インナースペーサの難所は横穴の埋め込みTELは幅45 nm未満でseamを課題に
TELの説明と中国科学院の実験は、どちらもGAAナノシートのinner spacerの難所を、シートの間の横穴を埋める工程に置く。東京エレクトロン(TEL)は2025年2月の投資家向け説明会で、隣り合う2つの構造にまたがる幅が45 nm未満の場所で、均一な膜を付けると縦の隙間が詰まり、横穴にseamが残る1ことを課題に挙げた。TELは、エッチングによる絶縁破壊でリークが生じる問題とあわせて示している。
inner spacerとは、ナノシートの端でゲートとソース/ドレイン(S/D)の間に入れる誘電体を指す。imecによれば、FinFETにはなく、ゲートとS/Dを絶縁して容量を下げるためにナノシートで必要になり、ナノシートの工程で最も複雑なモジュールだ2。材料は窒化シリコン(SiN)が使われ続けている。中国科学院微電子研究所の2020年の論文は、低誘電率の材料はその後の金属ゲート置換の工程に耐えにくく、比誘電率約7のSiNが今もスペーサー材料の最良の選択だとする3。
inner spacerは、横に掘る、埋める、削り戻すの3工程で作る
Section titled “inner spacerは、横に掘る、埋める、削り戻すの3工程で作る”imecの説明では、Si/SiGeの積層の外側を横方向にエッチングしてSiGe層の端を後退させ、できた小さな空洞を誘電体で埋める2。そのために高いエッチング選択比と、横方向のエッチングの精密な制御が要る。中国科学院の論文は、この後にもう1工程を置く。膜は空洞の外の端面にも付くので、端面の膜をエッチングで除き、空洞の中の膜だけを残す3。
inner spacerはゲートとS/Dの間にあり、電流がチャネルを出入りする経路の一部を形づくる。経路全体の内訳はGAAナノシートで駆動電流を下げる寄生抵抗にまとめている。
400℃のPECVDでは薄い横穴ほど空洞が残り、750℃のLPCVDでは残らなかった
Section titled “400℃のPECVDでは薄い横穴ほど空洞が残り、750℃のLPCVDでは残らなかった”中国科学院の論文は、厚さ10、20、30 nmのSiGe層を横に掘った空洞を、40 nmのSiNで埋めて比べた。400℃のPECVDで付けた膜には目に見える空洞が残り、その割合は10 nm、20 nm、30 nmの順に大きかった3。750℃のLPCVDで付けた膜には、どの厚さでも空洞がなかった。論文は、LPCVDの埋め込みの良さを、成膜室の低い圧力と高い温度によるものとする。LPCVDの膜は後の工程での耐エッチング性もPECVDより高い。
同じ論文では、Si/SiGeの界面で原子が混ざり合うのを避けるため、成膜温度を800℃未満に抑えた3。縦の穴の埋め込みに強い高密度プラズマCVDは、横に開いた空洞には効きにくく、プラズマによる損傷も避けられないという。論文の条件では、成膜方法は800℃未満の温度で、プラズマの損傷を避ける範囲から選ばれている。
TELは、側壁を薄く付けて縦の隙間を塞がずに横穴だけを埋める
Section titled “TELは、側壁を薄く付けて縦の隙間を塞がずに横穴だけを埋める”TELの図には、隣り合う2つの積層構造と、その間の縦の隙間、各構造の横穴が描かれ、2つの構造にまたがる幅に45 nm未満の寸法が付いている。TELは、この縦の隙間が膜で詰まることと、横穴の中で向かい合って伸びた膜の合わせ目がseamになること1を2つの課題に挙げる。
TELが示した解は2つある。側壁に付ける膜を薄くすることと、横穴をseamなしで埋めることだ。同社は成膜装置Episode 1で、独自の薄膜成膜技術と、新たに開発した高密度プラズマによる横方向に均一な膜の改質を組み合わせ、seamのない横方向の埋め込みを実現した1と説明する。
削り戻しは、端面の膜を除いて横穴の膜を残す選択比の工程だ
Section titled “削り戻しは、端面の膜を除いて横穴の膜を残す選択比の工程だ”従来のゲート側壁のスペーサーは、ゲートの上と底の膜を除いて側壁の膜を残せばよく、高い選択比は要らない。inner spacerの削り戻しは、Siのシート端面とSiGeの空洞が交互に並ぶ面で、端面の膜だけを除いて空洞の膜を残すため、高い選択比が要る3。
中国科学院の論文は、一般的な誘導結合プラズマ(ICP)のエッチング装置とCH₂F₂/CH₄/O₂/Arの混合ガスで、SiNのエッチング速度をSiの100倍超、SiO₂の30倍超に保ち、縦方向と横方向の比を80対1超にした3。縦横比は、SiGe層が薄いほど高く、10 nmのSiGeで80対1に達した。
削り戻しでは、中国科学院が一般的なICP装置で高い選択比を実験室で示した。埋め込みでは、TELが量産向けの成膜装置に専用の成膜と改質の技術を載せている。チャネル解放と次の構造で求められるinner spacerの変更はGAAのロードマップと次の構造候補、成膜方法の全体像は酸化・成膜・薄膜形成にまとめている。