基板の配線が詰まったとき、最初に出る案は「層を増やす」です。層数の寄与がゼロになる領域があります。
理由は、配線が通る場所がバンプとバンプの隙間までだからです。隙間の幅を線幅で割った本数が、1 層あたりの通行量。そこへ層数を掛けたものが、面から外へ出せる列数になります。
配列の辺がその 2 倍に達した時点で、全部のバンプが外へ出ます。そこから先で層数と線幅が買えるものは、ゼロです。
隙間を通る本数は
バンプのピッチを 、パッドの直径を 、配線のピッチ(線幅+間隔)を とします。
隣り合うバンプのあいだに残る幅は 。そこを通せる本数は
層数を とすると、外側から逃がせる列数は
| 基板 | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| ビルドアップ | 130 µm | 60 µm | 20 µm | 3 | 14 | 42 |
| ビルドアップ(微細) | 130 µm | 60 µm | 10 µm | 7 | 14 | 98 |
| 再配線層 | 40 µm | 20 µm | 0.8 µm | 25 | 4 | 100 |
| 再配線層(0.4 µm) | 40 µm | 20 µm | 0.4 µm | 50 | 4 | 200 |
層数 14 の 42 列に対して、層数 4 の 100 列。層は 3.5 分の 1 なのに、列は 2.4 倍。差を作っているのは のほうです。
この は、配線の自動化でも中心的な量です。2026 年の多容量の順序付きエスケープ配線1は、従来の手法が「隣り合うピンのあいだの配線容量を 1 本と仮定していた」点を出発点にしています。容量が複数本ある場合へ拡張した探索手法で、50×50 のピン配列の問題に対して成功率を 4 倍、求解時間を半分にしたと報告しています。
「隙間に何本通るか」が、そのまま探索問題の難しさを決めていた。
辺が に達すると、層数と線幅の寄与がゼロになる
配列の側を入れます。1 辺 の面に、ピッチ で正方配列を作ると 1 辺の個数は 。
外側から 列ぶんが逃がせるので、逃がせる総数は
2 つの領域があります。
| 領域 | 条件 | 外へ出せる数 | 層数と線幅の寄与 |
|---|---|---|---|
| エスケープ律速 | にも にも比例 | ||
| バンプ律速 | どちらもゼロ |
境目は です。これを と について解くと
mm で数を入れます。
| 境目の | での線幅 | での線幅 | ||
|---|---|---|---|---|
| 130 µm | 60 µm | 1.10 /µm | 12.7 µm | 3.6 µm |
| 40 µm | 20 µm | 12.5 /µm | 1.12 µm | 0.32 µm |
| 10 µm | 5 µm | 200 /µm | 0.070 µm | 0.020 µm |
バンプピッチ 130 µm の基板では、14 層で線幅 12.7 µm に達した時点で全部逃がせます。そこから層を増やしても線を細くしても、逃がせる数は のまま。
バンプピッチが壁になっている。50×50 のピン配列を対象にした配線探索1の規模も、この の桁に立っています。
バンプピッチの壁は、接合の方式が作っている
天井を動かすには、バンプピッチを詰める必要があります。そこには別の物理が立っています。
2024 年のインプリント技術による 10 µm ピッチの配線とバンプの形成2が、この壁を明示しています。フリップチップ接合の最小バンプピッチは、チップと基板の熱膨張率の差による伸縮の差で制限される。そのため従来のはんだを使う技術では、35 µm 以下の接合ピッチがきわめて難しい。
だからピン数の多い異種チップの統合は、シリコン貫通ビアを使う 2.5D の側へ回った。同じ研究は、その製造技術が本質的に高価な工程であることも指摘しています。
提案されているのは別の道です。導電ペーストをバンプとして使う低温フリップチップ接合で、インプリント法により配線とバンプをピッチ 10 µm で同時に形成する。非導電ペーストを塗布し、フリップチップ接合し、140 °C で硬化させて接合強度を上げ、導電ペーストの抵抗を下げる、という流れです。
| 方式 | 到達バンプピッチ | 律速 |
|---|---|---|
| はんだのフリップチップ | 35 µm | 熱膨張率差による伸縮の差 |
| シリコン貫通ビアの 2.5D | 40 µm 以下 | 工程費用 |
| インプリント+導電ペースト | 10 µm | 硬化温度と接触抵抗 |
上の表の µm の行が、ここで意味を持ちます。境目の が 200 /µm なので、4 層なら線幅 20 nm。横へ引き出す設計では届きません。
だから細いバンプピッチは、横へ引き出す代わりに縦へ積む設計と組みます。2 つの技術が一緒に来る理由が、この割り算にあります。
層数と線幅の伸びしろは、桁が別
エスケープ律速の領域では、 と が同じ重みで乗ります。伸びしろの大きさが別です。
2026 年の 1 µm 多層高密度ビルドアップ基板の報告3が、業界の要求を 2 つの数で挙げています。最小寸法は 1 µm 以下へ、層数は 30 を超えて。
同じ報告は、最初の製品が 1 µm の最小寸法と 2 層で出たことも書いています。細さが先に来て、層数が後から来る。
2 つの軸の走ってきた幅を表にします。
| 軸 | 過去 | 現在 | 倍率 |
|---|---|---|---|
| 層数 | 8 | 30 | 3.75 倍 |
| 線幅 | 20 µm | 1 µm | 20 倍 |
同じ重みで乗る 2 つの軸のうち、片方が 20 倍で片方が 3.75 倍。どちらへ投資してきたかが、この比に出ています。
層数の側には固有の壁もあります。層を 1 枚足すたびに歩留まりが掛け算で落ちるので、30 層は 1 層あたり 99.9% でも全体 97%。線幅の側は 1 枚の中の話なので、この掛け算には入っていません。
細い線の上限は、露光より手前の倒れ
線幅の側にも固有の壁があります。解像度より先に、形が保てなくなる。
2026 年のパネルレベル再配線層インターポーザ作製におけるドライフィルムレジストのパターン倒れ防止の研究4が、この壁を追っています。ドライフィルムレジストは、現像後に水とレジストの親水的な相互作用でパターンが倒れやすい。
対処として提案されていた「すすぎによる疎水化」を、3 種類の薬剤で比べています。
| すすぎ | 表面自由エネルギー | パターン倒れ | 機械強度 |
|---|---|---|---|
| TMAC | 下がる(疎水化) | 悪化 | 低下 |
| CTAC | 下がる(疎水化) | 悪化 | 低下 |
| BHAC | 下がる(疎水化) | 防げた | 向上 |
3 つとも疎水化には成功していて、結果が逆を向いています。疎水性が上がるという同じ指標の中で、倒れが悪化する薬剤と防げる薬剤に割れた。
原因は機械側でした。ナノインデンテーションで機械強度を測ると、BHAC だけが強度を上げている。レジスト内部の水素結合が強まり、見かけの架橋密度が上がったため、と結論されています。
疎水化という 1 つの指標で選んだら、3 分の 2 を外していたことになります。倒れは表面の濡れ性と内部の強度の両方で決まる量でした。
構造の側から攻める道もあります。2016 年の有機インターポーザ向け超微細トレンチ配線工程の提案5は、レジストで柱を立てる代わりに溝を掘って埋める方向です。柱がゼロなら、倒れる対象もゼロです。
面のうち細い部分だけを高価にする
最後に、費用の側です。
細い線は面積あたりの費用が高いので、細い線を要する面積を小さくすれば費用が下がります。
20 mm 角のチップを 2 つ横に並べた場合で数えます。
| 方式 | 細線の必要面積 | 比 |
|---|---|---|
| 全面のインターポーザ | 45 × 25 = 1125 mm² | 1.00 |
| 継ぎ目だけの橋 | 20 × 2 = 40 mm² | 28 分の 1 |
細線の面積が 28 分の 1 になります。高密度の配線が要るのは、2 つのチップが向かい合う辺の近くまでだからです。
2024 年の 2.3D 有機インターポーザパッケージにおけるダイ間リンクの設計とシミュレーション6が、この中間の形を追っています。高密度ファンアウトの銅再配線層で隣接する IC どうしと下の基板をつなぐ、逐次的に製造する銅とポリイミドの積層です。
同じ研究は、電気的な条件も出しています。複数の再配線層の配置を比べ、信号と接地を互い違いに配置した構成が 3 次元電磁界解析と回路シミュレーションの信号品質の条件を満たした、と。
細線の面積を減らす設計は、接地の取り方の設計とひとつながりです。幅を惜しむほど、信号の隣へ入れる接地の本数が減る。
現場で動く判断
- 隙間を通る本数は です。130 µm・パッド 60 µm・線幅 20 µm で 3 本。この 1 行が、層数の議題より先に来ます。
- 逃がせる列数は です。14 層 × 3 本 = 42 列に対して、4 層 × 25 本 = 100 列。層を 3.5 分の 1 にしても、列は 2.4 倍になります。
- 境目は です。 mm・ µm なら、14 層で線幅 12.7 µm。そこから先は、層数と線幅の寄与がゼロになります。
- 天井は です。130 µm で 23,409、40 µm で 250,000。天井を動かせるのはバンプピッチだけです。
- はんだのバンプピッチは 35 µm で止まります。熱膨張率差による伸縮の差2が律速。インプリントと導電ペーストで 10 µm2という別の道があります。
- 10 µm のバンプが通るのは、縦へ積む設計と組んだときまでです。横へ引き出すには 4 層で線幅 20 nm が要るからです。2 つの技術が一緒に来る理由です。
- 層数と線幅の伸びしろは桁が別です。最小寸法 1 µm 以下・層数 30 超3という要求に対して、線幅は 20 倍、層数は 3.75 倍。層は歩留まりの掛け算も背負います。
- 細い線の上限は、解像度より先に倒れで来ます。疎水化に成功した 3 薬剤のうち、倒れを防げたのは 1 つ4。選ぶ指標は表面自由エネルギーより、機械強度の側です。
- 柱をゼロにする道もあります。溝を掘って埋めるトレンチ配線5。レジストの柱を立てる工程とは、別の壁に当たります。
- 細線の面積は 28 分の 1 まで縮みます。高密度を 2 チップの継ぎ目に限る形です。信号と接地を互い違いにする構成6と、幅の設計がひとつながりになります。