ガラスコア基板の利点として、熱膨張係数がシリコンに近いことが挙げられます。
ところが基板は、上のシリコンだけに付いているわけではありません。下にはプリント基板があり、そちらの膨張係数はシリコンより大きい。シリコンへ近づけるほど、下との差が開きます。
反りは、上下の膨張差から出る
まず機構を確かめます。2025 年のコア材料の熱膨張係数が大型 FCBGA パッケージの反りへ与える影響の研究1が、連鎖をそのまま書いています。
「ダイ/シリコンと、コアや絶縁材料といった基板材料との熱膨張係数の不整合が、パッケージの熱反りをもたらし、電子パッケージにおける熱機械的な故障を招きうる。」
大小関係が明示されます。ダイ/シリコンの熱膨張係数は、有機基板の全体としての熱膨張係数より小さい。
反りの向きも、用語として決めてあります。
| 温度 | 反りの形 | 符号 |
|---|---|---|
| リフローから冷える | 凸(泣き顔) | 正の反り |
| 加熱される | 凹(笑い顔) | 負の反り |
この研究が振っているパラメータは、コア材料の熱膨張係数、コアの厚み、パッケージの型です。コアの膨張係数が設計変数の 1 つに数えられているのが要点です。
上と下の両方から、同時に引かれる
パッケージを 3 層とみなします。層の構成と接合部の呼び分けは、2007 年の 2 次実装における BGA 型パッケージのはんだ接合部の故障2が使う段の区別に沿っています。
| 層 | 熱膨張係数の目安 |
|---|---|
| シリコンのダイ | ppm/K |
| 基板のコア | (設計変数) |
| プリント基板 | ppm/K |
接合部は 2 か所にあります。ダイと基板のあいだ(銅ピラーやマイクロバンプ)と、基板とプリント基板のあいだ(はんだボール)。
温度が 動いたとき、接合部の一端が受ける相対変位は
は中立点から接合部までの距離——てこの腕です。
| 接合部 | 膨張差 | 腕の長さ |
|---|---|---|
| ダイ側 | ダイの半対角(ダイ寸法で決まる) | |
| 基板側 | パッケージの半対角 |
2 つの膨張差は、 を動かすと必ず逆向きに動きます。 が 2.6 と 17 のあいだにある限り、
差の合計は によらず一定です。動かせるのは、その 14.4 を上下でどう配分するかだけ。
変位を数字にする
上の式で、実際の変位を計算します。変位がそのまま熱疲労の駆動力になることは、2025 年の BGA パッケージの熱疲労挙動の研究3が配置の最適化を通じて示しています。 K として、
| コアの | ダイ側 | 基板側 | 大きいほう |
|---|---|---|---|
| 4.8(シリコン側) | 2.2 µm | 30.5 µm | 基板側 |
| 8 | 5.4 µm | 22.5 µm | 基板側 |
| 10 | 7.4 µm | 17.5 µm | 基板側 |
| 12.9(最適) | 10.3 µm | 10.3 µm | 同じ |
| 15 | 12.4 µm | 5.0 µm | ダイ側 |
4.8 から 10 へ動かすと、基板側が 30.5 → 17.5 µm で 43% 減ります。そのかわりダイ側が 2.2 → 7.4 µm で 3.4 倍。
最悪値は 30.5 → 17.5 → 10.3 µm と単調に下がります。最適点で両側が釣り合い、そこが最悪値の最小です。
2 つの接合部の強さは、別の値
上の計算は「両側の変位が等しいところが最適」という前提に立っています。この前提が成り立つのは、2 つの接合部が同じ変位に耐えるときです。
実際には別です。
| 接合部 | 寸法 | 変位への耐性 |
|---|---|---|
| 銅ピラー/マイクロバンプ | 数十 µm ピッチ、高さ 10〜30 µm | 小さい。背が低く、硬い |
| はんだボール | 0.3〜0.8 mm、高さ数百 µm | 大きい。背が高く、変形で逃がせる |
背の高い接合部のほうが、同じ変位を小さいひずみとして受けます。せん断ひずみは なので、高さ が 10 倍なら同じ でひずみは 10 分の 1。
だから許容変位の比 を入れて、釣り合い点を修正します。
はんだボールのほうが耐えるなら で、最適値はシリコン側へ戻ります。
先ほどの例で とすると
12.9 から 7.4 へ戻りました。耐性の比が、腕の長さの比と同じ重みで効いています。
だから最適値を求めるには、2 つの比が要ります。腕の長さの比と、耐性の比。2 つ揃って初めて決まります。
下側の接合部は、独立した研究対象になっている
基板側の接合部については、専門の研究が積み上がっています。2007 年の 2 次実装における BGA 型パッケージの SnAgCu はんだ接合部の故障2が追っているのが、まさにこの段です。
「2 次実装(2nd level)」という呼び方が、段の区別を表しています。
| 段 | 接合部 |
|---|---|
| 1 次実装 | ダイと基板のあいだ |
| 2 次実装 | 基板とプリント基板のあいだ |
2025 年の最適化したはんだ接合部レイアウトを持つ BGA パッケージの熱疲労挙動の研究3は、配置そのものを設計変数にする方向です。
変位が腕の長さに比例するなら、外側のボールほど大きい変位を受けます。だからレイアウトの最適化には、次のような余地があります。
- 外周のボールを増やして、1 個あたりの負担を減らす
- 最も外側の列を犠牲にして、内側の列で電気的な機能を確保する
- ボールの配置をパッケージの中立点まわりで対称にする
コアの膨張係数が固定のとき、レイアウトが残された変数になります。
ガラスを選ぶと、膨張係数が設計変数になる
ここまでの話は、コアの膨張係数を自由に選べることを前提にしてきました。有機基板では、膨張係数は樹脂と補強材の組み合わせでほぼ決まります。自由度は限られます。
ガラスでは、この量が広い範囲で選べます。2020 年のウェーハ・パネルレベル実装におけるガラスの報告4が、範囲を示しています。
「ガラスの熱膨張は、特定の用途の要求に応じて原理的に 2 ppm/K から 12 ppm/K の範囲で調整できる。」
2 から 12 という範囲が、先ほど計算した最適値をほぼ覆っています。
| 構成 | 必要な | ガラスの範囲に入るか |
|---|---|---|
| ダイ 20 mm / パッケージ 24 mm | 8.5 | 入る |
| ダイ 20 mm / パッケージ 50 mm | 12.9 | 上端をわずかに超える |
| 耐性比 5 を入れた場合 | 7.4 | 入る |
だからガラスの値打ちは「シリコンに近い」ことより、「選べる」ことにあります。同じ報告が挙げる他の利点——比較的大きいヤング率にもとづく 1 桁 µm の加工精度、パネル寸法での数百万個のビア形成——と合わせて、設計変数が 1 つ増えるという点で有利です。
選べることの代償
ガラスには、有機基板に無い条件も付きます。
1 つ目は加工です。2024 年のパネルにおける半導体実装向けガラスビア穴あけの報告5が、問題を書いています。ガラス製インターポーザ基板へ垂直で高アスペクト比のビアをレーザで穴あけすることは、工程のスケーリングに課題を生む。対策として、高ダイナミックなスキャナとサーボステージの動きを組み合わせる高度なモーション制御が提示されています。
穴の数がパネル 1 枚で数百万になると、1 穴あたりの時間が全体の律速になります。
2 つ目は割れです。1995 年の単調荷重と繰り返し荷重下での高分子/ガラス界面における亀裂進展の研究6が追っているのが、この問題です。ガラスの延性は乏しいので、亀裂が入ると一気に進みます。
現場で動く判断
- コアの膨張係数を、設計変数として表に載せます。2025 年の反りの研究1がコア CTE・コア厚み・パッケージ型を並べて振っているのと同じ並びで持ちます。
- コアの膨張係数は、上下 2 つの膨張差の配分です。 で一定。動かせるのは配分だけです。
- 最適値は、腕の長さを重みとした加重平均です。ダイ 20 mm・パッケージ 50 mm で 12.9 ppm/K。パッケージがダイより大きいほど、基板側へ動きます。
- 「シリコンに合わせろ」が正解になるのは、パッケージがダイとほぼ同じ大きさのときです。ダイがパッケージの一部にとどまる構成では、最適値が基板側へ動きます。
- 接合部の耐性の比も、同じ重みで入ります。背の高いはんだボールが 5 倍耐えるなら、最適値は 12.9 → 7.4 へ戻ります。腕の長さの比と耐性の比、2 つ揃って初めて最適値が出ます。
- 膨張係数が固定のときは、レイアウトが残された変数です。変位が腕の長さに比例するので、外周のボールの配置と数が乗ります。
- ガラスの値打ちは、2〜12 ppm/K を選べることです。「シリコンに近い」という性質そのものより、設計変数が 1 つ増えることのほうが大きい。
- ガラスでは、設計の基準が「ひずみ」から「欠陥寸法」へ替わります。延性の乏しい材料なので、亀裂は一度始まると止まりにくい。
- 界面の数が、亀裂経路の数です。高分子/ガラス界面は亀裂の通り道になります。構成の中に界面が何か所あるかを、先に数えます。