ボンダへ押し込み量を指示します。4 µm、10 µm、20 µm。最終的なはんだの高さは、どれも同じ値へ落ち着くことがあります。
はんだが溶けているあいだ、高さは表面張力で決まる平衡値へ戻ります。押し込んだ量は、液相のうちに消えます。
指示どおりの高さが残るのは、荷重をかけたまま冷やしたときだけです。
溶けている高さは、体積と濡れ面積で決まる
液相のはんだが上下のパッドへ橋を架けているとき、形は 3 つの量で決まります。高さそのものが工程の記録項目になることは、2016 年の先進熱圧着における工程制御の報告1が挙げる項目の並びからも分かります。
| 量 | 内容 |
|---|---|
| はんだの体積 | バンプを作った時点で確定 |
| 上下の濡れ面積 | パッドの寸法とソルダレジストで確定 |
| 表面張力 | 材料と温度で確定 |
押し込み量は、この 3 つに入っていません。
円柱で近似すると、半径 のパッド 2 枚に挟まれた体積 のはんだの高さは
体積と半径が確定しているなら、 も確定します。押し込んでも、余った体積は横へ膨らんで元の高さへ戻る。
液相にいた時間が、金属間化合物の厚みを確定する
高さと同じ時間が、界面の金属間化合物にも乗ります。
金属間化合物の厚みは、拡散律速なら
は液相にいた時間、 は温度で決まる成長の係数。時間の平方根で伸びます。
2023 年のレーザ支援接合を用いた柔軟パッケージの機械的信頼性の研究2が、片方の時間を実測しています。
「レーザビームが柔軟パッケージへ照射されると、はんだの温度は 2.4 秒以内に、ASP はんだを溶かすのに十分な 220 °C まで非常に急速に上昇した。照射の完了後、柔軟パッケージの温度は速やかに低下した。」
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 到達温度 | 220 °C |
| 到達までの時間 | 2.4 秒 |
| 冷却 | 速やかに低下 |
| 接合後の反り | 80 µm |
| 柔軟性 | 7 mm まで曲げても破損ゼロ |
一括リフローでは、接合部が液相線より上にいる時間が 60〜90 秒の桁です(この範囲は手順を示すために据えた値です)。レーザ支援接合と比べると
時間が 25 倍なら、厚みは 倍です。
厚みの比を、両方の工程で計算する
から、2 つの工程の厚みの比は
は温度で決まるので、温度も揃えて比べます。ピーク温度が同じなら が揃い、時間の比だけが残ったままです。
| 時間の比 | 厚みの比 |
|---|---|
| 4 倍 | 2.0 倍 |
| 9 倍 | 3.0 倍 |
| 25 倍 | 5.0 倍 |
| 100 倍 | 10 倍 |
平方根が掛かるので、時間を大きく変えても厚みの変化はその半分の桁です。逆に言えば、厚みを半分にするには時間を 4 分の 1 にします。
2016 年の Cu/Sn/Cu はんだ接合部における接合部厚みが金属間化合物の成長速度へ与える影響の研究3が示すとおり、接合部の厚みそのものも成長速度へ入ります。 が形状に依存するので、高さを変えると厚みの比も変わります。
だから 2 つの工程を比べるときは、3 つを揃えます。ピーク温度、液相にいた時間、接合部の高さ。1 つでも別なら、厚みの比に別の項が入ります。
さらに2025 年の温度と相対湿度が金属間化合物層の成長へ与える影響の研究4は、実装後の保管環境でも成長が続くことを追っています。接合時の厚みは出発点で、終点はその先にあります。
融点より下では、押す力が抵抗を上げる
ここまでは液相の話でした。固相のまま接合する場合、符号が反転します。
2010 年の非導電性フィルムを用いた超微細ピッチのチップオングラス実装における熱圧着の影響5が、この反転を測っています。
対象は非導電性フィルム(NCF)を用いた接合で、異方性導電フィルムの代替候補として検討されています。NCF の接合は、接合部を形成するために高い温度と圧力を要し、これが新しい信頼性の懸念を生む——という位置づけです。
- 高い温度と圧力が、接合部をより広く、より短く圧縮した
- 各接合部に、金属間化合物の二重層が見つかった。AuSn₂(ε 相、融点 309 °C)と AuSn₄(η 相、融点 257 °C)
- 融点より低い温度では、高い圧力が残留内部応力を誘起して接合部に割れを生み、接触抵抗を上げた
依存の向きが明示されています。
| 条件 | 接触抵抗 |
|---|---|
| 同じ温度で、圧力を上げる | 上がる |
| 同じ圧力で、温度を下げる | 上がる |
「強く押せば良くなる」の逆です。結論はこうなっています。NCF を用いたチップオングラス実装では、接合温度を適切に上げることで、低い接触抵抗を持つ安定した直結が得られる。
1 個ずつ打つと、1 個ずつのデータが残る
局所的に加熱して 1 個ずつ接合する方式には、速さ以外の見返りがあります。
2016 年の先進熱圧着における工程制御の報告1が、それを書いています。
位置づけから始まります。熱圧着は、前工程の半導体プロセスと後工程の実装のあいだを橋渡しする、半導体製造の中で独特な工程である。
一括リフローとの差が明示されます。
| 方式 | 取れるデータ |
|---|---|
| 一括リフロー | 炉の温度と酸素濃度を追い、定期的にプロファイルを流して確かめる。個々のダイについての工程データは残らない |
| 局所リフローの熱圧着 | ダイ 1 個ごとに 6 項目が記録される |
記録される 6 項目はこうです。
- ダイの合わせ
- 温度
- 荷重
- 溶融までの時間
- 積層の層位置
- 配置の位置
元のウェーハまで遡る完全な材料追跡が付きます。
報告の結論が要点です。熱圧着は後工程の組み立て工程と見なされがちだが、工程制御の水準は前工程の半導体製造で使われているものと同程度になりうる。
6 項目が、前節までの話とどう噛み合うか
記録される 6 項目を、この記事で追った量へ割り当てます。
| 記録項目 | 対応する量 |
|---|---|
| 温度 | 金属間化合物の成長係数 |
| 溶融までの時間 | 液相にいた時間 の起点 |
| 荷重 | 固相での残留応力。液相では高さに効かない |
| ダイの合わせ・配置の位置 | 落ちた場所の地図の入力 |
| 積層の層位置 | 何段目か。下の段ほど再作業の損失が大きい |
4 項目目の「溶融までの時間」が、この記事の中心の量を直接記録しています。
16 段のスタックなら、1 スタックあたり 96 レコードです。一括リフローでは 0。この差が、異常の切り分けにそのまま出ます。
使い方としてはこうなります。
- 抵抗が高いダイを電気で特定する
- そのダイの 6 項目を引く
- 溶融までの時間が他と別なら、熱の経路を疑う。荷重が別なら、機構を疑う
一括リフローでは 2 番の材料が手元から抜けるので、切り分けはロット単位までです。ダイ 1 個の異常を、炉のプロファイルから逆算する形になります。
報告が「異常を素早く検出でき、適切な工程制御によりリスクを封じ込める手立てを実装できる」と書いているのは、この 3 段のことです。
材料の側からも、成長速度は動かせる
金属間化合物の厚みを抑える道は、時間と温度の先にもあります。合金の組成でも動きます。
2021 年の Sn-Bi はんだ接合部における微量合金添加が金属間化合物の成長と機械的信頼性へ与える影響の研究6が、この方向を追っています。微量の添加元素で、成長の係数 そのものを下げる。
時間が固定の工程では、ここが残された変数になります。
| 変数 | 動かせる場所 |
|---|---|
| 液相にいた時間 | 接合の方式(一括リフロー/局所リフロー/レーザ) |
| ピーク温度( へ入る) | レシピ。ただし下限がはんだの融点で決まる |
| 合金の組成( へ入る) | 材料の選択。微量添加 |
| 接合部の高さ( へ入る) | バンプの体積とパッド寸法 |
4 つのうち、レシピで動かせるのは 2 つだけです。残りは材料と設計の側にあります。
2024 年の微細ピッチのマイクロインジウムバンプによるフリップチップ接合の報告7が示すとおり、はんだの材料そのものを替える道もあります。インジウムは融点が低いので、同じ工程時間でも液相にいる温度域が別になります。
現場で動く判断
- 記録できる量を、先に並べ直します。局所リフローの熱圧着1ならダイ 1 個ごとに 6 項目。そこに「溶融までの時間」が入っているかを確かめます。
- 押し込み量を 3 水準振って、最終高さを測ります。3 つとも同じ値なら、冷却の保持が抜けています。高さは体積とパッド寸法で決まっています。
- 高さを動かしたいなら、工程順を確かめます。荷重をかけたまま冷やす段があるかどうか。無ければ、はんだの体積かパッド寸法の側で動かします。
- 金属間化合物の厚みは、液相にいた時間の平方根です。時間 25 倍で厚み 5 倍。厚みを半分にするには、時間を 4 分の 1 にします。
- 2 つの工程を比べるときは、3 つを揃えます。ピーク温度、液相の時間、接合部の高さ。1 つでも別なら、厚みの比に別の項が入ります。
- 融点をまたぐと、押す力の働きが反転します。上では高さへ入らず、下では残留応力と割れを生みます。同じ圧力でも、温度が低いほど接触抵抗が上がります。
- 局所リフローでは、ダイ 1 個ごとに 6 項目が残ったままです。合わせ、温度、荷重、溶融までの時間、層位置、配置位置。16 段なら 96 レコード、一括リフローでは 0。
- 異常の切り分けは、電気 → 6 項目 → 機構の順で進めます。溶融までの時間が他と別なら熱の経路、荷重が別なら機構。
- 成長係数 を動かす手は、材料の側にもあります。微量添加、はんだ材料そのものの変更。時間が固定の工程では、ここが残された変数です。