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VOL.04 先端パッケージングの寸法 第 8 回 / 全 42 回

ハイブリッドボンディングの CMP:許される銅の凹みは数 nm

ハイブリッドボンディングの銅パッドは、絶縁膜よりわずかに低く、しかも加熱で伸びる量より浅く磨き上げる必要があります。研磨パッドの温度を管理するかどうかだけで凹みが 10 nm 以上動くので、この狭い窓に収めるには温度の管理が欠かせません。

22 分 応用 式 6 図 2 出典 14

この回の目次(8 節)
  1. §1 窓は仕様より、熱膨張の引き算で出る
  2. §2 「ディッシング < 銅の膨張」は、公開文献に 1 行で書かれている
  3. §3 仕様書に無い変数で、ディッシングが 16 nm 動く
  4. §4 削る向きは、2 回のリワークで逆転する
  5. §5 パッドが 0.5 µm を切ると、凹ませる側が不利になる
  6. §6 温度を下げると、何を手放すことになるのか
  7. §7 同じ銅でも、磨き方で接合の質が割れる
  8. §8 実務での使い方

この回で示すこと

  1. 片側の伸びは で、800 nm のパッドなら 250 °C で 3.0 nm、350 °C で 4.4 nm。
  2. 銅どうしが届く条件は「ディッシング < 銅の膨張」で、この条件で 1000 リンクのデイジーチェーンが歩留まり 95%。
  3. CMP のパッド温度を管理しないとディッシングが 12〜16 nm 動き、30 °C に保つと 4 nm と 1 nm 未満に収まる。
800 nm パッドの片側の伸び(250 °C) 3.0 nm
パッド温度を管理しないときのディッシングの変動 16 nm
1000 リンクのチェーン歩留まり 95 %

ハイブリッドボンディングを「銅を平らに磨いて貼る」と覚えていると、最初の 1 枚で詰まります。平らに磨いた銅は、そこで止まります。

銅は絶縁膜よりわずかに低いところにいる必要があります。高すぎても低すぎても、接合は手前で止まります。

  • 銅が出っ張っていると、銅が先に当たって絶縁膜どうしが密着する余地を失う
  • 銅が凹みすぎていると、加熱して膨張しても銅どうしのあいだが空いたまま残る

では「わずかに」とは何 nm なのか。まず、その数字が仕様より引き算の結果であることを示します。次に、CMP の仕様書に載っていない変数がその数字を 16 nm 動かすことを示します。最後に、パッドを 0.5 µm より小さくすると、凹ませるという前提そのものが不利になることへ進みます。

窓は仕様より、熱膨張の引き算で出る

接合面が埋まるのは、加熱で銅が絶縁膜より余分に伸びるからです。効くのは銅の熱膨張係数そのものより、銅と絶縁膜の差のほうです。

低温接合のために高熱膨張の電析銅を作った 2020 年の報告1は、新しい添加剤で作った銅の熱膨張係数を 、従来の銅より 46% 高いと書いています。ここから従来銅の側が逆算できて、 ppm/K。SiO₂ を 0.5 ppm/K とすれば、差は

パッドの銅の高さを 、室温からの温度上昇を とすると、片側のパッドが余分に伸びる量は

上下 2 枚のパッドがどちらも深さ だけ凹んでいるなら、隙間は 、伸びは 。銅どうしが届く条件は ——片側どうしの比較になります。

ダマシンで作る銅パッドの高さを 800 nm として、接合後アニールの温度を振ります。

接合後アニール片側の伸び
200 °C175 K2.35 nm
250 °C225 K3.02 nm
300 °C275 K3.69 nm
350 °C325 K4.36 nm

温度を 150 °C 上げても、伸びは 2 nm 増えるだけです。許される凹みは、どう転んでも数 nm です。

逆を問うと窓の正体が出ます。5 nm の凹みを許したいなら、必要な銅の高さは

1.33 µm。同じ計算を高熱膨張の銅(24.7 ppm/K)でやると 0.90 µm まで下がります。熱膨張係数を 46% 上げるという一手は、パッドを 1.33 µm 積むかわりに 0.90 µm で済ませる、という交換でした。報告側も、その銅なら 250 °C・5 nm のディッシングで接触面積が 100% になると計算しています。(この 1.33 µm と 0.90 µm は、報告の熱膨張係数から で出したこの記事の計算です。)

窓が狭いのは工程が下手だからより、材料定数と配線構造が先に決めているからです。

「ディッシング < 銅の膨張」は、公開文献に 1 行で書かれている

上の条件を、そのまま 1 行で書いている報告があります。

1.8 µm の銅パッド・3.6 µm ピッチで Cu/SiO₂ のハイブリッドボンディングを組んだ 2019 年の報告2は、350 °C のアニールでディッシングを変えながら Cu–Cu 界面を調べ、結論をこう書いています——350 °C のアニールでの銅の膨張より小さいディッシング値を選ぶことで、リンクあたりの抵抗 1.2〜1.5 Ω、1000 リンクのデイジーチェーンで 95% の歩留まりを得た。

条件の形が、上の とそのまま同じです。「小さいディッシング値を選ぶ」と書いてあるのが肝心です。ゼロや最小を目指す管理とは別物で、上限のある区間の中へ入れる、という管理になります。

伸びの側は温度で買えますが、買える幅は上の表のとおり 2 nm 程度。だから実務は、凹みの側をどこまで揃えられるかへ移ります。

図 01
銅が埋められるのは数 nm。CMP は成り行きだと 16 nm 凹む 横軸はディッシングの深さ。緑は 800 nm の銅パッドが 350 °C までで埋められる範囲 片側の伸び δ = Δα h ΔT(h = 800 nm) 銅が届く 空いたまま残る 200 250 300 350 °C 2.35 → 4.36 nm。150 °C 上げても 2 nm 増えるだけ 0 4 8 12 16 18 nm 1 nm 未満(50 µm パターン) 4 nm(100 µm パターン) 12 nm 16 nm CMP のパッド温度を 30 °C に保つ 温度を成り行きにする 16 nm の凹みを 250 °C で埋めるには、銅パッドの高さが 4.24 µm 要る計算になる。 ダマシンの配線層としては桁が 1 つずれる。温度管理の有無が、そのまま接合の成否になる。
800 nm の銅パッドが片側で伸びる量は、200 °C で 2.35 nm、350 °C でも 4.36 nm。温度を 150 °C 上げても 2 nm 増えるだけです。いっぽう CMP の側は、パッド温度を成り行きにすると 100 µm パターンで 12 nm、50 µm パターンで 16 nm の凹みが出ます。この 2 つを同じ目盛に載せると、温度管理の有無が接合の成否をそのまま決めていることが浮かびます。管理すれば 4 nm と 1 nm 未満まで下りて、伸びの側が届く区間へ入ります。

仕様書に無い変数で、ディッシングが 16 nm 動く

凹みの側を決めているものは何か。スラリーとパッド硬度、という答えは半分です。

CMP の工程温度とディッシングの関係を調べた 2025 年の報告3が、見落とされてきた変数として研磨中のパッド温度を挙げています。ブランケットウェーハで Cu・Ta・SiO₂ の除去速度を測ると、3 つとも温度に対してアレニウス型に動く。活性化エネルギーが材料ごとに別なので、温度が動けば選択比が動きます。

選択比が動けば、ディッシングが動きます。数字がそのまま出ています。

パターン温度を成り行きにした場合30 °C に保った場合
100 µm パターンディッシングが 12 nm 増加4 nm
50 µm パターンディッシングが 16 nm 増加1 nm 未満

16 nm です。前の節の表と突き合わせてください。800 nm のパッドが 350 °C で伸びる量は 4.36 nm。16 nm は、その 3.7 倍です。

同じ計算を逆に回すと、16 nm を 250 °C で埋めるのに要る銅の高さは

4.24 µm。ダマシンの配線層としては桁が 1 つずれます。温度を成り行きにした CMP は、接合の手前で止まります。

30 °C に保つと 4 nm と 1 nm 未満。伸びの側が届く区間へ、そのまま入ります。報告側は、これを実現するためにボルテックスチューブでパッドを冷やす機構まで作っています。スラリーでもパッド硬度でもなく、パッドの温度でした。

なぜ温度で選択比が動くのか

CMP の除去速度は、化学的な酸化・錯体化と、機械的な削り取りの積で決まります。化学の側はアレニウス型、つまり

の形で温度に乗ります。 が材料ごとに別なので、温度を動かすと 3 つの除去速度が別々の割合で動く。銅と SiO₂ の比が動けば、パッドの中心が余分に削れるかどうかが動く。これがディッシングです。

この構造から 2 つ言えます。

  1. 温度を成り行きにするかぎり、ディッシングはロットごとに動く。研磨の摩擦熱はウェーハの枚数、パッドの使用時間、室温で動きます
  2. 最適温度は「低いほど良い」という単調な形から離れます。報告が選んだのは 30 °C で、そこが選択比の釣り合う点でした

仕様書に「スラリー」「パッド」「圧力」「回転数」しか欄が無いなら、いちばん大きく動く変数が管理されていません。

削る向きは、2 回のリワークで逆転する

選択比がディッシングの符号まで左右する、というのは実際の工程手順からも裏が取れます。

上の 2019 年の報告は、ディッシングのプロファイルを2 段のリワークで作っています。

  • P2(微細な銅除去)— 銅の除去速度が SiO₂ より大きい。だから時間を延ばすほどディッシングが深くなる
  • P3(バリア除去)— 銅の除去速度が SiO₂ より小さい。だから時間を延ばすほどディッシングが浅くなる

同じ CMP という名前の工程が、ステップによって逆向きに働きます。深くする工具と浅くする工具の 2 本があって、両方の時間で目標の深さへ持っていく。「CMP を良くする」という言い方が宙に浮くのは、このためです。どちらのステップの話なのかで、時間を延ばす意味が反転します。

仕上げの側には、CMP とは別の工程も入ってきています。ウェットな原子層エッチングで銅のリセスをサブ nm まで管理する 2024 年の検討4と、それを300 mm のウェーハレベルの装置へ広げた 2025 年の報告5があります。2 つの題を順に追うと、1 年で何が動いたかが分かります。前者が「サブ nm のリセス管理」、後者が「ウェーハレベルの銅表面トポグラフィ管理」。局所の削り方が届いた次に、ウェーハ全面の分布が課題として立っている、という順序です。

絶縁膜の側にも同じことが起きています。SiCN の CMP をハイブリッドボンディング用に作り込む 2025 年の検討6が独立した題として立っているのは、銅を狙って削ると絶縁膜も削れるからです。接合面は銅と絶縁膜の両方でできているので、仕様も両方に要ります。

パッドが 0.5 µm を切ると、凹ませる側が不利になる

ここまでは「銅を少し凹ませる」を前提に話してきました。その前提が崩れる寸法があります。

Cu–SiCN のハイブリッドボンディングを、出っ張り構造と凹み構造の両方で熱機械シミュレーションした 2026 年の解析7が、パッド寸法を振って両者を比べています。結果が寸法で反転しました。

0.5 µm パッドでの比較
Cu–Cu 接合面積出っ張り構造が 54% 大きい
熱機械応力凹み構造 606.1 MPa → 出っ張り構造 364.8 MPa(39.8% 減)

パッド寸法が 0.5〜1.5 µm、とりわけ 0.5 µm では、出っ張らせたほうが有利。0.22 µm 凹ませた構造との比較でこうなります。銅を凹ませるという定石は、0.5 µm を下回ると向きを変えるという結論です。

亀裂の出どころも同じ解析が挙げていて、Cu–SiCN の垂直な側壁が最も起きやすい場所でした。前の節で SiCN の CMP が独立した題になっていたことと、ここで 1 本の線になります。銅と絶縁膜が縦に接する線が、応力の集中する場所でもあります。

この記事の が持っている変数は、高さ だけです。横方向はこの式に入っていないので、パッドを小さくしても計算上の伸びは変わらない。実際には側壁が銅の変形を拘束するので、小さいパッドではこの式が上振れした答えを返します。銅パッドの膨張機構をシミュレーションし、膨張を増やす手立てを探した 2025 年の検討8が独立した題として立っているのは、膨張の不足が共通の前提になっているからです。窓の計算は、ピッチごとに引き直すことになります。

図 02
パッド 0.5 µm では、凹ませる側が不利になる Cu–SiCN ハイブリッドボンディングの熱機械シミュレーション(2026 年) 凹み構造(0.22 µm リセス) 熱機械応力 606.1 MPa 出っ張り構造 熱機械応力 364.8 MPa(39.8% 減) → 接合面積 +54% Cu–SiCN の垂直側壁 同じ場所 亀裂が最も起きやすいのは、どちらの構造でも銅と絶縁膜が縦に接するこの線。 この記事の δ = Δα h ΔT が持つ変数は、高さ h だけ。横方向はこの式に入っていない。 側壁が銅を拘束するので、小さいパッドではこの式が上振れした答えを返す。
パッド寸法 0.5 µm では、出っ張り構造のほうが Cu–Cu 接合面積が 54% 大きく、熱機械応力は 606.1 MPa から 364.8 MPa へ 39.8% 下がります。銅を凹ませるという定石が、0.5 µm を下回ると向きを変える。亀裂が最も起きやすいのは Cu–SiCN の垂直な側壁で、銅と絶縁膜が縦に接する線が応力の集中する場所でもあります。

温度を下げると、何を手放すことになるのか

接合温度を下げたい理由ははっきりしています。下に積んであるものを守るためです。ところが前の節の表が示すとおり、温度を下げると伸びが減って、窓がさらに狭まります。どちらを取るのか、という話になります。

ナノツイン銅を使った Cu/SiO₂ ハイブリッドボンディングの熱安定性を調べた 2022 年の報告9が、手放すものを数字にしています。接合温度を 200 °C から 300 °C へ上げたときの変化です。

量200 °C300 °C
接合界面のボイド率0.814%0.005%
接合の浸透深さ228 nm745 nm
平均結晶粒径0.64 µm0.87 µm
粒成長の速さ0.14 µm/h^1/20.25 µm/h^1/2

ボイド率が 160 倍です。0.814% と 0.005% は、同じ「接合できた」の中の差として片づく量を超えています。100 °C 下げると、界面に残るボイドがそれだけ増える。

それでも 200 °C 側を選ぶ道があります。ナノツイン銅の (111) 面でのクリープを使った低温 Cu–Cu 接合の 2015 年の研究10は、150〜250 °C、0.69 MPa の圧縮、10〜60 分で直接接合を達成しています。決め手として挙げられているのは(111) 面上の速い表面拡散で、単結晶のかわりに配向度 90% 超のナノツイン銅でその面を作っています。接合界面はツイスト型の粒界になり、低角ならスクリュー転位の六角網目ができる——そこまで観察したうえで、表面クリープの簡単な速度式が実測とおおむね合うことも示しています。

温度で買っていたものを、結晶の向きで買い直しているというのが、この 10 年の動きです。

同じ銅でも、磨き方で接合の質が割れる

ここに、CMP が戻ってきます。

CMP で平坦化したナノツイン銅の低温 Cu–Cu 接合を界面から調べた 2022 年の報告11が、同じナノツイン銅を CMP で磨いた場合と電解研磨で磨いた場合を比べています。結果は CMP 側のほうが接合の質が上。理由も書かれていて、CMP のナノツイン銅膜は表面粗さが極めて低く、接合前の界面ボイドがほぼ無いからです。

効いたのは材料より、その材料をどう仕上げたかでした。接合時間が 10 分まで短くでき、柱状のナノツイン組織を保ったまま 150 °C で接合できています。

つまり銅の側にも、CMP の側にも、それぞれ独立に詰める余地が残っています。ここ 2 年の報告の題を順に追うと、その両方が同時に動いているのが分かります。

3 つとも、題に「温度」と「組織」が同居しています。温度を下げるための手段として銅の中身を設計する、という枠組みが共通しています。

実務での使い方

CMP の仕様を「平坦度」の 1 語で済ませると、必要な項目が落ちます。要るのはリセスの目標値と、その上限。上限は で自分の構造から出せます。800 nm のパッド・250 °C なら 3.0 nm、350 °C でも 4.4 nm です。

CMP の仕様書に、パッド温度の欄を作ってください。温度を管理した場合としなかった場合を比べた報告3では、成り行きで 12〜16 nm、30 °C に保つと 4 nm と 1 nm 未満。接合まで届くウェーハと、手前で止まるウェーハを隔てていたのが、この 1 項目でした。

「CMP の時間を延ばす」が、どちらの意味なのかを先に決めてください。銅の除去速度が絶縁膜より大きいステップでは時間を延ばすほど凹みが深くなり、小さいステップでは浅くなります。同じ工程名で逆向きです。

パッドを 0.5 µm より小さくするなら、凹ませるという前提を引き直してください。その寸法では出っ張り構造のほうが接合面積が 54% 大きく、応力が 39.8% 低いという解析があります。

接合温度を下げるなら、ボイド率がいくらまで許せるかを先に決めてください。200 °C と 300 °C で 0.814% と 0.005%。160 倍の差を引き受ける代わりに、下の層の熱履歴を買うことになります。

銅を替えるなら、仕上げも一緒に替えてください。同じナノツイン銅でも、CMP で磨いたものと電解研磨で磨いたもので接合の質が割れます。材料の欄と仕上げの欄は、別々に要ります。

窓・分布・材料の 3 つを揃えても、まだ動く変数が残っています。パッドの大きさそのものです。上の が持つ変数は高さ だけですが、0.5 µm を下回ると出っ張り構造のほうが有利になるという解析が出ている以上、リセスの目標値も、窓の計算そのものも、ピッチごとに引き直すことになります。次に効いてくるのは、そのピッチの側です。

出典

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