳簿
同じ「不均一」でも、ウェーハ間のばらつきは別の管理項目です。2005 年の CMP におけるウェーハ間膜厚ばらつきの低減手法の研究3が、その形を書いています。
要求の厳しさがまず示されます。IC 製造の工程フローにおいて、目標の平均膜厚を狭い公差(± 80 nm)の内側で一貫して達成することは、大きな挑戦である。
現行の運転の仕方です。一般に、工程時間を除くすべての工程パラメータ——印加圧力、キャリアとプラテンの速度、スラリー流量、パッドコンディショニング時間——はレシピの中で一定に保たれ、ばらつきの源を減らしている。
動かす変数が工程時間 1 つだけという構成です。そこでこの研究は、接触力学の仮説にもとづいて最適な工程時間を予測する手法を提案します。終点検出系の有無にかかわらず実装でき、入ってくるウェーハの厚みのばらつき、材料除去速度、工程の不規則な振る舞いを取り込みます。
3 つのばらつきが、別々の物差しで管理されています。
| 種類 | 何で動くか | 打ち手 |
|---|---|---|
| ウェーハ間 | 入ってくる厚み、除去速度の変動 | 工程時間の予測 |
| ウェーハ面内 | 圧力分布、エッジ効果 | 多ゾーンのキャリア |
| ダイ内 | パターン密度、線幅 | レイアウトとダミー |
3 つを 1 つの「ばらつき」として報告すると、打ち手が宙に浮きます。測るときに 3 つへ分けます。
位置合わせの残差は、ダイの角で最大になる
もう 1 つの不良、位置合わせへ移ります。合わせのずれを非破壊で検出する手段は2017 年の赤外検査の適用4にあり、そこで観測される量が、これから導く形をそのまま持ちます。こちらの空間的な形は、研磨と正反対です。
導き方は簡単です。ダイ中心からの位置ベクトルを とすると、
| 誤差 | 生じる変位 |
|---|---|
| 並進 | — 位置によらず一定 |
| 回転 | — 中心からの距離に比例 |
| 倍率 | — 中心からの距離に比例 |
回転と倍率は、どちらも中心でゼロ、端で最大です。最大になるのはダイの角——中心から最も遠い点です。
半幅 の正方形ダイなら、角までの距離は 。したがって
2 つの形をまとめます。
| 原因 | 落ちる場所 |
|---|---|
| 研磨(リセス) | ウェーハの半径方向。端に近いダイで落ちやすい。ダイ内はほぼ一様 |
| 合わせ(回転・倍率) | ダイの角。ウェーハ上の位置によらず、どのダイでも角から落ちる |
| 合わせ(並進) | 一様。ダイ内でもウェーハ内でも偏りがゼロ |
3 つの形は互いに独立です。だから地図を 2 枚——ウェーハ全体の図と、ダイ内の位置で重ね合わせた図——描けば、原因が割れます。
反りは、直径より厚みで乗る
接合が始まるかどうかには、反りが関わります。2002 年の直接ウェーハ接合のモデル化——ウェーハの反りとエッチパターンの影響5が、合否の線を作っています。
条件の立て方が明快です。接合の進行は、ウェーハに蓄えられるひずみエネルギーと、接合前線が進むときに散逸する表面エネルギーとの競合で決まる。
反ったウェーハを接合する場合が解析され、ひずみエネルギーの蓄積速度——接合を支配する量——と、接合後のスタックの最終曲率について、解析的な表現が導かれています。
結論が 2 つ並びます。
- ウェーハの厚みが大きな役割を果たす
- 接合の成否はウェーハの直径によらず決まる
「直径によらず」が要点です。薄膜の構造帯模型でも、接触波の速度が厚みで動き直径への依存が弱いという結果がありました。2 つの独立な解析が、同じ向きを指しています。
エッチパターンの影響も測られています。
| パターン | 接合への影響 |
|---|---|
| 深さの小さいエッチパターン | 接合を難しくする |
| 深いエッチ構造 | 接合を容易にする |
深さが小さいと難しく、深いと容易。直感に反する向きです。わずかな窪みは接触を妨げるだけですが、深い構造は接合前線が進むときにひずみを解放する余地を作る、と読めます。
設計への移し方はこうです。接合面のダミーパターンを設計するとき、深さを小さく取ると接合が難しくなる可能性があります。深さは平坦化の都合で決まることが多いのですが、接合の側にも別の要求が立っています。
地図を描く前に、測る手段を選ぶ
落ちた場所の地図を描くには、非破壊で界面を追う手段が要ります。3 つの選択肢があり、浮かぶものが別です。
2020 年の走査型音響顕微鏡による先進ウェーハ・パッケージレベル素子の欠陥検出6が示すのは、超音波で界面の音響インピーダンスの差を追う手法です。ボイドや剥離のように、界面に空隙がある欠陥へ向きます。
2017 年の熱圧着とダイ配置工程への赤外検査の適用4は、シリコンが赤外に対して透明であることを使います。上のダイを透かして下の構造を追うので、配置のずれが直接浮かびます。
2023 年の熱圧着向けの新しい 2D/3D X 線顕微鏡による合わせと検査の解決策7は、X 線で金属の構造を追う手法です。接合部の形状を 3 次元で捉えられます。
3 つの手段を、診断の順番へ割り当てる
浮かぶ欠陥の種類が別なので、疑っている原因で順番が決まります。
| 疑い | 最初に使う手段 | 浮かぶもの |
|---|---|---|
| ボイド・剥離(研磨、粒子、表面処理) | 走査型音響顕微鏡 | 界面の空隙 |
| 配置のずれ(回転、倍率、並進) | 赤外検査 | 上下のパターンの相対位置 |
| 接合部の形状(変形、はみ出し) | X 線顕微鏡 | 金属の 3 次元形状 |
手順としては、電気の地図を先に描きます。
- チェーンの合否を、ウェーハ上の位置とダイ内の位置の 2 枚の地図へ描く
- 形から原因を絞る(半径方向なら研磨、角なら合わせ、一様なら並進)
- 絞った原因に合う手段で、落ちた箇所だけを追う
非破壊検査を全面に掛けるのは時間がかかります。電気で絞ってから当たるほうが、同じ時間で桁の多い情報が取れます。
逆に、電気の地図が平らなときは全面検査へ進みます。平らということは、原因が空間的に一様——材料か工程時間か、ウェーハ間のばらつき——ということです。そのときは、前節の「ウェーハ間」の帳簿を確かめます。
現場で動く判断
- 不良の地図を 2 枚描きます。ウェーハ上の位置で 1 枚、ダイ内の位置で重ね合わせて 1 枚。2 枚そろって初めて、研磨と合わせが割れます。
- 半径方向の形なら研磨、角に集中するなら合わせです。回転と倍率の残差は中心からの距離に比例するので、角で最大になります。並進は一様なので、どちらの地図も平らなままです。
- ウェーハ面内とダイ内のリセスの比を、 と比べます。10 mm 角なら 15 倍、25 mm 角なら 6 倍。比が 1 に近ければ、ダイ内にパターン密度の効果が乗っています。
- ばらつきを 3 つの帳簿へ分けます。ウェーハ間(工程時間)、ウェーハ面内(多ゾーン圧力)、ダイ内(レイアウト)。1 つにまとめると打ち手が宙に浮きます。
- 許される回転は、ダイ寸法に反比例します。200 nm の予算なら、10 mm 角で 28.3 µrad、25 mm 角で 11.3 µrad。倍率の許容値は ppm で同じ数値になります。
- 単一ゾーンのキャリアが動かせるのは、端から 5〜7 mm です。多ゾーンなら 3〜20 mm1。ウェーハ端のダイが落ちるとき、まずこの範囲を確かめます。
- 接合の成否は、直径よりウェーハの厚みで決まります。大きいウェーハだから接合が難しい、という読みには根拠がありません。
- 接合面のダミーは、深さも設計します。深さの小さいエッチは接合を難しくし、深い構造は容易にします。平坦化の都合だけで深さを確定すると、接合の側の要求と衝突します。
- 非破壊検査は、電気で絞ってから掛けます。音響はボイド、赤外は配置、X 線は形状。疑いに合う手段を、落ちた箇所だけに使います。