SemiMapサイト内検索

VOL.04 先端パッケージングの寸法 第 25 回 / 全 42 回

基板コアの最適 CTE:シリコンと基板のてこ比で決まる

パッケージ基板のコアは、上のシリコンと下の基板の両方から熱膨張で引っ張られます。最適な熱膨張係数は、それぞれの腕の長さで重み付けした平均になり、シリコンよりずっと基板の側に寄ります。ガラスのコアなら膨張係数を設計で選べますが、その代わりに払うものもあります。

22 分 標準 式 10 出典 7

この回の目次(7 節)
  1. §1 反りは、上下の膨張差から出る
  2. §2 上と下の両方から、同時に引かれる
  3. §3 変位を数字にする
  4. §4 下側の接合部は、独立した研究対象になっている
  5. §5 ガラスを選ぶと、膨張係数が設計変数になる
  6. §6 選べることの代償
  7. §7 現場で動く判断

この回で示すこと

  1. コアの CTE は上のシリコンと下の基板の両方から引かれ、最適値は腕の長さで重み付けした加重平均。
  2. ダイ 20 mm・パッケージ 50 mm なら最適値は 12.9 ppm/K で、シリコンの 2.6 より基板の側に寄る。
  3. ガラスを選ぶと、膨張係数を設計変数にできる。
ダイ 20 mm・パッケージ 50 mm での最適なコア CTE 12.9 ppm/K
シリコンの CTE 2.6 ppm/K

ガラスコア基板の利点として、熱膨張係数がシリコンに近いことが挙げられます。

ところが基板は、上のシリコンだけに付いているわけではありません。下にはプリント基板があり、そちらの膨張係数はシリコンより大きい。シリコンへ近づけるほど、下との差が開きます。

反りは、上下の膨張差から出る

まず機構を確かめます。2025 年のコア材料の熱膨張係数が大型 FCBGA パッケージの反りへ与える影響の研究1が、連鎖をそのまま書いています。

「ダイ/シリコンと、コアや絶縁材料といった基板材料との熱膨張係数の不整合が、パッケージの熱反りをもたらし、電子パッケージにおける熱機械的な故障を招きうる。」

大小関係が明示されます。ダイ/シリコンの熱膨張係数は、有機基板の全体としての熱膨張係数より小さい。

反りの向きも、用語として決めてあります。

温度反りの形符号
リフローから冷える凸(泣き顔)正の反り
加熱される凹(笑い顔)負の反り

この研究が振っているパラメータは、コア材料の熱膨張係数、コアの厚み、パッケージの型です。コアの膨張係数が設計変数の 1 つに数えられているのが要点です。

上と下の両方から、同時に引かれる

パッケージを 3 層とみなします。層の構成と接合部の呼び分けは、2007 年の 2 次実装における BGA 型パッケージのはんだ接合部の故障2が使う段の区別に沿っています。

層熱膨張係数の目安
シリコンのダイ ppm/K
基板のコア(設計変数)
プリント基板 ppm/K

接合部は 2 か所にあります。ダイと基板のあいだ(銅ピラーやマイクロバンプ)と、基板とプリント基板のあいだ(はんだボール)。

温度が 動いたとき、接合部の一端が受ける相対変位は

は中立点から接合部までの距離——てこの腕です。

接合部膨張差腕の長さ
ダイ側ダイの半対角(ダイ寸法で決まる)
基板側パッケージの半対角

2 つの膨張差は、 を動かすと必ず逆向きに動きます。 が 2.6 と 17 のあいだにある限り、

差の合計は によらず一定です。動かせるのは、その 14.4 を上下でどう配分するかだけ。

変位を数字にする

上の式で、実際の変位を計算します。変位がそのまま熱疲労の駆動力になることは、2025 年の BGA パッケージの熱疲労挙動の研究3が配置の最適化を通じて示しています。 K として、

コアの ダイ側 基板側 大きいほう
4.8(シリコン側)2.2 µm30.5 µm基板側
85.4 µm22.5 µm基板側
107.4 µm17.5 µm基板側
12.9(最適)10.3 µm10.3 µm同じ
1512.4 µm5.0 µmダイ側

4.8 から 10 へ動かすと、基板側が 30.5 → 17.5 µm で 43% 減ります。そのかわりダイ側が 2.2 → 7.4 µm で 3.4 倍。

最悪値は 30.5 → 17.5 → 10.3 µm と単調に下がります。最適点で両側が釣り合い、そこが最悪値の最小です。

2 つの接合部の強さは、別の値

上の計算は「両側の変位が等しいところが最適」という前提に立っています。この前提が成り立つのは、2 つの接合部が同じ変位に耐えるときです。

実際には別です。

接合部寸法変位への耐性
銅ピラー/マイクロバンプ数十 µm ピッチ、高さ 10〜30 µm小さい。背が低く、硬い
はんだボール0.3〜0.8 mm、高さ数百 µm大きい。背が高く、変形で逃がせる

背の高い接合部のほうが、同じ変位を小さいひずみとして受けます。せん断ひずみは なので、高さ が 10 倍なら同じ でひずみは 10 分の 1。

だから許容変位の比 を入れて、釣り合い点を修正します。

はんだボールのほうが耐えるなら で、最適値はシリコン側へ戻ります。

先ほどの例で とすると

12.9 から 7.4 へ戻りました。耐性の比が、腕の長さの比と同じ重みで効いています。

だから最適値を求めるには、2 つの比が要ります。腕の長さの比と、耐性の比。2 つ揃って初めて決まります。

下側の接合部は、独立した研究対象になっている

基板側の接合部については、専門の研究が積み上がっています。2007 年の 2 次実装における BGA 型パッケージの SnAgCu はんだ接合部の故障2が追っているのが、まさにこの段です。

「2 次実装(2nd level)」という呼び方が、段の区別を表しています。

段接合部
1 次実装ダイと基板のあいだ
2 次実装基板とプリント基板のあいだ

2025 年の最適化したはんだ接合部レイアウトを持つ BGA パッケージの熱疲労挙動の研究3は、配置そのものを設計変数にする方向です。

変位が腕の長さに比例するなら、外側のボールほど大きい変位を受けます。だからレイアウトの最適化には、次のような余地があります。

  • 外周のボールを増やして、1 個あたりの負担を減らす
  • 最も外側の列を犠牲にして、内側の列で電気的な機能を確保する
  • ボールの配置をパッケージの中立点まわりで対称にする

コアの膨張係数が固定のとき、レイアウトが残された変数になります。

ガラスを選ぶと、膨張係数が設計変数になる

ここまでの話は、コアの膨張係数を自由に選べることを前提にしてきました。有機基板では、膨張係数は樹脂と補強材の組み合わせでほぼ決まります。自由度は限られます。

ガラスでは、この量が広い範囲で選べます。2020 年のウェーハ・パネルレベル実装におけるガラスの報告4が、範囲を示しています。

「ガラスの熱膨張は、特定の用途の要求に応じて原理的に 2 ppm/K から 12 ppm/K の範囲で調整できる。」

2 から 12 という範囲が、先ほど計算した最適値をほぼ覆っています。

構成必要な ガラスの範囲に入るか
ダイ 20 mm / パッケージ 24 mm8.5入る
ダイ 20 mm / パッケージ 50 mm12.9上端をわずかに超える
耐性比 5 を入れた場合7.4入る

だからガラスの値打ちは「シリコンに近い」ことより、「選べる」ことにあります。同じ報告が挙げる他の利点——比較的大きいヤング率にもとづく 1 桁 µm の加工精度、パネル寸法での数百万個のビア形成——と合わせて、設計変数が 1 つ増えるという点で有利です。

選べることの代償

ガラスには、有機基板に無い条件も付きます。

1 つ目は加工です。2024 年のパネルにおける半導体実装向けガラスビア穴あけの報告5が、問題を書いています。ガラス製インターポーザ基板へ垂直で高アスペクト比のビアをレーザで穴あけすることは、工程のスケーリングに課題を生む。対策として、高ダイナミックなスキャナとサーボステージの動きを組み合わせる高度なモーション制御が提示されています。

穴の数がパネル 1 枚で数百万になると、1 穴あたりの時間が全体の律速になります。

2 つ目は割れです。1995 年の単調荷重と繰り返し荷重下での高分子/ガラス界面における亀裂進展の研究6が追っているのが、この問題です。ガラスの延性は乏しいので、亀裂が入ると一気に進みます。

現場で動く判断

  1. コアの膨張係数を、設計変数として表に載せます。2025 年の反りの研究1がコア CTE・コア厚み・パッケージ型を並べて振っているのと同じ並びで持ちます。
  1. コアの膨張係数は、上下 2 つの膨張差の配分です。 で一定。動かせるのは配分だけです。
  1. 最適値は、腕の長さを重みとした加重平均です。ダイ 20 mm・パッケージ 50 mm で 12.9 ppm/K。パッケージがダイより大きいほど、基板側へ動きます。
  1. 「シリコンに合わせろ」が正解になるのは、パッケージがダイとほぼ同じ大きさのときです。ダイがパッケージの一部にとどまる構成では、最適値が基板側へ動きます。
  1. 接合部の耐性の比も、同じ重みで入ります。背の高いはんだボールが 5 倍耐えるなら、最適値は 12.9 → 7.4 へ戻ります。腕の長さの比と耐性の比、2 つ揃って初めて最適値が出ます。
  1. 膨張係数が固定のときは、レイアウトが残された変数です。変位が腕の長さに比例するので、外周のボールの配置と数が乗ります。
  1. ガラスの値打ちは、2〜12 ppm/K を選べることです。「シリコンに近い」という性質そのものより、設計変数が 1 つ増えることのほうが大きい。
  1. ガラスでは、設計の基準が「ひずみ」から「欠陥寸法」へ替わります。延性の乏しい材料なので、亀裂は一度始まると止まりにくい。
  1. 界面の数が、亀裂経路の数です。高分子/ガラス界面は亀裂の通り道になります。構成の中に界面が何か所あるかを、先に数えます。

出典

  1. 1 Impact of Core Material Coefficient of Thermal Expansion (CTE) on Warpage Assessment of Larger FCBGA Package With Stiffener Ring (2025) doi:10.1115/ipack2025-164399
  2. 2 The SnAgCu Solder Joint Failure of BGA Type Package in 2nd Level Application (2007) doi:10.37665/smcehxb28306
  3. 3 Thermal Fatigue Behaviors of BGA Packages with an Optimized Solder Joint Layout (2025) doi:10.3390/electronics14112286
  4. 4 Glass in Wafer- and Panel-Level Packaging, Changes, Challenges, Hurdles and Barriers (2020) doi:10.37665/wahyjcl58782
  5. 5 Glass via Drilling for Semiconductor Packaging in Panels (2024) doi:10.1364/lac.2024.lm4b.3
  6. 6 Crack Propagation in Polymer/Glass Interfaces Under Monotonic and Cyclic Loading (1995) doi:10.1115/imece1995-0567
  7. 7 Development of Panel level Fan out Multi-Chip Module with Fine Line Space RDL (2024) doi:10.37665/waysxsh25704