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400 °C超の仮接着、赤外剥離と組み合わせ|EV Groupの無機剥離層は1000 °Cまで

仮接着の耐熱上限は、接着剤と剥離層の材料で決まる。Brewer Scienceの公開値では、接着剤のBrewerBOND 3051は300 °Cまで、レーザー剥離層のBrewerBOND 7012は400 °Cまでで、同社の剥離方式の表は3、C1300系の接着剤を含む機械剥離とガラスキャリア越しのレーザー剥離をどちらも400 °C以下としている。同社が400 °Cを超えると発表した接着剤は、同じC1300系のC1301-50(420 °C)とC1301-10(案内文で450 °C)で、どちらもシリコンキャリアと赤外レーザー剥離を組み合わせた発表だった。同じ系列の値から計算すると、赤外剥離との組み合わせによる上積みは約20 °Cになる。

1000 °Cは別の用途の値だ。EV Groupは無機剥離層が1000 °Cまでの処理に適合するとし4、エピタキシャル成長、成膜、アニールといった前工程の層転写に向けている。同社は、有機接着剤の処理温度はおおむね300 °C未満に限られると説明する。imecは2025年の論文で、UVレーザー剥離が広がる一方でもシリコンを使うキャリアが好まれる選択肢であり続けている5と書き、赤外レーザー剥離を、より高い処理温度を許す方式として評価した。

仮接着は、薄いウェーハをキャリアで支えて加工し、最後にキャリアを外す工程だ

Section titled “仮接着は、薄いウェーハをキャリアで支えて加工し、最後にキャリアを外す工程だ”

仮接着・剥離(temporary bonding / debonding)では、回路を作り終えたデバイスウェーハを、剥がせる層を挟んでキャリアへ貼り合わせる。EV Groupの工程では6、仮接着剤でキャリアへ貼り、裏面の研削や加工を終えてから剥がす。キャリアの役目は加工中の機械的な支えで、最終製品に残るのは加工済みのデバイスウェーハだけだ。

図1加工中の積層と支持の移し替え
裏面(研削・裏面加工の側) デバイスウェーハ(回路面が下) 仮接着剤 剥離層 キャリア(加工中の支持) 加工中 研削で除く厚み 支持:キャリア フレームへ貼付 フレーム テープ 支持をフレームへ移す 剥離後 キャリアを外す 支持:フィルムフレーム
加工中はキャリアが薄いウェーハを支え、テープとフレームへ貼ってからキャリアを外すと、ウェーハはフレームの上に残る。

キャリアは剥離後に取り除くので、パッケージに残るガラスコア基板とは役割が違う。キャリアで問われるのは剛性、平坦度、光の透過、熱履歴、再利用回数で、ガラスコアで問われるのは配線、電気特性、パッケージの信頼性だ。

装置は、貼り合わせ側と剥離側で分かれる。EV GroupはEVG805、EVG850 TB、EVG850 DB、EVG880 LayerReleaseを別の機種として掲載し6、SUSS MicroTecも貼り合わせ用のXBS300、剥離・洗浄用のXBC300 Gen2、機械的ピール専用のDB12Tを別の装置にしている7。Tokyo ElectronはSynapse Vに塗布・ベーク・貼り合わせを、Synapse Z Plusに剥離とデバイス・キャリアの洗浄を載せている8。工程全体の流れは3Dパッケージの工程フローにまとめている。

公開されている耐熱は、接着剤と剥離層で別々に示されている

Section titled “公開されている耐熱は、接着剤と剥離層で別々に示されている”

仮接着剤は、加熱で軟らかくなる熱可塑型と、UVや熱で架橋する硬化型に大きく分かれ、そこへ剥離層を別に重ねるかどうかで構成が変わる。Brewer Scienceの技術資料によれば9、熱圧着に使う熱可塑材料は約200 °C・5〜10 psiで流れ、冷えるとガラス状態に戻る。耐熱の公開値は、接着剤と剥離層のそれぞれに付いている。

Brewer Scienceは剥離方式ごとの耐熱を自社の剥離技術のページ3に表で示している。穴あきキャリアを溶剤に浸して剥がす化学剥離は220 °C以下、加熱してずらす熱スライドは250 °C以下、パルス状の広帯域光で剥がすフォトニック剥離は280 °C以下、室温で引き剥がす機械剥離と、透明なガラスキャリア越しのレーザー剥離はどちらも400 °C以下だ。この2方式の表には、305などの接着剤のほか、C1300系とT1100系を重ねるVersaLayerが載っている。材料単体では、接着剤のBrewerBOND 305が300 °Cまで(裏面加工は250〜300 °C)、レーザー剥離層のBrewerBOND 701が400 °Cまでの熱安定性、東京応化工業のTMMF NA100とTMMR NA10010がTGA(熱重量分析)で5%重量減となる温度350 °C超を公開している。

Brewer Scienceの剥離方式の表の耐熱(化学剥離220 °C、加熱スライド250 °C、フォトニック剥離280 °C、機械剥離400 °C、ガラス越しのUVレーザー剥離400 °C)と、シリコンキャリアと赤外剥離で発表された接着剤(C1301-50が420 °C、C1301-10が案内文で450 °C)、EV Groupの層転写向けの無機剥離層1000 °Cを並べた横棒グラフ。
Brewer Scienceの剥離方式の表では400 °Cが上限で、同社がそれを超えると発表した接着剤はシリコンキャリアと赤外剥離と組まれた。1000 °CはEV Groupの層転写向けの値だ。

EV Groupは有機接着剤の処理温度はおおむね300 °C未満に限られ、用途が後工程にとどまる4と説明する。Brewer Scienceも2026年9月、PECVD、ハイブリッド接合、銀焼結、熱圧着接合が250〜350 °Cを求めるようになり、従来の仮接着材料の熱安定性、密着、洗浄性を圧迫している11と述べ、350 °Cまで構造を保つUVレーザー剥離材料をIMAPS 2026で発表した。

材料種類剥離方式公開されている耐熱
BrewerBOND 305接着剤機械剥離、レーザー剥離300 °Cまで(裏面加工は250〜300 °C)
BrewerBOND 701レーザー剥離層透明キャリア越しのUVレーザー400 °Cまで
東京応化工業 TMMF NA100・TMMR NA100接着剤サポートガラスを剥がすTGA 5%減が350 °C超
Brewer ScienceのIMAPS 2026の新材料レーザー剥離層308 nm・355 nmのUVレーザー350 °Cまで構造を保つ
C1300系+T1100系(VersaLayer)接着剤の組み合わせ機械剥離、ガラス越しのレーザー剥離400 °C以下(剥離方式の表)
BrewerBOND C1301-50接着剤シリコン越しの赤外レーザー420 °Cまで
EV Groupの無機剥離層層転写向けの剥離層シリコン越しの赤外レーザー1000 °Cまで

Brewer Scienceが400 °Cを超えると発表した接着剤は、シリコンキャリアと赤外剥離で組まれた

Section titled “Brewer Scienceが400 °Cを超えると発表した接着剤は、シリコンキャリアと赤外剥離で組まれた”

Brewer Scienceは2024年12月のEPTCで、EV Group、ams OSRAMと共同で、420 °Cまで耐える仮接着剤BrewerBOND C1301-50を、EVGの赤外レーザー剥離と組み合わせて発表した12。同社はこの発表で、CVDなどの高温工程は現状、剥離温度250 °Cに制約されていると説明している。2025年12月には、Fraunhofer IZM ASSID、EV Groupと3者で、BrewerBOND C1301-10とEVG880 LayerReleaseを組み合わせた工程をWaferBond ‘25で発表すると告知し13、450 °Cまでの高温への適合を発表の問いとして掲げた。告知された工程の内容はシリコンキャリアで15 µmまで薄くする工程の記事に書いている。

1000 °Cの値は、層転写に向けた無機剥離層のものだ。EV GroupのIR LayerReleaseは4、シリコンを透過する波長の赤外レーザーを裏面から当て、成膜で作り込んだ無機剥離層に吸収させて分離する。EV Groupは、無機剥離層が1000 °Cまでの処理に適合し、エピタキシャル成長、成膜、アニールといった有機接着剤が使えない前工程での層転写に使えると説明する。EV Groupは2024年5月にEVG880 LayerReleaseを発表し14、前世代の装置の2倍のスループットを示した。

imecは2025年12月のEPTCの論文で、有機接着剤とUVレーザー剥離をガラスキャリアで使う従来法には、熱安定性の低さ、TTV(厚さばらつき)の大きさ、機械的な位置合わせの悪さ15という限界があると書き、再利用するシリコンキャリアの上に無機の積層だけで組む赤外剥離を評価した。EV Groupも、ガラス基板は主にシリコン向けに作られた工場の装置では扱いにくく、改造に費用がかかる14と説明する。

ガラスキャリアはUVレーザー、シリコンキャリアは赤外レーザーで剥がす構成が公開されている

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ガラスキャリアでは、キャリア越しにUVレーザーを当てる構成が公開されている。SUSSのXBC300 Gen216のLD300モジュールは308 nmのエキシマパルスで接着界面を壊し、BrewerBOND 701は248〜355 nmの波長で剥がす。3Mのウェーハサポートシステムは17、ガラスキャリアと接着剤の間に光熱変換(LTHC)層を敷き、光を熱に変えて剥がす。シリコンキャリアでは、EV Groupがシリコンを透過する赤外光を無機剥離層で吸収させる構成を公開している。

キャリアの購買仕様には、材質ごとにSEMIの文書がある。SEMI 3D218は3DS-IC向けガラスキャリアウェーハの寸法、熱特性、仕上げを、公称直径200 mmと300 mm、厚さ700 µmを基準に定める。SEMI 3D819は仮接着・剥離に使う300 mmシリコンキャリアウェーハの記述項目を定める。剥離後にテープフレームへ移した300 mm薄ウェーハの輸送・保管容器は、SEMI 3D320が扱う。

剥離後の洗浄については、Veeco InstrumentsとBrewer Scienceが、高出力のレーザーや高温にさらされた接着剤ほど除去が難しくなると書いている。imecは2025年のECTCで、赤外レーザー剥離の後に製品側とシリコンキャリア側に残る無機剥離層と高分子層を、標準的な洗浄法で除去できた5と報告した。洗浄の手順と粒子数の関係は剥離後の洗浄の記事に書いている。

薄化後の厚さばらつきは、接着剤の仕様としてTTV 2 µm未満が公開されている

Section titled “薄化後の厚さばらつきは、接着剤の仕様としてTTV 2 µm未満が公開されている”

薄化は、粗研削で厚みを落とし、仕上げ研削で面粗さと加工変質層を減らし、応力除去で残留応力を下げる順に進める。DISCO21は極薄研削の課題として、機械的強度の低下、ハンドリング、エッジの欠け(チッピング)、研削ダメージを挙げる。キャリアを使わない方法もあり、DISCOのTAIKOプロセス22は外周約3 mmを厚いまま残して形を支え、内側だけを薄くする。LINTECのAdwill BG Tape Eシリーズ23のようなUV硬化型のバックグラインドテープで支える方法もある。装置では、Tokyo ElectronのUlucus G8が研削ユニット、スクラブ洗浄ユニット、スピンウェットエッチングユニットを1台に連結している。

仮接着材の厚さは材料によって3桁違う。Veeco InstrumentsとBrewer Scienceの報告では24、BrewerBOND 230を1150 rpmで60秒塗って20〜150 µm、BrewerBOND 701を1750 rpmで30秒塗って150〜250 nmの層にしている。BrewerBOND 305は、薄化後のTTVを2 µm未満と公開している。

貼り合わせ積層体と薄化後のウェーハの測定には、SEMIのガイドがある。SEMI 3D425は厚さ750〜1550 µmの貼り合わせ積層体について、厚さ、TTV、ボウ、ワープ、平坦度の測定技術を案内する。SEMI 3D1226は薄化後のような剛性の低いウェーハの形状測定を、SEMI 3D1327は貼り合わせ積層体のボイド測定を扱う。装置の側では、EV GroupとCEAが2016年に、EVG850 XTが仮接着1回ごとに60秒で30万点の全面検査を行う構成28を示した。

反りと剥がれは、温度履歴と密着の強さで決まる

Section titled “反りと剥がれは、温度履歴と密着の強さで決まる”

キャリアとデバイスの熱膨張差は、加熱と冷却のたびに接着界面へせん断応力を残す。EV GroupとCEAの共同報告は28、溶融石英のCTEを20〜400 °Cで約0.5 ppm/°C、シリコンを2.5〜4 ppm/°Cとして、温度ごとのボウの変化を測る手順を示した。同じ報告では、Tgが約80 °Cの熱可塑材料を使った積層体が340 °Cの加熱試験まで界面を保ち、390 °Cで材料が分解した。Tgの値と、実際に使える上限は別物だ。

反りが大きいほど剥がれるわけでもない。同じ報告では、ボウ500 µm超、真性応力が数MPa程度の試験体を100〜350 °Cまで加熱しても界面は保たれ、剥がれの要因としてプロセス温度、温度勾配、ボウ、真性応力、真空度、密着力、両基板の弾性率とその組み合わせを挙げている。imecらは2024年のEPTCで、レーザー剥離層とBEOL積層の密着強度、ウェーハの反り、目標のシリコン厚みの3つを薄化中の剥がれの主因に挙げた29。

剥離後の残渣と粒子は、次の接合の不良につながる

Section titled “剥離後の残渣と粒子は、次の接合の不良につながる”
図2工程の順と不良が出る段
1 貼り合わせ ボイド 2 薄化 割れ 剥がれ 3 裏面加工 反り 加熱・冷却 4 剥離 未分離 割れ 5 洗浄 残渣・パーティクル デバイスウェーハ 仮接着剤 剥離層 キャリア テープ・フレーム
工程ごとに起こりうる不良の例。貼り合わせ積層体のボイド、薄化中の欠けと剥がれ、加熱による反り、剥離後の残渣と粒子を示す。

剥離は積層体を分けるだけで、デバイスの表面には接着剤が残る。Veeco InstrumentsとBrewer Scienceの報告は、仮接着材を除いた後に求められるサブミクロンの粒子水準が前工程並みに近づき、ハイブリッド接合のように寸法とピッチが1 µmを下回る工程では、洗浄の不足が後の接合不良につながると書いている。図3の不良のうち、貼り合わせ積層体のボイドはSEMI 3D13が測定方法を扱い、薄化中の欠けはDISCO、剥がれはimec、加熱による反りはEV GroupとCEAが報告している。前工程の洗浄の基準は洗浄・表面前処理にまとめている。

材料はBrewer Science・3M・東京応化工業、装置はEV Group・SUSS MicroTec・Tokyo Electronが出している

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材料では、Brewer Scienceが熱可塑型から420〜450 °Cの高温用接着剤までの有機系を、3MがUV硬化型接着剤とLTHC層とガラスキャリアの組み合わせを、東京応化工業がフィルム型と液状の仮接着剤を、Shin-Etsu MicroSi30がワックス系の密着促進剤と樹脂を組み合わせた構成を出している。東京応化工業は、Zero Newtonの名で貼り合わせ側のTWM系装置と、サポートガラスを外して洗うTWR系装置31、接着剤残渣を落とす専用シンナーまでを組みで供給する。

装置では、EV Groupが仮接着・剥離装置の製品群とシリコンキャリア用の赤外剥離装置を持ち、SUSS MicroTecが貼り合わせ、レーザー・機械的剥離、洗浄を、Tokyo Electronが塗布・貼り合わせ、剥離・洗浄、研削・ウェットエッチングを持つ。薄化では、DISCOが研削装置、ホイール、TAIKOプロセスを、LINTECがバックグラインドテープを供給する。高温側の公開例では、シリコンキャリア、Brewer Scienceの高温用接着剤、EV Groupの赤外剥離が一つの工程として組まれている。

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