はんだ接合を 1 段まるごと外したら、位置合わせはどれだけ厳しくなるでしょうか。溶けたはんだが自分で位置を直す働き——自己整合——が消えるので、直感では厳しくなるはずです。
ところが実際に作られたものは、四辺に打った十数本の釘で合わせています。なぜそれで足りるのか。
はんだ 1 段を、60 µm のプリプレグで置き換える
構成を書き出します。
| 層 | 厚み |
|---|---|
| チップ(細いバンプ付き) | — |
| 細線再配線の基板 | 約 37 µm |
| 中継層 | 約 60 µm |
| 高密度プリント基板 | 約 1 mm |
中継層が、はんだ接合の代わりです。
40 µm 薄く、元の 60%。
作り方は単純です。樹脂を途中まで硬化させたシートに保護フィルムを貼り、レーザで穴を開け、導電ペーストを印刷して穴を埋め、保護フィルムを剥がす。シートもペーストも半硬化のまま運ばれます。
組み立ては、3 枚を重ねて四辺のまわりに十数本の釘で留め、熱圧着する 1 回だけ。そこでシートとペーストが同時に完全硬化し、釘を抜きます。
はんだのリフローが「溶かして固める」1 工程なのに対し、こちらは「半分固めておいて、最後に固め切る」2 段構えです。この構えがあるので、位置を定める工程と接合する工程を、別々の装置へ割り振れます。貫通ビアの充填材として銅の導電ペーストを主題にした2021 年の報告1があるとおり、ペーストで穴を埋めるという手そのものは確立しています。
テーパのある穴の抵抗は、両端の面積の相乗平均で決まる
抵抗を求めます。導電ペーストで穴を埋める工程そのものを主題にした2021 年の報告1と同じ充填を前提に、ここで寸法を 3 つ、きちんと分けます。
| 記号 | 何か | 値 | 何を握るか |
|---|---|---|---|
| パッド径 | 300 µm | 着地面 | |
| ビア径 | 上 100 / 下 80 µm | 導通路 | |
| ピッチ | 350 µm | 隣との距離 |
レーザで開けた穴にはテーパが付くので、断面は場所ごとに別です。上の半径 から下の半径 へ直線的に細る円錐台です。
厚さ の薄い輪切りを直列につなぐので、抵抗は積分になります。
断面積のところに が出ます。
両端の面積の相乗平均そのものです。 とすれば に戻るので、円柱の式をちゃんと含んでいます。
11.25 倍は、 と によらない純粋な寸法比
2 通りに計算します。導電接着剤の接合抵抗が組成と界面で動くことは2024 年の研究2が主題にしていますが、以下では体積抵抗率を銀ペースト並みの 、厚さ 60 µm として。
パッド全面が導通すると仮定した場合
実際の円錐台 1 本の場合(、 µm)
比を取ります。
も も約分で消えます。つまりこの 11.25 倍は材料の性質によらず、300 µm のパッドと 100/80 µm のビアという寸法だけから出ています。
ペーストの銘柄を変えても、層の厚みを変えても、この比は同じままです。
だから読み方が定まります。300 µm のパッドが稼いでいるのは位置合わせの余裕で、抵抗には効きません。「面積で稼いでいる」という読み方は、ここでは成り立ちません。
許容ずれを握るのは、ビアより隣のパッド
300 µm のパッドが生む余裕を、2 通りに数えます。自己整合の無い接合ほど配置精度が効くことは2005 年の研究3の範囲にあり、以下はその余裕を幾何で区切る作業です。
ビアがパッドの内側へ落ちる条件
隣のパッドを避ける条件
隣のほうが 4 倍きつい。だから上限を握っているのは隣のパッドです。
この向きが、設計の判断を変えます。
ペーストの寛容さがいくらあっても、350 µm ピッチで径 300 µm という組み合わせが 25 µm で頭打ちにします。
パッド径 300 µm が取り返しているもの
なぜパッドをここまで太らせられるのか、そしてなぜ太らせる必要があるのか。
はんだは溶融時の表面張力で位置ずれを自分で直します。その復元力そのものを主題にした2002 年の研究4や、はんだペーストの種類が搭載精度と自己整合へ与える影響を測った2004 年の研究5があるとおり、自己整合は測れる量です。
ペーストの側には、その復元力が働きません。等方性の導電接着剤を使ったフリップチップの信頼性を主題にした2005 年の研究3や、鉛フリー代替として接着剤を測った2002 年の報告6が示すとおり、据えた場所がそのまま最終位置になります。
許容ずれを、バンプ径に対する百分率で書き出します。
| 接合方式 | 許容ずれ | 根拠 |
|---|---|---|
| はんだリフロー | 25〜50% | 溶融時の表面張力が位置ずれを直す |
| 導電接着剤 | 10〜20% | 自己整合の項がゼロ |
2.5 倍の落差です。両方ともバンプ径に比例するので
300 µm という数字の正体が、これで出ます。自己整合を捨てたぶんを、全部パッド径で取り返しています。
10〜20% 則を 300 µm へ当てると
幾何から出した 25 µm は、この帯のすぐ下です。別々の根拠から出た 2 つの見積もりが同じ桁で揃うので、この程度の余裕がある、と言ってよさそうです。
はんだの立ち上がりは、300 µm のパッドで 11 µm へ落ちる
では、はんだのままパッドを太らせればよいのでは。そこが塞がっています。溶融時の表面張力が形と高さを同時に握ることは2002 年の研究4が主題にしています。
はんだボールは体積が決まっています。平たく広がった接合の立ち上がり高さは、体積を面積で割った量におおよそ比例します。
100 µm 立ち上がりのはんだを、体積そのままでパッドだけ太らせます。
| パッド径 | 立ち上がり高さ |
|---|---|
| 100 µm | 100 µm |
| 150 µm | 44 µm |
| 200 µm | 25 µm |
| 300 µm | 11 µm |
300 µm にすると 11 µm——9 分の 1 です。熱サイクルでせん断を受け持つ高さがこの水準では、寿命が手前で尽きます。
ペーストは、この関係に当てはまりません。
厚みはシートが握り、面積は自由。だから設計の向きが逆転します。
接合方式を変えると、要求される装置精度が動きます。ここでは、リフロー炉とマウンタが、プレスと釘に置き換わっています。
ピッチの下限は、印刷が握る
では、ピッチを細かくして隣との隙間を稼げばよいのでは。そこも塞がっています。
ペーストは印刷で入れます。型板を使って印刷する導電エポキシの限界は 150〜200 µm ピッチ。
350 µm ピッチは、印刷の限界に対して 1.75〜2.33 倍の余裕を取った値です。
縮める余地はありますが、2 倍までです。隙間 を広げるには、ピッチを縮める代わりにパッドを縮める必要があり、パッドを縮めると自己整合の取り返しが目減りします。
3 つの寸法が、1 つの三角形の中で押し合っています。
もう 1 つ、下地の話が付きます。銀入りの導電エポキシをアルミの上へ直接載せると、硬化後に時間とともに接触抵抗が上がります。だから金属下地を挟みます。接着剤の性能そのものを組成から詰める2024 年の研究2や、異方性の導電接着剤の接合寿命を主題にした2002 年の研究7、紙の基材へ実装した2002 年の報告8があるとおり、接合界面の相手が抵抗を動かします。上で出した 9.55 mΩ は、下地しだいで上がります。
17 年で、細い側だけが 12.5 倍進んだ
最後に、時間軸へ置き直します。異方性の導電接着剤で組んだ接合の寿命を測った2002 年の研究7も、この粗い側の寸法帯に属します。導電インクで形成したビアは、2007 年の時点で既にプリント基板のビアを開ける 4 つの方法の 1 つでした。
| 2007 年 | 2024 年の中継層 | |
|---|---|---|
| ビア径 | 100〜125 µm | 上 100 / 下 80 µm |
| ランド(パッド)径 | 200〜300 µm | 300 µm |
17 年を通して、同じ寸法のままです。
同じ期間に、上に載る再配線は 25 µm 級から 2 µm へ進んでいます。
細い側だけが 12.5 倍進み、はんだを置き換えた粗い側は元の寸法のまま残りました。
だから再配線の側が、その差を吸収することになります。
1 層目の 2 µm 配線から 3 層目の 300 µm パッドまで、150 倍の寸法変換を 3 層で行います。再配線が 3 層あり、3 層目が配線の代わりにパッドになっている理由が、この 150 倍です。
新しいのは寸法の外——それを何に使うかです。2007 年には基板の層間を繋ぐ選択肢の 1 つだったものが、いまはインターポーザと基板を繋ぐ接合層そのものになっています。