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容量測定の周波数は100 kHz〜1 MHz|リークと伝送線路効果の谷

半導体の容量測定の周波数は、膜やMOS容量のC-Vなら100 kHzか1 MHz、配線の微小容量なら1 MHz前後が標準だ。理由は、その周波数で「測りたい電荷だけが信号に追従し、リークと伝送線路の誤差がどちらも小さい」からである。周波数を下げると容量の電流が減ってリークが目立ち、上げるとケーブルとプローブが伝送線路として振る舞い始める。100 kHz〜1 MHzはその間の谷にあたる。

しかし周波数を決めただけでは、測定値は揃わない。測定値は、どの等価回路で読むか(Cp-DかCs-Rsか)、どこまで補正したか(オープン・ショート・ケーブル長)でも動く。計測器メーカーの資料と学会の実例は、この手順にページの大半を割いている。

1 MHzが選ばれるのは、容量のインピーダンスがリークより十分小さくなるから

Section titled “1 MHzが選ばれるのは、容量のインピーダンスがリークより十分小さくなるから”

交流の容量測定は、電圧と電流の振幅比と位相差、つまりインピーダンスを測っている。容量CCのインピーダンスの大きさは 12π⋅f⋅C\frac{1}{2\pi\cdot f\cdot C} で、1 pFなら100 kHzで約1.6 MΩ、1 MHzで約160 kΩになる。並列にリーク抵抗RpR_\mathrm{p}があると、電流の一部は容量を通らず抵抗を素通りする。その比が損失係数 D=12π⋅f⋅Rp⋅CpD = \frac{1}{2\pi\cdot f\cdot R_\mathrm{p}\cdot C_\mathrm{p}} で、周波数を上げるほどDDは小さくなる。Tektronixの資料は、DDが大きいほど報告される容量の精度が落ちるとする1。

薄い膜ではこれが決定的になる。Keysightのインピーダンス測定ハンドブックは、ゲート酸化膜が2 nmを切るとトンネルによるリーク電流が大きくなり、信号電流の大半がリークとして流れるため2、測定周波数を通常より高い1 MHz以上にして、容量のインピーダンスをできるだけ下げる2よう勧めている。配線の微小容量でも事情は同じで、Tektronixは非常に小さな容量には約1 MHzが理想で、それより大きく上げると伝送線路効果で測定が難しくなり、下げると分解能を失う3とまとめている。

横軸を測定周波数とし、低い側ではリーク電流が容量電流に対して大きくなる誤差、高い側ではケーブルとプローブの伝送線路効果と寄生インダクタンスによる誤差が増え、100 kHzから1 MHzのあたりで両方が小さくなることを示した図。GHz帯は別の方法としてSパラメータ測定を置いている。
低い周波数ではリークが、高い周波数では配線の伝送線路効果が誤差を支配する。100 kHz〜1 MHzがその谷になる。

MOS容量のC-Vは、反転電荷が追従しない周波数で測る

Section titled “MOS容量のC-Vは、反転電荷が追従しない周波数で測る”

MOS容量では、周波数が「どの電荷を測るか」も決める。TektronixのC-V資料は、プローバのチャック経由で1 MHzまたは100 kHzの交流を基板の裏から加える4構成を示し、反転電荷の生成はこの周波数より遅いので4、反転領域で測れるのは酸化膜容量と最大空乏層容量の直列4になると説明している。少数キャリアが熱的に生まれる時間より周期を短くすれば、反転層の電荷は交流に乗らず、空乏層の幅だけが見える。これが「高周波C-V」の正体だ。

逆に、遅い電荷を見たい時は周波数を下げる。Tektronixは遅い捕獲と放出を調べるために低周波のC-Vを使うとし1、その装置の周波数範囲を10 mHz〜10 Hzとしている1。界面準位密度を測る高低周波法では、高い周波数と低い周波数で測った容量の差を使う。SiCのトレンチMOSを扱ったICMTS 2024の発表は、高周波側の信号に100 kHzを使った5。同じ発表は、寄生容量が10%あると界面準位密度を21%過大に見積もる5とも書いている。寄生の除去が結果を大きく動かす例だ。

高周波の上限側にも理由がある。Keysightのハンドブックは、薄い酸化膜のC-Vを高い周波数で測るとき、4端子対のケーブルの残留インダクタンスで誤差が増え、プローブ間の距離が動くので補正もうまく働かない2と指摘する。高い周波数を使うほど、接続を短く単純にする必要がある。

読み方の等価回路を、測る前に確かめる

Section titled “読み方の等価回路を、測る前に確かめる”

測定器はインピーダンスを測り、それを選んだ等価回路の容量に読み替える。リークが効く時は容量と並列の抵抗(CpC_\mathrm{p}-DDやCpC_\mathrm{p}-GpG_\mathrm{p})、直列抵抗が効く時は直列の抵抗(CsC_\mathrm{s}-RsR_\mathrm{s})で表すのが近い。Keysightのハンドブックは、容量のリアクタンスが大きい時は並列抵抗が実部を決めるので並列モデルが、小さい時は直列抵抗が効くので直列モデルが近似になる2と説明する。リークが小さくリアクタンスの大きいpF以下の配線容量では、並列モデルが近い。

どちらのモデルでも、損失が小さければ値はほぼ同じになる。ASTM D150によれば、直列と並列の容量の差は、損失係数0.1で1%未満、0.03で0.1%未満だ6。損失が大きい時に差が開くので、判断は実測でする。TektronixはCpC_\mathrm{p}とCsC_\mathrm{s}を別々に電圧か周波数に対して測り、平らに出た方のモデルを使う7方法を勧めている。直列抵抗を放置すると、測った容量が期待より低く出て、C-V曲線がゆがむ8。

量産の工程監視でも、1つの周波数で決め打ちしない。ICMTS 2022の発表は、リーク電流による損失係数の影響があるので、正確な容量を出すために実務では複数のLCR周波数を使うとし9、特に高い周波数では、インダクタンスが乗っていないことを確かめるために2つ以上の周波数で測る9と書いている。

補正は「校正→ケーブル長→オープン・ショート・ロード」の順で

Section titled “補正は「校正→ケーブル長→オープン・ショート・ロード」の順で”

接続と補正の手順は、メーカーの資料でほぼ一致している。要点を順に並べる。

  1. 校正を先に、補正はその後。 Keysightは補正は校正の代わりにならないとし2、校正を終えてから補正する2よう求める。
  2. ケーブル長補正。 4端子対(4TP)のケーブルを延ばす時は、装置のケーブル長補正(1 m、2 mなど)に合う長さにする2。ケーブルと治具をつなぐ時はケーブル長補正を先に行う2。
  3. オープン・ショート・ロード補正。 DUTを測る前に、端子を開いた状態、短絡した状態、基準のDUTをつないだ状態の3つを測る2。オープンは並列の浮遊容量を、ショートは直列抵抗と寄生インダクタンスのオフセットを消す7。Tektronixの例では、オープン補正の有無で容量の曲線が約0.23 pF違った7。ショート補正が効くのは主に10 nFを超える、または10 Ωを下回る低インピーダンスの測定だ8。
  4. チップ上のオープン構造。 プローブの先で補正しても、パッドと引き出し配線の容量は残る。IC-CAPの資料は、非常に小さな容量では、パッドとトランジスタまでの配線の容量を消すために、チップ上にオープンの校正構造を追加で置く必要があるとする10。設計は配線容量のテスト構造で扱う。
  5. 4線式とガード。 TektronixはDUTのできるだけ近くで電圧を検出する4線式の接続7を勧め、同軸ケーブルのシールド(ガード)をチャックにつないで浮遊容量を減らす7。
  6. 待ってから、長く測る。 DUTが十分に充電されてからC-Vのデータを記録する8。そのうえで測定時間(窓)を長くするほど雑音が減る7。

量産ではこの時間が効いてくる。ICMTS 2022の発表によれば、Keysight 4980Aで10 kHz・CpC_\mathrm{p}-RpR_\mathrm{p}・短い測定時間の設定でも、1回のCpC_\mathrm{p}測定に通常63 msを超えるうえ9、量産では再現性のために短い設定で16回か32回測る9。ウェハ1枚に多くの点を測るWATでは、周波数と平均回数の選択が検査時間に直結する。

GHzの容量は「容量計」では測らない

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1 MHzを大きく超えると、治具とケーブルを含めた測定系を、容量計の補正だけでは扱えなくなる。Keysightのハンドブックは、RFでは波長が短くなり、治具の伝送線路の物理的な長さが無視できなくなるとし2、電気長の補正は位相の誤差しか直さず、伝搬損失による誤差は残る2と注意する。

そのためGHz帯では、ベクトルネットワークアナライザで2ポートのSパラメータを測り、校正とディエンベディング(測定構造から対象外の部分を数式で取り除く処理)で配線だけを取り出す。アクティブインターポーザのTSVを扱ったECTC 2020の発表は、標準的なLRM校正の後に2ポート測定を行い11、20 GHzまで精度を確かめた広帯域の集中定数モデル11を作った。NISTは多線路TRL校正の誤差箱に配線を組み込み、多段の校正で取り出す12手順で、325 GHzまでの配線を評価した。多線路TRLは、各周波数で電気長が20〜160度の線路がある時だけうまく働くので13、測りたい帯域に合わせて線路の長さを複数用意する。チップ上のオープン・ショート構造による除去も、IC-CAPの資料はオープン法の精度が足りない時、おおむね3.5 GHzより上で使う10目安を示している。

配線のRC遅延の評価には、kHzからMHzで測った容量が使える。ITRSの配線の章は、low-k材料の誘電関数は1〜10 GHzでほぼ一定に見えるとしており14、MHzで測った値を回路の動作周波数へ持ち込める。周波数で値が変わる材料や、伝送線路として振る舞う長い配線を扱う時にだけ、GHzの測定へ進む。膜のk値の測り方はlow-k膜のk値の測り方で扱う。

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    SIA:ITRS 配線の章semiconductors.org ↩