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CBCM、0.01 fFを測る仕組み|参照回路との電流差から容量を算出

CBCM(charge-based capacitance measurement、電荷ベース容量測定)は、チップの上に置いた小さなトランジスタで配線を毎周期充電し、電源から流れ込む平均電流を測って容量に直す方法を指す。容量そのものではなく「1秒あたりに運んだ電荷」を測るので、交流のLCRメータでは測れない小さな容量が、測りやすい直流電流に化ける。1996年のIEDMでUCバークレーのChenらが発表した原論文は、0.01 fF(10 aF)の感度を見積もった1。

LCRメータで難しいのは、パッドとプローブの容量が測りたい配線の容量より大きくなるからだ。CBCMは充放電回路を測りたい配線のすぐ隣に置き、パッドは電源と制御信号を通すだけにする。パッドの容量は充電の経路に入らず、測定から消える。

充電を繰り返すと、容量は平均電流に変わる

Section titled “充電を繰り返すと、容量は平均電流に変わる”

容量CCを電圧VDDV_\mathrm{DD}まで充電すると、電源から電荷 Q=C⋅VDDQ = C\cdot V_\mathrm{DD} が流れ込む。これを周波数ffで繰り返せば、1秒あたり ff回分の電荷が流れ、平均電流は I=C⋅VDD⋅fI = C\cdot V_\mathrm{DD}\cdot f になる。原論文はこの関係をInet=C⋅VDD⋅fI_\mathrm{net} = C\cdot V_\mathrm{DD}\cdot f1と書き、容量を C=InetVDD⋅fC = \frac{I_\mathrm{net}}{V_\mathrm{DD}\cdot f} で求める。充電電流は鋭いパルスの列だが、要るのはその面積の合計だけなので、原論文は電流の波形ではなく直流成分(平均値)を測ればよいとしている1。

大きさの見当をつけると、1 fFを1 Vで10 MHzごとに充電した平均電流は10 nAになる。直流の10 nAは、半導体パラメータアナライザが普通に測れる大きさだ。

擬似インバータ2組の差で、トランジスタの容量を消す

Section titled “擬似インバータ2組の差で、トランジスタの容量を消す”

回路は、PMOSとNMOSを縦に積んだインバータ形だが、2つのゲートを別々の信号で動かすので擬似インバータ(pseudo-inverter)と呼ぶ。PMOSで被測定の容量を充電し、NMOSで放電する2。2つのゲート信号は、同時にオンになるトランジスタが片方だけになるよう、重ならない波形にする1。両方が同時にオンになると、電源から接地へ素通りする電流が平均電流に混ざるからだ。

左に、測りたい配線容量Cとトランジスタの寄生容量C′をつないだ擬似インバータ、右に寄生容量C′だけをつないだ同じ形の参照の擬似インバータ。下にPMOSとNMOSのゲート信号が重ならない波形と、2つの回路の平均電流の差が容量Cに比例することを示した図。
測りたい容量だけが違う2組の擬似インバータを同じ信号で動かし、平均電流の差からトランジスタの寄生容量を消す。

測定ノードには、配線の容量CCのほかに、トランジスタのドレイン接合やゲートの重なりの容量C′C’がつく。そこで、配線だけを外した同じ形の参照回路を隣に置き、同じ信号で動かす。原論文の式では、対象側がItarget=(C+C′)⋅VDD⋅fI_\mathrm{target} = (C + C’)\cdot V_\mathrm{DD}\cdot f1、参照側がIref=C′⋅VDD⋅fI_\mathrm{ref} = C’\cdot V_\mathrm{DD}\cdot fで1、差を取ると C=Itarget−IrefVDD⋅fC = \frac{I_\mathrm{target} - I_\mathrm{ref}}{V_\mathrm{DD}\cdot f} が残る。配線容量のテスト構造でダミーを引くのと同じ考え方を、トランジスタの寄生に当てている。

この形はファウンドリの特許にも残っている。TSMCの特許US12066475B2は、2つの擬似インバータに、独立で重ならない制御信号を与える制御回路3を持つCBCMの系を示し、共通の配線と信号の配線の間に遮蔽の金属を入れて、余分な寄生容量を除くとしている3。

感度を決めるのは電流計ではなく、2組のトランジスタの揃い方

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差を取っても、対象側と参照側のC′C’が完全に同じでなければ、その違いが容量として読める。原論文は、ドレインの接合容量と重なり容量の不一致が分解能の限界になるとし1、寄生容量を1 fF、不一致を1%と置いて分解能を0.01 fFと見積もった1。つまり0.01 fFは、隣り合う2つの小さなトランジスタがどれだけ揃うかで決まる見積もりだ。

原論文は、電圧を振った直線の傾きからも容量を出している。周波数を固定して電圧VDDV_\mathrm{DD}を振れば、平均電流の傾き mVm_V から C=mV/fC = m_V / f1 が求まる。こうして5.0 MHz、1.0 MHz、0.6 MHzで出した値は0.4523 fF1、0.4407 fF、0.4535 fFで、周波数を8倍以上変えても3%以内に収まった。傾きを使えば、電圧によらない一定のリークは切片に追い出せる。

配線の種類ごとの検証もある。同じグループの1998年の論文は、金属と基板、配線どうし、上下の層の間の容量を、CBCMと3次元の電界シミュレーションで比べ、全体によく一致した4と報告している。

周波数は、リークに勝つほど高く、充電が終わるほど低く

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周波数の選び方には上下の限界がある。下の限界はリークだ。放電の後、両方のトランジスタが切れている間に配線のリークで電位が持ち上がると、次の充電で動く電圧幅がVDDV_\mathrm{DD}より小さくなる。Renesasと松下の特許US6894520B2は、リークで放電後の電位が上がり、理想の電圧幅で換算した容量が小さく出る5ことを示し、測定周波数を上げて電流に占めるリークの割合を下げる5方法をとった。ICMTS 2020の論文も、両方のトランジスタが切れて浮いている間のリークが周波数依存性を生む2と指摘している。

横軸を周波数とし、低い側ではリークで電圧幅が減って容量が小さく出る領域、高い側では1周期の間に充電が終わらず電圧幅が減る領域、その間に測定値が平らになる窓があることを示した図。
低すぎるとリークが、高すぎると充電の遅れが電圧幅を削る。容量が周波数によらず平らな窓で測る。

上の限界は充電の速さだ。充電に使えるPMOSのオンの時間に、オン抵抗と、配線と寄生を合わせた容量で決まる時定数 τ=R⋅C\tau = R\cdot C の何倍かが入らないと、電圧がVDDV_\mathrm{DD}まで届かない。imecとSonyの特許US9411000B2は、100 MHz(周期10 ns)なら整定時間は最大1 nsで、10 pFの寄生容量に対して電源側のインピーダンスを100 Ω未満にする6例を挙げている。原論文が0.6〜5 MHzの間で値が平らなことを確かめたのも、この窓の中にいることの確認になる。ICMTS 2020の論文は、外付けのLCRメータは100 kHzで測ることが多いのに対し、CBCMでは10 kHzからGHzまでの周波数が報告されている2と整理している。

量産の配列で使うなら、電流計の校正までが測定のうち

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CBCMは1つの構造を測るだけでなく、配列にして場所ごとのばらつきを測るのに向く。TSMCの特許US9406671B2は、CBCMで容量配列の右端から中央、左端までの不一致の標準偏差を測った7例を示し、その例の動作している容量16個の平均は34.5 fFだった7。ICMTS 2020の論文は、番地で選べるCBCM配列で、測定の処理量と面積の効率を上げた2と書いている。

その時、容量を電流に変えた後の電流計の精度が新しい限界になる。同じ論文は、CBCMの電流を模したインバータの校正構造で290 kHzから2.6 GHzまで2の測定系を調べ、ある機能テスタでは平均電流が3 nAを超える範囲で誤差8%、それ未満では誤差が倍になった2。前に見積もった1 fF・1 V・10 MHzの10 nAは、この境目の約3倍しかない。サブfFを測るなら、周波数か電圧を上げて電流を稼ぐか、テスタを校正構造で確かめてから使う。CBCMの精度は、トランジスタの対の揃い方と、電流を読む装置の校正の両方で決まる。

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