ガラスコア基板の割れは端面の傷から靱性の差は±10%ほど(AGCの技術者)
ガラスコア基板の割れは、ガラスの靱性より、積層の応力と端の傷で決まる。破壊靱性とは、き裂があっても材料が割れずに耐える力を指す。AGCの技術者はIEEE EPS資料で、この値は一般的なガラスどうしで±10%ほどしか違わないので、内部応力を下げ、ダイシングでできる傷を小さくするほうが効果的だと述べる。SeWaReと呼ばれる水平割れの起点は、ダイシングした端面の微小なき裂で、それをビルドアップ層とガラスのCTE差による応力が伸ばす。
IEEE EPS資料が紹介するMcCannらの試作では、積層を薄くし、ダイシングを詰め、密着を強め、端部の積層を内側へ引き下げる4つの対策を併用し、吸湿とリフローを経た温度サイクル1000回でも割れが出なかった。Leらの有限要素解析では、銅のビアを端から300 µm以上離すと、き裂を伸ばす力は臨界値を大きく下回った。同じ解析では、CTEの高いガラスのほうが、低いガラスに比べてき裂を伸ばす力が小さかった。
ガラスの実用強度は表面の傷で決まり、品種の差は小さい
Section titled “ガラスの実用強度は表面の傷で決まり、品種の差は小さい”ガラスの原子どうしの結合は強い。IEEE EPSの技術委員会資料によれば1、傷のないシリカ繊維は液体窒素温度で10〜15 GPa、室温で5〜6 GPaの強度を示す。ところが実際に使うガラスの強度は、表面の微小なき裂に応力が集まるため、それより約2桁低い。
Griffithの破壊力学では、き裂が伸び始める応力は破壊靱性に比例し、き裂が大きいほど低くなる。靱性の高いガラスを選べば割れにくくなる計算だが、同じ資料は、一部の特殊なガラスを除けば一般的なガラスどうしの破壊靱性の差は±10%ほどにとどまるとする。そのため資料は、ガラスに溜まる内部応力を下げることと、ダイシングでできる傷を小さくすることのほうが効果的だと結論している。資料の筆者は、AGCで先端半導体パッケージ向けの製品設計を率いる技術者だ。
パネルが大きく薄くなるほど、割れの条件は厳しくなる。大きなパネルほど傷を含む確率が上がり、自重による反りも大きい。曲げで生じる応力はガラスの厚さの2乗に反比例するので、薄い大判パネルはハンドリングだけでも割れやすい。
割れはダイシングした端面から、積層とのCTE差で横に走る
Section titled “割れはダイシングした端面から、積層とのCTE差で横に走る”ガラスコアに特有の割れとして、ダイシングした端面から水平に走るき裂がある。ビルドアップ層の形成、個片化、温度サイクル試験のあとに現れ、Koizumiが木を割る様子になぞらえて「SeWaRe」と名付けた。IEEE EPSの資料によれば、原因はガラスとビルドアップ層の熱膨張係数(CTE)の差で溜まる応力で、端部の微小なき裂が熱応力で伸び、基板の広い範囲に割れが広がる。
傷はパッドの開口やリワークでも入る。LPKFは2、パッドの開口、RDLの手直し、リワークで入る微小なき裂、欠け、表面下の損傷も伸びて信頼性を下げると説明する。硬く低CTEのガラスコアに直接積んだRDLは、パッドの縁、ビアの露出部、外側の配線層の傷に弱く、個片化の前は特に弱いという。
Leらの解析では、RDLとの界面に近い上端のき裂が最も危なく、4層目で臨界値を超えた
Section titled “Leらの解析では、RDLとの界面に近い上端のき裂が最も危なく、4層目で臨界値を超えた”Leらは2025年、510 mm×515 mmのガラスパネルの両面に、厚さ4 µmの銅配線と10 µmのABFを4層ずつ積む工程を有限要素法で解析した。端部に入れたき裂を伸ばす力(エネルギー解放率)を、臨界値の1.98 J/m²と比べている3。ホウケイ酸ガラスの臨界値は空気中で8 J/m²あるが、水中では1.98 J/m²まで下がる。ダイシングや洗浄では水がかかるので、低いほうを基準にした。
基準の条件(borofloat 33、厚さ210 µm、ABF GX-92)で、き裂の位置による危険度は大きく違った。RDLとガラスの界面に近い上端のき裂は、はがす向きの応力を受けて最も伸びやすい。3層目で危険が目立ち、4層目で臨界値を超えた。板厚の中央にあるき裂は、4層を積んでも臨界値に届かなかった。
ガラスの厚さは、ある厚さまではあまり効かない。borofloat 33で厚さを500 µmから210 µmへ薄くしても、き裂を伸ばす力は約5%しか増えない。100 µmまで薄くすると約30%増え、割れやすくなる。曲げ剛性が厚さの3乗に比例して落ち、端部のはがす向きの応力が強まるためだ。
Leらの解析で効いたのは端の余白、ABFの品種、ガラスのCTEで、銅の量の効果は小さかった
Section titled “Leらの解析で効いたのは端の余白、ABFの品種、ガラスのCTEで、銅の量の効果は小さかった”Leらが比べた対策の中で、端の余白の効果がはっきりしている。厚さ500 µmのborofloat 33、ABF GL-102、ビア径50 µm・ピッチはビア径の2倍、上端のき裂という条件で、銅のビアからガラス端までの余白が100 µmだと、き裂が40 µmを超えたところで臨界値を超えた。200 µmでは臨界値の近くにとどまり、300 µm以上なら臨界値を大きく下回った。Leらは、少なくとも300 µmの余白が要るとまとめている。
絶縁膜の品種も効く。CTEが20 ppm/°CのABF GL-102とGZ-41は、39 ppm/°CのGX-92などに比べて、き裂を伸ばす力が大きく下がり、臨界値を下回った。中でもGZ-41は、低いCTEと中くらいの硬さの組み合わせで割れに強い。ABFの役割は有機パッケージ基板とABFの解説で扱っている。
Leらの解析で、材料の変更として効いたのはガラスのCTEだ。厚さ210 µm、上端のき裂の条件で、CTEが7.2 ppm/°CのD263、8.14のGorilla、9.3のセラミックガラスは、3.25のborofloat 33や0.57の溶融石英より、き裂を伸ばす力がはっきり小さかった。RDLの銅は17.6 ppm/°C、ABFは22〜46 ppm/°Cで、ガラスのCTEが高いほど積層との差が縮む。D263は厚さ300 µmを超えれば、長さ50 µmのき裂でも臨界値を下回った。プリント基板とのあいだのはんだについては、Lauらの別の解析で、ガラスのCTEを4.8から10 ppm/°Cへ上げるとひずみが半分になった。この点はガラスコアのCTEの解析で扱っている。
一方、銅の量の効果は小さかった。ABF GX-92、長さ15 µmのき裂の条件で、RDLに占める銅の割合を10%から90%へ上げても、き裂を伸ばす力は約20%しか下がらなかった。
IEEE EPS資料が紹介するMcCannらの試作は、4つの対策の併用で温度サイクル1000回を割れなしで通した
Section titled “IEEE EPS資料が紹介するMcCannらの試作は、4つの対策の併用で温度サイクル1000回を割れなしで通した”IEEE EPSの資料は1、McCannらが2016年に報告した、RDLの応力とダイシングの傷から進む割れを防ぐ試作を要約している。要約によれば、対策は4つだ。ビルドアップ層の絶縁膜と銅配線を薄くする。ブレードダイシングの条件を詰める。ビルドアップ層とガラスの密着を強める。ビルドアップ層を端から内側へ引き下げたプルバック構造にする。
試験は厳しい順序で行った。ダイシングのあと120 °Cで24時間ベークし、30 °C・60%RHで168時間吸湿させ、260 °Cのリフローを3回通した。その後、−40 °Cと125 °Cのあいだを保持15分・昇降温15分で往復する温度サイクルにかけ、1000サイクル後もガラスの割れもポリマーの界面剥離も見られなかった。
EPS資料は、この試作を、内部応力を下げダイシングの傷を小さくする対策の実証として紹介している。Leらも設計の指針として、絶縁材の選定、ガラスの品種と厚さ、端の余白といった配置の制約の3つを挙げている。