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VOL.04 先端パッケージングの寸法 第 26 回 / 全 42 回

パネルレベル実装:600×700 mm のラインを埋めるには年 1.75 億個

大きなパネルは 1 枚あたりの取り数が多い反面、ラインを埋めるにはそれだけ大量の注文が要ります。反りは 6 つの材料定数のうち 2 つでほぼ決まり、その 2 つを詰めれば 10 分の 1 以下に減らせます。

23 分 応用 式 4 出典 7

この回の目次(6 節)
  1. §1 ラインを埋めるのに、年 1.75 億個要る
  2. §2 リソグラフィの選択肢が 4 つあり、費用構造が別
  3. §3 パネル寸法のばらつきが、装置の共用を阻む
  4. §4 反りは、6 つの定数のうち 2 つでほぼ決まる
  5. §5 RDL 先行か、モールド先行かで、反りの出どころが別
  6. §6 現場で動く判断

この回で示すこと

  1. パネル 1 枚から 3500 個取れるなら、600×700 mm のラインを埋めるには年 1.75 億個要る。
  2. 反りは 6 つの材料定数のうち 2 つでほぼ決まり、詰めると 7.3 mm が 0.55 mm になる。
  3. パネル寸法のばらつきが、装置の共用を妨げる。
ラインを埋めるのに要る年間数量 1.75 億個
2 つの定数を詰めた後の反り(前は 7.3 mm) 0.55 mm

パネルレベル実装の利点は、1 枚あたりの取れ数です。丸いウェーハから四角を取ると端が捨て代になるので、四角い母材へ移せばその損が消えます。

ところが同じ「1 枚あたりの取れ数」が、別の場所では分母になります。稼働率の分母です。

2024 年のパネルレベルファンアウト実装におけるリソグラフィ選択肢のコスト解析1が、この点を率直に書いています。

「パネル 1 枚あたりのチップ数が非常に多くなりうるため、真の大量生産と高い稼働率が、遠いままにとどまる可能性がある、という事実。」

ラインを埋めるのに、年 1.75 億個要る

パネル寸法は 2026 年の有限要素解析2が用いる 600 × 700 mm を使います。

10 mm 角のパッケージ(1 cm²)なら、縁の余白を引いて 1 枚あたり 3500 個とします。

装置側の能力を添えます(以下の 2 つは手順を示すために据えた値です)。

項目値
装置の流せる枚数10 枚/時
稼働20 時間/日、250 日/年

すると

年 1.75 億個。これが 1 ラインを埋めるのに要る需要です。

リソグラフィの選択肢が 4 つあり、費用構造が別

パネルの RDL をどう作るか。2024 年のコスト解析1が、4 つの選択肢を同じ土俵で比べています。

方式特徴
ステッパマスクを使い、小さい視野を繰り返す
アライナマスクを使い、全面を一度に露光する
レーザ直接描画(LDI)マスクなしで直接描く
レーザアブレーション材料を直接除去する

比べる軸として挙げられているのは 4 つです。装置費、スループット、歩留まり、材料費(絶縁膜・レジスト・マスクなど)。活動基準原価モデルで、複数のパネル寸法とパッケージ寸法について解析されています。

4 つの方式は、費用の掛かり方が構造的に別です。

方式費用の主な出どころ枚数への依存
ステッパ・アライナマスク(品種ごと)枚数が多いほど 1 枚あたりが下がる
LDI・アブレーション描画時間(枚数に比例)枚数が増えても 1 枚あたりは横ばい

だから前節の稼働率の話と、ここが噛み合います。少量多品種なら、マスク費が効いてマスクレスが有利。大量少品種なら、描画時間が効いてマスク方式が有利。

分解能の要求が、選択肢を絞ります。2021 年のサブミクロンパネルレベル実装向けリソグラフィ解4が対象にするのは、1 µm を切る線幅の領域です。2024 年のパネルレベルファンアウト多チップモジュールの開発5も、細い線幅・間隔の RDLを主題にしています。

細くするほど、マスク方式の側へ傾きます。レーザ直接描画は分解能が描画系の焦点で決まり、光学系のスケールが小さくなるほど描画時間が伸びるためです。

パネル寸法のばらつきが、装置の共用を阻む

同じコスト解析が、もう 1 つの課題を挙げています。「どのパネル寸法を追うかについて、業界内の足並みがばらついている。」

実際に報告に出てくる寸法を書き出します。

寸法面積
508 × 508 mm2,581 cm²
600 × 700 mm4,200 cm²
680 × 680 mm4,624 cm²

最小と最大で 1.79 倍の開きがあります。

寸法がばらつくことの代償は、装置の共用が閉ざされることです。搬送系、チャック、露光の視野、モールドの金型——どれも寸法に紐づきます。

2016 年の大型パネルウェーハレベル実装の報告6が示すとおり、大きい母材へ移すこと自体は 10 年前から検討されてきました。寸法の収束に時間が掛かっているのは、最適な寸法が製品によって別だからです。

前節の計算がその理由を示しています。年 1.75 億個の製品には 600×700 mm が合い、年 100 万個の製品には小さいパネルのほうが装置費の面で合う。「1 つの最適寸法」がない以上、収束させる力も働かないままです。

反りは、6 つの定数のうち 2 つでほぼ決まる

工程の側へ移ります。パネルの最大の難所が反りです。

2023 年のエポキシモールド材料の物性がファンアウトウェーハレベル実装の反りへ与える影響の研究7が、どの定数が乗るかを分離しています。

調べられた物性は 6 つです。

記号内容
ガラス転移温度より低温側のヤング率(25〜35 °C)
ガラス転移温度より高温側のヤング率(235〜260 °C)
低温側の熱膨張係数
高温側の熱膨張係数
ガラス転移温度
と のあいだの温度差

結果が明確に割れます。

「物性の極値の範囲内で、 と がキャリア剥離工程における反りへ影響する重要な因子である。 は と比べてより大きい影響を持つ。、、、 が反りへ及ぼす影響は、ごくわずかである。」

因子反りへの影響
(低温側 CTE)最大
(低温側ヤング率)2 番目
, , , ほとんど無し

6 つのうち 2 つです。

「効く 2 つ」だけを詰めた結果

同じ研究が、最適化の結果を数字で出しています。

方向最適化前最適化後低減率
X 方向7.34 mm0.545 mm92.58%
Y 方向7.189 mm0.45 mm93.74%

7 mm 以上の反りが、0.5 mm 前後まで落ちています。

この結果が、材料選定の手順を確定させます。

  1. と の 2 つで、候補を絞る
  2. 、、、 は、反りの目的では後ろへ回す

2 つ目が実務で乗ります。モールド材の仕様書には 6 つとも載っていて、どれも一見重要に映ります。ところが反りに効くのは 2 つだけ。残る 4 つを見比べる時間を、 の水準を振る実験へ回すほうが速い。

ただし「反りの目的では」という限定が付きます。 は耐熱の目的では中心的な量です。目的ごとへ乗る定数が別なので、1 枚の比較表を目的で分けます。

低温側の定数が効いて高温側が効かなくなるという結果には、機構の側からの理由があります。キャリア剥離は常温付近で行われるので、そこでの弾性率と熱膨張係数が最終形状を決めます。高温側の性質は、冷える途中の経路には影響しますが、最終的な釣り合いの位置は低温側で決まります。

RDL 先行か、モールド先行かで、反りの出どころが別

工程順の選択も、反りへ乗ります。2026 年の RDL 先行とモールド先行のパネルレベルファンアウトにおける反りと剥離挙動の有限要素解析2が、2 つの流れを同じ模型で比べています。

解析の構成を書き出します。

項目内容
工程順RDL 先行、モールド先行
キャリア材料鋼、ガラス、セラミック
パネル寸法600 × 700 mm、680 × 680 mm
取り込んだ効果機械的収縮と化学的収縮の両方
手法要素の生成と消滅(element birth and death)で、工程中の材料の追加と除去を表現

結果が 3 つ報告されています。

  1. RDL 先行では、平均参照温度を使うと予測誤差が最も小さい
  2. 最大のミーゼス応力は、一貫して RM1 層と WAL 層に生じる
  3. モールド先行では、剥離の段階で反りが大きく増える

3 つ目が工程順の選択に直結します。モールド先行の流れでは、キャリアを剥がす瞬間が最悪点になります。

前節の結果と噛み合います。2023 年の研究が「 と がキャリア剥離工程における反りの重要因子」と特定していたのと、同じ段を指しています。2 つの独立な解析が、同じ工程段を最悪点として挙げています。

だから工程順を選ぶときの問題は、こうなります。

  • モールド先行を選ぶなら、剥離の段で反りを抑える設計が要ります。 と の詰め、キャリア材料の選択
  • RDL 先行を選ぶなら、別の段が最悪点になります。解析でも、平均参照温度で予測誤差が最小になるという別の設定が要ります

キャリア材料が 3 種類(鋼、ガラス、セラミック)並んでいるのも要点です。キャリアの熱膨張係数が、パネル全体の釣り合いへ直接入ります。

現場で動く判断

  1. リソグラフィの 4 方式1と工程順の 2 通り2を、最初に表へ書き入れます。費用と反りの出どころが、選択ごとに別の場所に立ちます。
  1. パネル 1 枚あたりの取れ数を、稼働率の分母としても計算します。600×700 mm で 10 mm 角なら 3500 個/枚。ラインを埋めるには年 1.75 億個。
  1. 装置費を、自分の年産で割ります。年 100 万個なら 1 個あたり 200 円、1.75 億個なら 1.14 円。175 倍の差です。
  1. リソグラフィの方式は、品種数で選びます。マスク方式はマスク費が枚数で割れ、マスクレスは描画時間が枚数に比例します。少量多品種ならマスクレス、大量少品種ならマスク方式。
  1. パネル寸法がばらつく理由は、最適寸法が製品で別だからです。508×508 と 680×680 で面積 1.79 倍。収束を待つより、自分の年産に合う寸法を選びます。
  1. 反りのために追う材料定数は、 と の 2 つです。、、、 が反りへ及ぼす影響は、ごくわずかです。 のほうが より大きい。
  1. 2 つを詰めると、7.3 mm が 0.55 mm になります。低減率 92〜94%。6 つを均等に見比べる時間を、 の水準を振る実験へ回します。
  1. 目的ごとに、効く定数が別です。 は耐熱では中心的な量。1 枚の比較表を目的で分けます。
  1. モールド先行では、キャリア剥離の段が最悪点です。2 つの独立な解析が、同じ段を挙げています。工程順を選ぶ時点で、この段の対策が付いてきます。

出典

  1. 1 Cost Analysis of Lithography Options for Panel-Level Fan-Out Packaging (2024) doi:10.4071/001c.116496
  2. 2 Finite element analysis of warpage and debonding behavior in RDL-first and molding-first fan-out panel-level packaging (2026) doi:10.1038/s41598-026-47275-2
  3. 3 Cost Comparison of Fan-out Wafer-Level Packaging to Fan-out Panel-Based Packaging (2016) doi:10.4071/isom-2016-wa32
  4. 4 Lithography Solutions for Submicron Panel-Level Packaging (2021) doi:10.4071/1085-8024-2021.1.000093
  5. 5 Development of Panel level Fan out Multi-Chip Module with Fine Line Space RDL (2024) doi:10.37665/waysxsh25704
  6. 6 Large Panel Wafer Level Packaging (2016) doi:10.37665/reiavcr14292
  7. 7 Exploring the Influence of Material Properties of Epoxy Molding Compound on Wafer Warpage in Fan-Out Wafer-Level Packaging (2023) doi:10.3390/ma16093482