RDL の線幅を、2.5 µm から 1.8 µm へ。0.7 µm 細くするだけの変更です。同じ工場の同じ装置で、条件を詰めれば届くのでしょうか。
届く手前で止まります。この 0.7 µm のあいだに、製法が丸ごと入れ替わる断層が 1 本走っています。
RDL は「再配線層」と訳されます。チップのパッド配置を別の配置へ引き直すための層で、細いか太いかは要求に応じて選ぶ程度の差、と受け取っていました。
実際には、2 µm のところに製法の断層があります。
L/S が 2 µm 以上なら、ポリマーを塗って電解めっきで銅を引く。これはパッケージの作り方です。2 µm を切ると、PECVD で絶縁膜を積み、Cuダマシンで埋め、CMP で平坦化する。前工程、つまりBEOLの作り方そのものになります。
同じ「RDL」という一語で呼ばれていますが、別の工場の別の装置で、コスト構造も別です。RDL の L/S を仕様に書くときは、この線をまたぐかどうかを先に見てください。「あと少しだけ細く」が桁でコストを動かす場所が、ちょうどここにあります。
板と配線の実体
SoCとHBMのあいだをつなぐ「板」は、素材と貫通穴の有無で呼び分けられます。シリコンに穴を開けるほうは設計と工程の最適化が 2012 年に報告され1、ガラスに穴を開けるほうは2.5D パッケージの熱性能として 2023 年に測られています2。
| 名前 | 素材 | 縦の穴 | 使われ方 |
|---|---|---|---|
| TSVインターポーザ | シリコン | TSV(through-silicon via) | 2.5D、CoWoS-S |
| 有機インターポーザ | 樹脂 | ビア | 2.3D、CoWoS-R |
| ガラスコア基板/インターポーザ | ガラス | TGV(through-glass via) | 3.3D、ガラスパッケージ |
| 再構成インターポーザ(RI) | 樹脂+シリコン片 | TIV、TMV | CoWoS-L |
板の表面に描く水平の配線が RDL(redistribution layer、再配線層)です。チップのパッド配置を、載せたい先の配置へ引き直すためにあります。
2 µm の断層
RDLの細さは L/S(線幅/間隔)で書きます。2.5D/3D 集積で使う RDL の作り方は一覧としてまとめられています3。ここに製法の境目があります。
| L/S | 作り方 | 素性 |
|---|---|---|
| 2 µm 以上 | ポリマー + 電解めっき(ECD Cu) | パッケージ工程 |
| 2 µm 未満 | PECVD + Cuダマシン + CMP | 前工程 |
下の段は、BEOLの配線をそのまま作る手順です。つまり2 µm を切った時点で、インターポーザは「パッケージ部品」から「半導体プロセスで作る部品」へ変わります。
上の段:要るところにだけ銅を盛る
- ポリマーを塗る。PI(ポリイミド)かBCBをスピンコートして1時間キュア。4〜7 µm の絶縁層になります
- 穴を開ける。フォトレジストとリソでビア位置を開口し、ポリマーをエッチング、レジストを剥がす
- シード層をスパッタする。Ti/Cu をウェーハ全面へ、175〜200 °C で。ポリマーは絶縁体なので、電気めっきには電気の通り道が要る。その下地をまず全面に貼ります
- レジストで型を作る。配線を通したいところだけ開口する
- 電解めっき(ECD)。室温で、開口部にだけ銅が育ちます
- レジストを剥がし、シードをエッチングする。めっきした銅の配線だけになります
- 1〜6を繰り返して RDL2、RDL3 と積む
下の段:全面に埋めて、削り落とす
Cuダマシンは順番が逆です。絶縁膜に溝を掘り、バリアとシードを付け、全面に銅を埋めて、CMPで余分を削り落とす。溝の寸法がそのまま配線寸法になります。
細さの限界が割れる理由は、上の段の工程の中にあります。レジストの厚みと現像で細さが頭打ちになり、最後のシードエッチが配線の横も削るので、細い線ほど痩せる。ダマシンはこの2つから自由で、サブミクロンの RDL パターニングが報告されています4。
代わりにダマシンは、PECVD・CMP・バリア成膜という前工程の装置一式を要求します。2 µm の断層は、この一式を持ち込むかどうかの線です。
「横に何 µm 削り抜くか」が、そのまま下限になる
「細い線ほど痩せる」の中身は、1 つの規則にまとまります。セミアディティブで 5 µm を切る線を作った報告は2013 年に出ていて5、そこで効いてくる薬液側の条件は2015 年にまとめられています6。ウェットエッチは等方的です。深さ方向に進むのと同じだけ、横にも進む。だから subtractive(べた膜を積んでから不要な所を溶かす)で作るときは、フォトマスクを、削る金属の厚みの最大2倍ぶん大きく描く必要があります。そうして初めて設計どおりの幅になる。この補正を etch factor(補正係数)と呼びます。
semi-additive(型を作って要る所だけめっきする)には、etch factor が不要です。理由は単純で、エッチで抜くのが導体まるごとより手前、下地のシード層だけだから。この初期堆積の厚みは semi-additive で 1 µm 未満、subtractive では数 µm です。
この1つの規則で、3つの製法の下限が並びます。
| 製法 | 横に削り抜く厚み | 片側の食い込み | 実際の下限 |
|---|---|---|---|
| subtractive エッチ | 導体まるごと(数 µm) | 数 µm | 式から線幅 25 µm |
| semi-additive(ポリマー+ECD) | シードだけ(1 µm 未満) | 1 µm 未満 | 2 µm |
| Cu ダマシン | 横は無傷(溝が幅を与え、CMP は上から削る) | ゼロ | サブミクロン |
下限を式にする
この規則を 3 段でたどると、下限が計算で出ます。
エッチが等方的だということは、深さ方向へ 進むあいだに横方向へも 進む、ということです。片側の食い込み量 (µm)は、溶かして落とす層の厚み (µm)に等しくなります。
線は左右の両側から食われるので、設計の線幅 (µm)に対して、出来上がりの線幅 (µm)は
失う割合は で割って
分子は製法だけで決まり、分母だけが設計で動きます。だから「工程はそのままで線だけ細くする」と、失う割合が反比例で膨らみます。「マスクを金属厚の最大 2 倍ぶん大きく描け」という etch factor は、この を先に足しておけ、という意味です。
semi-additive の初期堆積は「1 µm 未満」なので、 とします。
| 設計の線幅 | 失う割合 | 出来上がり |
|---|---|---|
| 25 µm | 2.4% | 24.4 µm |
| 5 µm | 12% | 4.4 µm |
| 2 µm | 30% | 1.4 µm |
2 µm を狙って 1.4 µm が出てきます。マスクを 2.6 µm に描けば 2.0 µm にはなりますが、隣との間隔はその 0.6 µm ぶん狭くなるので、L/S 2/2 µm のつもりが 2/1.4 µm になる。細くする努力が、痩せる量に食われて帳尻が合わなくなる場所です。
この割合が製法どうしを同じ物差しに載せます。サブトラクティブの下限 25 µm を、「導体まるごと、数 µm」から として計算すると
セミアディティブの 30% と、ほぼ同じ数字です。2 つの製法は、初期堆積の厚みが 10 倍離れ、下限も 12 倍離れているのに、止まっている位置での「失う割合」は 24% と 30% で揃っている。下限は装置の限界そのものより、この比が我慢できなくなる場所だ、ということになります。
ダマシンだけが別で、横が無傷なので 、失う割合はゼロ。だから比が保たれ、サブミクロンまで行けます。この式は「線幅の誤差は相対値より絶対値で一定に出る」とも言っています。 が線幅によらず一定だからです。
2 µm の下限は、式が先に言い当てている
下限がどこに来るかは、 が 24〜30% に達する を解けば出ます。
サブトラクティブは導体をまるごと溶かすので は数 µm。 で比を 24% とすると(この記事での計算)
セミアディティブはシードだけなので 。 で比を 30% とすると
2 つの製法は初期堆積の厚みが 10 倍離れ、下限も 12 倍離れているのに、止まる位置の「失う割合」は同じ帯に入ります。下限は装置の限界そのものより、この比が我慢できなくなる場所だということです。
2 µm のほうは、実装された数字として残っています。2014 年に報告されたビルドアップ基板+薄膜 Cu RDL の構成7では、厚み・線幅・間隔が 2 µm、ビアが 10 µm。この構成で問題になったのは線幅より基板の平坦度で、基板と薄膜層を別々に作って後で貼り合わせる解が出ています。貼り合わせには感光性誘電体(PID)か味の素ビルドアップフィルム(ABF)を使い、そのあと薄膜層と接着層を貫くビアを開けて Cu で埋める。チップ間の横の配線を 2 µm 幅で通すために、基板の作り方そのものを 2 工程に割った格好です。
2019 年のファンアウトの総説8でも、めっきで引く RDL の細さはこの帯のままです。5 年たっても同じ位置にいる理由は、同じ比が両方の製法へ同時に乗っているからと読めます。
装置側にも、断層がもう1つあります。線が細くなる途中で、露光機がプロキシミティのマスクアライナから投影露光へ移る。2 つの断層が突きつけるのは同じことです。前工程の装置を、どこまで持ち込むか。
1 つのパッケージの中で断層をまたぐ作りもあります。シリコンの橋を半導体プロセスで作ってダイシングし、ファンアウトの封止樹脂(EMC)の中へ埋め込む構成です。橋の上を通った信号は EMC を貫くビア(TMV)で下面へ降り、C4 バンプでパッケージ基板へ渡る。橋そのものは前工程の産物で、その周りだけがパッケージ工程。2 µm の断層が 1 つの部品の中に同居しています。
バンプの呼び分け
板とチップ、板と基板をつなぐ縦のつなぎ目も名前が割れています。細いピッチ側の実装は、熱圧着ボンディングの装置条件として報告されています9。
| 名前 | 中身 | 立ち位置 |
|---|---|---|
| C4バンプ | はんだボール | 板と基板のあいだ。太い |
| C2バンプ(µbump) | Cuピラー + はんだキャップ | チップと板のあいだ。細い |
| ハイブリッドボンディング | Cuパッドどうしの直接接合 | いちばん細い |
C4 は、ピッチを詰めると隣とショートします。そこではんだの代わりにCuの柱を立て、先端にだけはんだを載せたものが C2 です。
C4 バンプの作り方は、上の段の RDL とまったく同じ形をしている
C4 バンプの手順を追うと、さきほどの「上の段」と 1 対 1 で重なります。
- UBM をスパッタする。Ti か TiW、続けて Cu をウェーハ全面へ。under bump metallurgy(UBM)と呼びますが、役割は RDL のシード層と同じで、合計の厚みも同じく 1 µm 未満の桁です
- レジストで型を作る。バンプの高さぶんを得るために厚いレジストを乗せ、バンプマスクで露光して開口する
- UBM の上に Cu をめっきし、続けてはんだをめっきする。ウェーハを陰極にして、直流かパルス電流を流す
- 必要な高さに届かせるため、はんだをレジストの上へはみ出させる。きのこ形になります
- レジストを剥がし、Ti-Cu/TiW-Cu を過酸化水素かプラズマで除去する
- フラックスを付けてリフローする。表面張力で、なめらかな切頭球の C4 バンプになる
C2 は、このうち 3 ではんだの代わりに Cu を厚くめっきし、先端にだけはんだキャップを足すだけの違いです。型を作って要るところにだけ盛り、最後に下地を溶かして落とす——セミアディティブそのものが、100 µm 級の縦のつなぎ目でも使われています。
ここで効いてくるのが、UBM の合計厚みです。セミアディティブの初期堆積と同じ 1 µm 未満の桁で、溶かして落とす が、2 µm の RDL でも 100 µm 級のバンプでも同じ帯にいる。
もう 1 つ、レジストの開口はパッド開口より広く取ります。設計より大きく描いておく、という etch factor と同じ操作が、100 µm 級のバンプでも要る。マスクをどれだけ大きく描くかは、あとで横に何を落とすかで決まる——上の段の RDL も C4 バンプも、同じ 1 つの規則の下にいます。
細いピッチで Cu ピラーをつなぐ側の装置条件は、熱圧着の側から報告されています9。C2 が細さ以外でも有利なのは、材料が入れ替わるからです。銅の熱伝導率は 400 W/(m·K)、抵抗率 0.0172 µΩ·m。はんだは 55〜60 W/(m·K)、0.12〜0.14 µΩ·m。熱で7倍、電気で1桁近い差です。細くできるうえに熱も電気も良くなる、という珍しく素直な置き換えです。
抵抗率の表には、銅より低い金属が 1 つ載っています。銀の 1.62 µΩ·cm(Cu は 1.72 µΩ·cm)。それでも配線に使われるのは銅のほうで、理由はウィスカ(導電性フィラメント)が伸びること。導体を選ぶときに効くのは抵抗率だけ、という読み方が崩れる例です。
C2 の位置は、実装機が止めたところで決まる
C4のはんだボールは、リフローで溶けたときに表面張力で自分をパッドの中心へ引き込みます(セルフアライメント)。多少ずれて載せても、溶ければ揃う。
C2はCuの柱の先に小さなはんだキャップが載っているだけなので、溶けるはんだの体積が小さく、表面張力の力が柱の慣性に負けます。だから実装機が止めた位置がそのまま最終位置になります。実装機の精度が、そのままつなぎ目の歩留まりになる構造です。
これがハイブリッドボンディングになると、溶けるものがゼロなので、要求はさらに厳しくなります。
断層の下側——ダマシンで作るサブミクロンの RDL——には、さらに先があります。はんだも銅の柱も挟まず、銅どうしを直接くっつける方向です。そこでは が退く代わりに、平坦度という別の量が下限を作ります。この記事で追った「細くすると必ず何かの比が破綻する」筋書きは、接合の側でもそっくり繰り返されます。