515 mm × 510 mm のガラスパネルに 3 層の再配線を作り、断面を測ります。目標 2 µm の線が 2.43 µm、目標 5 µm の線が 5.31 µm。
相対誤差は +22% と +6%。「細い線ほど難しい」という読み方が、まず出ます。
絶対誤差に直すと、別の並びが出ます。+0.43 µm と +0.31 µm。ほぼ同じ値です。
ここから先、話は 3 段で進みます。まず一定のバイアスという読み方が要求する数字の並びを式で出し、次にその読み方が同じ試作の中で 0.12 µm ずれることを確かめ、最後に同じ寸法・同じ材料系で作った 2 枚目のパネルで、この一定性が 8.1 倍の隔たりで崩れるところまで進みます。
相対で 22% と 6%、絶対で 0.43 と 0.31 µm
数字を 1 つの表に載せます。510 × 515 mm 級のガラスパネル上に微細な線幅間隔の再配線を作る工程系は、2024 年のパネルレベルファンアウトマルチチップモジュールの報告1が対象にしているものと同じ寸法帯にあります。
| 層 | 目標 線幅/間隔 | 実測 線幅 | 実測 間隔 | 相対誤差 | 絶対誤差 |
|---|---|---|---|---|---|
| ML1 | 2 / 2 µm | 2.43、2.53 µm | 1.69 µm | +22〜27% | +0.43、+0.53 µm |
| ML2 | 5 / 5 µm | 5.31 µm | 5.16 µm | +6% | +0.31 µm |
| ML3 | 10 / 10 µm | — | — | — | — |
相対誤差の列は 4 倍の開きを示し、絶対誤差の列は 1.5 倍に収まります。同じ 2 本の測定から、2 通りの絵が出ます。
間隔のほうは、ML1 で 1.69 µm。目標 2.00 µm に対して −0.31 µm です。
線が太った分だけ、間隔が痩せています。この並び方に名前が付きます。
エッジが両側へ δ 動くと、ピッチだけが保たれる
設計の線幅を 、間隔を とします。パターンのエッジが両側とも外へ ずつ動く場合、線は左右のエッジが外へ出た分だけ太ります。
隣り合う線が互いに太った側から食うので、間隔は同じ量だけ痩せます。
2 つを足すと が消えます。
ピッチには が入りません。裏返すと、ピッチが保たれている状態が「エッジの一様な移動である」ことの証拠になります。座標が原点からの距離に比例して伸び縮みする倍率誤差なら、ピッチのほうが動きます。層まるごとの平行移動なら、線幅もピッチも保たれたまま層間の相対位置だけがずれます。3 つの原因は、数字の並び方で区別が付きます。
対策の側も、この区別から出ます。エッジの一様な移動であれば、設計データの線幅を だけ細らせる操作 1 つで済みます。レイヤごとに数字を 1 つ入れる作業です。
その を動かす手も公開されています。レジストの型を作る工程で 露光量を増やすとレジストの寸法が比例して縮む関係を寸法制御へ使った2021 年のレジストめっき型の最適化2が、そのまま補償の旋回軸にあたります。
線幅由来の と間隔由来の が、0.06 µm 離れる
ML1 に数字を入れます。線幅から を求めると
間隔から求めると
同じ になるはずの 2 つが、0.060 µm 食い違います。
ピッチで確かめます。実測は µm、目標は 4.00 µm。
この 0.12 µm が、エッジの一様移動という読み方では説明できない量です。
実務上の帰結がそのまま出ます。補償値を線幅から取れば µm、間隔から取れば µm。どちらを採るかで 0.12 µm 変わり、2 µm の線に対して 6.0% にあたります。感光性ポリイミド側が 3 µm トレンチを解像する水準にある2018 年のファンアウトパネルレベル向け再配線構造の報告3と比べると、この 6.0% は材料の解像力とは別の場所で発生した幅です。
同じ寸法・同じ材料系の 2 枚目で、バイアスが 6.4 分の 1 になる
同じ 515 mm × 510 mm のガラスパネルに、同じ感光性誘電体とレーザ直接描画で、同じ 2 / 5 / 10 µm を狙った 3 層再配線が、もう 1 枚あります。以下、最初の試作を A、2 枚目を B とします。
| 層 | 目標 線幅 | A の実測 | B の実測 |
|---|---|---|---|
| 1 層目 | 2 µm | 2.43、2.53 | 2.07、2.08 |
| 2 層目 | 5 µm | 5.31 | 5.60、6.03 |
| 3 層目 | 10 µm | — | 10.24、10.69 |
絶対誤差に直します。
| 層 | A の平均バイアス | B の平均バイアス |
|---|---|---|
| 1 層目 | +0.480 µm | +0.075 µm |
| 2 層目 | +0.310 µm | +0.815 µm |
| 3 層目 | — | +0.465 µm |
2 µm 線でのバイアスが、6.4 分の 1 になっています。2 µm 線と 5 µm 線の比を取ると、順序そのものが入れ替わります。
A では細い線のバイアスが大きく、B では細い線のバイアスが小さい。比で 16.8 倍の開きです。「絶対誤差はどの層でも同じ」という関係が近似で通るのは A だけです。B の 1 層目 0.075 µm と 2 層目 0.815 µm は、10.9 倍離れています。
電解銅めっきの側を半加法プロセス向けに作り込んだ2020 年のホルムアルデヒドフリー無電解銅めっきの報告4があるとおり、この工程系の薬液と条件は公開の対象になっています。それでも 2 枚のパネルの間で、バイアスの並び方がここまで動きます。
パネル内のばらつきの 8.1 倍は、点数を増やしても縮まない
ここで決定的な比較に入ります。「2 枚の差」と「1 枚の中のばらつき」を、同じ単位へ揃えます。
1 層目の 2 点から標本標準偏差を出します。
プールした標準偏差は
2 枚の平均の差は
パネル間の差は、パネル内のばらつきの 8.1 倍です。2 標本の 統計量も同じ値になり、自由度 2 で
2 点ずつという最小限の標本でさえ、2 枚のパネルは 1.5% 水準で別の母集団に属します。
パネルの反りが主要課題として挙がる2024 年のパネルレベル再配線の報告1のとおり、パネル 1 枚は工程の中で独立の単位として動きます。その単位をまたいだ差が、ここに 0.405 µm として出ています。
帰結が運用へ直結します。1 枚のパネルの中で測定点を 点へ増やすと、平均バイアスの標準誤差は で縮みます。工程誤差 0.4 µm の 10 分の 1 にあたる 0.04 µm まで縮めるには
2 点で足ります。つまり A のデータは、A のバイアスを確定する目的では十分な点数を持っています。
0.405 µm という隔たりは、 を増やしても縮みません。 が縮めるのはパネル内の散らばりだけで、パネル間の平行移動は同じ大きさのまま残ります。
だからこの数字は「工程の寸法バイアス」として台帳へ載せる量ではありません。載せられるのは「このパネルの寸法バイアス」まで。補償値は、パネルごとに測り直す量です。
ピッチのずれが層で符号を変えるので、倍率誤差も消える
もう 1 つの候補、倍率誤差も数で外せます。座標が原点からの距離に比例して伸び縮みするなら、同じパネル・同じ描画系の全層で、相対的なピッチ誤差は同じ符号・同じ大きさで出ます。
B のピッチを出します。1 層目は線幅 2.07、2.08 に間隔 1.74、1.81 を足して
3 層目は
平均すると 1 層目 −3.75%、3 層目 +1.43%。
符号が逆向きです。1 枚のパネルの中で、層によってピッチ誤差の向きが動きます。倍率誤差という読み方は、ここで止まります。
A のほうも同じ形で出します。A の 1 層目ピッチは 4.12 µm、+3.00%。B の 1 層目は −3.75%。2 枚のパネルの間でも符号が逆向きです。
残るのは、層ごと・パネルごとに独立に動く量です。レーザ直接描画のショットと感光性誘電体の現像とめっきが、それぞれ独立へ乗る形になります。2024 年のパネルレベル再配線の報告1がパネルの反りを主要課題として並べているのも、この独立性と同じ根を持ちます。
SEM の線幅は、しきい値の約束を含む数字
ここまでの計算は、断面像から読んだ 2.43 / 1.69 µm という数字が幾何学的な幅である、という前提の上にあります。この前提そのものが動きます。
電子線と試料の相互作用のモデルを持ってはじめてエッジ位置が求まる、という点は1995 年の SEM 線幅測定のモンテカルロ解釈の研究5が正面から主題にしています。像の線走査プロファイルから 2 つのエッジ位置を取り出す操作には、どの強度水準をエッジと定めるかという約束が含まれます。
ここで、怖い一致が起きます。エッジの切り出し点が真のエッジより だけ外側にあると、線幅は 、間隔は 、ピッチは不変。エッジの一様移動と、まったく同じ数字の並びが出ます。
この 2 つを、ピッチ不変という証拠だけで分ける作業には無理があります。
取り違えたときの実害も、そのまま出ます。+0.4 µm が工程のバイアスなら、設計データを 0.8 µm 細らせるのが正解。測定のオフセットなら、同じ補償で実際の線が 0.8 µm 細くなり、ML1 は 2.0 µm から 1.2 µm へ落ちます。対策が正反対に乗ります。
測定系そのものの分解能を実験的に求める手順は2003 年の CD-SEM 計測の分解能測定の研究6が相手にしています。切り分けの基準は単純です。測定誤差は工程誤差の 3〜10 分の 1。工程誤差 0.4 µm に対して
A の 1 層目 2 点の開きは 0.10 µm でした。これは工程のばらつきと測定のばらつきの合計です。合計で既に、窓の上端に触れています。
電気的線幅は、しきい値の約束によらずに出る
エッジの取り決めから自由な測定法が 1 つあります。抵抗から線幅を出します。
まず正方十字形でシート抵抗を求めます。
この係数の数値計算と、電極形状が理想形からずれた場合の幾何因子の求め方は2000 年の van der Pauw 測定における幾何因子の計算7が主題にしており、抵抗比から幾何因子を反復で求める手順が公開されています。解析的に比抵抗とシート抵抗を求める道筋も2020 年の報告8にあります。
次に既知長 のブリッジ抵抗から線幅を求めます。
測っている量が別です。幾何学的な幅の代わりに、電流が実際に通っている幅が出ます。再配線にとって意味を持つのは、後者のほうです。
工程誤差の 80 分の 1。3〜10 分の 1 という窓に対して、8〜27 倍の余裕を持ちます。
ブリッジ部とクロス部のシート抵抗が等しいこと。設計則は 、、 の形で並びます。A の ML1 で確かめます。
を 12.3% の余裕で満たす位置にいます。486 µm のブリッジは、240 mm × 74 mm のストリップに 494 本が一列に入る長さです。
パネル面内に何十点でも非破壊で入る、という点が乗ります。バイアスとばらつきを分ける作業に要るのは、まさに面内の点数です。
めっき前のレジストで、入口側を測る
半加法プロセスでは、レジストの型に銅を析出させ、あとでシード層を抜きます。エッチファクタという項が効かないので、レジストの形がそのまま導体の形になります。
レジストの壁が垂直なら導体の側面も垂直、傾いていれば導体も傾く。線幅を決めているのはレジストです。露光量・現像液の希釈比・露光の接触モード・レジストの種類を振って側壁角と寸法を作り込んだ2021 年のレジストめっき型の最適化2が、まさにこの関係を寸法制御の手として使っています。
運用がそこから出ます。めっき前にレジストを測れば、完成後の導体寸法が先に決まります。規格外なら、レジストを剥がして塗り直し、描画をやり直せば済みます。切り分けのために試料を壊す手順を省けます。
候補要因は 4 つありました。レジストの現像、描画の露光量、めっきの膜厚、銅エッチのサイドエッチ。めっき前のレジスト検査で、前 2 つと後ろ 2 つが分離します。
クロスブリッジが出口を、レジスト検査が入口をたどります。両端で測ってはじめて、+0.4 µm の発生場所が言えます。無電解銅めっきの薬液系そのものを半加法プロセス向けに作り込んだ2020 年の報告4は、この後ろ 2 項の側を動かす仕事にあたります。
崖は線形補間では見えない
「バイアスが一定なら、誤差率は で増える」という読み方には、素直な梯子が付きます。
| 目標線幅 | +0.4 µm の相対値 |
|---|---|
| 5 µm | 8% |
| 2 µm | 20% |
| 1 µm | 40% |
実際の壊れ方は、この梯子より急です。確率的な露光ゆらぎが臨界寸法へ与える効果を主題にした2017 年の電子線リソグラフィにおける確率的露光の研究9が示すとおり、現像フロントの粗さは実効的な現像速度を押し上げ、決定論的な計算から得た寸法と実際の寸法を大きく引き離します。
形の違いを 1 行で出せます。破綻率が寸法のべき乗で乗る場合と、指数関数で乗る場合を比べます。
指数関数の側は、局所的なべき指数が として寸法に比例します。つまり寸法を縮めると指数そのものが小さくなり、寸法を広げると指数が上がる。どんな固定のべき に対しても、 で追い越します。
特性幅の 2 倍を下回った時点で、指数関数の側が二次の欠陥モデルより緩やかになり、上回った側では急になります。梯子の読み方がここで変わります。
「1 µm で 40% だから危うい」という線形の見立ての代わりに、「2 µm と 1 µm の間のどこかに折れ曲がりがあり、そこは 2 点の線形補間では見えない」と受け取ります。中間の寸法を刻んで測る手順が要ります。