配線容量の測り方、要は差分櫛形の長さ違いとダミーで寄生を除去
配線どうしの容量は、2組の配線を櫛の歯のように噛み合わせた構造に交流電圧を加え、流れる電流から求める。しかし測定器が受け取る電流には、プローブを当てるパッド、そこから構造までの引き出し配線、配線の端から回り込む電界の分が必ず混ざる。つまり配線容量の測定は、長さだけが違う構造どうし、あるいは測りたい部分だけを抜いたダミー構造との差を取る作業になる。精度を決めるのは測定器の性能より、差し引く相手をどう設計したかだ。
1対の配線の容量は小さい。線幅0.15 µmのCu配線を評価した研究では、長さ20 µmの平行配線2本が持つ正味の容量は数fFだった1。櫛形はこうした対を百組以上まとめて並べ、端子で電流を合流させて、外付けの測定器で測れる大きさまで積み上げる。
櫛形は向かい合う配線を積み上げて、容量を測れる大きさにする
Section titled “櫛形は向かい合う配線を積み上げて、容量を測れる大きさにする”容量は、2つの導体の間の電圧を変えたときに出入りする電荷の比、で決まる。電圧を正弦波で振れば電荷も同じ周期で出入りし、端子には電流が流れる。周波数、振幅の交流で理想的な容量に流れる電流は で、電流の大きさから容量が求まる。電流は電圧より位相が90°進むので、電圧と同相の成分(リークや誘電損失)と分けて読める。
平行平板で近似すると になる。は真空の誘電率、は絶縁膜の比誘電率、は向かい合う面積、は間隔だ。配線では側壁どうしが向かい合い、上下や端からも電界が回り込むので、この式は目安にとどまる。それでも、向かい合う長さを増やすほど容量が増え、間隔を詰めるほど増える関係は変わらない。
櫛形構造(comb、fork-fork)は、2つの電極から延びた歯を交互に差し込んで、狭い面積に向かい合う長さを稼ぐ。AMDの特許は、互いに入り組んだ櫛歯を持つ測定構造2を示し、測定中は周りの遮蔽層を接地する2。接地した導体は電界の終点になるので、測るたびに電界の境界条件が揃う。上下の層との容量を測りたいときは、配線を重ねた平板型を使う。Dongbu HiTekの特許は、櫛形と平板型を配線容量のテストパターンとして並べている3。
imecが18〜26 nmピッチのRu配線を評価したIITC 2024の発表では、フィンガー125本で長さ10・50・100・180 µmの4種類を作り、2端子で線間のリークと容量を測った4。同じ構造で、空洞にした配線間の容量は酸化膜で埋めた参照より40%低く、層内容量のシミュレーションと一致した4。配線の信頼性の評価にも櫛形が使われる。STMicroelectronicsらのIRPS 2025の発表は、配線の絶縁膜への吸湿を櫛形どうしの構造でリーク電流と容量を測って追うのがふつう5と書いている。
長さ違いの直線当てはめで、パッドと端の容量を切片へ追い出す
Section titled “長さ違いの直線当てはめで、パッドと端の容量を切片へ追い出す”測定器が見る容量は、配線どうしの容量と、パッド・引き出し配線・櫛歯の先端の容量の和だ。後者は櫛歯の長さに関係なく一定なので、長さだけを変えた構造を並べると、容量はという直線に乗る。傾きが1 µmあたりの配線間容量、切片が長さによらない寄生の分になる。2種類の長さの引き算でも傾きは出るが、imecのように4種類を並べれば、点が直線に乗っているかも確かめられる。
この方法の前提は、長さ以外がすべて同じことだ。歯の本数、パッド、引き出し配線、周りの遮蔽を共通にし、ウェハ上でも近くに置く。配線の加工はウェハの場所で変わるので、離れた構造どうしの差には加工差が混ざる。
ダミー構造との差で、測りたい部分の有無を測定値に変える
Section titled “ダミー構造との差で、測りたい部分の有無を測定値に変える”長さを振れない部分、たとえばビア1個やコンタクトの容量は、それだけを持たない双子の構造と比べる。TSMCの特許US7772868B2は、対象のコンタクトやビアの容量を持たない、よく似た参照構造を繰り返し測る6方法を示している。対象以外を揃え、対象の有無を測定値の差に変える設計だ。
Dongbu HiTekの特許は差分を式で書き、として3、主構造の容量を、測りたい部分を含む総容量から、含まない側の総容量を引いて求める。同じ特許は、櫛形容量と、パッドの寄生を測るヌルパッドを1つのモジュールにまとめている3。パッドだけの構造を隣に置けば、パッドの分をウェハごと、場所ごとに引ける。
測定器の側にも差し引く相手がある。プローブを浮かせた開放状態の容量を測り、DUTの測定値から引くのが開放補正だ。Tektronixの手順はで7、補正後の容量を、DUTをつないだ測定値から開放時の値を引いて得る。開放補正はプローブとケーブルの容量を消し、ウェハ上のダミーはパッドと引き出し配線の容量を消す。片方では足りない。
fF以下を測るなら、接続・周波数・積分時間を詰める
Section titled “fF以下を測るなら、接続・周波数・積分時間を詰める”電流は小さい。1 fFの容量に1 MHz・1 Vの交流をかけても、流れる電流は約6 nAだ。そこで接続と設定で雑音を削る。Tektronixは、DUTのできるだけ近くで電圧を測る4線式接続を勧め、短いケーブルと補正を使えば2線式でも測れるとしている7。DUTを金属のシールドで囲み、同軸ケーブルの外側導体へつなぐ7のも同じ理由だ。
周波数は、高いほど電流が増えるが、上げすぎると配線の伝送線路としての振る舞いが出る。Tektronixは、微小容量には約1 MHzが最適で、それを大きく超えると伝送線路効果で測定が難しくなるとする7。一方、ICMTS 2020の論文は、外付けのLCRメータでは100 kHzで測ることが多い8と書いている。周波数の選び方は容量測定の周波数と補正で詳しく扱う。
最後は積分時間だ。Tektronixが0 V、1 MHz、交流1 Vで15回測った標準偏差を雑音とした評価では7、1回の測定時間を1秒以上にすると雑音がアトファラド(10⁻¹⁸ F)の桁に下がった7。ただしこれは繰り返しのばらつきで、差し引く相手の設計が悪ければ、正確さは雑音より先に崩れる。パッドやプローブの容量が測りたい容量より大きくなると、差し引いた残りに誤差が集まる。その領域では、チップ上のトランジスタで充放電して電流から容量を読むCBCMが使われる。ICMTS 2020の論文も、従来のLCRブリッジでは小さな容量の測定に限界がある8とCBCMの動機を書いている。
測った容量は、電界解析と合わせて寸法と誘電率へ戻す
Section titled “測った容量は、電界解析と合わせて寸法と誘電率へ戻す”寄生を除いた容量は、配線の断面と絶縁膜の状態をまとめて映した値だ。線幅が太れば間隔が縮み、絶縁膜が傷めば誘電率が上がり、どちらも容量を増やす。1つの容量の値から両方は決まらないので、寸法を別の測定で押さえ、残りを電界解析で合わせ込む。
Frequency Technologyの特許WO1999016107A2は、ほかの工程パラメータを固定し、計算した容量が測定した容量と一致するように層内絶縁膜の誘電率を求める9手順を示し、線幅の補正量、層間絶縁膜の厚さ、層内絶縁膜の誘電率9を抽出の対象に挙げている。こうして出した誘電率は、モデルに別に入れなかったエッチストップ膜やライナー、加工で傷んだ層も含んだ「その配線にとっての実効値」になり、膜単体のより高くなりやすい。配線の中のが上がる理由はlow-k膜の値の測り方で扱う。
研究開発でも、測定とシミュレーションを合わせる順は同じだ。IntelがIEDM 2024で発表したRuのエッチング配線では、実験で校正したシミュレーションで、溝の高さに対する容量の変化を示し10、部分的なエアギャップで線間容量がULK膜だけの場合より25%下がった10という電気測定を並べている。測定で校正したモデルなら、まだ作っていない寸法の容量も信頼して予測できる。ファウンドリが抽出ツールの技術ファイルを合わせる作業も、この延長にある(ファウンドリのRC遅延評価)。
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- 1長さ20 µmの平行配線2本が持つ正味の容量は数fFarxiv.org ↩
- 2Google Patents:AMD、櫛形の容量測定構造と接地遮蔽 US7355201B2patents.google.com ab
- 3Google Patents:Dongbu HiTek、櫛形・平板型のテストパターンとヌルパッド US7924030B2patents.google.com abc
- 4IITC 2024:MP18の2層semi-damascene配線へのair gap統合(2024年)ieeexplore.ieee.org ab
- 5
- 6Google Patents:TSMC、参照構造によるコンタクト・ビア容量の測定 US7772868B2patents.google.com ↩
- 7
- 8ICMTS 2020:CBCM測定ハードウェアの校正(2020年)ieeexplore.ieee.org ab
- 9Google Patents:Frequency Technology、容量測定と電界解析による配線パラメータ抽出 WO1999016107A2patents.google.com ab
- 10IEDM 2024:エアギャップつきRuのエッチング配線(2024年)ieeexplore.ieee.org ab