工程の信頼性試験が全部ベースライン同等で通ったのに、製品の寿命試験で問題が出ました。追加の実験をゼロ本のまま、容疑者を 2 つまで絞れます。
製品の信頼性は、工程・設計・スクリーニングの 3 つから来ます。1 つ目が測定でベースライン同等だと示されたなら、差は残りの 2 つにあります。
3 項のうち 1 項が同等なら、差は残りの 2 項にある
最初の絞り込みは論理です。工程の試験項目が網羅的で、すべてベースライン同等なら、工程の寄与は変わらない。残差は設計とスクリーニングへ行きます。
ここで「スクリーニング」が容疑者になる理由は、工程の試験が測っているものと、スクリーニングが落としているものが別だからです。工程の試験は代表サンプルの中心的な振る舞いを測ります。スクリーニングは個体の裾を落とします。中心が同じでも、裾の落とし方が変われば出荷後の故障率は動く。
2025 年の電力 GaN HEMT における高温ゲートバイアス改善のためのウェーハレベル・ゲート金属欠陥スクリーニング1が、この構造の実例です。高温ゲートバイアス試験で早期故障が出たので故障解析へ回したところ、ゲート金属の成膜欠陥で、元素組成はバルク金属と同一。つまり組成の分析を素通りする、小体積の構造異常でした。
材料の検査を通る欠陥が、寿命を落としていた。工程の試験が通ったまま製品が落ちる形が、ここにあります。
ゼロ故障で を示す標本数は
スクリーニングの到達点を主張するには、「不良率が 以下である」を示す必要があります。ゼロ故障で示す場合の標本数を出します。
不良率が のとき、 個を試験してゼロ故障になる確率は 。これが 以下なら、信頼度 で「 より小さい」と言えます。
分子は信頼度だけで決まります。
| 信頼度 | |
|---|---|
| 60% | 0.916 |
| 90% | 2.303 |
| 95% | 2.996 |
| 99% | 4.605 |
分母に不良率を入れます。
| 不良率 | での標本数 |
|---|---|
| 100 ppm | 23,026 |
| 10 ppm | 230,259 |
| 1 ppm | 230 万 |
| 1 ppb | 23 億 |
ppm から ppb へ 3 桁厳しくすると、標本数も 3 桁増えます。信頼度を 90% から 60% へ緩めたときの利得は 2.5 分の 1 まで。桁が動くのは分母の側です。
2009 年のゼロ故障信頼性実証試験の研究2は、この設計を加速試験とベイズ事前分布の枠組みへ乗せ、最小の標本数と試験時間を事前に確定する手順を示しています。同じ研究は、設計した試験に合格する確率そのものも導いている。合格率が低い試験計画は、実行する前に分かります。
加速係数で割っても、1 ppm は 7 万個まで
標本数を減らすつまみは、加速係数です。
寿命 の使命に対し、加速係数 で 時間試験すると、1 個あたり 回ぶんの使命を経たことになります。だから必要な個数は
温度加速の係数は、アレニウス型で出ます。
使用温度 55 °C で数を入れます。
| 試験温度 | eV | eV |
|---|---|---|
| 85 °C | 8.0 | 21 |
| 105 °C | 26 | 92 |
| 125 °C | 78 | 504 |
| 150 °C | 260 | 2828 |
これを標本数の式へ代入します。使命 10 年(87,600 時間)、試験 1000 時間、 ppm、。
| 要る個数 | ||
|---|---|---|
| 78 | 0.89 | 259 万 |
| 260 | 2.97 | 77.6 万 |
| 504 | 5.75 | 40.0 万 |
| 2828 | 32.3 | 7.1 万 |
最も強い加速でも、1 ppm に 7 万個です。1 ppb なら 7100 万個。
この数は、認定ロットの規模を超えています。つまり ppb 水準の主張が立つ場所は、認定試験より出荷した数百万個から数千万個の実績の側です。2004 年の製品寿命信頼性実証のための試験設計と加速3が、信頼性目標・信頼度・想定される環境応力から試験を設計する手順を示しているのは、この掛け算を先にやっておくためです。
試験計画は、目標値と信頼度を入れた時点でほぼ確定します。残る自由度は加速係数と試験時間の 2 つで、どちらも線形の寄与までです。
バーンイン時間は、初期故障期の長さから逆算する
同じ加速係数が、バーンインの設計にも入ります。ただし割る相手が別です。
バーンインが落とすのは初期故障です。だから逆算の相手は使命全体より、初期故障期の長さになります。初期故障期を使用条件で とすると
時間、 eV で数を入れます。
| バーンイン温度 | 要る時間 | |
|---|---|---|
| 85 °C | 8.0 | 125 時間 |
| 105 °C | 26 | 38 時間 |
| 125 °C | 78 | 13 時間 |
| 150 °C | 260 | 3.8 時間 |
85 °C から 125 °C へ上げると、炉の占有時間が 10 分の 1 になります。上限を与えているのは、パッケージとバーンインボードが耐える温度のほうです。
時間を与える基準は、もう 1 本あります。2001 年の電子製品の最適バーンイン時間とコストの研究4は、従来のモデルが前提とする仮定が実際の製造では成り立ちにくく、コストモデルに要る費用の数字も集めにくいと指摘し、旧製品との関係から新製品のバーンイン時間を推定する方向を採っています。
2010 年のベイズ的な最適バーンイン時間の計算5は、出荷品の信頼性の最大化と総費用の最小化という 2 つの基準を同時に立てます。寿命分布のパラメータが不確かなので、信頼性も費用も確率変数になる。2 つの同時分布から効用関数を作り、それを最大にする時間を選ぶという立て方です。
バーンイン時間には、物理から出る下限と、費用から出る上限があります。上の逆算は下限のほうで、そこから上をどこまで取るかは費用の側で決まる。
代理変数で落とすとき、捕捉率の天井は相関係数が与える
実際のスクリーニングが測るのは、寿命と相関する試験項目までです。その項目で落とします。
代理変数を 、真の弱さを 、両者の相関を とします。どちらも標準正規とする。早期故障は が上位 に入る個体、スクリーニングは が上位 の個体を落とす、と定めます。
を与えたときの は平均 、標準偏差 の正規分布なので、捕捉率は
早期故障を 1 万個に 1 個()として表にします。
| 落とす割合 | ||||
|---|---|---|---|---|
| 10% | 1.28 | 100% | 97% | 75% |
| 1% | 2.33 | 98% | 65% | 30% |
| 0.1% | 3.09 | 66% | 25% | 7.8% |
| 0.01% | 3.72 | 18% | 5.9% | 1.6% |
相関が天井を与えています。 の代理変数では、10% を落としても 4 分の 1 が通り抜ける。 なら 1% を落とすだけで 98% を捕まえます。
同じ でも、落とす割合を 10 倍細かくすると捕捉率が落ちます。1% から 0.1% へ絞ると、 で 98% から 66% へ。良品の損失を惜しむ操作が、そのまま捕捉率の放棄になる。
2026 年の部品平均試験における頑健な異常点検出の多変量枠組み6は、異常点が生産の 1% から 10% を占めると置き、平均と標準偏差より中央値と四分位範囲のような頑健な統計量を使うべきだと論じています。モンテカルロ比較では、極値や歪みを含む分布で頑健法が優位でした。
異常点を含む分布で平均と標準偏差を使うと、しきい値そのものが異常点に引かれます。落としたい個体が、落とす基準を緩める側へ働く。
感度のある試験項目は、応力を掛けてから見つかる
を上げる作業が、スクリーニング設計の中身です。候補のうちどれが を持つかは、測ってみて初めて分かります。
上の 2025 年の GaN HEMT の研究1が、この比較をそのまま載せています。
| 候補 | 感度 | 理由 |
|---|---|---|
| 順方向ゲート電流 | 低い | パッシベーション層を通る本来のゲートリークが大きい |
| 逆方向ゲート電流 | 高い | 封止樹脂の引張応力下で感度が出る |
逆方向ゲート電流に感度が出た理由として、圧電効果が p-GaN ゲート下の空乏層幅を変えることが挙げられています。そこから多パルスの 試験が組み立てられました。
封止の応力を掛けた状態で初めて、代理変数が相関を持ちました。ウェーハの状態での測定は相関ゼロを返すので、この項目はウェーハ試験の候補から落ちてしまう。測る条件が を作っている。
事後に切り分けるための仕掛けも要ります。2025 年の半導体組立におけるファイアウォールの研究7は、自動光学検査と開放短絡試験を工程内の関門として置き、2 次元 ID による単位ごとの追跡を組み合わせています。これで各個体の履歴が残り、不良の共通項を特定できるという立て方です。
を後から測れるのは、単位ごとの履歴が残っている場合までです。出荷後に故障した個体の試験データを遡れて初めて、どの項目が相関を持っていたのかが分かる。スクリーニングの設計は、追跡の設計の後に来ます。
現場で動く判断
- 工程の試験が全部同等なら、容疑者は設計とスクリーニングです。工程の試験は中心を測り、スクリーニングは裾を落とす。測っている対象が別なので、片方が同等でも他方は動きます。
- ゼロ故障の標本数は です。90% 信頼度で 1 ppm なら 230 万個、1 ppb なら 23 億個。信頼度を緩めても 2.5 分の 1 までです。
- 加速係数は として掛かります。 eV・150 °C の でも、1 ppm に 7.1 万個。ppb が立つ場所は、認定ロットより出荷実績の側です。
- 試験計画は、目標値と信頼度を入れた時点でほぼ決まります。目標・信頼度・想定応力から設計する手順3を先に回し、合格率が低い計画は実行前に捨てます。
- バーンイン時間は初期故障期を加速係数で割った値です。 時間・125 °C で 13 時間。使命全体を割る相手にすると、桁が 2 つずれた数が出ます。
- バーンインの上限は費用の側で決まります。信頼性と費用の同時分布から効用を最大化する5立て方があり、物理から出る下限とは別の基準です。
- 代理変数の捕捉率は、相関係数が天井を与えます。 では 10% 落としても 75%、 なら 1% 落として 98%。落とす割合を仕様へ書く前に、 を測ります。
- 落とす割合を細かくすると、捕捉率が落ちます。1% から 0.1% へ絞ると で 98% から 66% へ。良品の損失と捕捉率は、同じつまみの両端です。
- しきい値の統計量は、頑健なものを使います。異常点が生産の 1〜10% を占める6場面では、平均と標準偏差が異常点に引かれます。中央値と四分位範囲の側です。
- 代理変数は、応力を掛けた条件で測ります。封止樹脂の引張応力下で逆方向ゲート電流に感度が出た1例があります。無応力で相関ゼロだった項目も、候補に残します。
- 単位ごとの追跡が、 の測定を可能にします。出荷後の故障個体の試験データを遡れるのは、2 次元 ID による履歴の記録7がある場合までです。追跡の設計を先に決めます。