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low-k膜のk値の測り方|配線内の実効kは加工損傷で上昇

low-k膜のkk値とは、膜が電界でどれだけ分極するかを真空との比で表した比誘電率を指す。膜を上下の電極で挟んだ容量を測り、膜厚を掛けて電極面積で割って出す。研究でも工程管理でも、シリコン基板に膜を付け、上から水銀の電極を当てて100 kHzや1 MHzで容量を測る方法がふつうだ。しかし、成膜した膜で測ったkkは配線の中のkkではない。配線に組み込むと、エッチストップ膜や密着層、加工で傷んだ層が電界の通り道に加わり、実効のkk(keffk_\mathrm{eff})は膜単体より高くなる。kkの低い膜を選ぶことと、配線の容量を下げることの間には、この差がある。

その差を作る大きな要因の一つが加工の傷みだ。IITC 2025の発表は、配線の加工で傷んだ層のkkを約4.0とし1、底の密着層と傷んだ部分を減らすことで実効kkを大きく下げた1。SiO2とほぼ同じkkの層が配線の側壁に残っていれば、多孔質膜で稼いだ低いkkは削られる。

k値は、容量×膜厚÷(真空の誘電率×電極面積)で出す

Section titled “k値は、容量×膜厚÷(真空の誘電率×電極面積)で出す”

電極で挟んだ絶縁膜に電圧をかけると、膜の中の電荷が偏る(分極する)。分極しやすい膜ほど、同じ電圧で電極にたまる電荷が増え、容量が大きくなる。端からの回り込みを無視できる平行平板なら C=ε0⋅k⋅AtC = \frac{\varepsilon_0\cdot k\cdot A}{t}、したがって k=C⋅tε0⋅Ak = \frac{C\cdot t}{\varepsilon_0\cdot A} だ。CCは測った容量、ttは膜厚、AAは電極の面積、ε0\varepsilon_0は真空の誘電率(8.85 × 10⁻¹² F/m)。low-kの特許も、平行平板の構造で容量を測ってkkを決める2方法を書いている。

構造は、低抵抗のシリコン基板に膜を付けて上に電極を置くMIS(metal-insulator-semiconductor)型にすることが多い。基板の側に空乏層ができるとその容量が直列に入るので、基板は高濃度にドープして空乏層を薄くする。IITC 2024の有機シロキサン膜の評価は、高濃度にドープした低抵抗のN型シリコン基板にMIS構造を作り、水銀プローブと精密インピーダンス分析装置で容量を測った3。

低抵抗のシリコン基板の上にlow-k膜があり、その上に水銀の電極が接触している断面図。容量計が水銀電極と基板の間の容量を測り、エリプソメトリで測った膜厚tと電極面積Aを使ってkを計算する流れを示した図。
水銀電極と低抵抗基板で膜を挟んで容量を測り、膜厚を掛けて電極面積で割ってkを出す。

水銀プローブは、膜の表面に液体の水銀を押し当てて電極にする。金属を蒸着する手間がなく、成膜した直後のウェハをすぐ測れる。IITC 2021の発表は、膜を付けただけのウェハを、水銀プローブを付けたAgilentの4284A LCRメータで100 kHzで測り4、kkは試料1で2.35±0.05、試料2と3で3.33±0.05だった4。緻密な膜と多孔質の膜を比べた別の研究では、水銀プローブで3.02±0.05と2.56±0.08(25 °C)5を得ている。

kの誤差は、膜厚と面積からも入る

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式を見ると、膜厚ttと面積AAの誤差がそのままkkに乗る。膜厚を5%厚く見積もればkkも5%高く、面積を5%広く見積もればkkは約5%低く出る。先の研究では、蒸着で作った電極が影の効果で設計より5〜10%大きくなっていた5。設計の面積を式に入れれば、kkはその分だけ高く出る。

膜厚は分光エリプソメトリで測る。膜で反射した光の偏光の変化から、膜厚と屈折率を同時に解く方法だ。測る場所も揃える。ALDのSiOCN膜を評価したCSTIC 2024の発表は、エリプソメータでウェハ上の49点の膜厚・均一性・屈折率を測り、C-Vはそれに対応する9点で測った6。膜厚の分布と容量の分布を同じ位置で結べば、場所ごとのkkが出る。

屈折率からもkkの一部が分かる。可視光の周波数では原子核やイオンは電界に追いつけず、電子の分極だけが応答する。特許US7400401B2は、可視から紫外の光では、時間変化する電界に応答するのは電子で、誘電応答は電子分極によるとし7、吸収を無視すれば可視域の比誘電率は屈折率の2乗に等しい7と書いている。屈折率1.4の膜なら、電子分極だけでk≈2.0k\approx 2.0になる。100 kHzで測ったkkとの差が、イオンの変位と双極子の向きによる分極、つまり吸湿や化学結合で動く部分だ。

100 kHz前後で測り、汚染を嫌う工程では非接触で測る

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測定周波数は100 kHzか1 MHzがふつうで、先のIITC 2021の例も100 kHzだ。low-kの誘電率はこの帯域からGHzまでほとんど変わらない。ITRSの配線の章は、low-k材料の誘電関数は1〜10 GHzでほぼ一定に見えるとしている8。だから100 kHzで測ったkkを、GHzで動く回路の配線容量の計算にそのまま使える。周波数による値の変化を調べたい時は帯域を広げて測る。インターポーザ用の高分子膜を評価したECTC 2022の発表は、100 Hzから1 MHzまで、交流1 V(実効値)で誘電率と誘電損失を測り9、高温高湿の加速試験の前後で比べた。周波数の選び方と補正の手順は容量測定の周波数と補正で扱う。

水銀は製造ラインに持ち込みにくい。先の特許は、水銀をlow-k膜に触れさせると後の工程への汚染が懸念される7ことを非接触法の理由に挙げている。マイクロ波の近接場プローブはその一つで、4 GHzの共振器の先を数µmに絞り、厚さ100 nm〜1.5 µmの膜を直径300 mmまでのウェハで測る10。測る範囲は約10 µmで、kkの再現性は0.3%未満、正確さは2%未満だった10。加工したウェハの上では、約50 × 50 µmのテストキーの下に、密度50%超・ピッチ250 nm未満のCuの格子を置いて11、膜だけを測れるようにした例もある。

配線の中の実効kは、電界解析と実測の容量から逆に出す

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配線の間の電界は、low-k膜だけを通るわけではない。下のエッチストップ膜(キャップ膜)、配線の側壁の密着層や傷んだ層、上の層との境目を横切る。エッチストップ膜はふつう層間膜よりkkが高く、特許US6717265B1はエッチストップ層の方が層間絶縁膜より高いkkを持つ2ことを前提に、その薄膜化を提案している。

左に一様なlow-k膜を挟んだ平行平板、右に2本の配線の断面と、その間の電界が側壁の傷んだ層、low-k膜、下のエッチストップ膜を通る様子を描いた図。右の構造で測った容量から逆算した実効kは、膜単体のkより高くなることを示している。
配線の間の電界は、傷んだ側壁、エッチストップ膜、low-k膜を通る。それらをまとめて1つの値にしたのが実効kで、膜単体より高い。

実効kkは、測った配線の容量を、配線の断面形状を入れた電界解析で再現するように逆算する。断面の絶縁物を1つの材料に置き換え、計算した容量が実測と一致するkkを探せば、それが実効kkだ。どの層を置き換えに含め、どの層を別に残すかで値の意味が変わるので、比べる時は同じ置き方で揃える。先のIITC 2025の発表も、組み込みと加工の後の実際の容量から実効kkを抽出している1。容量を測る構造は配線容量のテスト構造で扱う。

実効kkは配線の性能に直結する。IITC 2025の別の発表は、32 nmピッチの配線層で、ある工程が抵抗を揃えて比べると容量を約8%悪化させたと12、RRとCCを並べた図で示した。抵抗を揃えて容量だけを比べるのは、ファウンドリのRC遅延評価でも使う比べ方だ。

プラズマで傷み、水を吸うと、kは上がる

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多孔質low-kの膜はSi-O-Siの骨格にメチル基(Si-CH₃)がついた構造で、炭素と空孔がkkを下げている。エッチングやアッシングのプラズマはこの炭素を抜く。IITC 2025の発表は、傷んだ層がSi-Cなどの結合を失い、Si-O結合をもつ酸化物に近い性質になる1と書いている。炭素が抜けた跡にはシラノール(Si-OH)ができ、膜は水を吸うようになる。多孔質SiCOH膜の研究は、シラノールができて膜が親水性になり、シラノールと取り込んだ水が分極を増やしてkkを上げる13と説明している。水の比誘電率は約80なので、空孔のわずかな水でもkkは大きく動く。

傷みの一部は熱で戻る。同じ研究では、酸素とアルゴンのプラズマにさらした後のkkが、犠牲材料を抜いて孔を作った膜で2.3、骨格自体に孔がある膜で2.2になり13、熱でアニールすると前者は2.0に下がり、後者は2.15だった13。同じプラズマでも、孔の作り方で傷み方と戻り方が違う。どの膜で、どの処理の後かを揃えなければkkは比べられない。

空孔そのものの量はエリプソメトリック・ポロシメトリで測る。溶媒の蒸気を孔に出入りさせて光学的な変化を追う方法で、先の研究はエタノールの吸着と脱離の等温線から孔の径と空孔率を出した5。IBMのSiCOH膜では、空孔率が上がるほど密度とkkが下がり、k=2.05k = 2.05の膜で空孔率は30〜39%だった14。ただし、小さく閉じた孔には溶媒が入りにくく、エリプソメトリで捉えにくい15。

配線に組み込んだ後の吸湿は、櫛形の構造で追う。STMicroelectronicsらのIRPS 2025の発表は、吸湿の影響は櫛形どうしの構造のリーク電流と容量の測定で追うのがふつう16と書いている。膜で測るkk、配線の中の実効kk、時間とともに上がる容量は、それぞれ材料、加工、信頼性の別の物差しだ。low-kの開発で効くのは、配線の中の実効kkと時間がたった後のkkを、膜単体のkkに近づけることである。

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    SIA:ITRS 配線の章semiconductors.org ↩
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