配線抵抗の測り方、4端子とTCR法細りと抵抗率上昇の切り分け
配線とビアの抵抗は、電流を流す端子と電圧を測る端子を分ける4端子測定(ケルビン測定)で測る。ただし抵抗値そのものは答えの半分にすぎない。細い配線の抵抗が予定より高い時、原因は加工で断面が細ったことか、細くなって材料の抵抗率が上がったことか、そのどちらかだ。前者は工程を直し、後者は材料を替える話になる。ファウンドリと研究機関は、十字とブリッジでシート抵抗と電気的な線幅を、抵抗の温度変化(TCR法)で断面積と抵抗率を、それぞれ電気だけで切り分けている。
この切り分けが要るのは、新しい金属の評価がまさにその問いだからだ。Ru・Moなどの新金属がCuより有利かどうかは、同じ断面積での抵抗率で比べなければ決まらない。
4端子にすると、プローブと接点の抵抗が測定から消える
Section titled “4端子にすると、プローブと接点の抵抗が測定から消える”電流を流して両端の電圧を測れば、抵抗は だ。ところが電流を流す端子でそのまま電圧を測ると、ケーブル、プローブ、パッドとの接点の電圧降下まで足される。配線やビアの抵抗は数Ωから数百Ωと小さいので、接点やリードの抵抗が混ざると無視できない。Keithleyのハンドブックは、電流を流すリードの対と、電圧降下を測るリードの対を分ける14端子の構成を基本にしている。電圧計の入力抵抗は非常に高いので、電圧端子にはほとんど電流が流れず、その接点の電圧降下も無視できる。測れるのは、電圧端子を当てた2点の間の抵抗だけになる。
低い抵抗では、電圧を与えて電流を測るより、電流を与えて電圧を測るほうが正確だ。Keithleyは、接点チェーン、ビア、金属構造のように数十〜数百mΩの抵抗を扱う場合、低い電圧を正確に出しにくいので電流を流して電圧を測るよう勧めている2。
電流は大きいほど電圧が稼げるが、発熱 で配線の温度が上がり、抵抗そのものが変わる。白金のギリシャ十字を評価したICMTS 2023の発表は、ばらつきを抑えつつ目立ったジュール発熱を避ける電流として100 µAを選んだ3。NISTの手順書も、層ごとに許せる電流密度を調べ、厳しい層に合わせて上限を決める4。先端配線では、imecがRu配線の抵抗を0.1 Vの4端子測定で測っている5。
十字でシート抵抗を、ブリッジで電気的な線幅を出す
Section titled “十字でシート抵抗を、ブリッジで電気的な線幅を出す”一様な配線なら (は抵抗率、は長さ、は断面積)だ。抵抗が上がった時、とのどちらが動いたかは、この式だけでは分からない。そこで膜の性質と形の情報を、別々の構造で測る。
膜の抵抗はシート抵抗 (は膜厚)で表す。単位はΩ/□で、正方形の膜の向かい合う辺の間の抵抗が大きさによらず同じになることに由来する。シート抵抗はファンデルパウ法で測る。膜の周囲に4つの端子を置き、電流を流す組と電圧を測る組を入れ替えて2つの4端子抵抗、を測ると、 からが決まる。膜の形や端子の位置に関係なく成り立つのがこの式の強みで、半導体では十字形(ギリシャ十字)に作ることが多い。NISTの設計条件は十字の腕の長さを腕の幅の2倍より長くすることだ4。
十字のすぐ隣に細長いブリッジを置けば、線幅が出る。ブリッジの電圧タップ間の長さと抵抗から、 が電気的な線幅(electrical CD)になる。NISTの実装も、ファンデルパウの十字と線幅測定用のブリッジを組み合わせている4。注意点は電圧タップだ。タップにも電流が回り込み、タップの付け根で導体が広がる。NBSの解析は、この回り込みで電流の一部が迂回し、タップ付近の単位長さあたりの抵抗が下がる6ことを示した。タップの形に合わせて補正しないと、幅を広めに読む。
膜厚を別に測れば、シート抵抗から抵抗率が出る。ALDのMo薄膜を評価したICMTS 2024の発表は、ファンデルパウ法のシート抵抗と分光エリプソメトリーの膜厚から抵抗率を出した7。
ビアは、チェーンで異常を拾い、ケルビン構造で1個を測る
Section titled “ビアは、チェーンで異常を拾い、ケルビン構造で1個を測る”ビアの抵抗は、上下の配線を多数のビアで交互につないだビアチェーンで測る。1個でも高抵抗のビアがあればチェーン全体の抵抗に出るので、異常の検出に向く。ビア試験の特許US6503765は、ビア約20個の正常なチェーンが数百Ωになるように作り、50 Ωを超える高抵抗のビアを見つけやすくする8例を挙げている。
ただしチェーンの抵抗には、ビアをつなぐ配線の抵抗も入る。1個あたりのビア抵抗は で求めるが、配線分の見積もりの誤差がそのまま乗る。微細なピッチでは配線分のほうが大きいこともある。24 nmピッチのCuビアを扱ったIITC 2022の発表では、ビア12個、上下の配線長0.7 µmの短いチェーンでも、抵抗は配線部分が支配していた9。そこで1個のビアは、ビアのすぐ上と下に電圧端子を置くケルビンビア構造で測る。同じ発表も、個々のビアの抵抗はケルビン構造の4端子測定で出している9。
imecのRu配線では、同じケルビン構造で抵抗と信頼性をまとめて測る。IITC 2023の発表は、6パッドのビアケルビン構造でビア抵抗を4端子で測り、同じ構造でビアと配線の間の絶縁破壊も測った10。
TCR法で、断面積と抵抗率を電気だけで分ける
Section titled “TCR法で、断面積と抵抗率を電気だけで分ける”ここまでで得られるのは抵抗と、せいぜい線幅だ。細い配線の断面は台形で、高さも場所で揺れるので、断面積を形から正確に決めるのは難しい。TCR法(temperature coefficient of resistance、抵抗の温度係数を使う方法)は、温度を振って断面積を電気的に出す。
形が温度で変わらないなら、 を温度で微分して になる。は測れる。は材料の値を仮定する。金属の抵抗率の温度変化はおもにフォノン散乱から来て、表面や粒界の散乱はほとんど温度によらないので、寸法が細っても はバルクに近い、というのがこの方法の前提だ。断面積が出れば、 で抵抗率が決まる。
この方法で先端配線を評価した例は多い。IITC 2018で、imecはEUVとエッチングで作った線幅10.5 nm未満のRu配線について、TCR法で抵抗率と断面積を求めた11。IBMは同じ学会で、ライナーの導電を考慮したTCR法で、RuライナーのCuの抵抗率がCoライナーより10〜15%高い11と報告した。IBMはRu配線の研究で、TCR法で出した断面積をTEMの断面写真で確かめている12。
この前提が成り立たない条件も分かっている。ナノ配線のTCR法を解析した研究は、寸法効果で抵抗率が大きく上がる配線では、温度係数をバルクの値で置き換える近似が怪しくなる13と指摘した。10 nm未満の薄膜を調べた研究では、Ru、Co、Irの温度係数は膜厚にあまりよらずバルクに近いが、Cuは薄くなるにつれて大きく変わった14。TCR法は、CuよりRuで使いやすい。さらに、長さ方向に断面が揺れる配線では、TCR法の面積は断面積の調和平均にあたる13。細い部分が強く効く平均だ。導電性のライナーが並列に流す電流は、全体の5〜10%未満なら無視でき、無視すると中心の金属の断面積を大きめに見積もる13。
報告値は、Ω/µm、Ω、µΩ·cmを別の物差しとして読む
Section titled “報告値は、Ω/µm、Ω、µΩ·cmを別の物差しとして読む”この3段の測定で、先端配線の数字は3種類出てくる。単位長さあたりの配線抵抗(Ω/µm)は設計に効く量そのもの、ビア1個の抵抗(Ω)は接続の出来、抵抗率(µΩ·cm)は材料の良し悪しだ。混ぜて比べると判断を誤る。
imecの例で並べると違いが見える。メタルピッチ20 nm・線幅10 nmのRu配線は、抵抗の歩留まりが90%を超え、中央値は300 Ω/µm、約8割のダイが±30%に入った5。ビアは歩留まり最大約95%、抵抗の中央値約33 Ωだった5。ピッチ16 nmまで詰めた別の実証では、線幅8 nmの配線が平均670 Ω/µm、TCR法の抵抗率は平均15.5 µΩ·cmで、300 mmウェハ上の歩留まりは95%を超えた15。線幅10 nmから8 nmで、単位長さの抵抗は2倍以上になった。その増加が断面の縮小と抵抗率の上昇のどちらから来たかを分けるために、TCR法で抵抗率まで出す。どの数字が動いたかを分けて読むことが、配線抵抗の評価の要点だ。抽出ツールへの反映はファウンドリのRC遅延評価、実効抵抗率の考え方は実効抵抗率で扱う。
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- 1Keithley:Low Level Measurements Handbook 第7版download.tek.com ↩
- 2
- 3ICMTS 2023:ギリシャ十字構造の電極評価(2023年)ieeexplore.ieee.org ↩
- 4NIST:テスト構造の実装文書 SP 400-97nvlpubs.nist.gov abc
- 5IEDM 2023:MP18・アスペクト比6の2層semi-damascene配線(2023年)ieeexplore.ieee.org abc
- 6NBS:クロスブリッジのシート抵抗構造の設計 NBSIR 82-2548nvlpubs.nist.gov ↩
- 7ICMTS 2024:薄膜領域のALD Mo膜の電気特性(2024年)ieeexplore.ieee.org ↩
- 8Google Patents:ビアとコンタクトの試験構造 US6503765patents.google.com ↩
- 9IITC 2022:24 nmピッチ以降の低抵抗Cuビア(2022年)ieeexplore.ieee.org ab
- 10IITC 2023:MP18の自己整合ビアつき2層semi-damascene配線(2023年)ieeexplore.ieee.org ↩
- 11IITC 2018:プログラムと講演要旨(2018年)iitc-conference.org ab
- 12IBM Research:48 nmピッチのRu配線の抵抗率と信頼性research.ibm.com ↩
- 13arXiv:温度依存抵抗からのナノ配線の抵抗率と断面積の抽出(2018年)arxiv.org abc
- 14arXiv:代替金属薄膜の抵抗率の温度依存(2020年)arxiv.org ↩
- 15imec:ピッチ16 nmの自己整合ビアつきRu配線の実証imec-publications.be ↩