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講座集 / 信頼性と試験の統計 / 第 14 回

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VOL.05 信頼性と試験の統計 第 14 回 / 全 31 回

落下試験と熱サイクル:1500 G・0.5 ms の落下高さは反発係数で 4 倍ぶれる

落下試験と熱サイクル試験は、はんだ接合にかかる歪みの速さが 360 万倍も違うので、壊れる場所も、寿命を延ばす設計の向きも逆になります。規格の衝撃波形から落下高さを出すとき、反発係数の仮定で結果が大きくぶれる点にも触れます。

23 分 標準 式 6 出典 6

この回の目次(7 節)
  1. §1 半正弦衝撃の速度変化は
  2. §2 歪み速度が 360 万倍別なので、壊れる場所も別になる
  3. §3 壊れる場所が、2 つの試験で逆を向く
  4. §4 寿命の伸びは、桁が別の 2 つの数で測る
  5. §5 接合の厚みが、2 つの帳簿へ逆向きに入る
  6. §6 熱サイクルの時間は、別の測定で買える
  7. §7 現場で動く判断

この回で示すこと

  1. 半正弦衝撃の速度変化は で、1500 G・0.5 ms の落下高さは反発係数 0 で 1118 mm、1 で 280 mm。
  2. 落下と熱サイクルでは歪み速度が 360 万倍違い、壊れる場所が逆を向く。
  3. 接合の厚みは、2 つの試験の寿命に逆向きに効く。
反発係数 0 での落下高さ 1118 mm
反発係数 1 の場合 280 mm
落下と熱サイクルの歪み速度の比 360 万倍

落下試験の条件は「1500 G・0.5 ms の半正弦」のように書かれます。その条件を満たす落下高さは、4 倍の幅を持ちます。

同じ加速度波形を、高いところから硬い床へ落としても、低いところから跳ね返る床へ落としても作れるからです。決めているのは高さより、速度の変化量のほうです。

半正弦衝撃の速度変化は

加速度が半正弦、ピーク 、継続時間 の衝撃を考えます。速度の変化量は面積なので

落下側で書き直します。衝突直前の速度を 、反発係数を として

この 2 つを結びます。

、 ms を入れると m/s。反発係数を振ります。

反発係数 衝突速度 落下高さ
0(跳ね返りゼロ)4.68 m/s1118 mm
0.253.75 m/s716 mm
0.53.12 m/s497 mm
0.752.68 m/s365 mm
1.0(完全弾性)2.34 m/s280 mm

同じ衝撃仕様が、落下高さでは 4 倍の幅を持ちます。基板レベル落下試験の有限要素解析1が入力に波形そのものを取る形を採っているのは、この一意性の問題を避けるためです。

だから試験条件が 1 つの波形に定まるのは、加速度・継続時間・反発係数の 3 つが揃ってからです。落下高さの 1 行では、まだ 4 倍の幅が残る。

継続時間は 2 乗で乗る

なので、継続時間の影響は加速度と同じ重みで、しかも 2 乗で入ります。 で表にします。

ピーク加速度継続時間落下高さ
900 G0.5 ms179 mm
1500 G0.5 ms497 mm
1500 G1.0 ms1988 mm
2900 G0.3 ms669 mm

継続時間を 2 倍にすると、落下高さは 4 倍です。加速度を同じ値に保ったまま波形を「なまらせる」変更が、試験の厳しさを 4 倍動かす。

基板が受け取る曲げは、ピーク加速度より速度変化に比例します。加速度の数字だけで 2 つの試験を比べると、この項が抜けます。

歪み速度が 360 万倍別なので、壊れる場所も別になる

落下と熱サイクルを、同じ物差しに乗せます。歪み速度です。

試験歪み範囲到達までの時間歪み速度
熱サイクル0.5%900 s(15 分の傾斜) /s
落下0.5%0.25 ms20 /s

360 万倍です。同じ材料が、この 2 つの速度で別の振る舞いをします。

はんだは低速では這い(クリープ)、高速では脆い側へ移ります。だから破壊の場所が、はんだの内部から金属間化合物の界面へ移ります。

2026 年のはんだと金属間化合物の界面の機械特性における温度と歪み速度の役割の研究2が、この依存を凝集力モデルの界面パラメータとして取り出しています。荷重変位曲線を複数の歪み速度で測り、25 °C から 220 °C まで温度を振って、界面パラメータが温度とともに劣化する傾向を定量化した、という構成です。

界面のパラメータが温度と歪み速度の 2 変数関数である以上、1 つの試験条件で測った値は面の上の 1 点です。

受け側の剛性も、この速度依存へ入ってきます。2016 年の歪み速度と基板剛性の関数としての BGA はんだ接合の破壊3が、この 2 つを同じ軸へ並べています。

壊れる場所が、2 つの試験で逆を向く

2025 年の落下衝撃下における BGA はんだ接合の基板レベル解析1が、落下側の場所依存を有限要素で出しています。

項目落下試験での結果
上下のどちら側基板側のはんだボールが、パッケージ側より厳しい
パッケージ内の位置基板の縁に近い角のボールが最も脆弱
最大の引き剥がし応力162.12 MPa(歪み 0.001048)
落下の向き面を下にした向きが最も厳しい
基板上のパッケージ位置基板の縁に近いほど信頼性が高い

最後の行が、熱サイクルの直感と逆を向いています。落下では基板が曲がり、曲率が最大になるのは基板の中央。だから中央のパッケージが最も厳しい。

熱サイクルでは、基板とパッケージの熱膨張差がせん断を作ります。こちらは基板上の位置より、パッケージ内の中立点からの距離で決まる。

試験パッケージ内で厳しい場所基板上で厳しい場所
落下角のボール(基板側)基板の中央
熱サイクル角のボール(中立点から遠い)位置依存が小さい

パッケージ内で厳しい場所は一致し、基板上で厳しい場所は逆を向きます。だから配置の最適化は、2 つの試験で別の答えを返します。

寿命の伸びは、桁が別の 2 つの数で測る

2 つの試験は、寿命の単位も桁も別です。

熱サイクルの寿命はコフィン・マンソン型で書かれます。

歪み範囲を 20% 下げたときの寿命の伸びを、指数 ごとに出します。

指数 歪み 20% 減での寿命
1.51.40 倍
2.01.56 倍
2.51.75 倍
3.01.95 倍

指数が 1.5 から 3.0 へ動くと、同じ歪み改善の価値が 1.4 倍から 1.95 倍へ動きます。指数の推定が、投資判断の分母に入る。

落下側の寿命は、落下回数です。2022 年の熱硬化性エポキシを含む高強度 Sn-Bi 複合はんだペーストの基板レベル落下試験4が、エポキシ量ごとの倍率を出しています。

エポキシ量落下回数の倍率
31.55 倍
52.57 倍
73.00 倍超

同じ研究は、破壊の割合も見ています。エポキシを入れたペーストは、完全破壊と部分破壊の両方の割合を下げた。破面の観察では、硬化したエポキシ樹脂が接合を補強していました。

落下回数が数十回の桁なので、1.55 倍の改善が合否を跨ぐことがあります。熱サイクルの数千回に対する 1.56 倍とは、意思決定への届き方が別です。

試験典型的な寿命の桁1.5 倍の意味
熱サイクル数千回余裕が増える
落下数十回合否が変わりうる

接合の厚みが、2 つの帳簿へ逆向きに入る

設計のつまみで、符号が割れる例を 1 つ出します。はんだ接合の厚みです。

熱サイクル側では、せん断歪みがおおよそ

で、厚み に反比例します。厚くすると歪みが減り、寿命が伸びる。

金属間化合物の側では、逆が出ます。2016 年のはんだ接合の厚みが Cu/Sn/Cu 接合の金属間化合物成長速度へ及ぼす影響の研究5は、厚みを変えた接合を作って時効させ、次の結果を報告しています。

接合の厚み 時効初期の金属間化合物の成長
25 µm 以下速い(その後、減速する)
30 µmほぼ一定
40 µm 以上遅い(その後、加速する)

さらに、金属間化合物の成長が時効時間に対する放物線則と別の曲線を描くことも報告されています。寸法の縮小とともに、成長を律速する元素が Cu から Sn へ移る。

律速元素が寸法で入れ替わるので、薄い接合の時効は、薄い接合で測った値から予測します。

つまみ熱サイクル金属間化合物
接合を厚くする歪みが減る(良い)初期成長が遅い(良い)だが後期に加速
接合を薄くする歪みが増える(悪い)初期成長が速い(悪い)

符号が揃う区間と、逆を向く区間があります。だから厚みの最適値は、時効時間をどこで切るかに依存する。

熱サイクルの時間は、別の測定で買える

最後に、試験時間の話です。

熱サイクル試験は数か月かかります。2007 年の BGA パッケージのはんだボールの熱サイクル疲労寿命を求める迅速な実験手法6は、レーザーモアレにもとづく手法で 1〜2 週間に短縮したと報告しています。有限要素解析で置き換える方法と違い、モデルの仮定から独立である点が挙げられている。得られた寿命が、加速熱サイクルで得た寿命と同程度だった、と。

数か月を 1〜2 週間へ縮めた手段は、モデルより測定の置き換えでした。変形をその場で測って寿命式へ入れる形です。

落下試験の側では、この短縮は効きません。落下は数十回で片が付くので、律速しているのは試料数のほう。2 つの試験は、律速している資源も別です。

試験律速している資源
熱サイクル時間(数か月)
落下試料数(数十回で 1 枚を使い切る)

現場で動く判断

  1. 落下高さは です。1500 G・0.5 ms で、反発係数 0 なら 1118 mm、1 なら 280 mm。条件が定まるのは、加速度・継続時間・反発係数の 3 つを書いてからです。
  1. 継続時間は 2 乗で乗ります。0.5 ms から 1.0 ms で落下高さが 4 倍。波形をなまらせる変更は、速度変化まで計算してから判断します。
  1. 歪み速度が 360 万倍別です。熱サイクルの /s に対して落下は 20 /s。同じはんだが、這う材料と脆い材料へ割れます。
  1. 界面のパラメータは温度と歪み速度の 2 変数です。25 °C から 220 °C で劣化する傾向2が測られています。1 条件で測った値には、温度と歪み速度を添えて記録します。
  1. 基板上で厳しい位置が、2 つの試験で逆を向きます。落下では基板の縁に近いほど信頼性が高い1。配置の最適化は、2 つの試験で別の答えを返します。
  1. 落下では基板側のボールがパッケージ側より厳しくなります。同じ研究が、最大の引き剥がし応力 162.12 MPa を角のボールで出しています。上下のどちら側かを、報告の欄に立てます。
  1. コフィン・マンソンの指数が、投資判断の分母に入ります。歪み 20% 減の価値が で 1.40 倍、 で 1.95 倍。指数の推定値を先に共有します。
  1. 落下回数の 1.5 倍は、合否を跨ぐことがあります。エポキシ複合はんだで 1.55〜3.00 倍4。数十回の桁なので、熱サイクルの 1.5 倍とは意味が別です。
  1. 接合の厚みは 2 つの帳簿へ逆向きに入ります。熱サイクルの歪みは 、金属間化合物の成長は厚みで非単調5。律速元素が寸法で Cu から Sn へ移るので、薄い接合は薄い接合で測ります。
  1. 熱サイクルの時間は、測定の置き換えで買えます。レーザーモアレで数か月を 1〜2 週間へ6。落下側の律速は試料数なので、同じ短縮は効きません。

出典

  1. 1 Board level solder joint analysis of ball grid array package under drop test using finite element methods (2025) doi:10.1590/1517-7076-rmat-2024-0798
  2. 2 Mechanical Characterization of Solder and Intermetallic Compound Interface, The Role of Temperature and Strain Rate (2026) doi:10.21741/9781644904237-44
  3. 3 BGA Solder Joint Fracture as a Function of Strain Rate and PCB Rigidity (2016) doi:10.37665/srgrcue66042
  4. 4 Board Level Drop Test for Evaluating the Reliability of High-Strength Sn-Bi Composite Solder Pastes with Thermosetting Epoxy (2022) doi:10.3390/cryst12070924
  5. 5 Effect of Solder Joint Thickness on Intermetallic Compound Growth Rate of Cu/Sn/Cu Solder Joints During Thermal Aging (2016) doi:10.1115/1.4034819
  6. 6 An Expedient Experimental Technique for the Determination of Thermal Cycling Fatigue Life for BGA Package Solder Balls (2007) doi:10.1115/1.2804091