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VOL.04 先端パッケージングの寸法 第 41 回 / 全 42 回

1 種類の樹脂で 3 役を兼ねる実装:平坦化の比 t/h は揃わない

封止、層間絶縁、最外層の 3 役を 1 種類の樹脂で兼ねると、界面が 2 本減り、工程も 1 つにまとまります。ただし 3 役の要求が一致していたわけではなく、いちばん厳しい役で選んだ材料が残りの役でも足りた、と読むのが正確です。

26 分 応用 式 20 出典 8

この回の目次(7 節)
  1. §1 同じ樹脂が、封止と層間と最外層の 3 か所に出る
  2. §2 「要求が一致していた」を 3 項目で済ませてよいか
  3. §3 優先順位はまるで別。それでも 1 材料で足りた
  4. §4 平坦化の度合いは
  5. §5 2 つの は揃わず、揃える方法もない
  6. §6 揃えるのはレシピ、変えるのは厚み
  7. §7 1 パネル 62 万個、実験は 11.8%

この回で示すこと

  1. 1 種類の樹脂で 3 役を兼ねると界面が 2 本減るが、選定項目は 8 つあり、3 項目の確認は 37.5% にとどまる。
  2. 正しい読み方は「いちばん厳しい役で選んだ材料が、残りでも足りた」。
  3. 平坦化の度合いは で、2 つの が揃うのは素子の高さが 18.0 µm のときだけ。
2 つの t/h が揃う素子の高さ 18.0 µm
3 項目の確認が覆う選定項目の割合 37.5 %
設計数に対して実験で載せた素子 11.76 %

封止・層間絶縁膜・最外層を、1 種類の樹脂で兼ねてよいのか。兼ねられれば界面が減り、装置もレシピも 1 つで済みます。

実際に兼ねた例があります。ただし「兼ねられた理由」として最初に思い付く説明は、成り立ちません。

同じ樹脂が、封止と層間と最外層の 3 か所に出る

微小発光素子のディスプレイ用モジュールを、パネルレベルのファンアウトで作った例です。工程を追うと、同じ材料が 3 回出ます。

役割使っている材料
封止ビルドアップフィルム
再配線の層間絶縁膜ビルドアップフィルム
最外層(はんだの濡れ止め)ビルドアップフィルム

通常なら、封止は成形材の圧縮成形、層間はポリイミドかビルドアップフィルム、最外層は別材料です。ここでは 3 つとも同じ。

効果も書かれています。圧縮成形の代わりにラミネートにしたことで、背の低いモジュールが得られた。

界面の数が減ります。

3 役を 1 材料へ揃えると、消える界面は 2 本。同じ材料どうしなら接着の代わりに融合になり、熱膨張差もゼロです。

工程の側も揃います。ラミネート条件が 3 役とも同じ 2 段です。

段温度圧力時間圧力 × 時間
1a120 ℃真空のみ30 秒—
1b120 ℃0.68 MPa30 秒20.4 MPa·s
2100 ℃0.58 MPa60 秒34.8 MPa·s

2 段目は 20 ℃ 低く、圧力も低いのに、圧力と時間の積は 1.71 倍です。1 段目は、真空のまま 30 秒流し込んでから加圧する順序になっています。

低損失のビルドアップフィルムそのものを主題にした2025 年の報告1があるとおり、この材料系は層間絶縁膜として作り込まれてきたものです。

「要求が一致していた」を 3 項目で済ませてよいか

兼ねられた理由として、まずこう読みたくなります。3 つの役の要求がどれも「絶縁して、平らで、レーザで穴が開けられる」で一致していた、と。

判断の向きとしては正しいのですが、検査の粒度が粗すぎます。

高密度配線用の誘電体を選ぶときの検討項目は、3 つの代わりに 8 つあります。低損失化そのものを主題にした2025 年の報告1は、この一覧のうち 1 項目だけを深く掘った仕事にあたります。

項目
1低誘電率(4 未満)
2シリコンに近い低熱膨張係数
3良好な機械特性(高い伸び、高い破壊靭性)
4良好な密着(銅・アルミ、そして基材へ)
5低吸水
6400 ℃ までの熱安定性
7低溶剤吸収
8加工性(ピンホールの無い膜、平坦化、ビア形成)

「絶縁・平坦・レーザ穴あけ」で確かめたのは、8 項目のうち 3 項目です。

優先順位はまるで別。それでも 1 材料で足りた

残る 5 項目で 3 役を照らすと、要求が割れる箇所が出ます。

項目封止層間絶縁膜最外層
低吸水中(外気に触れる)低(埋まっている)高
銅への密着低(素子と樹脂)高(両面が銅)中(開口部のみ)
シリコンに近い熱膨張係数中高(銅配線を挟む)低
低誘電率低高(配線間)低

4 項目とも、最高の要求が来る役が別々です。低吸水は最外層、残る 3 つは層間絶縁膜。

だから「要求が一致していたから兼ねられた」という説明は成り立ちません。

正しい読み方はこうです。

この材料は、もともとビルドアップ基板の層間絶縁膜です。厚い誘電体と細い導体を組み合わせる枠組みを主題にした1981 年の報告2の系譜に属します。表の真ん中の列に最適化されたものを、両側へ流用しています。

判断基準の使い方が動きます。

読み方手順
要求が一致するか3 役を対等に見て、共通項を探す
律速の役で選ぶ最初に律速の役を 1 つ決め、そこで選び、残りで検算する

後者は 1 回の選定で済み、前者は 3 役ぶんの比較が要ります。前者は、共通項だけを拾うので、いちばん厳しい要求を落とすという失敗を含みます。

平坦化の度合いは

8 項目のうち「加工性」を、さらに分解します。平坦化はこう定められます。堆積し硬化した誘電体が、下地の凹凸に対してどの程度覆っているか。理想は、上面が下地に沿う代わりに平らであること。

式にします。下地の段差を 、積んだ誘電体の厚みを 、上面に残る段差を として

状態DOP
完全に下地へ沿う0
完全に平ら01

「誘電体が厚いほど平坦化の度合いが大きくなる」は、 が比 の増加とともに小さくなる、という意味です。

塗布膜の平坦化を解析的に解いた1998 年の研究3や、膜厚と線密度を同時に振って局所平坦化を解析した2002 年の研究4、そして段差被覆そのものを主題にした1972 年の報告5があるとおり、段差と膜厚の比が、この量を握っています。

2 つの は揃わず、揃える方法もない

膜厚と段差の比が平坦化を握ることは1998 年の解析3のとおりで、以下はその比を 2 つの役について計算する作業です。2 つの役で、厚みが 6 倍違います。

役誘電体の厚み
封止150 µm
層間絶縁膜25 µm

「比 を揃えるために厚みを変えている」という読み方が成り立つかどうかを、数で確かめます。

層間絶縁膜が覆うのは、数 µm の銅配線です。 µm とすると

封止が同じ比になるには、発光素子の高さが

という 1 点だけです。

この種の発光素子は、これよりはるかに背が高い。だから

が、素子の高さによらず成り立ちます。

素子の高さ封止の 層間 ÷ 封止
50 µm3.002.8 倍
80 µm1.884.4 倍
100 µm1.505.6 倍
150 µm1.008.3 倍

2 つの比は揃わず、揃える方法もありません。

ずれの向きが、そのまま理由です。

層間絶縁膜の上には次の配線が載るので、平坦な面が要ります。封止の上は最終面です。覆えば済みます。

だから厚みを役ごとに変えているのは、比を揃えるためより、その層の上で次に何が起きるかに合わせるためです。

揃えるのはレシピ、変えるのは厚み

兼ねるときの手順が、これで 2 行になります。

ここが逆になっていると、2 通りに壊れます。

誤り結果
封止が薄すぎる素子の頭が出る
層間が厚すぎるビアの形状比が破綻する

層間の厚みには上限もあります。ビアの形状比が、 とビア径で決まるからです。

平坦化は を増やしたがり、ビアは を減らしたがる。厚い誘電体と細い導体を組み合わせて微細パターンを作る枠組みを主題にした1981 年の報告2が対象にするのも、この押し合いです。

1 パネル 62 万個、実験は 11.8%

値
パネル515 mm × 510 mm
設計上の素子数629,712 個
実験で載せた数74,064 個

理由は「素子を節約するため」と書かれています。全数の 11.8% です。

モジュールの構成も数で出ます。

1 モジュールは 1.2 × 1.2 mm なので

パネル面積の 28.8% がモジュールです。残る 71.2% は切り代と周辺。

モジュール内の密度は

素子間の間隔は 80 µm。これだけの数を載せる工程そのものが課題で、レーザで転写と接合を同時に行う工程窓を主題にした2024 年の報告6や2023 年の研究7、そして欠陥検査のための位置決めを主題にした2026 年の研究8が、その周辺にあります。

62 万個のうち 1 個の欠落が、そのまま画素の欠落です。11.8% を載せた実験は、その歩留まりを測る手前に立っていることになります。

出典

  1. 1 Ultra-low Loss Build-up Film Dielectric for Advanced Packaging (2025) doi:10.4071/001c.129509
  2. 2 Combination of Thick-Film Dielectric and Thin Film Conductor for Fine Pattern Formation of Multi-Layer Substrates (1981) doi:10.1155/apec.8.235
  3. 3 Analytical Solutions of Film Planarization during Spin Coating (1998) doi:10.1143/jjap.37.4321
  4. 4 Analysis of Local Planarization with Polishing Time, Film Thickness, Chemical Non-Uniformity and Line Density (2002) doi:10.1557/proc-732-i5.5
  5. 5 Thickness Distribution and Step Coverage in a New Planetary Substrate Holder Geometry (1972) doi:10.1116/1.1317845
  6. 6 Process Window of Mini-LED Display Panel Packaging using Laser Assisted Bonding Technology (2024) doi:10.4071/001c.94690
  7. 7 Process window of simultaneous transfer and bonding materials using laser-assisted bonding for mini-LED (2023) doi:10.4218/etrij.2022-0471
  8. 8 A fast and precise positioning method for circular markers in Mini-LED display panel defect detection (2026) doi:10.1063/5.0312068