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VOL.02 BEOLのE-test 第 6 回 / 全 6 回

スクライブラインの TEG と CMP:影響は平坦化長の 2 倍まで届く

スクライブラインに置いた大きな銅の測定パターンは、CMP を通じてダイの中の平坦さまで変えてしまいます。研磨の効き方を配置密度のぼかしとして扱い、影響がダイのどこまで届くか、密度の差をどこまで許せるかを求めます。

22 分 標準 式 7 出典 6

この回の目次(8 節)
  1. §1 研磨は、配置密度をガウス関数で畳み込んだ形を返す
  2. §2 平坦化長は、研磨時間の平方根で伸びる
  3. §3 はパターンの密度と形から独立
  4. §4 mm なら、10 mm 角のダイの 64% が範囲の中
  5. §5 削れ方は、上面の面積で決まる
  6. §6 密度差の許容値を、エロージョンの差から逆算する
  7. §7 段差はディッシングとして残り、次の層へ渡る
  8. §8 現場で動く判断

この回で示すこと

  1. 研磨は配置密度をガウス関数で畳み込んだ形を返す。
  2. 平坦化長は研磨時間の平方根で伸び、パターンの密度と形によらない。
  3. 影響は まで届き、 mm なら 10 mm 角ダイの 64% が範囲に入る。
λ = 1 mm で影響を受ける 10 mm 角ダイの面積 64 %
TEG の影響が届く距離 2 λ

スクライブラインの試験構造は、工程を監視するためにあります。その構造が、監視の対象を削ることがあります。

経路は研磨です。配線の平坦化は、その場所の配置密度に加えて、周囲の密度からも影響を受ける。だから大きな銅パターンが 1 つ入ると、その影響が周囲へ広がります。

研磨は、配置密度をガウス関数で畳み込んだ形を返す

平坦化の振る舞いは、畳み込みで書けます。

2005 年の密パターンと大域段差を用いた銅研磨の平坦化挙動の研究1が、この形を直接導いています。単一の準無限段差に対して逐次的な研磨を行い、得られた形状は表面輪郭とガウス型の伝達関数との逐次的な畳み込みで再現できた。

が平坦化長です。距離 離れた場所の影響は、ガウス関数の重みで入ります。

距離 重み
0.88
0.61
0.14
0.011

で 14%、 で 1%。実務では を影響の届く距離として扱えます。

同じ研究は、大域の段差が出る場面も報告しています。パターンの無い広い面と、一定密度のパターン領域が接するところ。密なパターンの領域が先に削られ、両者の境目が大域的な段差として残る。

スクライブラインと製品ダイの境目が、まさにこの配置です。

平坦化長は、研磨時間の平方根で伸びる

は、工程の条件とともに動く量です。

上の 2005 年の研究が、この点を明示しています。平坦化長は、除去量あるいは研磨時間に対して平方根で伸びる量である。

研磨を長く掛けるほど、影響の届く距離が伸びます。

研磨時間( で として)

過研磨は、削る量だけでなく影響の範囲も広げます。

そのものは測れます。2001 年の大面積パターン試験マスクを用いた銅研磨の平坦化長の直接測定2が、その手順を示しています。上面と下面の測定値を溝幅の関数として取り、最小・最大・平均の平坦化長を与える。平均の平坦化長は、研磨工程の平坦化能力を定性的に比べるのに使える、と。

同じ研究は、 が押し付け力・相対速度・パッド・スラリーに依存することも報告しています。

つまり は消耗品と運転条件の関数です。パッドを替えると、影響の届く距離が動く。

はパターンの密度と形から独立

次は、レイアウト側から を動かせるかどうかです。動く範囲はゼロでした。

2001 年のレイアウト配置密度と酸化膜の堆積形状が誘電体研磨へ及ぼす影響の研究3が、この独立性を測っています。測定された相互作用距離は、配置密度やパターンの形状(線か面か)といったパターン変数から独立に一定であった。

動かす対象
配置密度一定のまま
パターンの形(線・面)一定のまま
押し付け力・速度動く
パッド・スラリー動く
研磨時間 で動く

レイアウトで動かせるのは、 の中にある配置のほうです。半径そのものは工程の側にある。

だから「離す」という対処には、 の実測値が要ります。上の測定手順で先に を求め、それから距離を定める順序になります。

mm なら、10 mm 角のダイの 64% が範囲の中

スクライブラインは製品ダイの四辺を囲んでいるので、影響は四方から入ります。チップ全体の長距離の厚み差を包絡関数で表すモデル4が、この範囲をチップ単位で計算する枠組みです。

1 辺 のダイで、外周から の帯が範囲に入るとすると、範囲の面積割合は

ダイの辺 mm mm mm
5 mm64%96%100%
10 mm36%64%96%
20 mm19%36%64%
30 mm13%25%47%

mm・10 mm 角のダイでは、面積の 64% がスクライブラインの影響範囲に入ります。

小さいダイほど割合が大きい。周長と面積の比が だからです。

「ダイの端だけの問題」として扱える範囲を、この表が超えています。 の 2 倍が mm の桁である以上、mm の桁のダイは全体が範囲の中にいる。

削れ方は、上面の面積で決まる

範囲の中で何が起きるのかを、圧力から出します。

2001 年の接触力学にもとづく研磨のディッシングとエロージョンのモデル5が、機構を 1 行で書いています。ディッシングとエロージョンは、ウェーハ上の形状と研磨パッドとのあいだの局所的な圧力分布で制御される。パッドの柔らかさと粗さを考慮した接触力学で圧力分布を求める、という構成です。

銅の埋め込み配線では、銅が先に削られて絶縁膜が残ったままです。荷重を受け持つのは、残った絶縁膜の上面だけ。金属の面積割合を とすると、絶縁膜が受ける圧力は

削れる速さは圧力に比例するので、エロージョンも です。

金属の面積割合 圧力の倍率
0.31.43
0.52.00
0.73.33
0.910.0

密度 90% の構造は、50% の構造より 5 倍だけ速く削れます。

試験用の大きな銅パッドは、ウェーハ上で最も が高い領域です。そこが最も速く削れ、その差がガウス関数で の範囲へ広がる。

同じ枠組みは、多層へも拡張されています。2001 年の多層銅研磨に対するパターン依存性のモデル化4は、接触力学でチップ全体の長距離の厚み差を表す包絡関数の各部へ圧力を配分し、そこから上面と下面の除去量を計算する構成です。

層を重ねるほど、前の層の残した厚み差が次の層の包絡関数に入ります。1 層の差が、そのまま次の層の初期条件になる。

密度差の許容値を、エロージョンの差から逆算する

設計規則の形にします。接触力学のモデルが研磨の設計規則の実装に使える5と述べているのが、この段階のことです。

スクライブラインの密度を 、隣接するダイの密度を とすると、エロージョンの差の比は

として、許容するエロージョン差ごとに の上限を出します。

許すエロージョン差 の上限密度差の許容
10%0.4555.5 ポイント
20%0.50010 ポイント
50%0.60020 ポイント
100%0.70030 ポイント

エロージョン差を 10% に収めるなら、密度差は 5.5 ポイントまでです。

大きな銅パッドは、この条件を単独で破ります。パッド領域の は 1 に近いので、上の式の分母がゼロへ向かう。

対処は、パッドを分割して充填パターンで密度を合わせることになります。測定に要る面積は保ったまま、金属の面積割合だけを下げる。

構成測定に使える面積
一枚の大きなパッド大1.0 に近い
分割+充填同じダイに合わせられる

測定の要求と研磨の要求が、別々の量へ割れます。面積は測定側、密度は研磨側。1 つのパッドで両方を担うと、片方が必ず条件から落ちます。

段差はディッシングとして残り、次の層へ渡る

最後に、残った段差の行き先です。

ディッシング自体は古くから知られた現象です。1992 年の先端トレンチ分離向け研磨平坦化工程におけるディッシング効果6が、この現象を追っています。

上の畳み込みの式に戻ると、1 層の研磨で残った段差は、次の層の堆積の初期条件になります。次の研磨でまた畳み込まれる。

ガウス関数の畳み込みは、分散が足し算になります。

同じ を 層重ねると 。

層数
11.00
42.00
93.00
164.00

9 層積むと、影響の届く距離が 3 倍になります。上の面積の表で言えば、 mm が実効 1.5 mm へ。

段差の振幅のほうは、畳み込みのたびに薄まります。距離は広がり、振幅は下がる。下の層の試験構造の影響が、上の層では広く浅く出る。

だから上の層で見つかった広域の膜厚ばらつきの原因は、下の層の局所的なパターンにあることがあります。層をまたいで探す必要がある形です。

現場で動く判断

  1. 研磨は配置密度をガウス関数で畳み込みます。表面輪郭とガウス型伝達関数の逐次的な畳み込みで再現できた1。影響は まで届きます。
  1. は研磨時間の平方根で伸びます。4 倍の時間で 2 倍。過研磨は、範囲も広げます。
  1. はパターンの密度と形から独立です。相互作用距離は配置密度やパターン形状から独立に一定3。レイアウトで動かせるのは、範囲の中身だけです。
  1. は押し付け力・速度・パッド・スラリーで動きます。大面積試験マスクによる直接測定2の手順があります。消耗品を替えたら測り直します。
  1. mm・10 mm 角で、面積の 64% が範囲の中です。周長と面積の比が なので、小さいダイほど割合が大きくなります。
  1. エロージョンは です。密度 90% は 50% の 5 倍。大きな銅パッドは、ウェーハ上で最も が高い領域です。
  1. 密度差 5.5 ポイントで、エロージョン差 10% です。 の場合。スクライブラインの密度を、隣接ダイの密度と同じ欄で管理します。
  1. 測定の面積と研磨の密度を、別々の量として設計します。パッドを分割して充填パターンで密度を合わせる形です。1 つのパッドで両方を担うと、片方を外します。
  1. 段差は次の層へ渡り、 は で広がります。9 層で 3 倍。振幅は薄まり、範囲は広がる。
  1. 上の層の広域なばらつきの原因が、下の層の局所パターンにあることがあります。畳み込みが層をまたいで積み重なるためです。層をまたいで探します。

出典

  1. 1 Study on the planarization behaviour of copper CMP utilizing a dense pattern and a global step (2005) doi:10.1557/proc-867-w6.3
  2. 2 Direct Measurement of Planarization Length for Copper Chemical Mechanical Planarization Polishing Using a Large Pattern Test Mask (2001) doi:10.1557/proc-671-m4.4
  3. 3 Layout Pattern Density and Oxide Deposition Profile Effects on Dielectrics CMP (2001) doi:10.1557/proc-671-m5.4
  4. 4 Modeling of Pattern Dependencies for Multi-Level Copper Chemical-Mechanical Polishing Processes (2001) doi:10.1557/proc-671-m4.3
  5. 5 A Contact-Mechanics Based Model for Dishing and Erosion in Chemical-Mechanical Polishing (2001) doi:10.1557/proc-671-m4.6
  6. 6 Dishing effects in a chemical mechanical polishing planarization process for advanced trench isolation (1992) doi:10.1063/1.107586